皆様 こんにちは。薬眞堂薬局です。薬眞堂薬局では40年以上の豊富な経験を持つ薬剤師がご相談を伺っております。
中医学漢方では陰陽の調和、気血津液・五臓六腑の円滑な機能の維持によって、恒常性が保たれ健康でいられると考えられています。それが崩れると体調も崩れ病気になる事もあります。
ですから中医学漢方において身体の状態の把握は重要なポイントです。不妊症・更年期障害・生理痛・生理不順など気血精の不足、また気血の巡りの悪い状態の事が多く、それには肝・腎・脾が深く関わります。腰痛・関節痛・坐骨神経痛も肝腎の衰えが元になっている事が多く、アトピー性皮膚炎は脾が関わっている事がよくあります。
このような中医漢方の見方に立ち、確かな弁証論治の力で 自然治癒力を高める身体作りをしていきませんか?
是非お気軽にご相談下さい。
花粉の時期になりました
春先、陽気ふつふつと出てきて温かくなり、花も咲きいい季節ですが、花粉症の方にとってはいやな季節ですね。実際は四季の養生に則っとれば、自然の命の芽生えを楽しみ、自分の内側の陽気も大事に育てる・・・という事が大切になります。でも、鼻がぐずぐす、目もチカチカ、むずむずでは体調がすぐれず、「自然なんか感じていられない!」といっても仕方ないとおもいます。中医学で花粉症は風の邪気によるものです。
風の性質はどんなでしょう?風とは?・・・普段はあまり考えないような事ですが、中医では重要です。風は急に巻き起こって、上の方に向かいます。またあっちこっち飛び回り、葉っぱや小枝やいろいろなものを巻き込み、小枝を揺らします。また,風があると洗濯物がよく乾く事からわかるように、湿気をとばします。また陰陽で考えると動は陽、静は陰ですから動の風は陽邪です。ですから上部を犯しやすいといえます。
花粉症は鼻かぜのようなもので、風邪(ふうじゃ)によるものですから、中医学の対応は風邪の時ににています。ふうじゃを発散して外にだしながら、正気(ふうじゃと戦う戦力)が弱らないように滋養する力を高める・・・というやり方を調和営衛といいます。代表は桂枝湯です。この中の代表選手は桂枝と勺薬です。2番手は生姜となつめです。生姜が発散しなつめが戦力アップに働きます。テレビの影響で生姜ばやりですが、是非なつめも一緒に使いましょう。
昨日は女子薬剤師の集まりがあったので8時少し前に耳鼻科の薬局前を通ると、まだ沢山の人が待っていました。ここ2日くらい花粉症が悪化している人が多いようです。西洋医学では、抗アレルギー剤や炎症が酷い時はステロイド剤を使ったりするようです。また、最近では鼻水タイプに小青竜湯 鼻づまりに葛根湯加川キュウ辛夷というように漢方薬を出す所も増えています。しかし、実際アレルギー性鼻炎の漢方薬はこれだけではありません。
また、どちらも麻黄・桂枝で解表(発汗作用)の強いタイプの漢方薬ですから長期服用は問題があるように思えます。発汗は戦って風邪(風邪)を外の追い出す方法ですから、身体の正気鼓舞して戦わせるわけです。つまり身体を戦闘モードにするわけですから、そのような状態がつづけば兵士は疲労してしまうわけです。もともと、アレルギー性鼻炎の人は正気・衛気の不足があるのですから戦闘モードでずっと行く事はお奨めできません。
では、どうしたら?解表の働きが適度で、正気や衛気を補える漢方使いながら、寒気、頭痛などの表証を伴うときは強い解表剤を使うようにするようにします。小青竜湯で鼻水がとまるタイプの人で表証がなければ水気散をお奨めしています。
