皆様 こんにちは。薬眞堂薬局です。薬眞堂薬局では40年以上の豊富な経験を持つ薬剤師がご相談を伺っております。
中医学漢方では陰陽の調和、気血津液・五臓六腑の円滑な機能の維持によって、恒常性が保たれ健康でいられると考えられています。それが崩れると体調も崩れ病気になる事もあります。
ですから中医学漢方において身体の状態の把握は重要なポイントです。不妊症・更年期障害・生理痛・生理不順など気血精の不足、また気血の巡りの悪い状態の事が多く、それには肝・腎・脾が深く関わります。腰痛・関節痛・坐骨神経痛も肝腎の衰えが元になっている事が多く、アトピー性皮膚炎は脾が関わっている事がよくあります。
このような中医漢方の見方に立ち、確かな弁証論治の力で 自然治癒力を高める身体作りをしていきませんか?
是非お気軽にご相談下さい。
平成30年9月 勉強会
平成30年9月16日 中医学勉強会
『中薬学と方剤学』 武藤 勝俊先生
武藤先生はまだ中医学が今のように浸透していない時代に中国留学にして北京中医薬大学を卒業なさっています。
30年少し前、漢方は大塚敬節や森道伯など日本の漢方家の本で学んでいたものの中医学に関しては学び始めでしたので、武藤先生に中医学の基礎理論を教えていただきました。
今回は中医学の基礎に戻って中薬学・方剤学をみてみましょうという事でした。
中薬について
薬学部では薬効のある動植物は生薬といい薬用部分や成分など学ぶのは生薬学といいます。
中医学では効能のある動植物を中薬といいます。
生薬学とは全く異なる形式で分類されています。この中薬はどういう状況の時にどういう使い方をするのかという事が分類の基本になっているように思います。
中薬学の基本になっている書物はいろいろありますが、最古の薬学専門書は『神農本草経』です。
中薬を上品・中品・下品に分けています
上品…命を養う薬。長期に服用しても害がなく、抵抗力や治癒力を高める。
中品…養生を目的にした薬。病気予防・体力増強に用いる。
下品…病気を治す薬。薬効が強いが毒性も高いので長期に服用するには注意が必要。
*『命を養う力のあるものを上品とする』この事は予防していく事に重きを置いていた事がわかります。私たちは時々病の方ばかり見ていて、命の事を振り返らない事があるように感じます。
医者についての記述もあります。
上医は未だ病まざる者の病を治し
中医は病まんとする者の病を治し
下医はすでに病みたる者の病を治す。
*この理屈から言えば西洋医学の医師は下医という事になりそうです。現代社会においては病院や医院は病気になったら行くところなので仕方ないと思います。
病になってしまえば、治療は大変になってしまいます。抗生物質などもない時代には病にならない事が一番大切だったのだと思います。
それでも副作用の大きい下薬を服用しない為にも、自分の体質や状態に留意して体質を強化しておくことや、病気の芽を摘んでおく事が大切です。
体質を知る手立ては中医学には沢山あります。
中薬学では産地や採集時期など規定されています。
*これは生薬学も同じです。たとえばドクダミは花期全草とかで、一番薬効のある時期です。
また、植物の種や球根を持って行って別の土地に植えても同じ薬効が得られない事も多くみられます。
炮製
毒性や刺激性の軽減や除去・薬性の改変や効果の増強・貯蔵や保存の便宜性などの為に行う様々な作業。
例えば附子は猛毒のトリカブトの根ですが、熱や塩や圧力などで毒性を減弱したものです。
*そういえば石川県でふぐの卵巣を何年か塩蔵したのちまた時間をかけて粕漬けにして無毒化して食べる珍味があるそうです。
寒・熱・温・涼に分けたり、味を示したりしています、味は薬性と関係しているからです。
例えば当帰は甘・辛・苦・温と記されています。
この表示だけでも当帰は補益性があり、穏やかで、気血を巡らし、冷えをとり便通などもよくなるという事を示唆しています。
また、昇・降・浮・沈の性質がしめされています。
帰経(中薬が作用する経絡や臓腑)・毒性・配合・禁忌(配合・妊娠・飲食物)・用法用量などとても細かく記載されています。
分類
中薬学では効能によって薬物を分類しています。
解表薬・清熱薬・瀉下剤・芳香化湿剤など19項目に分類されています。
しかし動植物ですから効能は1つではありません。
たとえば晶三仙に入っている山査子は消道薬に分類されていますが破気化瘀の働きがあるので産後の瘀阻に使われると書いてあります。
方剤学について
治療の方法や方剤の効能やその処方の意味について書かれているのが方剤学です。
*つまり漢方薬には処方があります。その内容が方剤学には書いてあります。
たとえば、よく知られている葛根湯は麻黄・桂枝・芍薬・大棗・生姜・甘草・葛根が処方内容です。
葛根湯は解表剤に分類されます。解表は汗を出して風邪(ふうじゃ)を除く事です。
解表剤は更に1、辛温解表 2、辛涼解表 3、扶正解表に分類されています。
感冒にかかった場合、体質や症状の出方によって使う漢方薬が違うので分類しています。
冷えや寒気が強いのなどの場合は風の邪気だけでなく寒の邪気も入っているので、体を温めて発汗する方法辛温解表という方法を用い辛温解表剤の中から適したものを選ぶ事になります。
また、風の邪気と熱の邪気が入った場合は、熱を温めると熱は更に過熱されるので、こんどは涼しくさせながら発汗する辛涼解表という方法で治療します。その場合は辛涼解表剤の中から適した方剤を選びます。
また、体質が虚弱で正気の虚があるときは発汗により体力を更に低下してはいけないので正気を扶助しながら発汗する扶正解表という方法で治療します。その場合に使うのが扶正解表剤に分類される方剤です。
ただ 解表剤の所に分類されていなくても解表できる方剤もあります。
勝湿顆粒は芳香化湿剤に分類されていますが、効能は解表化湿・理気和中ですから解表の働きをもっています。
方剤の処方だけでは足りない場合の加減について書いてあります。
*加える事によって働きとして足りなかったり、または働きを強化するために中薬をくわえたり、あるいは方剤ごと加えたりします。
板藍茶や五行草茶やサージその他漢方食品としてでているものは加える為に出ているといっても言い過ぎではないと思います。
もちろん単味でも働きがあるのですが、相乗効果が期待できると思います。