9月勉強会の話(30周年特別講演)
『中医臨床40年から伝えるもの 中医学は人類の宝物』
中国中医科学院広安門病院客員教授 路京華先生
*中医学の核になる理論 無から有に
陰陽を見据え、天地、自然界の規則性を研究 陰陽は治療に対する根本原理
『陰陽者、天地之道也 万物之綱紀、変化之父母、生殺之本始、神明之府也、治病必求本」
陰陽は天地の道なり、自然の真理であり、病を治そうとするなら陰陽の原理にそって行うというような意味です。
古代哲学による自然界は木・火・土・金・水の五つの要素で構成され相生・相克の関係でバランスが保たれている。
*気は万物の生成する源
気は形はない存在するもの。存在は現れる現象によって知る事ができる。
例えば空気は形がありませんが、高山に登って酸素が薄いと苦しくなります。
だから空気中に私達にとって必要な物質が含まれている事がわかります。
このように目に見えない事でも現象として存在を知る事ができます。
陰陽 形はないが象(現象)でみる事ができる。
陽盛則熱・・・陽が盛んなら熱という現象になる。つまり熱・火という事があれば陽
陰盛則寒・・・陰が盛んなら寒という現象になる。つまり寒・冷という事があれば陰
*「気」があれば即ち「象」がある「象」は皆「気」なり
現象(象)と本質(気・臓)のなんらかの規則がある。
*自然界の万物を五行であらわしている。
人の身体における五臓に五行をあてはめて考察する。
臓象 臓は物質の基礎や本質、象は体表に現れた現象と反応。
*臓腑の命名
中医学では生体外部に現れる生理現象を通じて臓腑の存在や機能を推測し命名したものなので、時に解剖学的名称と
一致しない。人体の生理や病理は象から導き出された理論による。
*証と症
症は1つ1つの症状の事
証は病気の部位・性質・本質・正邪関係・病理関係などの情報から導き出した結果としてある物
例えば「鼻水がでる」というのは1つの症状なので症。
「急に冷え込んできて寒いと思ったら、夕方から鼻水がでだした。」というのは風寒証。
*西洋医学と中医学
中医学 西洋医学
無と有の研究(気と象) 有を研究(細胞・組織・臓器など)
同病異冶・異病同治 同病同治
証をみる(全身の情報を統括) 各臓腑・組織の疾患としてとらえる
自覚症状や徴候を重視 検査結果を重視
未病先防ぐ(予防) 検査値に異常なければ、疾病と認めない
但し 無症状の場合難しい 無症状でも検査値が示す事がある。
*養生と治療
中医学には『未病を治す』という予防医学の概念がある。病気を予防したり、病気がどういう風に
変化していくかを知って先回りして治す。あるいは変化しないようにする。
人間と自然関係を研究する医学です。
中医学の成り立ちは象から臓を知るという事にあるという事がわかりました。
その結果に達する為に人類は自然や人を観察しつづけてきました。
中国4千年といいますが、現代の中医学に至るまでには同じだけ長期に及ぶ道のりがあったのだと思います。
そういう歴史に裏づけされた理論は本当に人類の宝だと感じます。
この理論なしに科学的エビデンスのみで漢方薬を用いれば偉大な歴史からしっぺ返しを食うような気がしてなりません。
真摯に向き合い真摯に学んでいきたいと思います。