肉食中心だときれやすくなる・・・などという事をよく耳にしますが、食事と心は関係あるのでしょうか?寝る前にホットミルクを飲むとよくねむれるよ・・・などともいいます。食べものと心は関係しているようです。甘草小麦大棗湯という漢方薬は 小麦 なつめ 甘草 の組み合わせです。いかにも食品ぽいですね。
この漢方薬は心が弱っている時に使います。中医学では養心安神・和中緩急(こころを養い、物事を考える働きを安定させ、胃腸の働きを整えて、急な状況を穏かにする)の効があるとしています。
「こころ病めば麦を食うべし」
「肝急に苦しめば、急ぎ甘を食しもって急をゆるむ」
などの言葉が昔の書物にあります。
七つの感情と五臓は関係しています。五臓は五つの味(五味)と関係しています。また五つの色(赤・青・黄色・白・黒)の関係もあります。味や彩りがバラエティーな食卓は五臓が満遍なく養えるといえます。中医学で鬱症になる主なる原因『肝・脾・腎の損傷と気血の失調』と考えています。逆に考えると肝・脾・腎が弱い人は損傷を受け易く鬱証になりやすいし、気血が充実していない人もやはり鬱証になりやすいといえます。更にいえば神経の細いタイプや感受性の強いタイプの人は肝や脾や腎が弱く、気血が不足しやすいタイプといえます。ならば、気血を作る食事は重用です。
パニック障害や抑うつ神経症 不安神経症・・・等 こころのバランスを崩している若者が多い事が気になります。身体のバランスはこころのバランスと関係があります。バランスの良いからだというのは筋肉もりもりの事でも 力持ちの事でも スポーツに優れている事でもありません。
五臓のバランス
気血津液の充実
気血のスムースな流れの事です。わしも年をとって気が弱くなったものじゃ まだまだ お元気じゃないですか。万年までだいぶありますよ。若い時は新しい事に挑戦する意欲や大きな希望や夢をもっているものだと思います。時代のせいだという考え方もありますが・・・・本来 時代をかえる力は若者にあるのだと思います。
でも なぜか疲れている。貧血・肥満・ダイエットによる偏食や栄養不良・若年性成人病・・・また形や検査値に現れなくても だるい 疲れ易い しびれる痛む その他不定愁訴となって現れる事も多いようです。しっかり三食食べましょう。もし 朝食が食べられないなら脾に問題があります。
脾は『気血を作る源』ですから脾を元気にする事は重用です。穀類や芋類などは脾を健やかにします。お寺で朝粥を食べますが理にかなっていると思います。お粥は温かく脾臓にやさしい食べ物で吸収がよくすぐエネルギーになります。現代の食生活において脾は傷つけられる事が多いようです。冷蔵庫のなかった時代には考えられない冷たい物を常食、常飲する事 飽食の時代 グルメなどといって 食べ過ぎ飲み過ぎ偏食など みな脾を傷つけています。
「いっぱい食べられるんだよ。それでも脾がわるいの?」
「脾は食べ物を気や血に変化させる働きをします。」
だから食べても疲れやすい時、血が不足したり 身にならない時など脾がうまく働いてくれていない証拠です。もし気血の生成が弱ければ心も肝も養われず、血に宿るといわれている心の神 肝の魂はより所をうしなって、こころが不安定な状態になってしまいます。何をたべるか、どうやって食べるか、いつ食べるかなど重用です。仏教で食事の前の祈りがあります。自分の働きに応じて、また徳をつむ為に、健康の為にお食事をありがたく頂くという主旨の祈りです。まさしく食は命の糧ですから、欲望で食するのでなく、身体の事を思って食する事が健康につながります。
2008年11月ブログ暮らしの中の中医学
「この植物はたっぷりお水をあげてくださいね。でもこれは1週間に一回たっぷり水をあげれば大丈夫です。」植物は種類によって違いがあります。また 同じ室内用の観葉植物でも暑い真夏はたっぷり 梅雨の頃は少なめに水やりします。私達は日常 固体や気候に応じてより良い状態を考えて変えています。人の身体も個々の違いや気候の変化に応じて養生や治療をする事が大切です。
身体の湿が多いタイプ 身体が乾燥ぎみのタイプが同じ漢方薬では変だと思いませんか?また、日本のように四季に変化があるところでは養生も変化に合わせた方がよさそうです。例えば咳嗽です。痰がでるか?でないか?痰の量が多いか?少ないか?絡んでるがでてこないか?痰1つとっても状況はちがいます。もし咽がカサカサして 痰がない または痰がへばりついて出てこないなどは 乾燥している状態です。だから潤す事が大切です。へばりついて出ない時でも水が多くなれば舟が進むように、潤して排出します。そんな時は潤肺糖漿や麦門冬湯など潤す方剤を使います。
「これとてもよく効いたのでAさんにもあげていいですか?」
「Aさんはも空咳ですか?」
「Aさんは咳をするたびに痰がでるようでティッシュでとっています。そうそう水っぽい痰がいっぱい出てくるっていってました。」
「それは 痰湿が多い状態です。潤すと痰が更に増える時もあります。」
「さむがりで服もきこんでいますが・・・」
「Aさんは湿気の多い状態のようです。寒と痰があるので、温めて乾かすようにした方がいいでしょう。」
胃腸に関してはどうでしょう?脾胃の痰湿や乾燥ってなに?でしょう?
