「数日前に食べ過ぎてからどうも胃腸の調子が悪くて・・・」
「それは食積だよ。」
食べ過ぎという行為によって脾胃の働きに支障をきたした状態で傷食といったりもします。脾の運化が失調したため滞りがあります。他に宿食ともいいますが宿便も宿食のうちだと思います。この状態は過食・偏食によっておこる時と脾胃が虚弱なためおこる時と2通りあります。このとき消導薬を配合します。消導とは消積導滞ともいい、飲食による積滞を消したり、導いて体外に出すと言う意味だと思います。消導薬はいわゆる消化薬のようなものですが、単なる消化剤とはちがってもっと意味が深いものです。
食積につかう代表選手は『保和丸』です。山楂子・神麹・半夏・茯苓・陳皮・連翹・莱服子で構成されています。このう山楂子・神麹・莱服子は消導薬です。陳皮と半夏は行気化滞・和胃止嘔(胃腸の気をめぐらして滞を動かし、吐き気をなくして胃を和ます。)茯苓は健脾利湿(胃腸の働きを健やかにして、不用な水を代謝させる)連翹は清熱散結(滞りによって発生した熱をさます。)保和丸は残念ながら日本にありませんが応用はできます。
●勝湿顆粒+晶三仙+五行草茶
●二陳湯+晶三仙+五行草茶
●六君子湯+晶三仙+五行草茶
お腹の張りが強い時はさらに大甘丸を加えます。
*連翹や五行草茶を入れる理由について私なりの考えを書きたいと思います。
連翹・五行草茶(中薬名は馬歯けんです。)は清熱解毒薬に分類されます。清熱解毒薬とは化膿性・炎症性疾患に用いて効果があるものです。腸の中に飲食物が停滞していると腸の中の常在菌が
ごちそうがいっぱい!仲間をふやすぞー
・・・という結果に・・・
そのため腐臭のあるゲップが出たり、卵のきみが腐ったような臭いおならや便が出たりします。だから連翹や五行草茶を加える必要があります。
4月の勉強会で、中医学講師の何先生が皮膚病の話の際五行草茶についてこんな話をしていました。
何先生
「東洋人は欧米人に比べると牛乳など動物性タンパクの分解能力が弱い。そのため腸管内に残った糟が毒になって皮膚病を悪化させている。五行草には、その毒になったものを消す働きがあります。」
五行草は昔は赤痢につかわれた薬草です。抗生剤はその薬に感受性のある菌を全部殺したり、抑え込んだりしますが、漢方の抗菌の働きはちがうみたいです。身体が身体にとって悪い菌をやっつけれる状態にするものという感じがします。
漢方の清熱解毒は身体におだやか
中薬学の中にのっている消導薬は山ざ子・神麹・莱服子・麦芽・穀芽・鶏内金の6つです。どれもこれって食品じゃないの?というようなものばかり。
晶三仙は山楂子・神麹・麦芽でできています。こんなもので消化が助けられたらラッキーと思いませんか?
家中のの者が大好きな漢方の養生食品の1つです。
おいしくて食べ過ぎた・・・食後に1~2袋
ダイエットしなくちゃ(中性脂肪が多い時も)・・・食前に2袋
もたれてきちゃった・・・その場で1袋
チョコや揚げ物とか食べるとにきびが…食べた時に1~2袋
にきびが出来ちゃった・・・五行草茶も加えて
補腎・補血のものを服用する時・・・効き目アップの為 半分~1袋
その他いろいろ食積がからんでいると思った時は必ず使います。
山楂子は甘酸っぱい木の実でお菓子にもつかわれます。肉食油膩の積に適しています。消食の他に破気化おの働きがあり、お血による生理痛などにもつかわれます。
神麹は小麦や麩や小豆や薬草の汁などを混和して発酵させたものです。つまり酵素食品です。酒食陳腐の積に適しています。「晶三仙は二日酔いに効きますね」といわれたことがありますが、この為だと思います。
麦芽は米・麺・芋などの消化に適します。また、消食だけでなく脾胃の働きを良くします。他に舒肝(肝をのびのびさせる)働きがあり、生理前に乳房が張って痛むのを改善します。断乳にも用いられますが、そのときは大量に使います。
晶三仙みたいな簡単なもので解決するから食積なんてどうってことないわ。などと言ってはいられません。食積は脾胃を損傷するからです。また、食積によりが脾の運化失調が長引いて、湿がこもり熱を生じます。食積と湿熱が胃腸の気機を阻滞するとお腹は張って痛み、便秘や下痢になります。下痢は臭く、下痢した後もスッキリせずお腹が痛みます。この時使う漢方薬の代表選手は枳実導滞丸です。熱をとりながら積を排泄する方法で、脾胃の保護も方中に考えられています。
自分の脾胃の力を知って食するのが1番です。
でも、ついつい!
そのときは食積にしないうちに晶三仙を利用しましょう!!
