腎精を補う
腎には『命門の火』があるといいます
命のエネルギーのようなものです
また植物の種がこれから成長していく力を蓄えているように腎に成長・発育・生殖の力を持って生まれてきました
腎精と腎気(腎陽)は蝋燭と蝋燭の火に例えられますが、蝋燭が腎精、火は腎気と言われます
どちらも大事です
腎精が不足すると成長や発育の力が弱い・老化が早い・生殖の力不足・記憶力の減退・歯や骨が弱いなどがおこります
じゃあ腎精を補うにはどうしたら良いのでしょうか?
前回 六味地黄丸と八味地黄丸について書きましたが、これも補腎薬で腎精を補えます
しかし 腎精を補う力が強いと言われるのは動物薬です
鹿茸・鹿角・海馬・紫河車などの補陽薬や亀板(クサガメの甲羅)・鼈甲(スッポンの甲羅)などの補陰薬があります
鹿角や亀板や鼈甲は長時間煮だして膠にして使います
方剤学に亀鹿二仙膠(きろくにせんきょう)が腎陰腎陽腎精を補うものとして載っています
命門陰陽両虚を主治すると書いてあり、鹿角・亀板・枸杞の実・人参で構成されています
亀鹿・鹿角・すっぽんの甲羅・なつめ・枸杞の実・山茱萸の実・山査子の実・西洋人参の入った食品が出ています
飴炊きのようになっていて甘くて食べやすいです
漢方薬では鹿茸(鹿の幼角)が使われている参茸補血丸、
鹿茸・鹿腎(鹿の陰経など)・海馬(タツノオトシゴ)が使われている参馬補腎丸、
鹿茸・蛤蚧(オオヤモリの内臓を除いたもの)・冬虫夏草(昆虫の幼虫に寄生したフユムシナツクサタケ)が
使われている双料参茸丸があります
方剤学に出てくる左帰飲は六味丸の三補に鹿角や亀板・枸杞の実などが加えられたもので・右帰飲は八味丸の三補+附子と肉桂に鹿角膠や枸杞の実・当帰など加えられています
腎陰腎陽を補い、精を補う事は成長する力や生殖の力・老化を緩める為に助けになります
腎は精を蔵し、生長・発育・生殖を主る
骨を主り、髄を生じ、髄海に通じる
生れて成長していく力は腎にあります
その力は老化とも関わっています
陰陽は相対的なもので自然界のも人にもありますが、人の陰陽の元のような真陰・真陽は腎にあります
六味地黄丸
六味地黄丸は補剤の熟地黄・山薬・山茱萸と瀉剤の沢瀉・茯苓・牡丹皮で構成されています
腎陰の不足により虚火のある状態に使います
例えば腰や膝がたよりなく怠い・頭のふらつき・めまい感・耳鳴り・聴力減退・寝汗の他 手のひら足のうらのほてり・歯のぐらつき・頻尿など尿の異常などです
また、小児の発育不足にも使います
三補
熟地黄は腎陰を補い・精を充足し・髄を補い主薬です
山茱萸は肝腎を補い精は漏れをおさえます
山薬は腎を滋養し、脾を補い精の漏れをおさえます
三瀉
沢瀉は尿の出し湿濁を除き内熱を尿からだします
茯苓は脾を健やかにして湿を除き山薬の働きを助けます
牡丹皮は内熱や肝火をさまします
杞菊地黄丸
六味地黄丸に目に良い枸杞子と菊花を加えた物です
枸杞子(クコの実)は肝腎を補い明目といい視力減退や風を受けて涙が出るなどに使います
他に潤肺の働きもあります
菊花も明目の他、肝陽が上昇や、肝風が揺らす為のふらつきやめまいにも対応できます
八仙丸
六味丸に潤肺の麦門冬と肺気を収斂する五味子を加えたもので肺と腎が弱くなっている時に使います
腎は納気を主るといい吸気が弱く陰虚傾向の人に良いです
瀉火補腎丸
六味丸に虚熱を制する知母と腎の火が燃えすぎているのを抑える黄柏が加えられています
腎陰虚による虚火が強くなる過ぎている状態、陰虚火旺が顕著の状態に使います
八味地黄丸
六味丸に附子と桂皮が加わる用途は違ってきます
これは腎陽虚の漢方薬です
冷えによる下腹部のひきつり、下半身の冷えや浮腫み、尿は透明で尿量が多い場合も多いですが逆に排尿困難の場合もあります
附子は腎陽を温めて補います
桂枝は陽気を通じさせる働きです
これらが腎陽を鼓舞します
牛車腎気丸は八味地黄丸に牛膝と車前子が加わります
腎陽虚による下半身の浮腫みにつかいます
車前子は利尿の働きがあり牛膝は補腎の他 薬力を下の方に向かわせる働きもあります
*六味地黄丸を基本に色々な漢方薬がある事がわかります
食の話
食べるという事は命を保つ為に絶対必要な事です
私達の身体を構成している原子や分子は食べ物から得た原子や分子に1年で全て入れ替わるそうです
今の私の身体に1年前の原子や分子は1つも残っていない、つまり今ここにある身体はこれまでのこの1年間の食物からできているのです
そう考えるといかに食とは重要なものかという事が解ります
糖質・脂質・タンパク質は3代栄養素で
その他ビタミンやミネラルも必要です
中医学では薬食同源といい病気にならない為にも病気を良くする為にも食は重要と考えています
よく五味・五色を食べるといいますが五味五色は五臓と関係があるからです
彩りよく・色々な味を食べる事が五臓六腑を補う事になります
五味と五臓
中医学の五味は酸味・苦味・甘味・辛味・鹹味の5つです(一般的な五味は辛味がなくて旨味があり辛味は味ではなく刺激になるそうです)
酸味は肝を養うが摂り過ぎると肝を傷つける
苦味は心を養うが摂りすぎると心が傷つく
甘味は脾を養うが摂りすぎると脾が傷つく
辛味は肺を養うが摂りすぎると肺が傷つく
鹹味は腎を養うがとりすぎると腎が傷つく
五臓は西洋医学のそれとは違いがあります
なにしろ紀元前から五臓六腑の考え方はありました
だから働きにつけられた名前といえます
肝は血を蔵す・疏泄を主るといい肝の異常や弱りは目や爪に現れます
心は血脈を主る・神を蔵すといい心の異常や弱りは舌に現れます
脾は運化を主る・統血を主るといい脾の異常や弱りは食欲や出血傾向などに現れます
肺は一身の気を主るといい肺の異常や弱りは息切れや皮膚や鼻に現れます
腎は生長・発育・生殖を主る 骨を主るといい腎の異常や弱りは成長や老化の状態に現れます
また臓腑の関係もあります
肝の腑は胆・心の腑は小腸・脾の腑は胃・肺の腑は大腸・腎の腑は膀胱なので五味は腑とも関係しています
また五色では 肝は青・心は赤・脾は黄色・肺は白・腎は黒です
例えば甘くて黄色いサツマイモは脾に良い食材ですし 白く辛味のある大根は肺に良い食材です
食事は温かい物をゆっくりよく噛んで・五味五色をそろえて摂るようにすると五臓六腑を養う事が出来ると思います