先ず湿
胃腸に湿気がたまってる事は吸収しきれない分がたまってると言う事です。脾の運化作用が弱いか 暴飲暴食により持ってる力以上に取り過ぎてる時もあります。(脾の運化とは栄養分や水分の消化吸収や輸送の事です。)余分な湿気で働きが阻害されて吐き気や嘔吐・下痢になります。
それでは乾燥は?
乾いていたらすべりが悪く送る力が不足するので便秘傾向になったり、受けつけにくくなったり 下の送れなくなったりして嘔吐になる事もあります。
湿や乾燥と皮膚
一般に湿疹が出来ると抗ヒスタミン剤やステロイド剤あるいは非ステロイドの消炎剤などをつけて治します。何度かつけて治ってしまえばいいのですが、繰り返す時はちょっと考えてみましょう。『皮膚は内臓の鏡』という言葉があります。中医学(漢方)では皮膚がジュクジュク湿っぽいか?カサカサ乾燥タイプか?対処の仕方は違ってきます。ジュクジュクは湿気があるわけですから菌が繁殖し易い状況です。水虫も真菌で身体のかびです。かびは高温多湿な環境を好みます。
ではカサカサの肌はどうでしょう?
外側からの刺激に弱くすぐに炎症しやすい状態です。自然界で乾かす原因を考えてみる時、洗濯物を思い起こすと、晴れて太陽がギラギラ暑い時もすぐかわきますが、風がある時もよく乾きます。風と熱は乾きにつながる事がわかります。肌の乾いている原因が熱による事も多くみられます。湿気が多いか、乾燥しているかで方剤選びは違います。湿気の多いと脾の働きは悪くなっています。
『脾は湿を嫌う』という言い方をしますが、健脾燥湿の物を使い、栄養豊富で消化に手間取る(粘膩)の性質のものを避けます。湿が停滞して化熱してくると湿熱になります。スープが煮詰まるとドロドロしてくるように粘ってしつこいものになってきます。湿がドロドロしてきたものは痰です。脂肪も痰のうちです。ドロドロしたものは取り除きにくいしばい菌も繁殖し易いです。
化痰薬に清熱解毒と利湿の働きのある馬歯ケン(五行草茶)や白花蛇舌草な加えたりします。
乾燥している時は潤す事が中心です。補血・生津・滋陰など働きのあるものを使います。熱の為に乾燥している時は清熱・涼血などの方法も必要です。逆に身体の栄養や物質面の不足によっておきる虚熱には知柏地黄丸(瀉火補腎丸)のような滋陰清熱のものを選びます。虚熱は素に身体という物質の弱りがあるわけですから、注意が必要です。火は物質を燃やすので物質は又火によって減るという事になるからです。ですから、虚火を抑えながらも陰を補うことはとても重用です。もし湿をさらに潤し、燥を更に乾燥させたら大変な事になってしまうのは明らかです。身体の声をきいて漢方を選びましょう。
2008年10月22日暮らしの中の中医学
「ねえ ねえ あのことお母さんに聞いてみた?」
「まだだよ ママの顔色をうかがって、きげんがよさそうな時にきくね。」
この会話のように 顔色を見るとか顔色をうかがうとかいいますが、この場合は赤いとか 青いとかいうのでなく 顔にでる気分をいってるようです。中医学(漢方)は見るということが4つの診断方法の中の1つでとても大切です。そのうち顔は大きな情報源といえます。特に漢方を学んでなくても「顔色がわるいけど大丈夫?」とか「あー ぴーちゃんの話したらあかくなったー」とか知らず知らずのうちに顔色と心や身体をむすびつけています。
この夏は北京オリンピックでしたが、感動したり、がっかりしたりで 暑い夏 熱くなってテレビをみた人も多かったと思います。メダルをとったインタビュウーで、選手のイキイキした笑顔が見られました。イキイキは活き活きとか生き生きとかかきますが、心も身体もハツラツとして元気な様子の事だと思います。
とびきりの笑顔と なんといっても目がキラキラ輝いて見えます。この目の輝きは生命力を現しています。中医学(漢方)では生命活動や精神活動を“神”といって神が有るか無いを言葉や反応や身体の状態を見て判断しますが、そのうち目の輝きや動きを一番重要視します。『目は口ほどに物を言い』などといいますが、上記のように目は精神状態とも密接にかかわっています。
