不老長寿は昔から人々の願いだったと思います。いつまでも若々しくいたい、健康で長生きしたいと願うのは自然な事です。
この事は紀元前の昔から人々の課題でした。黄帝内経には次のように書かれています。真人と言われる人は人類の初期の時代にあって天地の道理を知り、陰陽の変化に応じ、養生の道を掌握しているので寿命が尽きる事が無い。
また至人といわれる人はその後の時代にあっても世俗の正しくない生活から離れ、自然と調和し、陰陽、四季の変化に応じて養生したので真人と同じようであった。聖人と称される人は世俗にあっても心をいつも穏かに保ち、世俗と天地の間の調和した気の中いて、こころも身体も衰えないので百才を過ぎても生きる事ができる。賢人といわれる人は自然の法則をよりどころとして、真人をお手本として養生していくので長生きできる。
聖人の所に
「以恬愉為務、以自得為功」
とあります。
穏かで楽しめて欲が無い・・・と言う事だと思います。漢方で考えると老化とはなんでしょう?
五臓皆衰・・・ 五臓が衰え
筋骨解堕・・・ 筋骨が弱まり
天癸尽矣・・・ 天癸は性ホルモンなどのことでそれが尽きる
と内経にあります。五臓六腑の精は腎に貯えられているので、腎の衰えは五臓六腑の弱りと関係しています。腎は「成長 発育 生殖を主る」といって、育ち、子を成し、老いるという人の一生と深く関っています。生れた時に持っている命の種のようなものは腎に貯えられています。腎には命門の火があるといいます。その火は生きていく上に不可欠なエネルギーです。腎を補う事は五臓六腑も衰えないようにする事です。精を補う事は腎を補う事です。精血同源・肝腎同源といい精や血の不足は容貌の衰えになります。
血や精は身体を構成する物質的基盤です。簡単にいうと身体は血・精・津液(水)でできている・・という事です。老化とはこれら全部の不足傾向になります。また、エネルギーも不足しがちです。特に血や精はエネルギーの素です。特に腎気、腎精は身体を育て維持する力です。腎がしっかりしているという事は身体の根本がしっかりしているという事です。
また 腎の働きの1つに
「腎は骨を主り、髄を生じ、髄海に通じる」
という事があります。腎は骨を主るとあるのは 骨に関係する事すべてをさします。骨は新陳代謝しています。一方で作られ、一方で壊され 骨形成と破骨がバランスよくおこなわれています。それに女性ホルモンや副甲状腺ホルモン 活性型ビタミンDを作る腎臓の働き など栄養(カルシウムやビタミンD)の摂取不足と運動による負荷以外はすべて『骨を主る』のうちです。
中薬学をみると益精 益髄と書かれたものは動物薬といわれるものに多く力があるものとされます。また「髄を生む」とあります。髄は骨髄 脊髄 延髄 脳髄 などで 髄海は脳の事です。
腎がしっかりしていれば元気で長生きです。でも 脾臓が弱いとそうはいきません。腎に貯えられた精は脾の働きにより後天的に補充されているからです。どんなに丈夫で良い身体を持って生まれてきても、栄養不良では身体は養われないし、腎精も不足して腎は弱くなってしまいます。もともと脾気虚・暴飲暴食で脾が弱った・ストレスで肝に脾が攻められたなど脾の働きがわるい時は脾を健やかにしなくてはいけません。また瘀血で血行障害があると臓腑に栄養が運ばれず、老廃物も停滞しがちになります。
つまり瘀血も老化の原因になるという事です。
老化はなにか一つの物質が減るから老化するわけではありません。
例えば骨粗しょう症→カルシウム?
中医学では腎の骨を主り髄を生む働きの弱りと考え補腎します。
肌がカサカサしてしわっぽくて→コラーゲン?
中医では潤いは血や陰の不足とみます。滋陰、補血ですが、脾が弱い時は補気生血する事もあります。実際全体を考えることは とても大切な事だと思います。やっぱり全体のバランス・陰陽のバランスですね。
2008年10月ブログ 暮らしの中の中医学より
疲れた-!
