「身体がだるいし頭が重いよ。」
「気持ちわるいし食欲もないよ。頭に帽子をかぶったようないやな感じ。」
「頭がずっと重いし、めまいも時々、ながびいてるし心配。」
頭が思い、しめつけられるなど湿が関係しています。風邪と一緒に湿邪が侵入するとこういう症状がでます。めまいを伴う時は内側に問題があります。湿の性質をもう一度考えてみると
①陰邪で気機を阻害しやすい
②重濁
③粘膩
④下降
①からは胃腸機能が阻害されやすいことがわかります。だから食欲不振・吐き気・むかつき・軟便・下痢などを伴い易くなります。
②は重く、だるく、停滞し、気血が流れず、濁って分泌物や排泄物に異常が生じ易いということです。
③は粘っこく、しつこいので治りにくく、再発しやすいことということがわかります。
④は水は低い方へ流れる自然現象です。これを理解しておくと判断する時に役にたちます。
頭重の原因は外因と内因があります。外因は湿を伴った風邪によるもので、内因は脾の働きが弱いために体内に溜まった痰湿(痰濁)が上昇して頭に昇ってしまった事によるもので、めまいを伴うことが多いです。
痰濁の上昇!
そんなもの頭に昇ってきたら、いかにも重くなりそう!
ふらつきそう!
めまいの原因はすべて内因です。中医理論は痰濁による頭重と同じで、ベタベタ粘ってしつこい痰濁が頭部にいってしまったためおきます。風邪が湿をともなって頭重感がでた時はそんなに時間がかからずに治ります。でも、痰濁が上がったときは治りにくく、治っても再発し易いのでじっくり腰をいれて痰濁を処理する必要があります。
「粘ってベタベタしたものが流れを塞いでいたらどうしますか?」
「油なら洗剤とか溶かすものをつかいます。」
「クエン酸もポットのお掃除とかにつかうよ。」
「ぼくは水をジャージャーながすよ。」
「いろいろ意見がでましたが人の身体の事を考えてみましょう。」
ベタベタしたものは痰湿(痰濁)です。溶かすものは化痰薬です。痰ができないように代謝をよくするために脾を元気にし、水を通じさせてのぞいたり、停滞している水を処理したり・・・健脾利湿・健脾燥湿
身体の中も同じです。原因を絶つ・溶かす・薄める・流す
原因が外から、つまり風湿の邪による時はまず勝湿顆粒(かっ香正気散)を使ってみます。発散して風湿の邪を除きながら、『生痰の源』である脾胃を整えます。湿邪は気機を阻害するので理気の働きがある薬味もしっかり入っています。胃腸型感冒や夏風邪の漢方薬としてよく知られていますが、発散・化湿・理気・健脾の働きが利用できます。胃腸の働きが悪い人や飲食と関係のあるタイプの鼻炎の鼻水・蕁麻疹・滲湿物がでる皮膚炎などに使えます。頭重で痛みもある時はさらに疏風止痛の川きゅう茶調散(頂調顆粒)を加えると効果的です。
原因が内側に原因があるときどんな漢方を使うのでしょう?
