人において陰が不足する事を『陰虚』といます。
手足がほてってしかたないの。
私も、口が乾くので、飴をもって歩いてるのよ。
寝汗をかくし、午後になると熱っぽい感じがするの。
なんだか気がせくようになった気がする。
食欲は普通なのに痩せてくるの。
脈が弱くてわかりにくいんだけど、結構トクトク速いの。
大丈夫かしら?
熱・乾く・ほてる・気がせく・弱くて速い脈など陰が不足したことにより虚熱のある症状です。治療するには不足した陰を補うことが第一です。陰は形です。血・精・津液など身体の物質不足です。陰(形)が不足すると陽(エネルギー)も不足してきますが、相対的には陽の方が多くなります。有形の世界において、陰はとても重要だと思います。
キャンプファイヤーをした事がありますか?薪は燃えて炎となり熱エネルギーになります。薪は真っ赤になって大きな炎を上げて火力は最高になります。でも、もう後は下火になってきます。もう始めの薪に物質としての力がなくなってきているから新たな薪をくべなくては終わってしまいます。また、すこし湿った薪は火力の調節になります。でも入れすぎると火は消えてしまいます。薪は陰・火は陽と考えられます。
中医学において
陰虚の時は滋陰し、陽虚の時は補陽ですが鹿茸のように精血を補うものが多いです。精血は陰に属します。
陽虚は機能面の不足に冷えが伴った状態です。症状としては だるい・息切れ・言語無力・寒がる・汗をかきやすい・手足の冷え・尿量が多い・脈がゆっくりで力が無いなどです。治療法は温陽益気で、温めて気を増やす事です。でも機能の衰え裏には形的衰えがあります。
漢方では陰中の陽・陽中の陰といいますが、互いを考慮した方がよいようです。五臓六腑の中にもそれぞれ陰陽を考えます。特に腎陰・腎陽は真陰・真陽といわれ、身体の陰陽バランスの総元締めです。陰陽は相対的なものですから臓腑においては臓は陰・腑は陽です。
臓の中では心肺は上の方にあり陽・脾肝腎は下の方で陰です。また各臓腑に(心陰・心陽)(脾陰・脾陽)・・・・というように陰陽があります。この各陰陽の平衡を考える事大切です。陰陽に五行、五臓の考えを加え全身の調和を保つようにもって行こうとする事ができるのが漢方のすごい所だと思います。この原点ともいうべき理論に立ち返って考えるなら、なすすべがないなどということは無いはずです。
紀元前に書かれた黄帝内経に漢方理論の中枢があると思います。難しくて、解りにくくて・・・でもこの理論を理解し、この理論に立ち返って、熟考した漢方家達が名方をつくり現代に名を残している気がします。
このスゴイ黄帝内経とはなんなんだ?
文明の進んだ所から来た宇宙人が残したものなのか?
不思議でしかたありません。
2007年7月ブログ暮らしの中の中医学より
微熱がつづきいているし、咳もでているので病院にいってみたら肺炎をおこしていた・・・という時もありますがなんでも無い時もあります。検査でなにもでてこない。すると、自律神経かな・・・などと言われたりします。漢方で考えるとどうでしょう。内傷発熱という言い方があります。
内傷発熱・・・内側が傷ついている為に熱が出ているという事
実際に熱がでている事もあるし、熱っぽさを感じているだけの時もあります。風邪のあと微熱がつづいています。
「そういえば顔色が青いですね。」
「・・・・・・・」
「熱っぽさは?食欲は?」
「寒気がしたり、熱っぽくなったりしてます。口が苦くおいしく感じないし、あまり食べたくないです。」
「邪が少陽にあるようです。」
邪在少陽とは・・・外邪(風邪)を中にいれないように門の所で、戦って追い出していたのが、とうとう玄関に上がりこんでしまった。という感じで、まだ座敷には上がりこんでない状況です。
小柴胡湯を中心にした方剤を選びます。中に入っている柴胡は邪気を玄関から門の方に引っぱっていって追い出す役目をします。戦った結果、こっちの戦力が弱まってしまって邪が中に入ってきちゃったわけですから、中を整えて戦力の回復もはかるような処方構成になっています。
柴胡桂枝湯・柴朴湯・柴苓湯・・・これらは皆、小柴胡湯の入っている漢方薬です。
邪気がなく微熱がつづく場合もあります。脾胃の虚による発熱を気虚の発熱といいます。この時は補中益気湯を使います。脾胃の虚(脾胃の弱りによる不足)によって熱がでているので、不足を補い温めて熱を除く・・・という方法です。
甘温除大熱の方剤といわれています。甘いもので温めると熱がとれるなんて不思議な気がしませんか?
