花粉症については以前にも書いていますが、今週は花粉症によく使われる方剤についてです。一番飲んでいる人が多いと思われるのが小青竜湯です。方剤学を見てみると辛温解表剤に分類されています。身体を温めて発汗させて風寒の邪を追い出す風邪薬と言う事です。その働きは?滌飲解表・温肺降逆とかかれています。飲とは体内の不必要な水の事で、これを取り除き、発汗によって邪気を追い出し、肺を温めて肺気(肺のエネルギー)が上逆して咳になってるのを降ろす・・・・という働きが有る事がわかります。これによって小青竜湯を使うのに重用なポイントが2つあるのがわかります。1つは風寒の邪の侵襲。(邪は表にある)
もう1つは水飲が有る事です。
中医学(漢方)の考え方は『花粉症は風邪(ふうじゃ)によっておきる』です。風を除く必要があるわけです。小青竜湯は発汗力の強い麻黄が使われていますし桂枝の配合で更に強化されています。水飲があるタイプは脾の運化が弱いため、湿がたまる傾向にある人も多いです。花粉症の時期は長くて、風邪との戦いも長期になります。だから扶正しながら解表し、去湿する物がいいと考えますので、風寒型で湿のある方には勝湿顆粒をすすめています。
では勝湿顆粒はどんな働きでしょう?勝湿顆粒はかっ香正気散加減です。これは解表化湿・理気和中の働きがあります。解表は発汗によって風邪を追い出す事で、化湿は湿を除く事です。理気は胃腸の気滞(エネルギーの流れが停滞している)の流れを改善し中(お腹のこと)を和やかにする。*脾は『生痰の源』 肺は『貯痰の器』 鼻は肺のグループです。*水液代謝は脾・肺・腎がかかわっています。『脾の運化を主る』働きはよい状態にしておく事は大切です。勝湿顆粒は健脾燥湿の働きのものや理気健脾の働きのものの配合によって脾の働きが改善されるようになっています。
越婢湯は風水挟熱(風邪と水に熱が加わった状態)の時に使います。顔も浮腫んで、熱感があって、咽が渇く時もあります。肺の水液代謝とかかわっている宣発という働きが阻害された状態です。風邪をおいだして肺気を宣発させ、内に停滞していた熱をさまします。さらに白朮をくわえると脾の働きを助けて水の代謝がよくなります。この白朮が加わった方剤を越婢加朮湯といいます。
葛根湯加川きゅう辛夷もよく使われる漢方薬です。風寒タイプの鼻閉(鼻づまり)にいい漢方薬です。でも、やはり長期に服用するというのはどうでしょう?名前の通り葛根湯は麻黄と桂枝の組み合わせで発汗の強い方剤です。これに宣肺通鼻(鼻の通りをよくする)の辛夷と去風止痛(風邪を追い出し頭痛など痛みをとる)川きゅうが加わったものです。よく葛根湯三日とかいいますが、服用が長期になる時はする気や陰を補いながら服用するほうがいいと思います。ところで辛夷は鼻の通りをよくしますが、蒼耳子もよく使われます。蒼耳子散は蒼耳子・辛夷・白し・薄荷の組み合わせです。
鼻淵丸も蒼耳子と辛夷がはいっています。鼻淵丸は風熱の邪による鼻づまりや黄色い鼻水・頭痛などの風邪症状や肺経に熱が鬱滞して鼻づまりや黄色い鼻水や頭重や臭いや味がわからないなどの症状に使います。
蒼耳子・・・去風散湿・通鼻竅
辛夷 ・・・散風通竅
菊花・・・疏散風熱・清熱解毒
金銀花・・・清熱解毒
茜草・・・涼血活血・止血
の組み合わせです。風邪を追い出して鼻の通りをよくして、鼻の熱を清し(さまし)、解毒(菌や熱毒)します。また茜草根によって、血が熱を持つことによって鼻汁に血が混じったりや鼻衄を血熱を冷まし、血の巡りをよくする事で改善します。
本治(根本治療)を考えるなら衛益顆粒(玉屏風散)は重用です。花粉症は風邪によってひきおこされる症状ですから風邪を防御できる身体作りを考えます。衛益顆粒は衛気を補う漢方薬です。衛気は外邪に対する番人です。身体の気のなかで一番スピードがあって体表を巡り、身体を温め、表を守って風邪の侵入を防ぎます。また、外界と通じる肺の入り口(鼻・咽・気管支の上部)に分布して防衛します。
漢方の考え方として、アレルギー性鼻炎の人皆は衛気が虚していると言っても過言ではありません。花粉症の季節の前から服用しましょう。またいよいよ花粉症の症状が出ている場合でも衛気を補っておく事は大切です。邪の集まる所、その気必ず虚すといわれています。衛益顆粒で衛気を益しましょう!
