皆様 こんにちは。薬眞堂薬局です。薬眞堂薬局では40年以上の豊富な経験を持つ薬剤師がご相談を伺っております。
中医学漢方では陰陽の調和、気血津液・五臓六腑の円滑な機能の維持によって、恒常性が保たれ健康でいられると考えられています。それが崩れると体調も崩れ病気になる事もあります。
ですから中医学漢方において身体の状態の把握は重要なポイントです。不妊症・更年期障害・生理痛・生理不順など気血精の不足、また気血の巡りの悪い状態の事が多く、それには肝・腎・脾が深く関わります。腰痛・関節痛・坐骨神経痛も肝腎の衰えが元になっている事が多く、アトピー性皮膚炎は脾が関わっている事がよくあります。
このような中医漢方の見方に立ち、確かな弁証論治の力で 自然治癒力を高める身体作りをしていきませんか?
是非お気軽にご相談下さい。
糖尿病と瘀血
糖尿病という病気は消渇と考えられてきました。消渇の消は痩せる、渇は口渇のことをいいます。のどが渇いてよく飲むがすぐ尿となってでてしまうのが特徴です。
消渇証は病気の時期と位置によって上消・中消・下消にわけられています。
上消 初期 肺 多飲
中消 中期 脾胃 多食
下消 後期 腎 多尿
こういった考え方は基本的な概念としてありますが検査の技術が進んだ現代においては糖尿病を中医学的に考えるとどういう病気だろう?とか合併症を防ぐためにはどうしたらいいのだろう?ということが考えられてきました。すると血糖が増える血が交通渋滞をおこしやすいということが重要な問題だと考えるようになってきました。血糖値の高い血液は飲食物から得た水穀の精微が使いきれずに残って『痰や瘀』をなします。『痰瘀』が血脈や経脈の道を塞ぐと身体を養うことができず、さらの「痰瘀」を身体に残すことになります。これが合併症をまねきます。
以前書いたように人の健康に気血津液の正常な流れが不可欠です。血脈の閉塞は西洋医学的には血流障害(もう少し複雑ですが)ということがいえると思います。糖尿病の3大合併症は網膜証、腎症、神経障害です。また糖尿病と併発しやすい病気に心筋梗塞・脳卒中・閉塞性動脈硬化症・高脂血症・感染症・壊疽・・・こういった合併症の一番の原因は痰お阻塞により気血の運行が阻まれた事です。
よくインシュリンをうつことになったら大変とおっしゃる方がいらっしゃいます。血糖値をコントロールできていないことの方が大変なのです。高血糖による痰湿と瘀血が経絡を閉塞することが大変なのです。もし血管がびっくりするほど柔軟で血の滞りがおきなければ、多少血糖値が高くても合併症はおこってきません。
2月3月4月は張中医学講師に『最近の中医学における糖尿病治療』について講義していただいていますが以下のような話がありました。「若年性糖尿病はインシュリンが分泌されないので幼い頃からインシュリンをうってコントロールします。この人は糖尿病という病気があるのみで他は元気で長生きです。しかし生活習慣病として現れた糖尿病は不養生からきている為、高血圧、高脂血、高尿酸血症などをともないやすいのだそうです。つまり飲食の不摂生などにより、血糖値の上昇となって表れる前に痰湿、悪血があったといえます。中医学においては体内の病理副産物の痰・瘀を除く事を考えなくてはなりません」糖尿病においても血糖値と言うことだけに着目するのでなく、痰・瘀を改善して血脈、経脈、絡脈の気血の流れを考えるのも大切だと思います。
糖尿病と瘀血に関する研究が中医学の季刊誌『中医臨床』にのっているので、今週はそれについて書こうと思います。1978年に祝先生という方が『糖尿病が瘀血と言うことに着目して活血化瘀を主とした治療にすぐれた効果がある』ということを言ってから瘀血に対する治療の研究が糖尿病研究の中心になっていったそうです。
では瘀血証の研究とはどんな事をするのでしょう?
①血液レオロジー
②微小循環
③血小板機能
④血管内皮機能
⑤その他分子生物学的観点から
と書かれています。
また糖尿病のおける瘀血の症状を3つに分類しています。
①舌が暗い紫色だったり、黒ずんだところや暗い所があったり、舌の裏側の静脈がふくれていたりする。
②網膜の微小循環に血管瘤ができる、出血するなど
③頭痛や胸の痛み、手足のしびれや麻痺など
私たちがよく知っている 瘀血の3大症状は痛む・しこる・黒ずむですが、上記①②③の症状は「なるほど瘀血だな」ということがわかると思います。中医学で瘀血証とされた人の血液のレオロジー(物質の性質みたいなもの)を調べてみると血液粘度・血漿粘度・血球沈降速度・血管壁の圧力・微小血管の緊張度に異常がみられるそうです。また赤血球や白血球の変形能、赤血球の凝集性、赤血球や血小板の表面電位などに異常がみられるそうです。
こういったことが血流速度を低下させたり、微小血栓を形成したりに関係していると書かれています。一口の瘀血といっても単純に血液サラサラと言う言葉で言いきれない面があることがわかります。血液レオロジーの異常の他に内皮細胞の異常や血小板の活性化について書かれています。
内皮細胞は以下の働きをしているとされています。
1.血管の緊張度
2.血液の流れの調節
3.血液の凝固に関する調整
4.血液が血管の壁に接着するのを調整する
ところが長く高血糖にさらされていると内皮細胞が損傷して働きがうまくいかなくなります。する血液の凝固因子が増大して血栓ができやすい状態になります。これも瘀血です。また私たちが怪我をした時、血がとまるように血小板が活性化し、凝集します。ところが糖尿病の人は血管内で活性化して凝集しやすくなっている・・・という事だそうです。これも瘀血です。
糖に曝らされた状態は瘀血とのつながりが強いため、『活血化瘀』の漢方は不可欠になります。特に経絡の詰まった経閉、絡閉という状態は乾血といわれ、破血、破瘀の働きの中薬も必要になります。水蛭はそう言う状態によく使われる動物薬です。不通則痛で痛みやしびれが出る時には必要です。しかし血脈は宗気という気の推動力で巡っています。それには心の駆血力も必要です。また、血自体がどろどろとした痰湿の状態でもいけません。総合的に判断する必要があります。