疲れるとでてくる色々な症状はどうしてでてくるのでしょう?
特にハードな運動や仕事をこなしたわけではないのにこの疲労感は何でしょう?
疲れは気と関係があります。気はエネルギー的なものだからです。気の不足・気が流れないで停滞している状態など疲労感と関係しています。また、気の素になる血や精が不足しても気の生成ができません。この事は五臓の弱りとも関係しています。
夏バテがでてくる時期です。夏は心の季で五行で
グーっとドリンク1本元気でますよ!
ホント!元気!元気!
というようにいつでもいくわけではありません。
とれにくい疲れはどこからきているのでしょう?
また、疲れ易くなっているのはどうしてでしょう?
疲れるとでてくる色々は火です。火は熱で人を乾かします。自然の中で乾燥させるものに火と風があります。夏は心火は強くなりやすく心陰はへりやすい!そればかりでなく全体の陰液や津液も不足がちになります。ですから夏バテは中医学でいうと気陰両虚や気津両虚が多いといえます。
「疲れがとれないし、動悸がする」
「疲れがとれないし、ほてり感がある」
「疲れがとれないし、咽がカサカサする」
「疲れがとれないし、髪や肌がパサパサ」
気と陰津が不足していそうです。気と陰津を補えるものに、漢方では生脈散(麦味参顆粒)、漢方ハーブでは西洋人参(香西洋参)があります。
夏にビールやジュースなど冷たい飲み物ばかりのんでいたり、食事も冷麺・そうめん・冷麦・冷シャブ・サラダなど冷たい物を多くとると寒湿がたまります。寒湿は冷たい湿気の事で、冷えて脾胃の働きが停滞してしまう状態になります。脾は気血生化の源(気血を作るみなもと)ですから、当然気は不足します。この時の『疲れ感』は脾がよわっている事からきています。『脾は運化を主る』ため栄養分の吸収や輸送状態が悪いのみならず水液代謝も悪くなります。つまり、身体に余分な湿がたまるという事です。
脾は湿を嫌うので、清気を上昇する事がでなくて、「眠くてしかたない」と言う状態になったり、時にめまいがしたりします。余分な湿があるわけですから身体は重だるくなります。胃腸の働きも弱って“食欲がない・軟便や下痢っぽい・お腹がゴロゴロいう”などの症状がでます。この時、寒湿を除くだけで症状が快復する時と脾を元気にする為健脾が必要な時とあります。もし、それほど働いたわけでもなく、それほどの運動をしたわけでもないのに疲労感が強い時は、すごく神経を使った場合も多いと思います。
血虚タイプの人は精神的な疲労になりやすいです。それは肝が弱い為です。
肝蔵血・・・肝は血を貯める所です。
肝の機能が弱ければ蔵血も出来ない事になります。また、
肝主疏泄・・・肝は疏泄をつかさどる
つまり、気というエネルギーが身体中をスムースに巡るようにコントロールする働きのようなものですが、肝の弱りにより この働きもうまくいかなくなります。気は不足しているのでなく
行き渡らない・・・その為の疲労感です。
この時はイライラやゆううつ感・眠りが浅いなどの症状を伴ったり、お腹や脇など脹って痛む症状を伴ったりします。その時は肝の疏泄改善する(疏肝)とともに、停滞した気を巡らす(理気)しながら足りない気血を補います。
2008年9月29日暮らしの中の中医学
一般に動悸というと心臓がドキドキする事をいいます。みぞおちの所や脇腹のドキドキを動悸と言う方もいます。中医学では心臓のところを心悸、それより下の部分を心下悸といったりします。悸はわななくと読みますが心が恐ろしくふるえている状況といえます。心は心臓や心(こころ)の事です。心は血脈を主り、神(物事を考える能力)を蔵します。心の異常は『心主血脈』の異常や『心蔵神』の異常につながるわけです。びっくりしたり、いやな事があったり、緊張したりでドキドキするのは自然なことです。でも、そのドキドキがなかなか止まらなかったり、なんでも無い時にドキドキしたりは心に問題があるといえます。