麻黄附子細辛湯も陽虚(冷え)タイプには使われます。花粉症(アレルギー性鼻炎)は風邪によるものですから風邪の漢方が使われるわけです。水のような鼻水が落ちてしまう感じで、手足も冷えやすく身体も温まらないしだるいという人に合います。こんな時でも鼻づまりを伴う事も多いですね。そんな時は通鼻の働きがある鼻淵丸を併用します。
漢方は症状や体質に合わせて足し算引き算するのが本来の使い方です。葛根湯加川きゅう・辛夷も葛根湯だけでは鼻づまりに効きがわるいので川きゅうと辛夷を加えたと言う事です。蘇子降気湯(平喘顆粒)も花粉症の時に服用する事もあります。鼻炎ばかりでなく咳にもなってしまうタイプの人にいいです。
これは上実下虚を主治となっています。実とは実しているということで、寒痰の邪気が肺にあって病的な状態になっていると言う事で、虚とは弱って働きも不足している事です。上は肺、下は腎です。肺は呼気を主る、腎は吸気を主るといい呼吸は肺腎の共同作業によって行われます。老化や病気が長引いて衰弱した時に呼吸が浅くなるのは、そういった事と関わりの深い腎の弱りに起因する事が理解できます。
漢方茶としては
風寒の時はシナモンティー・生姜湯
風熱の時はミントティー・板藍茶
桑の葉茶・菊花茶(香菊花)・・・目のかゆみや充血にも
気虚で疲労感が強い時は香西洋参・シベリア人参茶
などがおすすめです。
2008年2月ブログ暮らしの中の中医学より
天人相応というのは中医学(漢方医学)の根底にある思想です。『自然界の中に人間は存在しているので、自然界の法則は人にもあてはまる。』・・・というものです。この考え方に共鳴しています。人間だけが特別ではありません。立ちっぱなしだと足が浮腫むのは水が停滞するからです。水は上から下に流れるのは自然の法則です。水を下から上に上げるにはエネルギーが必要です。ポンプを使うとか、毛細管現象とかが考えられます。人の身体においては心臓というポンプの働きは重用です。また、足の血管平滑筋の働きでひきしめて上に送るのも大切です。
これは気の推動力です。例えば血液の循環について考えてみます。脈管内には血が流れています。血は脾の運化作用と肺の気化作用によって生成され、全身を巡って組織器官を滋養します。血は気の推動作用によって全身を巡ります。血という物質が動くためには気というエネルギーが必要と言う事です。もしエネルギーが足りなければ巡りが悪くなります。またエネルギーが一定でないとフラストレーションをおこして停滞します。これが気滞です。気が停滞すれば血も停滞します。長引けば『瘀血』になります。
電気のおかげで夜が明るくなって、夜でも昼のようにすごせるようになりました。夜お買い物もできます。でも、人が自然にもっているリズムはどうでしょう?人の目は暗いところでもよく見えるようには出来ていません。人は昼活動し、夜休むようにできているのです。それが、自然のリズムです。
中医学(漢方)において、人体の陽気の運行は明け方から昼にかけ外へと向かいまた旺盛になり、昼過ぎから下降して夜には内に入るので人は眠りにつくと考えられています。これは丁度朝に日が出て昼に高く昇り、夕方日がおちて夜がくるのと同じです。この陽気の運行がバランスを崩すと身体に支障が出てきます。
風邪で熱を出した時、水分補給するのが大事なのは何故でしょう?熱は身体を乾燥させます。日照りの時は土も乾きます。身体も熱で水分不足をおこしやすいのです。水量が減れば川の流れが悪くなるように、人間の身体の血の巡りも悪くなります。病気になるとウイルスや菌をやっつけようと白血球が増えますがこれも瘀血をつくります。風邪の漢方につかわれている勺薬は白芍ですが、もともとは瘀血を去る働きをもつ赤芍だったそうです。故人の知恵の深さに驚くばかりです。
