湿気と乾燥

パンダ① 「この植物はたっぷりお水をあげてくださいね。でもこれは1週間に一回たっぷり水をあげれば大丈夫です。」植物は種類によって違いがあります。また 同じ室内用の観葉植物でも暑い真夏はたっぷり 梅雨の頃は少なめに水やりします。私達は日常 固体や気候に応じてより良い状態を考えて変えています。人の身体も個々の違いや気候の変化に応じて養生や治療をする事が大切です。

 身体の湿が多いタイプ 身体が乾燥ぎみのタイプが同じ漢方薬では変だと思いませんか?また、日本のように四季に変化があるところでは養生も変化に合わせた方がよさそうです。例えば咳嗽です。痰がでるか?でないか?痰の量が多いか?少ないか?絡んでるがでてこないか?痰1つとっても状況はちがいます。もし咽がカサカサして 痰がない または痰がへばりついて出てこないなどは 乾燥している状態です。だから潤す事が大切です。へばりついて出ない時でも水が多くなれば舟が進むように、潤して排出します。そんな時は潤肺糖漿や麦門冬湯など潤す方剤を使います。

「これとてもよく効いたのでAさんにもあげていいですか?」
「Aさんはも空咳ですか?」
「Aさんは咳をするたびに痰がでるようでティッシュでとっています。そうそう水っぽい痰がいっぱい出てくるっていってました。」
「それは 痰湿が多い状態です。潤すと痰が更に増える時もあります。」
「さむがりで服もきこんでいますが・・・」
「Aさんは湿気の多い状態のようです。寒と痰があるので、温めて乾かすようにした方がいいでしょう。」

 胃腸に関してはどうでしょう?脾胃の痰湿や乾燥ってなに?でしょう?

 先ず湿

 胃腸に湿気がたまってる事は吸収しきれない分がたまってると言う事です。脾の運化作用が弱いか 暴飲暴食により持ってる力以上に取り過ぎてる時もあります。(脾の運化とは栄養分や水分の消化吸収や輸送の事です。)余分な湿気で働きが阻害されて吐き気や嘔吐・下痢になります。

 それでは乾燥は?

 乾いていたらすべりが悪く送る力が不足するので便秘傾向になったり、受けつけにくくなったり 下の送れなくなったりして嘔吐になる事もあります。

 湿や乾燥と皮膚

 一般に湿疹が出来ると抗ヒスタミン剤やステロイド剤あるいは非ステロイドの消炎剤などをつけて治します。何度かつけて治ってしまえばいいのですが、繰り返す時はちょっと考えてみましょう。『皮膚は内臓の鏡』という言葉があります。中医学(漢方)では皮膚がジュクジュク湿っぽいか?カサカサ乾燥タイプか?対処の仕方は違ってきます。ジュクジュクは湿気があるわけですから菌が繁殖し易い状況です。水虫も真菌で身体のかびです。かびは高温多湿な環境を好みます。

 ではカサカサの肌はどうでしょう?

 外側からの刺激に弱くすぐに炎症しやすい状態です。自然界で乾かす原因を考えてみる時、洗濯物を思い起こすと、晴れて太陽がギラギラ暑い時もすぐかわきますが、風がある時もよく乾きます。風と熱は乾きにつながる事がわかります。肌の乾いている原因が熱による事も多くみられます。湿気が多いか、乾燥しているかで方剤選びは違います。湿気の多いと脾の働きは悪くなっています。

 『脾は湿を嫌う』という言い方をしますが、健脾燥湿の物を使い、栄養豊富で消化に手間取る(粘膩)の性質のものを避けます。湿が停滞して化熱してくると湿熱になります。スープが煮詰まるとドロドロしてくるように粘ってしつこいものになってきます。湿がドロドロしてきたものは痰です。脂肪も痰のうちです。ドロドロしたものは取り除きにくいしばい菌も繁殖し易いです。
化痰薬に清熱解毒と利湿の働きのある馬歯ケン(五行草茶)や白花蛇舌草な加えたりします。

 乾燥している時は潤す事が中心です。補血・生津・滋陰など働きのあるものを使います。熱の為に乾燥している時は清熱・涼血などの方法も必要です。逆に身体の栄養や物質面の不足によっておきる虚熱には知柏地黄丸(瀉火補腎丸)のような滋陰清熱のものを選びます。虚熱は素に身体という物質の弱りがあるわけですから、注意が必要です。火は物質を燃やすので物質は又火によって減るという事になるからです。ですから、虚火を抑えながらも陰を補うことはとても重用です。もし湿をさらに潤し、燥を更に乾燥させたら大変な事になってしまうのは明らかです。身体の声をきいて漢方を選びましょう。