病気と漢方

2014-10-01

パンダ⑤ 生地黄・麦門冬・亀板・枸杞子・当帰・赤芍・白芍・沢蘭・山梔子・黄芩・牛膝・知母・黄柏・夜交藤・生麦芽。これは中国の中医学の病院で高プロラクチン血症で子宮内膜症のある女性にだされた処方です。弁証は腎虚火旺で、この処方が出されました。
もちろん プロラクチンも下がり 処方を変化させながら基礎体温もよくなってきました。この処方はこの患者さんのみに使われた漢方処方です。つまり本当の意味のオーダーメイドです。こんな事は日本ではできませんが、よりあった方剤を組み合わせて出す事でよい結果を生んでいます。

 19日は高橋楊子先生の女性不妊と症例検討の講義でした。高橋先生は中医臨床の弁証論治トレーニングの解説や『証の診方・治し方』『舌診の基礎』などを執筆なさっている方です。この処方中に麦門冬が入っています。温経湯の中にも入っています。麦門冬の帰経(どの臓腑に働くかの場所の事)は肺・心・胃で 清熱潤肺・止咳の働きがあります。潤肺の働きは不妊とは関係なさそうな感じですが、高橋先生がすばらしい考察をしていらっしゃいました。

 不妊症において生殖を主るといわれる腎は重要です。私たち中医漢方を学ぶ者にとって周知している事です。参茸補血丸・杞菊地黄丸・参馬補腎丸などを用いるのはその為です。しかし麦門冬は潤肺です。この人は腎虚火旺ですから腎陰(腎水)は少なくなっています。五臓の並びでみると肺と腎は相生の関係ですから肺が潤えばその子にあたる腎も潤うと考えられるのではないか。
と言われて、その理論の奥深さに感心しました。こういった考えは漢方を運用するうえでとても重要なことです。

 

2014-09-01

 昨日は入間川病院 泌尿器科医長でいらっしゃる宮田和豊先生が『ED治療薬について』という演題で薬剤師会の為に講演してくださいました。期せずして今月の中医薬研究会も男性不妊について河野康文先生が講義してくださいました。宮田先生は生活習慣病や前立腺肥大などとの関係も含めて話されました。

 特に動脈硬化はEDとのかかわりも強いとの事で やはり循環は重要だということを認識しました。投薬は皆さんがよくしっているバイアグラを中心にいくつかの薬剤や方法があります。また そういった薬剤がつかえない時に 患部にプロスタグランジンの注射をする方法もあるそうです。これは血管拡張作用があるものです。中医学ではホルモン的な物は精血と考えます。また陽気も機能・元気と関係しているので 補陽薬や益精血薬など 物質面から滋陰薬なども必要ですが、活血化オはもっと重要だと感じましした。

 中医臨床に中国の中医男性科学の研究状況という題で特集された事があります。その中で6種類に分類しています。

1、肝気鬱結型
2、心腎不交型
3、陰虚火旺型
4、脾腎両虚型
5、下焦湿熱型
6、血脈瘀滞型

 ストレスや神経質や不安感などこころや神経が絡んでいる場合1・2
 体質的な虚弱がある場合3・4
 身体に不要な物や不必要な状況がおこっている(邪)のある場合5・6

 だいたいこういう状況があると「元気がでるようなもの」というふうに考える方が多いと思います。でも それが必要なのは3・4の場合です。男性不妊において精子の異常がある時は脾腎同補と弁証論治にる方剤を併用するように書いてあります。翟亜春医師は有効率の高い非常に良い成績をあげているそうです。

 精液粘稠不液化症に曹開鏞医師は陰虚火旺として滋陰剤や清熱解毒剤・清虚熱などの働きの中薬を組み合わせた方剤で好成績をあげているとなっています。やはりこれも先ず身体や状況の把握から考察してこそだと思います。

2014-07-01

パンダ⑦ 陰陽ってきいた事がありますか?ほとんどの人が聞いた事があると答えてくれます。陰陽師という言葉から知っている人もいます。私たちがいるこの世界において陰陽は何に対してもあります。陰陽は相対的なもので、2つの事柄の対比としてあります。例えば1日のうちで昼は?夜は?どっちですか?昼が陽で夜が陰ですよね。イメージとして明るい昼は陽で暗い夜は陰だろうとわかります。

 ところが相対的いう事で明るい昼も日向(陽)と日影(陰)があります。陽のイメージは明るい・活発・温たたかい・上・昇る・外向的陰のイメージは暗い・静か・冷たい・下・下がる・内向的 そんな感じではないでしょうか?