李東垣という歴史上の人物がいます。発熱には外感(外邪によるもの)と内傷(身体の内側の弱りによるもの)があるとし、陰火と呼ぶ脾胃の虚による発熱を提起しました。
「元気かえりつくところなければ、陽(気)浮きて則ち条熱するなり」
といっています。元気は原気とも書き『気の元』です。
これは腎にある先天の精が変化して生じたもので、脾が水穀から取った後天の精によって補充されます。脾胃気虚により後天的は先天を補充できず原気はよりどころを失うという意味だと思います。だからその熱は虚火なんです。
虚火は身体の弱りによって出る熱のことです。実火と対照的に表現します。
「風邪を引いて39度も熱がでちゃった」これは実火です。
若く体力のある人が怒りっぽく、顔色も赤く、イライラしている・・・のも実火です。日焼けで真っ赤でヒリヒリ痛い・・・のも実火です。補中益気湯を使う時は脾胃の気虚による虚火です。脾胃は飲食物をこなし水穀の精微(微細な成分)として身体を滋養します。つまり気血津液を生成して五臓を滋養し潤わします。この働きがうまくできない・・・脾が虚になる為に熱が出るのが虚火です。李東垣は外感と内傷の弁別を説いていますがとても重要なことです。
以前読んだ、チャングムの本の中にも補中益気湯はでてきていました。黄帝の病が重く、宮廷医の処方では回復しないのでチャングムが呼ばれました。宮廷医は外感とみたてていたからです。チャングムは脾胃の虚による内傷と弁証し補中益気湯加減を処方します。すると病状は日増しに回復してくるという話です。老中医の診察室という小説のなかにも李東垣の陰火とみたてて、難治性の病気がよくなる話がでてきます。
「微熱があって、めまい、だるい、動悸もするし・・・」
血虚の微熱で内傷の発熱です。帰脾湯(錠)を飲みましょう。陰血の不足の為、陽を留めておくことができずに発熱をおこします。気血を作る源の脾を補っいながら血を養い、心を穏かにします。血虚は貧血も含む広い意味で滋養が足りない事をいいます。動悸や息切れ、微熱も貧血から来ている事もあります。貧血の人はレバー・干しぶどう ・なつめ・枸杞のみ・ひじきなど積極的にとりましょう。またヘム鉄のドリンクのアスリーブもいいです。
その他、午後になると、あるいは夕方から夜にかけて熱がでる時は陰虚による発熱のことが多いです。陰虚とは陰が足りないということです。前にも書いたように身体の物質面は陰に属します。血や精や津液の不足(陰の不足)により、水・寒・降・内・暗・・・などの陰のもつ性質も不足し、相対的に虚の陽がでてしまいます。
陽は気(エネルギー)で火・熱・昇・外・明・・・などの性質をもちます。陰陽のバランスがいいということはお互いに抑制しあって平衡が保たれている状態です。この陰の不足によって出た熱もまた虚火です。瀉火補腎丸(知柏地黄丸)を使います。気虚もあれば麦味参顆粒を併用します。また内傷発熱には肝経鬱熱や瘀血阻滞の発熱があります。
黄帝内経という書物は紀元前にかかれたもので、漢方家のバイブルといえる書物です。李東垣も「内経』の「労者温之、損者温之」を根拠にし、補中益気湯は考えられたようです。このなかに病気を治すには、まず邪気の陰陽を見分け、病が内にあるか外にあるか確定すると書いてあります。
発熱1つとってみてもそれが外邪によるものか?
また原因が内にあるのか?
・・・外邪がさったのち内にのこる事もあるし・・・その見分けは重要です。熱=解熱剤ではないからです。解熱剤は現象に対して用い、漢方は病因を求め使います。
黄帝内経は紀元前86年頃~紀元前36年くらいの間に形が整ってきたようですが、気が遠くなるほどの昔です。病と戦ってきた智恵者たちの業績のうえに今の漢方があります。
漢方=漢方薬でなく 漢方=理論です。
理論なくして漢方を生かすことはできません。また『陰陽の平衡』は重要です。身体全体を1つの世界ととらえ平衡を保つための生活・食と共に漢方薬があります。つまる養生の中に食も漢方もあるといってもいいと思います。平衡を保つように漢方利用しなくては意味がありません。養生をして平衡を保って病気が癒える身体をもつ努力をすることが大事なのだと思います。
2007年7月ブログ暮らしの中の中医学より
梅雨といえば 湿気・・・陰気の多い季節です。かび・ばい菌が繁殖しやすい季節です。傷が治りにくかったり、食中毒、食あたりしたり、おでき・湿疹がジュクジュク・水虫、膀胱炎、関節の痛みや腫れ・腰痛、痰・・・・湿気の影響をうけます。脾気虚、腎陽虚、肺気虚など内湿があるタイプは湿気の影響を受けやすいようです。体内の湿の処理は脾の運化・肺の宣発粛降・腎の気化によって行われます。外湿の影響を受けないようにしましょう。温かいものを飲んだり食べたりするように心がけ、雨にぬれたり汗をかいたとき、必ずふいて着替えるなどしましょう。
