夫天布五行以運萬類、
人稟五常以有五臓。
天は五行を生み五行が巡って万物が生じ、人は五常を受けて五臓を有した。
五行・・・木火土金水
五常・・・仁義禮智信
五臓・・・肝心脾肺腎
人の存在のはじまりにおいて五行・・・五臓は大きな意味をもっています。少なくとも漢方の運用においてはとても重要です。
五行にはお互いを助けたり抑制したりという相生相克の関係があります。木は火を生み、火は土を生み、土は金を生み、金は水を生み、水は木を生み・・相生の関係と 木は土を克し、土は水を克し、水は火を克し、火は金を克し、金は木を克し・・相克の関係があります。
この関係により相手を助長したり抑制したりして、バランスが保たれています。以前書いたかもしれませんが『老中医の診察室』にこんな話がでてきます。2ヶ月も前から腹痛を訴えていて、いろいろ検査しても異常がみつからず、抗生物質・鎮痛剤・・・いろいろやってみたが効果がなく、中医難病科の老中医の所に来ました。症状はこうでした。
1、いつも鈍痛があり時々酷くなる。
2.部位は臍の周囲
3.発作は午後または夜おこり・・・
4.・・・・・
5・・・・・・詳しく問診・・
それに望診、聞診、切診の四診を合せたところで、老中医はこういいます。「複雑な病態ではありません。木克土です。」肝気が脾を犯し、中焦の気機がスムーズに動かないため不通則痛で痛みがでた。と弁証しています。「気の気機は肝の疏泄と関係しています。肝は五行の風と関係しているので風の変動し易いという性質をもちます。病変部位は中焦の脾胃です。」この弁証によって処方を組み立て、2週間くらいで症状はとれ、1ヶ月くらいで完治しました。
このように五行は漢方の方剤を運用する上でとても重要です。なぜなら、五行学説の運用によって実際に治療がなりたっているからです。昔の人が太陽を観察して『東から出て西に沈む』ものだと思ったのと同じで、自然と人間を観察することによって導き出された理論だと思います。
春は肝の季節です。夏は心の季節です。などと言っていますが、五行との関係です。自然界・人体に関することを5つに分けて五行・五臓にあてはめています。
例えば
五行の火は五臓の心と関係していますが 他に 夏・南・暑・赤・苦(み)・長(生長)・・・・人においては小腸・脈・舌・汗・面・喜・・・などです。
ですから夏は暑く植物の生い茂り、心の季節で血脈は盛んで顔色も血色が良い感じになります。
しかし火が盛んになりすぎるとオーバーヒートしてしまいますので注意がひつようです。
苦いものは心臓にいいとかよく言いますが、心火を抑えて燃えすぎないようにしてくれます。
また五行の抑制関係では水で腎です。
腎陰を補うと心の行きすぎが抑えられます。
ちょっとわかりにくいですね。図解した方がわかりやすいかもしれません。興味のある方はお店でお聞きください。
人も自然の仲間ですから、自然の影響をうけます。予防・弁証(診断)・養生・治療は季節・気候・気温も考慮します。五臓の相生・相克の関係・五行の分類、陰陽の平衡は判断の重要な指標です。そしてまたそれが漢方の醍醐味です。いうなれば、身体の平衡を保つことによって自然治癒力がどこまで発揮できるか・・・ということです。
近年、漢方薬も西洋医学化して薬効で使われることが多いようです。それもありかもしれませんが、薬効を超えた体の力は引き出せないと思います。守りたい!!故人が残してくれた漢方の理論。