 それでは身体における陰陽はどうでしょうか?身体を動かすエネルギー的なものは陽ですから物質としての体は陰にあたります。人の構成を気血水(津液)で考える漢方において 動的役割の気は陽に、物質てき基盤の血津液は陰と考えます。ですから陰陽そろって生きているわけです。「あなたは陰虚ですね」。とか、「陽虚ですね。」といわれてもそれって何?どうい事?と思うのではないでしょうか?

 虚はむなしいと読みます。つまり足りないとか弱ってるとかいう意味です。陰陽は相対的なものではあるので陰虚なら陰は足りないので陽の方が多いという事になります。また陰とは血と津液 の事でもあるので血や津液が不足している事でもあります。さらに物質としての体の不足という事にもなります。

 物質面は陰にあたると考えると 臓器も血管も血液も神経も脳も陰に属する事になります。そしてまたすべては血と津液という事になります。陰陽どちらも重要なのに陰が傷つく事をきらいます。それはたぶん陽は気ですから形のないもので早く補う事ができますが、陰は物質なのでいったん傷ついてしまうと修復が大変だからだと思います。たとえ出血性ショックの時に(現代はすぐ病院ですが・・・)補気薬である大量の人参を使うのは 形のある血はすぐ作れないのでまず気から補う・・・というやり方です。

 中医漢方において滋陰よか養陰とかいう言葉がでてきますが、根本療法という意味で大事な事だと考えています。元気がでるものがお好きな人が多いと思います。気は速生できるので 効いた感じが得られやすいからだと思います。しかし不足によって気が不足する人は時 ゆっくり有形の血や陰を補うことで気の元ができてきます。

 血は気の母という言葉があります。時間の流れと陰陽を考える夜明けは陰から陽に代わる時で夕方は陽から陰に変る時です。
季節の進みで言うと夏至は陽が極まった時で、その日を境に陰も生じだします。冬至もまた同じです。こういう陰陽の移り変わりは自然の営みにとても大切です。

 こういうリズムは人の身体にもあります。体内時計といわれるメラトニンは夜中暗くして寝ている間につくられるのだそうです。成長ホルモンや性ホルモンも同じです。これらは中医漢方でいえば腎が蔵する精のうちに入ります。人の目は暗いと見えないように出来ています。夜は静かにして寝る為だと思います。陰の多い夜中は陰を育てる時間です。

 身体も陰の状態にしておく事が陰に属する精血を育てる事になります。簡単にいうと健康、身体の仕組みの充実の為には夜は暗くして寝ることが大切なのす。現代社会ではなかなかそうもいかないでしょうが、病気や心や身体の不調を治そうと考えるなら 夜寝るという単純なことが 治る身体づくりにおおいに貢献する事を知っておいて欲しいと思います。

 もし 身体の衰弱して落ち込んでしまったら もちろん早急に陽気を補わなければなりません。陽気は命のエネルギーです。
命の力です。それがなくなってしまっては生きる事が終わってしまいます。もし その状況は陰の不足に起因するかもしれません。例えば 大量の汗をかく  酷い出血など です。汗も血も物質で陰の属しますが 命のエネルギーの陽が不足ならそっちが重要です。抽象的な感じがするかもしれませんが、この考えは漢方を運用する上には必要ばものです。

 もう十年くらい前になるかもしれませんが、中医婦人科で不妊症の名医で『中医婦科理論の実践』という本を執筆しておられる夏桂成先生が来日し講演された事がありました。先生は不妊治療においても多くの成果をあげておられ先生の治療を受けに大勢の方が遠くからくるそうです。その先生が女性の身体の陰陽について話されました。女性の月経周期は陰陽の繰り返しになっています。体温表をみれば一目でなるほどと思います。低温期 高温期 下 上 陰から陽へと順番にきています。女性の身体の中で命は生まれ育まれ そして赤ちゃんとして誕生します。

 その女性の身体は陰から陽へ 陽から陰へと 自然の摂理にそったリズムをきざんでいるのです。なんて凄いんだ!!って思いませんか?私たちもまた その自然の波をもって生まれてきたわけです。陰の時期は陰に従い 陽の時期は陽に従う事が 本来身体が持っている恒常性の維持につながります。中医学において 漢方薬の臨床応用 漢方食品 漢方茶 食養生 生活面での養生など 陰陽バランスの関係を考えずに運用する事はできません。

なぜなら 人は自然界の一員だから・・・

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