中医学で考える新型コロナ
新型コロナの初期は風邪症状だそうです
昔から風邪は万病の素といいます
中医学ではかぜではなくふうじゃと読みます
風の性質をもった邪気です
私達を取り巻く外界に風・寒・熱(火)・湿・燥・暑の6種類の邪気があり、風邪もその1つです
中医学ではどの邪気が侵入するかによって戦略が違います
身体を寒くする邪気なら温めて身体をバックアップします
また身体や局所が熱いなど、炎症性の熱邪なら冷やしてバックアップします
なにしろ邪気と戦うのは自分ですから寒を冷やし、熱(火)を熱してしまって状況の悪化をまねき戦うどころではなくなってしまいます
“敵を知り己を知らば百戦危うからず”といいますが風邪・寒邪・湿邪・熱邪などの性質はどうでしょう?
風邪(ふうじゃ)は変化が早く、発展しやすく、他の邪気を伴ってくる、上の方を犯しやすいなどです
新型コロナは何の邪気を伴っていると考えられるでしょう?
怠い・肺炎をおこしやすい・吐き気や下痢など胃腸を犯しやすい・しつこい等・・・これらは湿邪の性質です
(怠い・疲れやすいなど気虚(気が足りない)症状ですが、急に気虚になる事は考えにくく湿邪気の入り込みによって重怠くなったと考える方が適当だと思います)
また高熱・炎症性などは熱邪の性質です
また普通の風邪としがって新型コロナが重症化しやすい、つまり人に対して毒性が強いというふうにみます
こうみていくと新型コロナは風邪が湿邪を伴い 更に寒気が酷い時は寒邪・咽喉が腫れる・喉が渇く・熱っぽいなどの時は熱邪を伴って侵入しているといえます
新型コロナとの闘いに備える中医学の考え方
テレビで医師が言っています
「コロナウイルスに有効な薬はありません」
「薬は対症療法です」
「自分の免疫で治すしかありません」
紀元前の昔には『正気存内、邪不可干(正気内に存すれば、邪は干渉する事ができない)』
正気は免疫力の事です
つまり現代のような抗生物質や抗ウイルス薬のない時代には病気は病邪と正気の戦いで、正気が勝れば疾病が起きず邪気が勝れば疾病が生じると考えたのです
力関係の強弱は量や質の問題もあります
正気の量以上に邪気が多ければ多勢に無勢で負けてしまいますし、強力な邪気なら正気が充実していても互角か苦しい戦いになるかもしれません
マスク・手洗い・消毒は邪気の量を減らすのに役立ちます
中医学で清熱解毒薬といわれるものは邪気の量や邪気の力を減弱するのに役立つと思います
でなければ長い歴史の中で細菌性やウイルス性疾患に使われ続けてくることはなかったのではないでしょうか
因みに板藍根は風邪予防によく使われていますが、中薬学に以下のように書かれています
板藍根は苦寒で下降し、清熱解毒の用薬であり、瘟疫熱病の高熱頭痛・大頭瘟(おたふく風邪)・咽喉腫痛・爛喉丹痧(猩紅熱)など頭面部の熱毒に適している
正気は邪気に対抗する力ですから子供や年配者・他に病気のある人や食生活の不節制・生活リズムの乱れなどで不足します
正気は生体の臓腑・経絡・気血の機能を正常に保ち病邪に抵抗し損傷を回復させる能力(中医学の基礎より)
つまり正気が力をもつ為には日頃から臓腑の弱い所は補い、経絡や血脈の流れが悪ければ通じさせ、気血の不足があれば補い、陰陽のバランスをとる事が大切です
また内生した邪気の瘀血や痰湿を除くようにしましょう
ところで邪気の侵入口は鼻や咽喉で肺衛といわれる部分です
衛気が衛兵のように邪気の侵入から身体を守るってくれています
▶まずは入り口から侵入させない事・・・衛気を高める(益気固表の働きのある漢方薬)
⇒黄耆・衛益顆粒 など
▶邪気の量や強さの減弱・・・マスク・うがい・手洗い・清熱解毒の働きのあるもの
⇒板藍根・金銀花・連翹・馬歯莧 他
症状がでたら中医学の方法
風邪は早めが大事です
初期に対する漢方薬の使い方はいつもと変わりありません
風寒型(青い風邪)・・・ゾクゾク寒気がする→辛温解表(温かくする漢方薬で風寒の邪気を追い出す
風熱型(赤い風邪)・・・喉の腫れ・口喝・熱っぽい→辛涼解表(熱をさまして発散・清熱解毒)
風湿型(黄色い風邪)・・・身体が重怠い・むかつき、下痢気味などの胃腸症状
新型コロナは中医学的には風寒湿あるいは風熱湿型です
また毒性がつよいので清熱解毒の働きのあるものも必ず加えて下さい
また咳に関しては風寒の時は水っぽい痰を伴う事が多く・風熱の時はむせるような強い咳で痰は出しにくいか黄色い事が多くみられます
*2004年9月発行の中医臨床に『広州を襲ったSARSの記録』という記事が特集になっています
中西医結合(西洋医学+中医学)でのアプローチの記録がかかれています
中医学の治療方針が初期・中期・後期・回復期にわけ 弁証・治法・処方が表にまとめられています
早期は湿熱遏阻肺衛と表寒裏熱挟湿に分け更に熱邪が偏重する場合となっています
その中に私達もよく知る銀翹散や麻杏甘石湯も書かれていました