2006年5月ブログ暮らしの中の中医学より
昨日は母の命日で父と妹とお墓参りをし、実家に行ってきました。「ちょっと見てごらん」と父がいうのでパソコンを覗いて見ると『補中益気湯』の文字が・・・父は『剣豪武勇伝』という題名で塚原卜伝の生涯を書いていて七巻めにとりかかった所です。卜伝の妻は生まれつき身体が虚弱で結婚後まもなく亡くなってしまったそうですが、そこは当時の名医にみてもらうシーンでした。たしか脾気虚弱とのみたてで補中益気湯が処方されていました。現在、補中益気丸(補中益気湯)をつかってる方は卜伝の妻と同じですね。
補中益気湯は脾胃の働きが虚弱な時に使う漢方薬です。また、気虚下陥、気の力が弱い為にとどめておく力が弱い時につかいます。(例えば胃下垂、脱肛、慢性の下痢など)また、気虚発熱と脾胃気衰により虚火が内生して発熱し、身体が疲れると重くなる熱に使います.主薬は黄耆で、本来は大量に用いるとなっています。
虚弱体質といっても必ず脾胃気虚とは限りません。生まれつき虚弱ということは『先天の本』である腎が弱い事が多いと思います。しかし補中益気湯などの健脾薬を使うのは、『後天の本』『気血生化の源』の脾を補い後天的に腎精を補充していくということになります。
今話題の『チャングム』の本を読みましたが、虚弱なお妃様にチャングムは紫河車を使いました。紫河車は人の胎盤で、補腎益精(腎を補い、精がつく)ものです。さらに気を益し、血を補い、肺を丈夫にする優れものです。チャングムは国中から元気な男の子を産んだ人の胎盤を集めました。
中医学で慢性の衰弱を状態にあることを『虚労』といいます。虚労の原因は先天(生まれつき)の他に後天(栄養状態など)病気・環境・医薬品の副作用など多種の原因によります。ですから、虚労=虚弱体質ではないですが虚労の範疇にはいるということだと思います。生まれつき弱いというとやはり『腎精不足』ということになります。腎中の精気の盛衰は人の生長・発育・生殖に大きくかかわっています。
腎はこれから芽が出て大きく育つ力(腎精)の詰まった種のようなものです。腎精は先天の精といわれ脾からつくられた水穀の精微(後天の精)によって補充されています。そこで脾の虚弱は腎精の不足につながるのです。虚弱体質なら子供の頃から漢方薬を服用する方がいいと思います。食が細ければ必ず健脾しなければなりません。腎虚があれば補腎します。腎気の充足度を曲泉で現すと男は28歳女は32歳が頂点としそこから下りはじめます。この曲泉から考えると子供は上向きとなっている為補腎薬は少なめでも充分効果を出すことができることになります。後天の本の脾を中心とし、先天の本の腎を少し補うのは理にかなった方法だと思います。
今日から六月なのでブログもユリの花が美しいテンプレートに衣替えしました。百合の季語は夏。漢方薬としては球根をつかいます。百合根といって食されます。肺を潤し咳を止め、心の熱をさまし気持ちをを安らかにします。
虚弱体質の子供の体質改善には何がいいでしょう。脾を補うのに補中益気丸・参苓白朮散・小建中湯・焦三仙などをつかいます。腎を補うには八仙丸・杞菊地黄丸六味丸など 脾が弱く神経質な子には小建中湯や抑肝散などがいいです。また、衛気不足には衛益顆粒も必要です。
腎が弱いなら、子供のうちにもっと力のある補腎薬(海馬補腎丸とか双料参茸丸とか)をつかったほうが効果があるんじゃないの?