脾胃の働きが弱いため、あるいは暴飲暴食によって溜まった湿・痰湿・痰濁が気血の通りを塞いだり、頭部に昇っておおってしまう為頭重やめまいがおきているのですから除去しなくてはなりません。
①健脾して生痰の源を絶つ
②化痰・理気・利水して痰濁を取り除く
③消食導滞して食積を除く
こういった働きのあるものを選びます。また、暴飲暴食・脂っこいもの・味の濃いもの・なま物を避け、甘い物もなるべくとらないようにします。また痰湿は気機の流れを阻害するので活血化瘀薬を併用すると効果的です。汎用されるものには半夏白朮天麻湯・星火温胆湯・五苓散・苓桂朮甘湯などがあります
2007年6月ブログ暮らしの中の中医学より
「頻尿にいい漢方薬を下さい。」とはいっても頻尿と一口にいっても人によって違います。例えば膀胱炎の時もあるし、冷えて近い時もあるし、コーヒーやお茶など飲みすぎている時もあるでしょう。中医学では膀胱湿熱・腎陰虚・腎気不固・肺脾気虚・肝気鬱結に分けられます。頻尿によいと宣伝されてる漢方薬に八味丸(八味地黄丸)があります。ハルンケアなども八味丸です。これは腎陽虚といって腎虚で陽気が虚している時の方剤です。腰や膝に力が無てだるい・下半身の冷えや浮腫みがある時は服用します。八味とは8つの薬味が入っているという意味です。補腎の基本は6つの薬味(熟地黄・山薬・山茱萸・牡丹皮・沢瀉・茯苓)の六味丸です。六味丸+附子+肉桂が八味丸です。八味丸は尿の出が悪く浮腫む場合も使います。
尿の量・色・濁りなどは重要な指標になります。一般に冷えや気虚の時は透明で量も多く、実熱 虚熱 湿熱など熱症がある時は色が濃く量は少なくなります。膀胱炎は下焦の湿熱で湿が多い時と熱が多いときとあります。膀胱炎は排尿痛があるとしています。今回の頻尿の話は膀胱炎についてはおいておきます。頻尿で尿量が多い時は腎気不固や肺脾気虚が考えられます。
腎気不固とはなんでしょう?
腎の働きは 精を蔵す 成長・発育・生殖を主る 水を主る 納気を主る でしたね。水を主る機能が失調すると水液代謝の機能(腎臓や膀胱の働きなど)が低下して障害がおきます。気の働きの1つに固摂があります。しっかりまもり留め固定するという意味だと思っています。血液が脈管から漏れないようにしたり汗をかきすぎで体力を消耗しすぎないように、便や尿がもれないように・・・これは皆気の固摂によるものです。腎は水を主る 腎は二陰に開竅する・・・ 腎気の固摂の働きはここでも発揮されます。この腎気が虚して固摂が失調すると頻尿になったり、失禁になったりします。
腎が虚した為の頻尿で尿の色が濃く少ない時は腎陰虚です。腎陰が虚したため水を納めることができず、陰虚による虚熱のため膀胱気化(排尿作用)も失調するため発生します。腎虚がもとにあるので、足腰がだるく力が衰えたり、めまい・耳鳴り・などの症状を伴います。また腎気不固は腎の陽気が不足しているため、四肢が温まらないなどの冷えの症状が腎陰虚は寝汗・手足や胸のあたりのほてり(五心煩熱)などの虚熱の症状がでます。
腎陰虚の時の代表方剤は知柏地黄丸(瀉火補腎丸)加減です。これは滋陰降火の働きがあります。陰虚の虚熱が強くなければ杞菊地黄丸、八仙丸などもつかいます。しかし、内熱による気化失調が頻尿をおこしていると考えるので火を降ろす必要があると思います。また、膀胱の湿熱をかねる時は補腎薬に猪苓湯(ボウネツ錠(粒))・瀉火利湿顆粒(竜胆瀉肝湯)・五淋散などを適宜併用します。腎気不固の代表方剤は右帰丸加減です。右帰丸は腎の陽気が衰退して微弱になった時(腎陽衰微)の漢方薬で、温めて陽気を補い、精や血をおおいに補います(温補真陽 填精補血)右帰丸と同じ力のある補腎薬は海馬補腎丸・参馬補腎丸・双料参茸丸・参茸補血丸などがあります。八味丸は腎陽を温める力はありますが、填精補血は弱いので海馬補腎丸などを加えた方がいいようです。また、山茱萸・五味子・覆盆子・桑ひょう蛸・竜骨・牡蛎などは気を納め、しっかり臓に留めさせる働きがあります。補腎薬を使うことは頻尿の改善ばかりでなく、身体の陰陽のバランスを整え、精血を補って身体に力をつけることになります。