健康の為に、1日に2リットルの水を飲んで体調を崩している方がいます。夏、暑いときは汗で出てしまうので沢山の水が必要です。その時でさえ汗で出てしまうのは水だけではないので電解質の補給も必要です。脾胃の働きが弱くて水分の代謝が悪い人、よく食べ胃火が強い人とでは違います。例えば植物も水がたっぷり必要な物もあれば、サボテンのようにあまり水がいらない植物もあります。また、暑い時や風が吹いて乾き易い時は充分に水をあげますがジトジト湿っぽい季節にやりすぎると根腐れしてしまいます。人も自分の状態に合わせた水分の摂取が大切です。
2008年1月ブログ暮らしの中の中医学より
この頃、ついつい寝坊になってしまって・・・ 身体が弱ってしまったのかしら?冬の朝は寒くて寝床から抜け出したくない気分ですね。この,冬は寒いという当たり前なことが身体にとって重用なポイントです。身体の陽気も不足しやすい時期です。
冬の3ヵ月は『閉蔵』といいます。閉ざし貯蔵する季節と言う事です。冬は陽気を大切に保つ事が大事です。四季の過ごし方の中で唯一『遅く起きなさい』と書いてある季節なんです。人体における陽気は命と関わりがあります。冬、屋外に放りだされたら凍死してしまう事もあります。体温を維持する事はエネルギーのいる大変なことなのです。暖房が完備されデパートの中など暑いくらいの現代と違い、古代の人にとって陽気の保持は更に重用だったと思います。
身体を温かくして、温かい物を頂いて、充分睡眠をとる事は冬の養生の第一歩と言う事が解ります。日頃、冷えやすい人やエネルギー不足の人は補陽剤を使って温めると同時にエネルギーやエネルギーの元の精血を補いましょう。参茸補血丸・双料参茸丸・海馬補腎丸・参馬補腎丸などそういった働きがあります。
「それって皆補腎薬だよね。」って思うかもしれません。そうです。腎の陰陽は真陰・真陽といわれ陰陽の根っこみたいなものです。冬は腎の季です。この季節に腎陽を守りながら、腎陰(腎精)をしっかり補いましょう。また、精血同源ですから、血を補う事も大切です。当帰は補血・活血・散寒の働きがありますので、当帰の沢山使われているシロップの婦宝当帰膠がおいしく飲めて温まるのでお薦めです。女性は『血から衰える』といわれ、35才を堺に陰血が不足してきますから、薬膳にも使われる当帰は有効です。
補陽するか、散寒するかは身体の状態によります。冷えるといっても皆が陽虚というわけでない時もあります。陽気の不足はだるい・疲れやすいなど気虚(エネルギー不足)の症状を伴います。陰血の不足により血脈が滋養されずに冷える時もありますし、瘀血による血行不良の為冷える時もあります。寒邪の侵襲をうけて冷える時もあります。冷える。寒がる。だるい。やる気がおきない。眠くてしょうがない。・・・などは陽気が不足してる可能性大です。
是非、補陽薬を服用してみて下さい。
家の中全体を温かくする為には、燃料を燃焼させ温かい空気を隅々まで送ります。送る通路が閉ざされていても寒い部屋ができます。でも大元は燃料と火力です。人において燃料は精・血で、火力は陽気です。燃料を補う方法は益精血・滋陰などです。また火力を補うのは補火になります。補火して精血を補わなければ消耗してしまいますが、火が下火になっているなら補火しなくては消えてしまいます。動力、火力と燃料の関係は人の場合もあるという事も考えておきましょう。
2008年1月ブログ暮らしの中の中医学より