身体は気血が充実していることが大切ですが、心という臓器も同じです。血は滋養・気はエネルギーです。血が不足すればこころも弱くなって、不眠 健忘などがでてきやすくなります。また気が不足すると駆血力が低下します。ですから心臓のポンプの働きも弱って、血の巡りも悪くなります。
回中電灯の乾電池が弱くなってくると ついたり消えたり安定しません。豆電球自体が弱まっても、電球と乾電池を結ぶルートの接触が悪くても、電池はエネルギーで気・豆電球は物質面で血です。また、ルートの不良はエネルギーがスムースに流れないと言う事で気滞です。
心臓の拍動は気の推動力によってなされているわけですから、エネルギー不足(気虚)でもエネルギーの送られ方がスムースでなく(気滞)ても心臓自体が動脈硬化(瘀血や痰湿が原因する)などで器質的な面で弱っていても(血虚・陰虚)動悸になります。身体が疲れていたり、病後だったりする時に動悸がし易いのは身体の気が不足しているからです。神経が疲れている時に動悸がするのは気の消耗と停滞があるからです。
不整脈など心臓の所に感じる動悸は心に問題があります。心臓だから『心』というのは当たり前なようですが、漢方の考え方では心臓でも『腎』に問題がある時もあります。五臓は影響しあっているので、中医理論をしっかり把握して考えなくてはなりません。心に問題があるときは『こころ』にも問題がでてきます。心は神を蔵す。神は精神活動の根幹のような存在です。心の気や心の血が不足すれば神も安定する事はできません。
ワー!と驚かされて、ドキドキしてしまうのは神も乱されて、心も乱れるからです。
中医学では心臓の所の動悸を心悸といって6のパターンに分類しています。心虚胆怯・心血不足・陰虚火旺・心陽不振・水飲凌心・心血瘀阻の6つです。
心が虚して胆も虚しているので怯えやすい状態・・・ちょうど驚かされてドキドキするような感じです。
ですから不安感を伴います。もし この状態で胃の調子が悪い時は、痰熱がある場合もあります。この時は温胆湯を服用するといいです。
心血の不足や心陰の不足は心の栄養不足です。身体は栄養や酸素が必要です。いつでも滋養されていなくては生きていけません。血が滋養できなければ組織は死んでしまいます。心臓も同じです。心血虚や心陰虚の心臓は「酸素や栄養が足りないからもっと運んでよ」と言って脈拍をはやくドキドキさせて足りない量を送りこもうとしています。
心陰の不足は血や水分など物質の不足のみならず陰の持つ抑制的な力も不足するのでドキドキに拍車がかかります。心血瘀阻も瘀血で血がスムースに行かない状態ですから、酸素や栄養不足で心臓はヒーヒーいってます。では心血を補う、心陰を補う、活血化瘀薬で血脈を通じさせるなどは、とても大事だと言う事がわかります。
最初に書いたようにエネルギーの不足は動悸につながります。エネルギーの源は腎にある元気です。
元気ですかー?という元気という字は気の元とかきます。
腎の元気は『先天の精』からでき、脾によって水穀できる水『穀の精微』によって後天的に補充されます。腎のエネルギー(陽気・元気)は身体を成長発育のエネルギーであり、身体を維持する根本的な力といえます。この精の貯えがへり、腎の気を作るもとが足りなくなってくると、全身的なエネルギー状態が悪くなり、代謝も落ちて身体が冷えやすくなり(特に下半身)水分も停滞し、浮腫みもでます。心臓のポンプの働きも弱まって、規則正しい拍動を維持できなくなったり、結滞したりします。浮腫みの出る状態も もとに陽気不足があります。
心陽不振は心腎の陽気が不足している状態で水飲凌心は陽気の不足の為 水が代謝できず、陰邪の水が停滞しているため、さらに心陽は不足する状態です。漢方からだの現象をとらえるとき、陰陽 五行は重用です。それは自然の世界とも共通している考え方です。
2008年9月ブログ暮らしの中の中医学より