昨日は母の命日で父と妹とお墓参りをし、実家に行ってきました。「ちょっと見てごらん」と父がいうのでパソコンを覗いて見ると『補中益気湯』の文字が・・・父は『剣豪武勇伝』という題名で塚原卜伝の生涯を書いていて七巻めにとりかかった所です。卜伝の妻は生まれつき身体が虚弱で結婚後まもなく亡くなってしまったそうですが、そこは当時の名医にみてもらうシーンでした。たしか脾気虚弱とのみたてで補中益気湯が処方されていました。現在、補中益気丸(補中益気湯)をつかってる方は卜伝の妻と同じですね。
補中益気湯は脾胃の働きが虚弱な時に使う漢方薬です。また、気虚下陥、気の力が弱い為にとどめておく力が弱い時につかいます。(例えば胃下垂、脱肛、慢性の下痢など)また、気虚発熱と脾胃気衰により虚火が内生して発熱し、身体が疲れると重くなる熱に使います.主薬は黄耆で、本来は大量に用いるとなっています。
虚弱体質といっても必ず脾胃気虚とは限りません。生まれつき虚弱ということは『先天の本』である腎が弱い事が多いと思います。しかし補中益気湯などの健脾薬を使うのは、『後天の本』『気血生化の源』の脾を補い後天的に腎精を補充していくということになります。
今話題の『チャングム』の本を読みましたが、虚弱なお妃様にチャングムは紫河車を使いました。紫河車は人の胎盤で、補腎益精(腎を補い、精がつく)ものです。さらに気を益し、血を補い、肺を丈夫にする優れものです。チャングムは国中から元気な男の子を産んだ人の胎盤を集めました。
中医学で慢性の衰弱を状態にあることを『虚労』といいます。虚労の原因は先天(生まれつき)の他に後天(栄養状態など)病気・環境・医薬品の副作用など多種の原因によります。ですから、虚労=虚弱体質ではないですが虚労の範疇にはいるということだと思います。生まれつき弱いというとやはり『腎精不足』ということになります。腎中の精気の盛衰は人の生長・発育・生殖に大きくかかわっています。
腎はこれから芽が出て大きく育つ力(腎精)の詰まった種のようなものです。腎精は先天の精といわれ脾からつくられた水穀の精微(後天の精)によって補充されています。そこで脾の虚弱は腎精の不足につながるのです。虚弱体質なら子供の頃から漢方薬を服用する方がいいと思います。食が細ければ必ず健脾しなければなりません。腎虚があれば補腎します。腎気の充足度を曲泉で現すと男は28歳女は32歳が頂点としそこから下りはじめます。この曲泉から考えると子供は上向きとなっている為補腎薬は少なめでも充分効果を出すことができることになります。後天の本の脾を中心とし、先天の本の腎を少し補うのは理にかなった方法だと思います。
今日から六月なのでブログもユリの花が美しいテンプレートに衣替えしました。百合の季語は夏。漢方薬としては球根をつかいます。百合根といって食されます。肺を潤し咳を止め、心の熱をさまし気持ちをを安らかにします。
虚弱体質の子供の体質改善には何がいいでしょう。脾を補うのに補中益気丸・参苓白朮散・小建中湯・焦三仙などをつかいます。腎を補うには八仙丸・杞菊地黄丸六味丸など 脾が弱く神経質な子には小建中湯や抑肝散などがいいです。また、衛気不足には衛益顆粒も必要です。
腎が弱いなら、子供のうちにもっと力のある補腎薬(海馬補腎丸とか双料参茸丸とか)をつかったほうが効果があるんじゃないの?
一般に子供にはそういう動物性のものはあまりつかわないようです。やはり腎気の充実曲泉が上り坂になってる為だと思います。しかし、以前、中医薬研究会の症例の中に子供に海馬補腎丸を使ったものがありました。大泉門が閉じない子供に対して“腎は骨を主り、髄を生む”という理論の基につかった症例です。虚弱な体質または虚弱といえないまでも喘息があったりアトピーがあったり、お腹が弱かったりしたら子供のうちに補!です。