病気と漢方

2007-03-01

パンダ① 「なんだか憂鬱な気分」というのは誰でもあることです。でも・・・「2週間以上憂鬱で、なんにも楽しくない」・・・これはうつ病かもしれません。というのが『うつ病』の基準です。うつ病の人は脳の中のセロトニンやノルアドレナリンなどの神経伝達物質が不足していることがわかっています。西洋医学の場合、脳という部分に対して治療がなされます。

 中医学ではどうでしょう。中医学では身体全体を考えます。漢方(中医学)でうつ病を考える時、病気に至った原因を考えます。また性格、生活環境、食事なども関係しています。もともと七情内傷といって感情が身体をきずつけるという理論があり、心と身体は密接な関係があるとされています。精神的ストレスの他、過労や出産など身体にかかる負荷がひきがねになる事も多く見られます。また更年期、過剰なダイエットなどによるホルモンの乱れが心(こころ)に影響する事もよくあります。

 漢方でとらえるのはこころや気の巡りです。それをとりまく五臓や気血津液があります。五臓六腑や気血津液がしっかりして丈夫なこころもつくられます。こころと関係があるのは『心』気の巡りと関係が深いのは『肝』です。五臓は相生・相克の関係で結びついているので、他の臓腑も影響します。また、脾胃の働きが弱く、水の運化失調によって出来た『痰』が集まり ストレスやイライラする事により熱化すると気の通り道が塞がって鬱滞してしまい憂鬱感が生じます。この痰は直接見えない所にあるので、無形の痰といいます。

 この形の無い痰の存在を知るにはどうしたらいいのでしょう?舌の苔がベタベタした感じは痰の存在を表します。また痰が出たり、喉に痰が絡んだり、気持ち悪くなり易かったりなどの身体からでている信号もみます。また肥人多痰(太っている人は痰が多い)といいますが、脂肪は痰のうちです。無形の痰が血脈や経絡を塞ぐことが脳梗塞・認知症・心筋梗塞などの原因になることもあります。

 人の心の状態は一筋縄ではいかない複雑なものです。あることがきっかけでうつ病になった。ある一言がきっかけでうつ病がよくなっていった。家族の支えがあったから克服できた。なぜ脳内のセロトニンやノルアドレナリンなどの物質は減ってしまったのでしょう?心は本当に脳なのでしょうか?何故頭でなく胸がくるしくなったりするのでしょう?まったく複雑で不思議な感じですが、心も身体もどちらも自分です。心にも身体も気血津液や五臓など陰陽バランスがとれて元気でいられます。とにかく心は複雑ですがダメージを受けたとき脳の中をのぞいてみるとセロトニンとかノルアドレナリンとか、物質的に変化が生じていたりするかもしれません。

 これは単なる1つの現象だと思います。この現象に対して物質を脳内に増やそうというのは西洋医学的発想です。減ってるセロトニンを増やせばいい、ドーパミンを増やせばいい。それが西洋医学の薬です。でも実際は何故減ったのか?その原因にアプローチしていません。一時的に減ったのであれば、補充すれば解決します。でも 何らかの原因で減り続けているなら、ずーっと使っていくことになるし外から与えられ続ければ分泌をストップする場合もあります。人の身体はあちこちにフィードバックシステムが働いているからです。

 中医学(漢方医学)のアプローチは違います。五臓六腑や気血の状態からみていきます。七情内傷といって心と身体は結びついているからです。血の不足や気の状態、臓腑の弱さや機能失調が精神状態に影響しているからです。人は心は縛られずのびのびしていたいものです。こののびのびと肝が関係しています。五行の木は肝で春・風・酸・怒・・・など関係しています。木が枝をのばしのびのびと天に向かって伸びるように肝ものびのび陽気をはぐくみたいのです。

 これが失調するとどうなるでしょう?外からは環境の改善とカウンセリング、内からは疏肝・柔肝・養血などの方法で状況の改善を図ります。また『心は神を蔵す』といって 大脳の思考する力は心(しん)にあるとされています。つまり考えすぎる(思うわずらう)と心に影響がでます。心が病的な状態になると不安・不眠・煩躁などの症状がでてきます。また酷いときは妄想・幻覚などもでます。ここまで酷くなると心が正常な働きができていない状態です。気血の流れがとどかない状態(心此処にあらずで正常な思考ができなくなっている状況)で開竅薬なども入れていく必要があります。基本的には心も肝も血によって養われるわけですから、血の不足がない事が基本です。

2007-02-01

パンダ⑥ 今週はわたしの感じていることを書こうと思います。えー?そうかなー?と思う事があったらコメント下さい。おおいに語りあいましょう。 何時も書いていることですが中医学的(漢方的)考え方が私の考えの柱になっています。歴史のなかで色々な見方が生まれ、淘汰され、実際に促した理論だけが現在まで残ってきたと考えているからです。

 病気になるということは大きく2つにわけられます。外から入ってきた外邪によるものと身体の内側の変化によるものです。
外邪によるものは発生・変化が急速です。例えばノロウイルス。夕飯おいしく食べたのに急にお腹が刺し込んで下痢し、嘔吐し始めたという経験のある人もいると思います。もう一つの方の身体の中の変化というのゆっくり時間をかけておきてきます。時間をかけて自分でつくっているともいえます。幼い頃からの病気は弱さが原因です。特に先天である腎が弱い場合が多いようです。『宋の銭仲陽は小児の行遅・歯遅・脚軟・シン開・陰虚発熱の諸病を治し、みな腎虚に属し・・・』とあって六味丸を用いると『手に応じて効す』となっています。