顔色が青くなる時はどんな時でしょう。
●ショックな事があって蒼ざめたとか
●唇も真っ青だからプールから上がって温まりなさいと言われたとか
●寒気がするって 青い顔して帰ったよとか
青は五臓で肝の色です。肝の経絡とも関係しています。『肝は疏泄を主る』ので気血の流れと関係しています。冷えや痛みにより気血が鬱滞するとき青色が見られます。
赤は五臓の心の色で、五行の火・五気では暑で熱や興奮や行き過ぎなどの状態と関係します。
「ねーねー、A君がすきなの?」
「(ポッ!ドキドキ)ちがうわよ!」
・・・・・・といっても真っ赤!顔にでていますよ。
ドキドキは「心」 赤らめた顔の赤も「心」と関係しています。赤色は興奮や熱を意味しますが、実熱の時もあれば虚熱の時もあります。風邪をひいて高熱を出し赤い顔をしている時は実熱で外邪による発熱です。食欲旺盛でバイタリティーがあり怒りっぽく赤ら顔の時も実熱です。肝や心に火が有る事が多いと思います。痩せていて両頬だけがポッと紅いのは虚熱と考えられます。虚熱は身体の物質面が不足した為に出てくる熱の事で、陰陽のバランスの崩れと関係しています。
私自身は紅い顔色を見た時 実熱か虚熱かだけでなくアレルギーがあるかかゆみはどうかなどをうかがいます。アレルギーの炎症による赤みの事もあるからです。また、赤と心は関係があるので、眠りの状態や動悸があるかなども考えにいれています。
黄は五臓の脾の色で五気では湿です。私達が顔色が黄色いといって連想するのは黄疸です。黄疸は肝臓の疾患や胆道の閉塞などにより ビリルビンが血中に溢れて黄色くなる状態ですが、中医学(漢方)では湿の病気と考えます。でも黄疸以外にも黄色くなる事があります。
「大丈夫?顔色がわるいよ。黄色っぽくて・・・」
「うん、胃腸の調子がずっと悪くて・・・(もともと黄色いんだけど・・・)」
中医学(漢方)では正常より黄色っぽくてつやのないことを萎黄といいます。脾胃気虚・脾虚湿阻・血虚が考えられます。
胃腸の働きが悪く・だるいく疲れ易い・息切れなどが脾胃気虚がそれに浮腫みや重だるさ 尿が少なく 下痢っぽいなどが加われば湿がからんできている事がわかります。また血虚なら動悸・立ちくらみ・不眠・しびれなど血の滋養が悪い為におきる症状があります。
「私長生きできそうもないわ。美人薄命っていうでしょ」
「エーッツ!」
昔は肺結核は不治の病で、色が白く、はかなげな女性を見て、美人薄命といわれるようになったというのを聞いた事があります。白は五臓の肺の色で五気では燥です。また白は寒を現しています。陽気が不足すると代謝がわるくなり体の水が停滞して顔が白くはれぼったくなります。また出血などで赤色の血が不足すると白っぽくなります。
艶がなく くすんで黒ずんだ顔色を見たら、ずいぶん具合が悪そう 大丈夫かしら?と感じると思います。黒は腎の色で五気では寒です。陽気が不足すると代謝のエネルギーも不足します。血を巡らす力も弱くなり、瘀血も生じます。又水液代謝も悪く浮腫みがでやすいです。痩せて物質としての身体が不足する、腎精も不足します。血や精は生命エネルギーの素です。顔色の黒ずみは瘀血の時もあります。また顔色が黒くてもにつやがあれば病的ではありません。
「ぴぴ君大丈夫?」
「日焼けしちゃったよ!」
ふだんの生活の中では黒ずむというより、くすんだ感じをうける事はよくあります。寒くなってきて顔色がくすむ・疲れて顔色がくすむなど・・・これは血の巡りの悪さと関係しています。『痛む・しこる・黒ずむ』の瘀血の3大症状の1つです。痛みやしこりは重症です。くすみがでたところで血の巡りを良くする事を考えましょう。
未病先防・・・病気になる前に予防しましょう。
2008年10月ブログ暮らしの中の中医学より