アトピーでお困りの方も多いと思います。私の子供の頃は周りにアトピー性皮膚炎の人はいなかったと思います。アレルギー体質の人が増えているように見えます。昔と今と何がちがうのでしょう?よく言われていることかもしれないけど新ためて考えてみましょう。
①食事をはじめとする食べ物の質・量(脾は大丈夫?)
②寝不足など生活のリズムの不摂生(五臓のバランス・瘀血)
③外的ストレス
テレビ・音など目や耳(肝・腎)はつかれていませんか?
身体を動かしてストレスを発散できていますか?
④冷房や暖房で快適生活ですが、環境に適応する力が弱っていませんか?(衛気虚)
15年くらい前(1990年頃)ですが、中医師の方が中国にはアトピー性皮膚炎やアレルギー性鼻炎など、あまりないという事を言っていました。・・・現在はちがっていますが・・・
以前は食用油は配給で貴重品だったそうで、食卓には野菜など、茹でたものが多かったのだとか。また、日本に来て、冷蔵庫から出した冷えた牛乳などをのんでいたらアレルギー性鼻炎がでてきたとも話していました。この事から脾とアレルギーは関係が深そうだと言う事が想像できます。脾は後天で円滑な働きで腎の先天を補助します。
アトピーの方の皮膚はカサカサしています。皮膚の表面の皮脂膜がなく表皮は荒れています。また炎症をくりかえす事によって厚くなっていることもあります。「皮膚科でアトピーと診断されました。」といっても症状はいろいろです。紅くなる・ブツブツが出きる・ジュクジュクする・白く粉が吹いた様になる・カサカサが落ちる・・・軽いタイプから全身症状のある重いタイプもであります。体質を改善するには五臓の状態を把握する必要があります。これは殆ど虚を補うという作業です。
しかし炎症は火と考えるので 瀉火や清熱利湿など、症状も抑えていく方法も必要です。症状に対応(標治)と体質に対応(本治)・両方大切です。
アトピー性皮膚炎の我慢できない症状に痒みがあります。痛みよりつらいと言われる痒みですが、中医漢方では風・熱・湿によると考えます。『熱にあえば則痒く、寒にあえば則痛し』と書物にあります。しかし、寒冷蕁麻疹のように寒いとなるものもありますが痒みは熱によるものに比べると軽いです。臨床的には血熱・血虚燥風・風熱・熱毒・風湿熱毒などの場合があります。また患部の赤みは熱を現す色です。鮮やかな紅なら熱が血分に及んでいる血熱と考えます。熱(火)といってもいろいろで風熱・血熱・毒熱・湿熱・虚熱・燥熱などです。
また、アトピー性皮膚炎の場合、1つでなく湿熱+血熱+熱毒というように組み合わさっている事の方が多いようです。単純ではない上に火の勢いが強ければこちらもそれなりの力で対抗しなくてはなりません。『焼け石に水』ではなんにもならなくなってしまいます。つまり2種類、3種類と使い、冷ますタイプの漢方茶も使って総動員で火を抑えなくては治まってきません。
この考えは風邪の漢方で風熱の邪気に対抗する時と同じ理屈です。小さい火はコップの水で消せるかもしれませんが、大火は大量の水が必要でしょう。
アトピーは子供の頃からだったり、酷くはなかったけど皮膚が弱かったり、気管支が弱かったりすることが多いと思います。これは脾・肺・腎の弱さと関係があります。悪化の引き金になるのは思春期・受験・就職などホルモンのバランス・ストレスなどあると思います。同時に食生活(質・量・リズム)や生活全般のリズム(睡眠時間など)も違ってきている事も多いとおもいます。これは肝気横逆といってストレスによって肝が病的な状態になり弱い所を攻撃するという現象とも関りがあります。
中医学でアトピー性皮膚炎は銀屑病または牛皮癬にあたるようです。中医皮膚科の老中医・張志礼先生の本に次のように書かれています。銀屑病は紅斑鱗屑性皮膚病がよくみられ、経過が緩慢で、再発を繰り返す傾向がある。血熱が主要な病気の根源です。血熱の形成には幾つかの原因があり七情内傷・飲食不節・風熱毒邪を受けた為など ということは清熱涼血薬は必要不可欠ということになります。
いつも書いていますが、人の身体の営みや病気に対して漢方的な考え方があります。この考えに沿って運用する事が身体を変えるということにつながります。病気の位置を表すのに表裏ということがあります。傷寒論と言う書物中にみられる分類では病邪の位置が太陽・陽明・少陽・太陰・少陰・厥陰の6段階になっています。また温病において病気の段階が衛分・気分・営分・血分に分類されています。血分は病邪の位置は深く血分に入り込んだ状態で重傷です。血熱は熱が血分に及んでいるという事で、その熱は深い所にある事になります。
血熱を主とした炎症性の症状とカサカサした滋潤力のない症状を改善していくには長い時間が必要です。特に補腎・健脾・養肝・補肺などの本治はじっくり取り組む事が大切です。また、養生は重要で、身体を変化させようと考えているわけですからこれまでと同じで良いわけはありません。
食事の質と量(ご馳走という意味ではありません。新鮮なもの・栄養バランスのとれたものの事です。量は腹八分です。)食事はゆっくり時間をかけてよく噛んで食べましょう。身体に取り入れた自然の恵みが全部血になり気(エネルギー)になり心と身体が充実するのだという気持ちでいただきましょう。生活リズムを整え、特に早寝を心がけ陰の極まった夜中は寝てるようにしましょう。心も身体も自分の持ち物です。大事にする気持ちを持つ事が養生です。