薬眞堂の漢方講座

2014-12-17

 中医学では病気の原因(病因)を重要視します。例えばいつもジメジメした場所に住んでいる人がいつも食が細くお腹が脹りやすいの時に、素体が脾胃が弱いのでなく 寒湿の影響をうけて脾の働きが阻害されたと考えたりします。そうすると使う漢方薬が違ってきます。前者はリキ錠(六君子湯) 後者は平胃食傷散や勝湿顆粒などです。このように病因は状況を知る上で重要なファクターです。

 では病因にはどんなものがあるでしょう?

 環境や飲食物や気候などが及ぼす外因と体質や精神面が病因となる内因、瘀血や痰湿など病理的副産物が病因になる場合などがあります。外因の六淫があるが これは風寒暑湿燥火の六気に過不足が生じたり時期に変動が生じたりして異常な気になり疾病を引き起こす要因になったものです。

 ですら六気と同じく6つあって、風邪(ふうじゃ)寒邪 暑邪 湿邪 燥邪 火邪があります。その他 インフルエンザのように六淫の邪をはるかに越える毒性をもった邪気は疫癘といいます。内因では精神面が身体に影響が及ぶのを七情内傷といいいます。七情とは喜怒憂思悲恐驚7つの感情の事で過剰になると五臓が損傷すると考えられています。

心は喜 肝は怒 脾は思 肺は悲と憂 腎は恐と驚です。

 七情の過剰は気機の失調とも関わっていて

喜びすぎると気は緩む
怒りすぎると気は上がる
思いすぎると気は結す
悲しみ憂いすぎると気は消える
恐れすぎると気は下る
驚きすぎると気は乱れるといいます

 感情、臓腑、気の状態からも疾病の状況を量り知る事ができます。飲食の不摂生・労働や運動の過不足も病因になります。また瘀血や痰湿などの病理的副産物が要因になる場合もあります。

 では実際 病因をどのように漢方療法の中でいかしていくのでしょう?

 例えば春先 急に顔が紅くなってかゆくなった。とします。

風は陽邪で急で上方をおかすので風邪が関係している
また顔が紅いという事から赤は熱の色なので熱邪も伴っていると考えます

そうすると風熱の邪に犯されたのだな。なら疏散風熱できるものを使おう・・・と思うわけです。天津感冒片 消風散 菊花 桑の葉など候補に上がります。

毎年梅雨の時期に関節が痛む・・・それなら風湿が主に関係しているかなと考え
冬になると関節が痛む・・・それなら風寒が中心かな 寒凝の瘀血も関係してるかなと考え
春先にあっちこっち痛くなる・・・それなら風邪が中心で 肝が関係してるかな などと考えるわけです

 六気は身体の内にもおこります。たとえばストレスに肝の疏泄が失調して肝気鬱結から肝鬱化火になる場合、あるいは素体が陽で直接肝火となる場合もあります。風も内風の場合もあり、昔は脳卒中を中風といったりしましたが、これは内風によるものです。中医学で中風という場合は悪寒や発熱を伴い外因の風邪のかかわりがある時は去風しますが、内因の時は熄風薬を使います。いずれにしても病因を考えることは重要です。

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