気候は地域により違いがありますが、その気候に応じた養生が大切です。日本には四季があります。中医学でいうと五季ということになります。
春 夏 長夏 秋 冬
当たり前のようですが、夏は暑く、冬は寒いものです。季節に応じた気候を主気といいます。季節らしくない気候を客気といい、体調を崩し易く注意が必要です。この冬は西高東低の気圧配置にならずに温かく雨も多く、爆弾低気圧なるものが2度も襲来しました。ですから風邪も単なる風熱型、風寒型に分類できず、湿邪が絡んで複雑で長引き易いのが特徴のようです。
湿邪が伴うとはどう言う事でしょう?風邪症状にどんな症状が加わるのでしょう?①陰邪②重濁③粘膩④下降という性質によって症状が現れます。
①湿は陰邪で気機を阻害し脾胃の陽気を阻害しやすい
陰邪で脾の陽気を損傷しやすい
・・・つまり脾のエネルギー不足によって水の運化機能(水液代謝や栄養の吸収など)が弱まります。
其の為出てくる症状は下痢っぽい・尿量がへる・浮腫み 等です。
②重濁・・・これは『重い』と『濁る・・・汚い』ということです。
重い・・・身体が重い・手足が重だるい・頭が重い・頭が締め付けられている感じ
濁る・・・下痢・尿が濁る・目やに・ジュクジュク型の湿疹・膿を持つような出来物など
③粘膩・・・ねっとり粘ってしつこいこと
停滞しやすく排泄や分泌がスムースにいかない。
病気が長引く傾向にある。
気機の阻滞が引き起こされると不安・落着かない・寝つきが悪いなどの神経症状がでることもあります。
④下降・・・これは下の方に症状がでやすいという事
下痢・浮腫み・帯下など
風寒型感冒(ゾクゾク寒気の風邪)+湿邪の時は
葛根湯(無汗)+勝湿顆粒
桂枝湯(有汗)+勝湿顆粒
など工夫が必要です。
中医内科学で風寒型の感冒に荊防排毒散を使うようになっていますが、風寒湿証に使える方剤です。
主薬の羌活と独活が一身上の風寒湿邪をのぞきます。
身体は気候の影響を受けています。「この冬の風邪はしつこい」とか「なかなか治らない」とか聞きますが粘膩でしつこい湿邪の影響の時も多いと思います。また脾胃が弱いタイプや飲食の不摂生や疲労で脾胃を傷めてるタイプもまた運化が弱っている為湿の影響が出易いといえます。私達は大自然の一員です。自然の中の身体です。自然の法則に従って身体を考え調整していきましょう。
風邪はふうじゃです。まず風邪を追い払うことを考えましょう。身体に侵入した敵は風寒?風熱?風湿?風燥?それとも複数の邪気が? 敵を知り戦い方を決めましょう。
2007年1月ブログ暮らしの中の中医学より
アトピーでお困りの方も多いと思います。私の子供の頃は周りにアトピー性皮膚炎の人はいなかったと思います。アレルギー体質の人が増えているように見えます。昔と今と何がちがうのでしょう?よく言われていることかもしれないけど新ためて考えてみましょう。
①食事をはじめとする食べ物の質・量(脾は大丈夫?)
②寝不足など生活のリズムの不摂生(五臓のバランス・瘀血)
③外的ストレス
テレビ・音など目や耳(肝・腎)はつかれていませんか?
身体を動かしてストレスを発散できていますか?
