今週も中医臨床からの話で、長年、中医学の糖尿病治療にあたってきた老中医考え方についてです。糖尿病の初期は喉の渇きが酷く、飲む量も多く尿量の多いので 漢方でいう消渇病として考えられていました。消渇病の弁証と現代医学の検査を組み合わせ弁証・弁病の2方向からアプローチします。糖尿病の病因として 『飲酒 脂っこい食事を好む 精神的過度の緊張の3つ』で、もともと体質に陰虚傾向がある。また臨床経験から2型糖尿病の人のほとんどに『気虚』の症状がみられる。その為、瘀血は気虚から生ずるとして基本的な弁証を気陰両傷・脾腎倶虧・脈絡瘀阻、基本的な治療方法を益気養陰、培補脾腎、活血化瘀としています。
この先生は糖尿病の弁証を5つに分類しています。気陰両虚・陰虚火旺・燥熱入血・陰陽倶虚・瘀血阻絡となっています。糖尿病の人は本質的に陰虚の体質をもっているという考えにそってそれぞれの弁証に合わせた治療に加え滋陰・養陰・育陰など陰虚にたいする配慮がなされています。体質的に火を生じやすいタイプは本質に陰虚の傾向があるのかもしれません。飲食の不摂生やストレスによって肝血・肝陰が不足すると益々陰虚傾向がつよまるのもうなずけます。現代はグルメといって豊かな食生活をおくる人も多い時代です。少し前の時代の過食とはわけが違うと思います。そんな中で『食を制するものが成人病を制するといっても過言でない』気がします。
中医学における糖尿病研究たずさわっているトン先生は、一昨年来日した時、現代において病因は食積が大きいと話されました。血糖値が異常な人は一昔前にくらべると増加傾向にありますが、老中医の示した基本的な体質以外の人も飽食から血糖値の上昇になってきています。中医学において飲食の不摂生によってたまったものは食積(食によって積もったもの)といいます。これを取り除くのに食積を消して 停滞したものを導いて排除するという方法(消食導滞)という方法があります。その為に用いられるのが消導薬といわれるものです。山楂子・麦芽・神麹などがそれにあたります。消化を助ける食品といわれる晶三仙はこれらが使われています。現代の糖尿病にはこれも必要なものの1つです。
2007年5月ブログ暮らしの中の中医学より
認知症には脳血管型とアルツハイマー型があります。最近では脳血管型もアルツハイマーを伴うことが多いといわれています。
中医学で考えると認知症は『心』『腎』と関係しています。『心主血脈』心は血脈を主っているので循環とかかわっているばかりでなく、『心蔵神』心は神(思考する力=大脳をとりまく機能)を蔵し、思考とかかわっています。『腎主骨、腎生髄』腎は骨を主り、髄を生じ、髄海(脳)に通じるといっています。腎虚になって髄を生じることができなくなってくると髄海が満たされなくなります。
中医理論は昔から受け継がれた理論ですが・・・
老化・・・腎虚
脳の萎縮・・・髄海が満たされない
補腎はとても大切です。
特に脳循環は大事な要素です。脳に酸素や栄養を運び、老廃物を回収してくる通路がせまくなっていたり、それを運ぶ流れに不用物がたくさん流れていたりしたらどうでしょう。流れが悪くなるばかりでなく、細いところは詰まりやすくなります。つまって流れが行かないということは酸素も栄養も運ばれず、老廃物も除去できない状態ですから、その部分は壊死してしまいます。また酸素や栄養不足なら養われない為衰えます。また赤血球などを形を変化させてうまく流れていきますが変化するという動きのには気というエネルギーが必要です。
痰湿と瘀血はいろいろな病気にかかわっています。そしてこうなる原因の1番は食の不節制です。食によって水液代謝の副産物である痰がつくられ、気血の通りを悪くして瘀血になります。食は不足も気血不足になってよくないですが、過ぎたるは及ばざるより尚悪しともいえます。わたしの子供の頃はケーキは誕生日など特別な日にしかたべませんでした。ケーキ屋さんができたのも小学校中学年の頃でした。料理は煮る、蒸す、焼くが多く、生クリームを使った料理などありませんでした。
ところが現代
「ケーキは週何回たべますか?」
「生クリームをつかったこってりした味が大好きですか?」
「とんかつ・から揚げ・エビフライなど揚げ物は週何回?」
・・・おいしいですよね。
・・・本当はケーキ大好き
・・・でもヤバイ!! 痰と瘀血
