平成28年7月 薬剤師会の勉強会
『疼痛疾患の中医診断・治療・病例検討』 中医学講師 高橋楊子先生(舌診の基礎など著書多数)
「真の疼痛治療は対症療法のほかに個々の異常を分析しながら弁証論治による根本治療を施すべきである」という考えにたち疼痛の中医学的捉え方・いろいろある疼痛疾患中で頭痛・腰痛について講義して頂きました。
疼痛を引き起こす原因は外因と内因があり、外邪(風邪・寒邪・湿邪など六淫と言われる邪気に侵入)・精神的ストレス・瘀血など体内に出来てしまった邪気・気機の失調は実証にあたります。実邪により経絡の流れがわるくなって『不通則痛―通じざれば則ち痛む』で痛みがでる。
また、虚証は気血不足・臓腑の虚弱・陰陽失調などの場合経絡が滋養されず通じにくい為『不栄則痛―栄養されなければ則ち痛む』で痛みがでます。痛みは前者の痛みの方が強い痛みになります。
■疼痛に対して、色々な情報を手がかりにします。
・中医学においては痛みの部位は?
・どんな痛みか?(しくしく痛む・酷く痛む・おもだるく痛む?などいろいろ)
・どんな時に痛むのか?あるいは痛みが強くなるのか?
・季節性はあるか? 朝痛むあるいは昼痛むなど痛む時間帯があるか?
・どんな時に痛みが酷くなり、どんな時に軽くなるか?(例えば温めると楽、逆に温めると痛むなど)
・痛みに伴って出る症状があるか?(例えば頭痛と肩の張りとか)
・舌の状態(舌診)
【頭痛】
医学的には機能性頭痛と器質性頭痛に分類します。
■機能性頭痛…偏頭痛・緊張性頭痛・群発頭痛
■器質性頭痛…目の異常(緑内障など)から・耳の異常にから・鼻の異常にから・歯の異常から
■危険度の高い頭痛…頭部外傷性・脳血管障害性・感染症による頭痛(髄膜炎など)
中医学では外感と内傷に分けて考えます。外感は外邪の侵入が原因で内傷はストレスや飲食の不摂生や過労により、五臓の機能低下や気血不足によって引き起こされる痛みの事で、最終的に不通則痛・不栄則痛に至ります。
■外感頭痛
①風寒頭痛…寒冷による誘発、増悪・痛みが強く項背部につながる
②風湿頭痛…熱や暑により誘発・増悪・頭の張痛・熱っぽさを伴う
③風湿頭痛…頭重・戴帽感・雨や湿気で誘発・身体が重だるい・食欲不振・軟便
■内傷頭痛
①肝陽頭痛…頭の両側が張って痛み、精神的な事で誘発、増悪。肝鬱気滞と肝火上炎。
②気血両虚頭痛…慢性的な頭痛(弱い頭痛)・過労により誘発・増悪
③腎虚頭痛…慢性的な弱い(頭が空のような感じがする)頭痛で疲労により誘発・増悪。腎陰虚と腎陽虚と陰陽両虚がある。
④痰濁頭痛…頭重痛・戴帽感・湿気や雨に誘発されめまいや吐き気を伴う事が多い
⑤瘀血頭痛…刺痛・固定痛。ストレスや寒冷により誘発、増悪する。
【慢性腰痛】
慢性腰痛の病因病機 外因と内因がある
■外因…風寒湿による腰痛
風寒湿などの邪気が経絡に侵入し気血の流れが阻滞し、不通則痛で痛みが現れる
時に下肢に痛みや痺れが放散する。
時に腰が重だるく痛む
関節のこわばり・スムーズに屈伸できない・下肢の浮腫みなど
■内因…肝腎脾の虚による腰痛
過労・加齢により肝腎が虚し、精血が不足し筋骨を養う事ができない為 不栄則痛で痛む
過労や飲食の不節制により脾腎が虚し、気血が不足した為 不栄則痛で痛む
腰が鈍く痛む・だるく痛む、・過労や寒冷により痛みが誘発・増悪する・屈伸不利・硬直・足の痺れ・麻痺・筋肉の萎縮・倦怠無力・冷え・めまい・耳鳴りなど伴う
*臨床では虚実挟雑が多くみられる
■症例2例
①気血両虚の頭痛の臨床例
使用した方剤…婦宝当帰膠・冠元顆粒
②腎陽虚の腰痛の臨床例
使用した方剤…独歩顆粒・冠元顆粒・活楽宝