身体の湿気が多い(内湿)タイプの人は外の湿気の影響をうけやすいといえます。身体の中の湿気は水っぽいものとネバネバした粘度の高いものとあります。粘ったものは痰といわれています。五臓で水液代謝と関わっているのは脾・肺・腎です。肺は汗や呼吸で水分を外に出します。腎は尿から出します。脾は水液を運化します。つまり水液の運送屋さんです。水液代謝に異常が現れた時は何処に問題があるか考えます。
「のどが乾いちゃった」
「昨日汲んでおいた水と今汲んだ水とどっちがいい?」
「・・・・・・今汲んだ水に決まってるじゃない! プンプン!」
溜まって停滞しているものはきれいではありませんね。人の身体の中も同じです。水液代謝の失調により溜まったものは湿、湿濁、痰、痰濁、濁飲・・・いろいろな言い方がありますが放っておきたくないものです。
咳・息苦しい・胸苦しい・鼻づまりなどの肺の症状がでていたら、肺の宣発粛降の働きが失調するしている為に水が停滞しているのかな?と考えます。脾の水の運化が失調している時は脾虚の症状が伴います。運化食欲不振・消化不良・お腹がゴロゴロいう・軟便や下痢(弛緩性の便秘の時もあります)・だるい・疲れ易い胃下垂や脱肛などの内臓下垂、その他統血不足による出血などがあります。また気血の生成が低下すると心も弱まって考え過ぎ、思いすぎになりやすく不眠・動悸などが出てくることもあります。
・・・雨や冷たい飲み物など湿気はだめなんだ!働けないよ!・・・と脾が悲鳴をあげています
脾は湿を嫌うといい外界からの湿の影響を受けると脾の機能が失調します。これを寒湿困脾・・・冷たい湿気が脾を困らせてる・・・といいます。脾虚の人はダブルパンチですね。「足腰が弱くて浮腫みやすいし、耳鳴りが少しあって夜中に何度もおしっこにおきます。それに 寒がりでエネルギーも無いので、ついウトウト してしまう私です。」腎陽虚です。水液代謝の失調が『腎の水を主る』働きにある時は下肢の方に浮腫みがでます。また、身体の冷え・寒がるなど陽気不足が伴います。水を代謝するにはエネルギーが必要です。
エネルギー・・・動力・・・燃焼・・・熱 というようにインスピレーションできると思いますが、人の身体も同じで、熱エネルギーが必要です。腎陰・腎陽は真陰・真陽といわれ身体の陰陽の本です。腎陽が不足すると代謝エネルギーは落ち込んで水は身体に停滞します。
梅雨
肺・脾・腎が虚している人は梅雨は体調が悪いですね。身体の除湿を考えましょう。水湿を外に出すのは
①尿から
②汗から
③便から
があります。
「湿を治するに小便を利さざるは、それは治にあらざるなり」といわれているそうでうが、まずは余分な水湿はおしっこから出すことを考えます。皆さんが知っていてよく使われるのは五苓散です。五苓散は温めて水湿を除きます。働きは利水滲湿・温陽化気です。水を利し(通じさせ)湿を滲みださせ、温めて水湿に尿に変化させるエネルギーをアップする・・・と理解しています。
残尿感や排尿後しぶるような感じがして膀胱炎かな?という時に猪苓湯(ボウネツ錠)を服用する人も多いと思います。
だから「猪苓湯って膀胱炎の漢方でしょ」って思っている人も多いと思います。排尿困難・排尿痛・血尿の症状がみられる状態を湿熱蘊結下焦(湿と熱が下の方の水の通り道に鬱滞してる)といって猪苓湯を使います。もう一つ水熱互結の時、猪苓湯を服用します。『もし脈浮、発熱し、渇して水を飲まんと欲し、小便利せざるものは猪苓湯之を主る』とか『少陰病、下痢、六七日、咳して嘔し渇し、心煩し眠るを得ざるものは猪苓湯之を主る』つまり身体に溜まった湿気と熱をさましながら尿から出してしまおう。というのが猪苓湯です。
「関節が浮腫んだので防已黄耆湯飲みました。」
「水肥りタイプなので防已黄耆湯がいいと思います。」
こんな言葉を耳にします。防已黄耆湯は湿と関係ありそうだなという感じがしますが、どうでしょう。
防已黄耆湯を使う時は
風湿 脈浮 身重く 汗出で悪風する
風水 脈浮 身重く 汗出で悪風する
となっています。
また服用後に皮下に虫のはうような感じがすることがあるが、衛陽回復の兆しだと書いてあります。衛陽は衛気のことで体表部を巡り、身体を温め外邪の侵入から身体を防衛する気です。つまり衛気不足で汗がもれやすいタイプの内湿を除く為の方剤といえます。もし湿が多い時はヨクイニンや五苓散を一緒に服用しましょう。またお腹が脹る時は枳殻や陳皮も服用しましょう。と書いてあります。
梅雨の頃は寒湿や湿熱が問題をおこしますから注意しましょう。
2007年6月ブログ暮らしの中の中医学より