漢方の処方は方剤、漢方薬に使われる動植物や鉱物は中薬といいます。方剤は古くは紀元前3世紀末に書かれたとおもわれる『五十二病方』(まだまだしっかりした理論体系していませんが)というのがあります。中薬の始まりは原始時代からで“神農は百草を嘗め、一日にして七十毒にあう”とかかれていますが、古代の人々が薬・毒を身をもって探し求めていったということです。約紀元前200年頃『神農本草経』が体系を為した書物となったといわれています。その後の歴史の中で実践をくりかえし沢山の書物がかかれ、賞賛や批判をうけて淘汰れ、現代につながってきているのです。
実践をもとに出来たこの学問は、私達が健康を守る為の先人達からのプレゼントです。身体は一つの世界です。そこに日々くりひろげられる巧妙な仕組みに驚かされます。人もまた自然の中に生きる1個体です。深い観察力と実践から生まれたこの学問は人体を一つの統一した世界とみています。気血津液の充足と正常な運行は健康の条件です。五臓六腑の働きにより生みだされ・貯蔵され・運行されています。
春夏秋冬の季節と五臓の関係などを考えに入れながら四季に応じた養生をしていくことも大切です。年に1回は健康診断を受ける人も多いと思います。病気の早期発見・早期治療が目的です。中医学をよく知る人はもう一つ健康チェックの方法があります。それが中医診断学を使った方法です。
病名を診断するものではありませんが気血津液の不足や停滞をみたり、五臓六腑の虚実をみたり、寒熱・燥湿・陰陽などの身体の平衡をみるものです。未病先防(病気にならないうちに防ごう)。『上工は未病を治す』…本当にいい医者は病気になってから治療するのでなく、病気になる前に手をうつ事ができる。また、病気を治す場合も他の臓器にひろがるのを予測して手をうつ事が出きるという意味です。これが中医学の一番大きな意義だと思います。
自分の調子がわかるのは自分でしよう!
毎日にの健康チェック!
変だと思ったら早めにご相談下さい。
養生の中で『食べる』『寝る』は最重要課題です。食事が食べれずに栄養不良なら気血津液をつくりだす事ができません。飽食は脾胃を損傷し、痰湿を生じ、気血津液の運行をさまたげます。
味は『酸・苦・甘・辛・鹹』の五味があり、五臓と関係しています。酸と肝・苦と心・甘と脾・辛と肺・鹹と腎でそれぞれ五臓の虚を補う事も出きれば、摂り過ぎると実してしまういます。また実した臓の相克関係にある臓は虚してしまいます。例えば酸味は肝に働くので摂り過ぎると神経の緊張が強くなったり、脾臓が虚してお腹がごろごろいったり、軟便になったり、食欲不振になったりします。
五味は役割があるので1つの味だけ好んで摂り過ぎるのはよくありません。また、弱っている臓腑にあわせて摂ることも大切です。簡単にいえば、偏食せず、嗜好にかたよらず、なんでも食べましょうということです。
養生にもう一つ難しいけど、とても大事なことがあります。それは心の安定です。『志閑而少欲、心安而不懼』心が閑で欲が少なく、心が安定しているので懼れがないこう言った事が紀元前に書かれた書物のなかに書かれています。さらに、その中に“食べ物をおいしく頂き、着る物をここちよく思って着、習わしを楽しみ、地位の高低をうらやむことなく、素朴で誠実。正しくない嗜好に耳目をゆりうごかさず、淫らな邪説に心情をまどわされることがない。これは養生の道理にかなっているので百歳を越えても元気でいられる”とかかれています。
ストレス社会の現代ですが、心のスイッチを少しいれかえて生活を見直してみると“元気で長生き”に何歩でも近づいていけるとおもいます。身体のバランスを崩したり、病気になった時、漢方薬を飲めばよいというだけでは片手落ちの療法なのです。
ホノミ漢方がこんな言葉を書いています。
「治そうと願うなら、治す努力をしてみませんか?」
病気は薬が治してくれるものでなく自分が治そうとしなければいけません。漢方薬はその一端を担うものです。
明日は中国からきた先生の糖尿病についての講演を聴きにいきます。発病を「鬱・熱・虚・損」の4段階に捉えたり、絡病に対する活血化瘀通絡の中薬の応用などで楽しみです。