中医学で心が元気でない状態の1つは「鬱証(うつしょう)」です。うつ病も鬱証に入る面もありますが、うつ病とまではいかない部分も入ります。ストレスにより気が鬱滞しているのが鬱証です。つまり身体の気機の鬱滞です。スムーズに巡れず、動けず、滞って、鬱積している状態のことです。症状としては憂うつ・気持ちが不安定でおちつかない、不安感・怒ったり泣いたりし易くなる・睡眠異常など心の症状の他、咽に異物が詰った感じや胸の脇の部分を中心として張るような痛みがでたりします。
鬱証を考えるのに重要なのは「肝」「脾」「心」です。しかし「肺」や「腎」を全く問題にしなくていいかというと、そうではないと思います。肺は「一身の気を主る」といい「生命活動の原動力である元気の源は腎から発せられる」「久病は腎に及ぶ」などの理論があります。ストレスにより心がダメージをうけることにより身体の気機が鬱滞する『鬱証』の対処の仕方は気機疏通する事(通じさせ動かし巡らす事)です。早いうちに気機の疏通をはかることで、病気にならずにすんだり酷くならずにすんだりします。
また、虚と実を把握して実証は舒肝理気(肝をのびやかにして、気をめぐらす)ことを中心に行い、虚証は補益気血などを中心にして身体の力不足をたすけることを中心におこないます。この事をみるだけでも中医学って親切だと思いませんか?身体のゆがみや不足の補正術が中医学です。
中医学で実証は3タイプあります。難しい言葉ですが肝気鬱結・気鬱化火・気滞痰鬱です。簡単にいうと
1、イライラ・憂うつ・溜息タイプ
2、上の症状+落ち着きがなく怒りっぽい・口が乾く・口が苦い・目が赤いなど火なあるタイプ
3、咽の詰まり感・息苦しいような胸苦しいような感じがするタイプ
教科書では1は柴胡疏肝散加減2は丹梔逍遙散合左金丸加減3は半夏厚朴湯加減となっています。加減となってのは体質に合わせて調整する為です。例えば食滞を伴えば晶三仙のような消食化滞するものを加え、血滞があれば活血化おのものを加えます。化火「火に化す」ということを考えてみましょう。
火の性質を思えばなるほど とうなずけます。
火は上に燃え上がり、火の色は赤で、色々なものを焼き、其の熱は周囲をかわかします。
カッとしやすい・怒りっぽい・口の乾き・目赤・舌紅・耳鳴り・のぼせなど火がある印です。
虚証も3タイプです。
1、憂鬱傷脾
2、心脾両虚
3、陰虚火旺
どのタイプも血の不足により心が養われないことが原因となっています。つまり、身体の消耗が原因ということです。
1はうつろで、不安定で、嘆き悲しみ時々欠伸が出るタイプ
2は思い悩むことからおき、ちょっとした事でドキドキしたり、眠りが浅い、物忘れで食欲不振など胃腸症状も伴うタイプ
3は陰血不足の為虚陽が浮上するので動悸、寝つけない、落着かず怒りっぽい、口が乾く、ほてりなど火の症状が伴うタイプ
日本人がそうなのか私の周りを見ると2タイプが多いと思います。根が真面目で物事に対し真剣に考え取り組む反面、壁にぶつかると考えすぎ思いすぎで心脾を消耗してしまいます。その為、気持ちが鬱傾向になる、眠りが浅い、逆に昼眠い、だるくてやる気がでないなどの状態になります。
実は肝が中心・虚は心や脾が中心になっているようです。肝は感情・心はこころと考えるとわかりやすいと思います。ストレスや過度な緊張により感情面が鬱積したりイライラしたりします。また、くよくよ考えることはこころに悪影響を及ぼします。肝と心の失調は実際にはが同時に見られることも多いと思います。
精神的な安定と血は深いつながりがあります。「心は神を蔵す」の神は精神・意識・思推活動をさし、「肝は魂を蔵する」の魂は神の変じたものです。肝血が不足するなら魂が、心血が不足するなら神がよりどころを失うとされます。「女性は血が不足し易く、気は余りやすい」といわれます。無理なダイエットや偏食、過労、産後の不養生、流産などによる血虚から精神面に支障をきたしやすいので注意が必要です。
中医学の治療は病態に応じて複雑です。鬱滞し巡らないものをどうやって解きほぐすかを考えなくてはいけないでしょう。大きな力がいるか?小さな力で大丈夫か?鬱滞の強さもそれぞれです。また、こころや感情の場である肝や心はどのくらい弱っているのか?肝に抑え込まれた脾は?弱った母の心に養ってもらえない脾は?事態を把握するのに名探偵が必要です。また、直接鬱滞を動かす努力もしてみるのも大切。
太極拳や気功・瞑想して気の流れを感じるようにしたり・深呼吸・大きな声で歌う・運動で血を巡らし、汗をかいて湿を発散するなどいろいろ工夫もできます。重症化するとそういったことをする気にもなれなくなります。そのときは無理せず、漢方薬を飲んでゆっくり時期を待ちましょう。
私自身も鬱になってるのに気が付くことがあります。エー!なんて言わないで下さい。わたしもデリケートな女性なんですから・・・
なんだか気がそわそわして落着かないときは逍遥丸を
午前中からだるく調子が出ない時も逍遥丸を
やる気が出ないし頭が働かないときは香ロゼアを
だるさがひどいときは香西洋参を加えます。
なんだか悲しい気分になる時は心脾顆粒を
いつもは5分以内寝入ってしまうのに長引く時や、夢が多くて眠りが浅い時も心脾顆粒を数日つかいます。
*こころは弱りきってしまうと時間がすごーーーくかかるので早めに対処するようにしています。