④冷房や暖房で快適生活ですが、環境に適応する力が弱っていませんか?(衛気虚)
15年くらい前(1990年頃)ですが、中医師の方が中国にはアトピー性皮膚炎やアレルギー性鼻炎など、あまりないという事を言っていました。・・・現在はちがっていますが・・・
以前は食用油は配給で貴重品だったそうで、食卓には野菜など、茹でたものが多かったのだとか。また、日本に来て、冷蔵庫から出した冷えた牛乳などをのんでいたらアレルギー性鼻炎がでてきたとも話していました。この事から脾とアレルギーは関係が深そうだと言う事が想像できます。脾は後天で円滑な働きで腎の先天を補助します。
アトピーの方の皮膚はカサカサしています。皮膚の表面の皮脂膜がなく表皮は荒れています。また炎症をくりかえす事によって厚くなっていることもあります。「皮膚科でアトピーと診断されました。」といっても症状はいろいろです。紅くなる・ブツブツが出きる・ジュクジュクする・白く粉が吹いた様になる・カサカサが落ちる・・・軽いタイプから全身症状のある重いタイプもであります。体質を改善するには五臓の状態を把握する必要があります。これは殆ど虚を補うという作業です。
しかし炎症は火と考えるので 瀉火や清熱利湿など、症状も抑えていく方法も必要です。症状に対応(標治)と体質に対応(本治)・両方大切です。
アトピー性皮膚炎の我慢できない症状に痒みがあります。痛みよりつらいと言われる痒みですが、中医漢方では風・熱・湿によると考えます。『熱にあえば則痒く、寒にあえば則痛し』と書物にあります。しかし、寒冷蕁麻疹のように寒いとなるものもありますが痒みは熱によるものに比べると軽いです。臨床的には血熱・血虚燥風・風熱・熱毒・風湿熱毒などの場合があります。また患部の赤みは熱を現す色です。鮮やかな紅なら熱が血分に及んでいる血熱と考えます。熱(火)といってもいろいろで風熱・血熱・毒熱・湿熱・虚熱・燥熱などです。
また、アトピー性皮膚炎の場合、1つでなく湿熱+血熱+熱毒というように組み合わさっている事の方が多いようです。単純ではない上に火の勢いが強ければこちらもそれなりの力で対抗しなくてはなりません。『焼け石に水』ではなんにもならなくなってしまいます。つまり2種類、3種類と使い、冷ますタイプの漢方茶も使って総動員で火を抑えなくては治まってきません。
この考えは風邪の漢方で風熱の邪気に対抗する時と同じ理屈です。小さい火はコップの水で消せるかもしれませんが、大火は大量の水が必要でしょう。
アトピーは子供の頃からだったり、酷くはなかったけど皮膚が弱かったり、気管支が弱かったりすることが多いと思います。これは脾・肺・腎の弱さと関係があります。悪化の引き金になるのは思春期・受験・就職などホルモンのバランス・ストレスなどあると思います。同時に食生活(質・量・リズム)や生活全般のリズム(睡眠時間など)も違ってきている事も多いとおもいます。これは肝気横逆といってストレスによって肝が病的な状態になり弱い所を攻撃するという現象とも関りがあります。
中医学でアトピー性皮膚炎は銀屑病または牛皮癬にあたるようです。中医皮膚科の老中医・張志礼先生の本に次のように書かれています。銀屑病は紅斑鱗屑性皮膚病がよくみられ、経過が緩慢で、再発を繰り返す傾向がある。血熱が主要な病気の根源です。血熱の形成には幾つかの原因があり七情内傷・飲食不節・風熱毒邪を受けた為など ということは清熱涼血薬は必要不可欠ということになります。
いつも書いていますが、人の身体の営みや病気に対して漢方的な考え方があります。この考えに沿って運用する事が身体を変えるということにつながります。病気の位置を表すのに表裏ということがあります。傷寒論と言う書物中にみられる分類では病邪の位置が太陽・陽明・少陽・太陰・少陰・厥陰の6段階になっています。また温病において病気の段階が衛分・気分・営分・血分に分類されています。血分は病邪の位置は深く血分に入り込んだ状態で重傷です。血熱は熱が血分に及んでいるという事で、その熱は深い所にある事になります。
