大腸の粘膜に慢性の炎症がおこる原因不明の難病です。直腸から発症し炎症が広がっていきます。軽症では炎症部位は直腸の辺りで症状は血便です。更に左結腸全体に炎症が広がると血便の他、下痢や下腹部痛もおこります。大腸全体に炎症が広がると、重症の場合は血性の激しい下痢、腹痛、発熱、頻脈、脱水を起こす事もあります。
投薬治療が奏効しない場合は大腸の切除手術を行います。また、血液透析によって白血球を除去する方法でよくなってくる場合もあるそうです。投薬治療は主に炎症を抑える薬を使います。急性期と緩快期を繰り返しなかなかよくならない疾患です。遺伝性、ストレス、肉体疲労が要因と考えられています。
これを中医学で考えてみましょう。軽度でも重度でも血便はあるので血証の範疇でみることができます。さらに泄瀉、腹痛も考えます。血液の交換で症状が改善する事があるのなら、病は深く血分まで及んでいると考えられます。そうであるなら涼血薬を使うのが良いと思います。槐角丸や清営顆粒は涼血薬が使われた方剤です。特に槐角・地楡は涼血止血の働きがあります。中医内科学では便血を腸道湿熱と脾胃虚寒に分けています。
『腸道湿熱の場合便血は鮮紅色ですっきり排便できず、ドロドロした軟便で 腹痛があったり口に苦味を感じたりする。その時は槐角丸を中心に加減して使う。』と書いてあります。加える方剤として、ストレスが要因なら疏肝や理気を加えた方が良いでしょうし、肉体疲労が要因なら気血不足や肝腎不足なども考慮した方が良いと思われます。難治性の炎症、潰瘍と考えるなら治癒力の低下を考えないわけにいきません。それには托瘡生肌の働きを有する黄耆製剤も加えると良いと思います。
いずれにせよ中医学の見方から病因を考えなくてはなりません。そうして、何故、現症状になったのか?病機(発展のメカニズム)を考察します。ノロウイルスとかの外邪によって胃腸炎を起こした事がきっかけかもしれないし、お酒や過食や辛いものの食べすぎかもしれないし、ストレスかもしれないし、過労かもしれないし、素体の弱さからかもしれないし・・・このことを知ることが中医学によって方剤を使いこなし治癒に導くのに重要な事なのです。