病気と漢方

2023-11-05

年齢と伴に足腰の衰えを感じるものです

骨と筋肉は協力して私達の身体を支えてくれています
足腰の衰えを感じるのはそのどちらも弱くなっているからだと思います
特に筋肉をつける運動をする事は骨や関節の支えとしても大切です

*脾は肌肉を主り、四肢を主る
手足に力が入らないのは脾が弱っているのかもしれません

*肝は筋を主る
この頃 ふくらはぎがよくつる・手の指がつるなどは肝が弱っているのかもしれません

*腎は骨を主り、髄を生じる
骨密度が低くなっているなら腎が弱っているかもしれません
こうした臓腑の弱りが痛みをおこす素になっている場合も多くあります

また痛みは寒いと悪化したり、梅雨の頃など湿度が高いと悪化したり、風にあたると痛くなったり痛みが増したり、あるいは赤く腫れている時は温めると悪化するなどの経験があると思います
痛みは風・寒・湿・熱などの外的要因によっても引き起こされたり、悪化したりします

また中医学では『不通則痛』通じないと痛みになるといいます
これは血の流れや経絡の通りを指し、気滞や瘀血や痰飲が流れを阻害するものになります

痛みは弱った所に風・寒・湿・熱などの邪気が入り込み気滞・瘀血・痰湿となって流れを阻害する為に生じると考えられています

肝は血・腎は精・脾は気と関係が深く・気血精の不足があれば筋肉痛や関節痛は慢性化しやすくなります
不足している場合は大いに補っておきましょう
中でも動物性の中薬は力があるものとされています
鹿茸や鹿角膠は益精血・強筋骨・亀板は益腎強骨と中薬学にあります
亀鹿仙は亀板や鹿角が入れてある食品ですから1日1袋食べて力をつけると良いです

補う+対症療法の漢方薬は
独歩顆粒(独活寄生湯)・ロイルック(疎経活血湯)・サンワロンD(大防風湯)があります

2023-09-05

近年、長引く咳の中には胃食道逆流症によるものがあると言われています胃酸が胃の近くの食道を刺激すると迷走神経が刺激され咳になるそうです

中医学では紀元前から胃と肺は関係が言われてきています
『天気は肺に通じる・地気はのどに通じる』(素問)
天気は大気から呼吸によって受け取るものの事で咽喉を伝わり肺に入り、地気とは大地から受け取る水穀の事で咽喉を通って胃に入ります
肺と胃は横隔膜を隔ててお隣どうしです
更に肺の経絡はお腹の辺りから出て大腸を通り上に昇って胃の上口から横隔膜を通り肺に達するといい経絡でもつながっています

肺の生理機能に宣発と粛降があります
宣発の働きの1つは体内の濁気の排泄(呼吸の呼によって排泄しています)で、粛降の働きの1つが自然界の清気の吸入です
これらの働きが失調すると咳や息苦しい・鼻づまりなどの症状がでてきます

この肺の上下運動は脾胃の影響をうけます
脾は昇清を主る・胃は降濁を主る・・・といい飲食によって得た水穀の精微は脾の昇清機能により肺に送られます
また胃は飲食物を下に送っていくので、胃のベクトルは下に向いています
肺の粛降(吸入する力)は胃の影響を受けています
胃の働きが失調し、胃気が上逆すればゲップや胃酸の逆流がおこります
つまり胃食道逆流症になります

方剤学を見てみると胃腸症状と咳の両方治すとなっている方剤が見られます
例えば 六君子湯です
何故咳嗽が起こるかを以下のように書いています
・・・脾運不足により水湿が停滞して痰湿を形成し「脾は生痰の源、肺は貯痰の器」で肺に影響が及ぶと慢性咳嗽・喘鳴・多痰など痰湿阻肺の症候が生じる
又 麦門冬湯は肺陰不足の咳嗽にも胃陰不足の嘔吐にも使います
この場合は 胃陰が不足して胃気が和降できず上逆すると嘔吐をともなう。胃陰虚で虚火が肺陰を傷灼すると肺陰も不足して肺気が上逆するので咳込んで・・・痰が切れにくく粘稠である

肺と胃は密接に関係しているので胃の働きをスムーズにしておく事は良い事です
咳が長引いている人は暴飲暴食をさけ食生活のリズムも整え 晶三仙も利用するとよいです

2023-07-01

独活寄生湯の話

独歩顆粒という漢方薬があります
独りで歩くという名前ですが方剤名は独活寄生湯です
効能・効果は 疲れやすく下肢が冷えやすいものの次の諸症:腰痛、関節痛、下肢のしびれ・痛み です

『中医内科学』は中医学の教科書ですが、痺証の項目があります
痺証の『痺』は本来『痹』の字ですが、どちらもしびれるという意味があります
痛みやしびれは『通じない』事で滋養されない為におきます
漢方医学には気血が経絡を流れているという独特の考え方があります
ツボに鍼や灸をした経験のある方も沢山いらっしゃると思いますがツボは経絡上にあり臓腑につながっています
だから痛い場所から離れていても楽になってきます

風・寒・湿・熱の邪気が経絡に入り込み、気血の流れを阻滞させる事で痛みが出てくると考えられています
若くて丈夫な人は経絡の中に邪気は入り込めません
何故なら気血が充実して流れているからです
しかし疲労や老化により経絡中の気血が不足すると邪気が入ってしまい痺証となります

風邪(ふうじゃ)に先導されて寒邪と湿邪、或いは熱邪と湿邪のように幾つか合わさって入ります
だから痺証の漢方薬は袪風・散寒・除湿・清熱のように邪気を取り除く事をします

痛みや痺れが長引くと気血が不足したり肝腎が弱ってしまうので、漢方薬の応援があっても身体自体が取り除くように働けないのです
そこで気血を補い、肝腎を補いながら邪気を除くのが、独活寄生湯(独歩顆粒)です

主薬の独活はウドの根で風湿の邪気を除くと伴に経絡の流れを改善します
桑寄生・杜仲・牛膝は肝腎を補うと伴に強筋骨と言って筋骨も補います
また、熟地黄は肝腎を補うと伴に益精填髄となっています

お湯に溶かして飲むと舌が痺れるような辛味を感じていかにも効きそうです
これは細辛によるものです
細辛は方剤学に「陰経の風寒を発散し筋骨の風湿を捜剔して止痛する」と書いてあり何とも頼もしい感じがします

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