 内因性の病気が身体の中におきる変化によるものだといいましたが、ある一定のレベルに達すると病気という形で現れてくると思います。身体は平衡がとれていることが大切。やじろべえはユラユラしながら平衡を保っています。支点が中心からずれると平衡が保ちにくくなってきます。ここまで、ここまでと支点をずらしていくと完全に平衡をくずしてバランスがとれなくなる位置にきます。そうなったら落ちないようにするだけで大変です。身体の平衡も戻せない位置があると感じています。

 陰陽は平衡をたもっています。時に陰が多くなったり陽が多くなったり、陰から陽 陽から陰に変化しながら、又互いを制約しながら・・・天と地・上と下・火と水・昼と夜・動と静・興奮と抑制 身体の中の機能亢進と機能抑制は陰陽の関係です。

 こういった部分をになっているものは色々あります。甲状腺・自律神経・下垂体・ホルモン系など 機能は亢進しすぎも減退し過ぎも平衡の崩れです。時に亢進しても、もどる力が働くものです。亢進しすぎが続き、もどれなくなってしまっては身体の平衡は崩れ、病気が発生するでしょう。気がついたら戻す。これが未病を治すという事です。

 機能減退は気虚、陽虚などエネルギー不足なので「だるい・疲れ易い・かぜひきやすい」など体調の悪さに気が付く事が多いと思います。機能亢進の方は時に疲れ知らずで睡眠時間もあまりいらず、いかにも体力があって元気そうだったりするので身体の不調に気が付かない事も多いと思います。しかし、ちょっと立ち止まって考えてください。「くたびれた。ゆっくり休みたい。」という身体の信号がにぶくなっています。

 身体を酷使してはいけません。食事・睡眠など養生の基本は忘れてはいけません。免疫革命の著者の阿保先生が交感神経の過亢進タイプと難病の関係を書いていらっしゃいますが、中医学的にもあたっていると思います。未病を治しましょう。

2007-01-01

 ここ数日 はちみつ・オリーブ油・塩をよく混ぜてお風呂でマッサージしています。えっ!私でなく娘。

「いっこうさんのマッサージ最高!お肌がつやつや!」

 お風呂上りのを見るとおでこもほっペもツルツルです。ところが今朝

「自分の肌がやだ!」

 といっているので見るときれいな肌です。ただ毛穴が開いて見えるのを気にしているようです。若い子は贅沢ですね。

「毛穴が開いて見えたり、下がって広がって見えたりは気の働きが弱いからだよ。しっかり引き締めとく力を補っておくといいんじゃないの。睡眠不足しないようにね」

「寝不足で目の下が隈になってるし、お化粧ののりも悪いわ」

「忙しくて食事が不規則で、胃腸も肌の調子もわるいんです。」

「冷え性なんです。冬はつらくて・・顔色のくすんで、肌もカサカサ。」

 等々 体調と肌の関係は感じている方も多いと思います。潤いや張りがあり艶やかな肌色の肌は女性の希望です。生活リズムや食事の養生を心がけ、五臓のバランスや気血津液を整えておきましょう。

 血虚タイプは肌が養われずカサカサします。血が肌を滋潤するからです。当帰は『補五臓生肌肉』五臓を補い肌肉を生むとなっています。特に冬は肌が乾燥し易く冷えて血行も悪くなって顔色もくすみがちです。だから補血活血の当帰のシロップ(婦宝当帰膠)はお薦めです。またサージオイルのカプセル(紅沙棘)も潤いのあるお肌にいい食品です。

 「肝は血を蔵す」ですが、肝の気は風です。肝血虚によって風がおきることを「血虚生風」といい血の不足によってふらつき・めまい・しびれなどがおきます。血虚によって皮膚が滋養できず乾燥し、風によって痒みがおきる事を血燥生風といい当帰飲子が適用です。当帰・白芍・生地黄・何首烏で陰血を養って、肝の働きを調整して風を消す組み合わせになっています。皮膚の赤みや熱感がある時は風熱を除く板藍茶や天津感冒片を併用するといいようです。

「チョコレートを食べ過ぎると吹き出物ができちゃうよ。」
「便秘がつづいてもできるよ。 」
「この頃食欲なくて食べてもすぐもたれるんだけど肌がカサカサ。」

 など胃腸と肌も関係がありそうです。脾胃は気血生化の源(気血をつくる源)です。胃は「腐熟を主る」 「通降を主る」といい飲食物をこなして次に下に降ろす働きがあります。小腸は「清濁の必別を主る」といい分別するところです。清とは体内に取り入れられて気血のもとになる精微物質で濁とはその他の糟の方です。大腸は「糟粕の伝化を主る」といって水分を吸収して糞便を形成し肛門へ送ります。精微物質の取り込みが悪ければ気血が不足し肌にも栄養できません。また、食べ過ぎなどによって濁が降りなかったり、取り込まれたりすると肌トラブルもでてきます。

 お肌の潤いには血と津液が、張りには気が重要! 肌は内臓の鏡というように五臓が元気な事が大事です。特に脾は肌肉を主り、肺は皮毛を主るといわれることからも関りの深い事がわかります。

 美しいお肌のためには、夜の10時~2時はゴールデンタイムとかいって寝ていた方よいそうです。中医学的には陰が深く極まった時間帯ですので、睡眠によっておおいに陰を養える時間帯です。早寝早起きは三文の得。ここにも得がありそうです。肌の調子も養生しだいと言う事ですね。

« 次の記事へ 前の記事へ »