血熱を主とした炎症性の症状とカサカサした滋潤力のない症状を改善していくには長い時間が必要です。特に補腎・健脾・養肝・補肺などの本治はじっくり取り組む事が大切です。また、養生は重要で、身体を変化させようと考えているわけですからこれまでと同じで良いわけはありません。
食事の質と量(ご馳走という意味ではありません。新鮮なもの・栄養バランスのとれたものの事です。量は腹八分です。)食事はゆっくり時間をかけてよく噛んで食べましょう。身体に取り入れた自然の恵みが全部血になり気(エネルギー)になり心と身体が充実するのだという気持ちでいただきましょう。生活リズムを整え、特に早寝を心がけ陰の極まった夜中は寝てるようにしましょう。心も身体も自分の持ち物です。大事にする気持ちを持つ事が養生です。
2007年1月ブログ暮らしの中の中医学より
冬といえば 寒い・木枯らし・霜・雪 だから食べ物は鍋料理など温かいものが食べたくなります。冬は蔵の季節で、腎の季です。だから冬は温かくして、腎を補いなるべく消耗しないようにすごす事が自然にあった養生法です。この季節に養血・滋陰の物をしっかり摂っておきましょう。寒いと「凍える」「凍る」など固まってしまいます。血の巡りも悪くなり瘀血になりやすくなります。
寒さで瘀血になるのを寒凝血瘀といいます。顔色がくすんだり、手や足が紫っぽくなったり・・・ 特に血虚・気虚・陽虚の人はつらい季節です。温めて血行をよくしておきましょう。冬は閉蔵の季節で、人は陽を乱してはいけない。冬に適応し蔵を養うという道理に反すれば、腎を損傷し、春の生気に適応できない。内経という書物にそういう意味の事がかかれています。冬は貯える季節ですから、勉強したり、構想を練ったり、エネルギーを貯えたりして活動的な春に備える等にむいていると言う事です。
冬と関りの深い腎とはなんでしょう?
*腎は精を蔵し、成長・発育・生殖を主る
*腎は骨を主り、髄を生じ、髄海に通じる
*腎は納気を主る
*腎は水液を主る
*腎は上は耳に開竅し、下は二陰に開竅し,その華は髪にある
腎は精を貯蔵しています。腎精は腎陰ともいいます。腎陰が減れば腎陽も減ります。腎陽は生命エネルギーです。
体温を保つ力です。冷えてエネルギーが落ち込んでいる人に散寒剤を使って温める事は大切です。しかし、精(陰)を補う事も重要です。陰は陽を生む源です。(陰と陽は行き過ぎないように制約し合う関係でもありますが)物質が無ければエネルギーは生じません。腎精は薪で、腎陽は火です。薪がなくなれば火も終わりです。腎を補う補腎薬はいろいろありますがそれぞれ特徴があります。補腎薬は六味丸プラスという形の方剤が多いです。
よく知られている
八味丸は六味丸+附子と肉桂
肝腎不足につかわれる
杞菊地黄丸は六味丸+枸杞子と菊花
肺腎不足につかわれる
八仙丸は六味丸+麦門冬と五味子
陰虚火旺につかわれる
瀉火補腎丸は六味丸と知母と黄柏
などがあります。また益精血の働きが強いものに双料参茸丸・参茸補血丸があります。
最近 参馬補腎丸がでましたが、脾を元気にして精を補えるので補気補腎に対し力がある方剤だと思います。その他、下肢が冷えて腰や関節が痛んだりする時は補腎薬の入った独歩丸が使われます。心腎陰虚で動悸や不眠などの時は天王補心丹。ハーブティーではシベリア人参茶や香ロゼアなど補腎の働きがあります。冬は閉蔵の季節・腎の季節です。寒気から身をまもり、腎精を補い、源を同じくする肝血を養うと元気に春が迎えられます。
また、日本の冬は寒いばかりでなく乾燥も特徴です。燥邪は肺を犯しやすいので注意しましょう。風邪をひき易い人は肺衛が不足していますので衛益顆粒で衛気を強化しましょう。出かける前に飲む・帰ったら飲むの板藍茶も風邪予防に役立てましょう。肌の乾燥が酷い人は沙棘からしぼったオイルの紅沙棘がお薦めです。胡桃、黒豆、昆布などの腎を養う食べ物や白菜、大根、葱、百合根など肺を養える食べ物を積極的にとりましょう。
2006年12月ブログ暮らしの中の中医学より