一般に子供にはそういう動物性のものはあまりつかわないようです。やはり腎気の充実曲泉が上り坂になってる為だと思います。しかし、以前、中医薬研究会の症例の中に子供に海馬補腎丸を使ったものがありました。大泉門が閉じない子供に対して“腎は骨を主り、髄を生む”という理論の基につかった症例です。虚弱な体質または虚弱といえないまでも喘息があったりアトピーがあったり、お腹が弱かったりしたら子供のうちに補!です。
2006年5月ブログ暮らしの中の中医学より
中医学で心が元気でない状態の1つは「鬱証(うつしょう)」です。うつ病も鬱証に入る面もありますが、うつ病とまではいかない部分も入ります。ストレスにより気が鬱滞しているのが鬱証です。つまり身体の気機の鬱滞です。スムーズに巡れず、動けず、滞って、鬱積している状態のことです。症状としては憂うつ・気持ちが不安定でおちつかない、不安感・怒ったり泣いたりし易くなる・睡眠異常など心の症状の他、咽に異物が詰った感じや胸の脇の部分を中心として張るような痛みがでたりします。
鬱証を考えるのに重要なのは「肝」「脾」「心」です。しかし「肺」や「腎」を全く問題にしなくていいかというと、そうではないと思います。肺は「一身の気を主る」といい「生命活動の原動力である元気の源は腎から発せられる」「久病は腎に及ぶ」などの理論があります。ストレスにより心がダメージをうけることにより身体の気機が鬱滞する『鬱証』の対処の仕方は気機疏通する事(通じさせ動かし巡らす事)です。早いうちに気機の疏通をはかることで、病気にならずにすんだり酷くならずにすんだりします。
また、虚と実を把握して実証は舒肝理気(肝をのびやかにして、気をめぐらす)ことを中心に行い、虚証は補益気血などを中心にして身体の力不足をたすけることを中心におこないます。この事をみるだけでも中医学って親切だと思いませんか?身体のゆがみや不足の補正術が中医学です。
中医学で実証は3タイプあります。難しい言葉ですが肝気鬱結・気鬱化火・気滞痰鬱です。簡単にいうと
1、イライラ・憂うつ・溜息タイプ
2、上の症状+落ち着きがなく怒りっぽい・口が乾く・口が苦い・目が赤いなど火なあるタイプ
3、咽の詰まり感・息苦しいような胸苦しいような感じがするタイプ
教科書では1は柴胡疏肝散加減2は丹梔逍遙散合左金丸加減3は半夏厚朴湯加減となっています。加減となってのは体質に合わせて調整する為です。例えば食滞を伴えば晶三仙のような消食化滞するものを加え、血滞があれば活血化おのものを加えます。化火「火に化す」ということを考えてみましょう。
火の性質を思えばなるほど とうなずけます。
火は上に燃え上がり、火の色は赤で、色々なものを焼き、其の熱は周囲をかわかします。
カッとしやすい・怒りっぽい・口の乾き・目赤・舌紅・耳鳴り・のぼせなど火がある印です。
虚証も3タイプです。
1、憂鬱傷脾
2、心脾両虚
3、陰虚火旺
どのタイプも血の不足により心が養われないことが原因となっています。つまり、身体の消耗が原因ということです。
1はうつろで、不安定で、嘆き悲しみ時々欠伸が出るタイプ
2は思い悩むことからおき、ちょっとした事でドキドキしたり、眠りが浅い、物忘れで食欲不振など胃腸症状も伴うタイプ
3は陰血不足の為虚陽が浮上するので動悸、寝つけない、落着かず怒りっぽい、口が乾く、ほてりなど火の症状が伴うタイプ
日本人がそうなのか私の周りを見ると2タイプが多いと思います。根が真面目で物事に対し真剣に考え取り組む反面、壁にぶつかると考えすぎ思いすぎで心脾を消耗してしまいます。その為、気持ちが鬱傾向になる、眠りが浅い、逆に昼眠い、だるくてやる気がでないなどの状態になります。
実は肝が中心・虚は心や脾が中心になっているようです。肝は感情・心はこころと考えるとわかりやすいと思います。ストレスや過度な緊張により感情面が鬱積したりイライラしたりします。また、くよくよ考えることはこころに悪影響を及ぼします。肝と心の失調は実際にはが同時に見られることも多いと思います。
精神的な安定と血は深いつながりがあります。「心は神を蔵す」の神は精神・意識・思推活動をさし、「肝は魂を蔵する」の魂は神の変じたものです。肝血が不足するなら魂が、心血が不足するなら神がよりどころを失うとされます。「女性は血が不足し易く、気は余りやすい」といわれます。無理なダイエットや偏食、過労、産後の不養生、流産などによる血虚から精神面に支障をきたしやすいので注意が必要です。
中医学の治療は病態に応じて複雑です。鬱滞し巡らないものをどうやって解きほぐすかを考えなくてはいけないでしょう。大きな力がいるか?小さな力で大丈夫か?鬱滞の強さもそれぞれです。また、こころや感情の場である肝や心はどのくらい弱っているのか?肝に抑え込まれた脾は?弱った母の心に養ってもらえない脾は?事態を把握するのに名探偵が必要です。また、直接鬱滞を動かす努力もしてみるのも大切。
太極拳や気功・瞑想して気の流れを感じるようにしたり・深呼吸・大きな声で歌う・運動で血を巡らし、汗をかいて湿を発散するなどいろいろ工夫もできます。重症化するとそういったことをする気にもなれなくなります。そのときは無理せず、漢方薬を飲んでゆっくり時期を待ちましょう。
私自身も鬱になってるのに気が付くことがあります。エー!なんて言わないで下さい。わたしもデリケートな女性なんですから・・・
なんだか気がそわそわして落着かないときは逍遥丸を
午前中からだるく調子が出ない時も逍遥丸を
やる気が出ないし頭が働かないときは香ロゼアを
だるさがひどいときは香西洋参を加えます。
なんだか悲しい気分になる時は心脾顆粒を
いつもは5分以内寝入ってしまうのに長引く時や、夢が多くて眠りが浅い時も心脾顆粒を数日つかいます。
*こころは弱りきってしまうと時間がすごーーーくかかるので早めに対処するようにしています。
2006年5月ブログ暮らしの中の中医学より