わたしも肝腎を補って活血することは必ずしています。また、気虚体質でつかれやすいので補気薬はかかせません。 秋から冬は衛益顆粒・春から夏は麦味参顆粒や西洋人参をよくのみます。肺系が弱いのでこれらは大好きです。腎の働きをもう一度考えてみましょう。
2007年6月ブログ暮らしの中の中医学より
夏は潤い!ということですが、潤いの為に胃腸の働きは大切です。冷たいものばかり飲んだり、寝冷えしたりして冷えによる下痢 細菌が繁殖したものを食べた為の下痢など潤いを失うばかりでなく、潤いの吸収もできません。胃腸を整えておくこともまた、夏を元気にのりきる秘訣です。
中医学においては脾胃の働きを円滑にするということになります。この働きがわるくなると水液代謝がにぶって身体が重だるく、疲労感を感じ横になりたくなったり、頭もしめられるような感じがしたり、浮腫みがでたり・・・停滞している湿による症状がでてきます。
日本の夏は高温多湿でむしむしします。身体の中も湿気の多い人は、この季節体内はさらに酷いむしむし状態です。しめっぽいお部屋を想像してみてください。かびやすく、雑菌も繁殖しやすい、ムーンとするような臭いもこもって・・・人の身体も同じです。湿が停滞して濁っている状態です。適度に発散して身体をさっぱりさせるのが病気にならないコツです。湿に勝つという名前の勝湿顆粒や平胃散を湿濁や寒湿を除くのに飲みましょう。五行草のお茶を飲むのもいいと思います。
脾は五臓の中心にあって五行の土にあたります。土は植物を育てる力です。その脾は湿をきらいます。だから脾の弱い人は湿気に弱いといえます。また、冷たい飲食物の摂りすぎ・汗で湿った服を着たままにしておく・雨にあたる・水中での仕事など寒湿の邪の侵入により脾の働きが阻害された症状がでてきます。食欲不振、むかつき、軟便や下痢、身体が重だるい・眠くて横になりたい、舌を見ると舌苔が白く厚くぺたぺたした感じなどです。身体がだるくて栄養ドリンクをのんだり、補気薬をのんでもなかなか元気がでないのは湿邪のせいかもしれません。
脾虚(脾胃の虚弱)の人は軟便・下痢になりやすいばかりとは限りません。便秘がちな場合もあります。『脾は運化を主る』といい栄養や水分の輸送・代謝にかかわっています。水液代謝がわるく消化管に停滞すれば軟便・下痢に、身体に停滞すれば浮腫みになります。気血が摂り入れられないと消化管が滋養できず、粘膜の潤いが不足したり、また腸を蠕動するエネルギー(気)が不足したりして便秘となります。脾虚は脾陰も不足しやすく、特に夏、胃腸の働きがわるいと気陰の不足になりやすいといえます。
*浮腫みと潤い不足。なんだかありえなそうですが実際よくみかけます。
例えば空咳で喉がカサカサするけれど、足は浮腫みやすいとか・・・
脾の気と陰を補える方剤があります。健脾散エキス顆粒(参苓白朮散)です。山薬(山芋)やヨクイニン(はと麦)が入っています。これらは脾の陰を補う働きがあります。水穀(飲食物)は変化し、栄養やエネルギーとして体内に送られますが、これが円滑に行われるために、脾陽、脾陰のどちらも重要です。
陰は陽を生み、陽は陰を生む相互依存の関係からも脾気が弱いと脾陰も不足しがちになる事がわかります。例えば脾気虚で下痢ばかりしていると、気血がつくられず脾の物質的側面(脾陰)が不足するということになります。飲食物をこなすことは、よくご飯を炊くことに例えられます。
釜の下の火がなければ炊くことができない・・・この火は脾陽のことです。
また、釜の中の水がなくてもやはり炊けない・・・この水は脾陰のことです。
うまい比喩だとおもいませんか?
夏は潤い!
潤いの吸収は胃腸から!
漢方薬は健脾・益気・生津・滋陰・益陰を中心に!
香西洋参(西洋人参)は夏バテ防止にぴったりです。暑い屋外と冷えた室内を出たり入ったりで体調が悪くなりやすい人にはシベリア人参茶がおすすめです。このお茶は環境によるストレスがかかった時に飲むと良いお茶です。
2007年5月ブログ暮らしの中の中医学より