平成30年12月 勉強会

平成30年12月16日 中医学勉強会

『不妊症と補腎薬の活用方法』                           遼寧中医薬大学客員教授 中医学講師 劉伶先生

現代は結婚の年齢が高くなっている為か子供を望む年齢も高くなっています。
長年、不妊症に取り組み、理論的な面は極めてこられた先生でも高価な漢方を長期に使って頂いても出産にこぎつけない事に対する悩みもあるようです。
しかしながら、先生がタイアップしているクリニックによると体外受精の成功率を20数%から40%弱まで上げる事ができているという実績を示されたとの話をされました。(年齢は30代後半から40代が多い)
この数字の示す意味は漢方で身体をバックアップさせて高度生殖医療を行っても10人中6人は難しいという事になります。
ただ、漢方をしっかり使う事で40歳以上でも自然妊娠したり・卵胞が育たず採卵できない人が採卵できるようになったり、筋腫が多くて着床しにくいい場合も妊娠出来たりなど奇跡とも思える事も経験されていて、その症例についてお話頂きました。

子供はやはり授かりものなのだと思います。
ただ、中医学を学ぶ私たちは基礎理論をしっかり把握してそれにそって使って頂ける事が大事だと感じました。

一概に不妊といっても無月経の場合もあれば生理不順の場合、また生理痛の有無など違いがあります。
また、医療の結果として卵胞数が少ない・胚の分割が悪い・着床障害など状態に応じた中医学的な考え方の違いがあります。
また流産についても中医学のとらえ方があり、胎動不安「堕胎」「小産」、一定の時期に流産してしまうのを「滑胎」といいそれに対する弁証論治があります。

月経周期は陰陽転化の法則にそっていると考え周期に合わせて漢方薬を使っていく方法が効果的と言われています。
陰陽は互いがあって存在し、対立・制約し、陰から陽に陽から陰消長・転化を繰り返すという変化が生命誕生と関係のある月経という営みの中にある事は感慨深い気がします。

月経期・・・瀉陰
行気活血と(補気・疏肝・袪湿・止血)
卵胞期・・・陰長
滋養肝腎と(活血・疏肝・利湿・清熱)
排卵期・・・重陰転陽
活血補腎と補気
高温期・・・陽長
補血温陽と(補気・活血・疏肝・安神・補腎)

高度生殖医療を行う場合の漢方薬の使用する時期や漢方薬の組み合わせの割合など先生の経験からの方法について症例を紹介しながらの講義でした。

中医学では「補腎填精」という言葉があります。充填の填でいっぱいに詰め込むイメージです。
内経に女性は7の倍数で転機がくると書かれていて、以下のようになっています。
7×1 7歳 腎気が盛んになって歯が生え変わり髪ものびてくる。
(人の生長・発育・生殖には腎気がかかわっています)
7×2 14歳 天癸に至り(腎陰・陰精が充足した事)任脈が通じ・太衝の脈が盛んになり月経がはじまる(任脈・太衝脈は月経・妊娠と関係しています)
7×3 21歳 腎気が充満する
7×4 28歳 筋骨もしっかりして髪も美しく身体が一番壮健です。
(筋は肝血・骨は腎精・髪は血の余り(血余)といわれ血と関係が深いので、精血(肝腎)が充実しています)
7×5 35歳 顔がやつれ始めてくる・毛の切れ毛や抜け毛が見られだす(精血が不足してくる)
7×6 42歳 顔がやつれ・髪も白くなりだす(精血が更に不足)
7×7 任脈虚し・太衝の脈も衰え・天癸(腎精)竭き月経がなくなる
女性にとって血は重要です。肌や髪の美しさを保つためにも・・
だから補血薬は欠かせません。
でも40歳をすぎて不妊症の場合、天癸(腎精)についても考え補腎填精の品を使った方が効果が得やすくなると思います。
こういう漢方は動物薬といわれるものが力があるとされていて値段も高いです。
痰湿・瘀血・気滞・その他経絡の流れを悪くするものがあればそれも考慮しなければなりません。
劉伶先生の症例でも婦宝当帰膠をベースに周期にあわせて3~4種類の漢方薬や漢方食品が組み合わされています。
高くて飲み続けることができないなら何にもならなくなってしまいますから、最低限に必要なものを考え相談しながらやっていきましょう。