水気散は苓甘姜味辛夏仁湯ですが茯苓・甘草・乾姜・五味子・細辛・半夏・杏仁。
小青竜湯は甘草・乾姜・五味子・細辛・半夏
+麻黄・桂皮・・・解表
+白芍
また、水気散に利水剤の茯苓が入っている事から脾胃を整えて水の滞りをとる力が強いといえます。水気散の効能効果の1番目が『体力の衰え』となっている事からいっても花粉症のシーズンに小青竜湯が効くタイプの人は水気散を上手に使っていきまよう。
葛根湯加川きゅう辛夷は葛根湯+川きゅう・辛夷です。葛根湯はゾクゾク寒気がして、汗無く、後背がこわばりや節々の痛み・頭痛などの時の風邪薬です。川きゅうは去風止痛の働きがある為、風邪(ふうじゃ)による痛みに効果があり、鼻炎による鼻づまりで前額部が痛むのを治します。辛夷は風寒を散じて、鼻竅を通じ、胃経に入って清陽の気を頭におくって頭痛を治めるとあります。
葛根湯も小青竜湯も風寒の時の漢方薬です。ところがアレルギー性鼻炎は風寒とはかぎりません。鼻がつまるって鼻や顔が熱っぽい感じとか、鼻の中が乾いて痛いとか、咽がはれて痛いとか どちらかというと熱っぽさ(熱証)を訴える方も多くいらっしゃいます。その場合は風熱に使う漢方薬に通鼻竅の働きの鼻淵丸を加えて使います。
鼻淵丸とはどういう漢方薬でしょう?今日は鼻淵丸(ビエンガン)についてです。鼻淵って何?鼻炎じゃないの?・・・と思うかもしれません。鼻淵を中医学の辞書でみると
『外感の風寒、胆経の熱の影響が脳に及ぶ事によっておこる』
『脳漏ともいう』
『主たる症状は鼻詰まりで、臭い濁った鼻汁で、人によって鼻柱にむずがゆさをかんじる』
意味は外界から風寒の邪気を受け、胆経の熱が頭に昇って鼻の症状がでるのが鼻淵だと言う事をいっているわけです。今風にいえば、アレルギー性による肥厚性鼻炎という感じです。前額部の痛みをともなったり、膿性の鼻汁が出たりするので、脳漏などと言ったのかもしれません。
さて鼻淵丸ですがこんな処方構成になっています。
蒼耳子・辛夷・・・去風・通鼻竅(風邪を散らして、鼻の通りをよくする)
金銀花・・・清熱解毒(熱を清して、解毒する) この場合の毒は菌とかです
菊花・・・疏散風熱・明目(風熱の邪を散らして、目をよくする)
茜草・・・涼血活血(血の熱をさまして、血の巡りをよくする)
蒼耳子は耳新しい名前かも知れませんがオナモミの実です。秋に草むらでトゲトゲした実がくっついてきた経験のある人も多いとおもいます。これは鼻症状のほかに関節痛や痒い皮膚炎にも使います。
玉屏風散は『玉の屏風で風を防ぐ』という名の通り風邪を防御できる身体にするという漢方薬です。花粉症やアレルギー性鼻炎は風邪(ふうじゃ)によるという事は書きましたが、玉屏風散を日頃から服用しておくと、症状が酷くでなくなってきたり、でなかったりするようになります。もちろん風邪ひきやすい人にもいい漢方薬です。また、リウマチや関節痛などふうじゃによって悪化する病気の人の体質改善にもつかえます。
また、風水とは急激な浮腫、関節の痛み、悪風、発熱など急性腎炎のような症状をおこす事をいいますが、風邪(ふうじゃ)の侵入によって肺の水を動かす働き(肺の宣発・粛降、肺は水道を通調するなどといいまう)が失調しておこります。これもまた風邪(ふうじゃ)が関係しています。衛益顆粒は玉屏風散製剤です。効能には虚弱体質の改善と書いてありますが、特に風邪(ふうじゃ)の侵入にたいして防御力の弱い人に的しています。症状押さえはもぐらたたきのようになりがちです、やはり長い目でみると衛益顆粒で体質を改善するのは意義のある事だと思います。