食養生は循環が悪いためになる病気の予防の為にとても重要です。脳循環を考える時、中医理論から『気滞血瘀』があります。
気が巡らないと血が巡らないという理論です。しかし逆もあります。瘀血により気の巡りも悪くなるということです。こころが穏やかでのびのびして柔軟であれば気は停滞しにくく、血も停滞しにくいといえます。また、身体をよく動かすことは血が巡るので、気も巡ってくることにつながります。笑うと免疫力があがるといわれていますが、良い笑いは気も血もめぐります。
方剤選びの基本は活血化瘀薬+補腎薬です。補腎薬選びは益精血の働きが充分なものがよく、例えば参茸補腎丸や双料参茸丸、海馬補腎丸などがそれにあたります。活血化お薬は心血管系によく使われるものがよいようです。冠元顆粒、血府逐瘀丸など・・・痰湿のあるタイプは釣藤散や温胆湯などを加えるとよいと思います。補腎 活血は基本として症状や体質にあわせたものを使っていくのがよく、香ロゼアやシベリア人参茶などの漢方茶も常飲しましょう。
もちろん身体と五感を働かせることで脳を活性化することはとても大事なことです。楽しく或いはやる気をもってすることが大事です。それがストレスになってしまってはいけません。適度なストレスは身体を元気にしますが、過度なストレスは気を鬱滞させてしまいます。ストレスの領域は人によってちがうので「この位のことはやりなさいよ」と押し付けないほうがいいと思います。やる気になっているときはストレスと感じにくいものです。
2007年5月ブログ暮らしの中の中医学より
熱中症は高温でなくても注意が必要です。熱中症は4つに分類されますがその中に熱疲労があります。大量の発汗・頭痛・吐き気・めまい・寒気・脱力感・倦怠感・強い口渇感・体温は若干上昇 ・・・症状はこうですが酷くなると危険な状態です。下痢した後、熱を出した後、水分と塩分等の電解質の補給が不足している時は熱中症になりやすいのでイオン飲料を飲んだり、首筋やわきの下を冷やすなど注意しましょう。
中医学でこのような状態は気陰両虚・気津両虚の状態です。また年配者は陰虚傾向の人が多いのでより注意がひつようです。ふだんから補気生津・滋陰益気などしておくことが大切です。
舌は身体の状態を現しています。鏡で自分の舌を見てみましょう。
真中が乾いていませんか?
歯型がついていませんか?
ひび割れのようになっていませんか?
柔らかく頼りない感じで舌苔がむらになっていませんか?
舌苔が少なくないですか?
津液が不足すると乾いてきます。陰液が不足すると苔が少なくなったり、ひび割れになったり、酷い時は鏡のようにツルツルになります。気が不足すると舌は頼りない感じに柔らかかったり、歯痕といって歯の跡がついたりします。気津両虚・気陰両虚の場合は舌に気の不足と津液・陰液の不足の両方が見られます。
汗は『心の液』といいます。熱疲労の症状に大量の発汗があります。汗により心は弱りまた、心が弱いと発汗し易いといえます。口渇も酷く、冷い飲み物を欲し、顔も赤い時は『白虎加人参湯』がいいです。これは清熱生津・益気・・・熱をさまし、津液を生み(血中や身体の水分を増やして)気を益す・・・という働きがあります。
体質が弱く息切れや倦怠感が強かったり、かえって蒼白になったりする時は『生脈散・・・麦味参顆粒』がいいです。これは益気生津・斂陰止汗・・・気を益し、津液を生み、体の物質的基盤でである陰を守って、汗を止める・・・という働きがあります。
夏ばて防止や熱中症の予防に普段から飲んでおくとよいです。
昔の有名な漢方家に李東垣がいますが「夏は生脈飲を飲みましょう」といっています。「また黄耆・甘草を加えると気力がでる」と加えています。とにかく熱中症対策として『気を益し、津液をます』ものが必要です。西洋医学でいうと点滴のようなものでしょうか。暑い夏、太陽がギラギラの夏・・・水をまいてもすぐ乾いてしまいます。熱があれば乾くということは自然の現象なのです。夏は身体の潤いを考慮して漢方薬や漢方茶を選びましょう。
西洋人参(香西洋参)の働きは補気養陰・清火生津です。気と陰を補って、火をさまして、津液を生むということです。夏ばてや夏ばて予防、熱中症予防にピッタリだと思いませんか?夏の脳梗塞が多いのを知っていますか?津液の不足による瘀血が原因です。また気が不足すると血が巡るためのエネルギーも不足し停滞します。
夏は潤い!
2007年5月ブログ暮らしの中の中医学より