私達の勉強会

2017-04-23

平成29年4月16日 中医学の勉強会

『悪性腫瘍の弁病と弁証』 中医学講師 鄒 大同先生(臨床家の為の中医腫瘍学 編著)

免疫力
1、西洋医学の弁証
 西洋医学の診断方法
  腫瘍の種類
  悪性腫瘍の病名と発生頻度
  癌の細胞診と病理組織検査
  腫瘍マーカーの概念と臨床価値
  診断の根拠
  腫瘍の臨床分類と病期
  癌患者の全身状態の評価―
   Karnofsky評価標準 100%から10%(死期が切迫)
  治療法 投薬(抗がん剤 分子標的薬) 切除 放射線
  乳癌と胃癌に使う薬剤 分子標的治療の作用機序
             血管新生阻害剤

2、中医学の弁病
 中医学の病名
     体表の腫瘍…形と部位から(乳核・乳岩・舌菌・痰核など
     内臓の腫瘍…症状から(噎隔・反胃など)
  特徴 初期は陰証が多い
     痰は経絡によって流れ、他所で痰核を発生する
     末期は正気を酷く損傷
  特殊な病的素因
     癌の発生は正気不足と癌毒から
     癌毒がひろがり正気が消耗する事によって悪化
     伝染性はない
  現状と予後を中医学における病因・伝変・証型・治法につなげて把握
  補気(扶正)
    *古典による記述『積之成也、正気不足而邪気踞之』
     積聚がつくられるのは、正気が不足し、邪気が留着するからという意味
    ①大補元気・・・・・人参
            補気の要薬
            固脱
            生津
            安神
    ②補気安神・・・・・霊芝
            益気健脾
            養心安神
            止咳平喘
    ③補気化痰利湿・・・シベリア霊芝シベリア霊芝(サルノコシカケ)
            補気健脾
            補益肝腎
            化痰解毒
            活血利水
    ④補気袪湿散結・・・雲芝
            健脾利湿
            清熱解毒
            袪湿散結
  清熱解毒
    熱毒による癌の進行(火は燃え広がる)
    熱の固まり・・・局所の紅・腫・熱・痛など
    ①白花蛇舌草・・・清熱解毒
           清熱利湿
    ②馬歯莧・・・・・清熱解毒・止瀉
           涼血止血・通淋
    ③牛黄清心丸・・・清熱解毒・化痰開竅
  その他

3、中医学の弁証
 目的 主証と兼証の確定
    素因の推測
    伝変の予測
    論治
 弁証 八綱弁証 表裏・寒熱・虚実・陰陽
    気血津液弁証
     気病 気滞…初期 腫脹による痛み
        気虚…進行により気を消耗
     血病 血瘀…瘀滞による腫瘤・疼痛・出血
        血虚…急性、慢性出血または抗がん剤や放射線療法により血虚
     津液 津虚…津液の不足
        痰証…瘰癧・癭瘤・痰核・乳癖
        飲証…胸水・腹水
     臓腑弁証

4、弁病と弁証を併用
 症・証・病との関係
  例:病⇒噎隔(胃癌)
    証型は変化
     痰気交阻 疏肝理気+化痰行気
      ↓
     津虧熱結 滋陰生津+清熱解毒
      ↓
     瘀血内結 活血化瘀+破血去瘀
      ↓
     脾気虧虚 健脾益気+益気化痰
 マクロとミクロで弁証
  マクロ 四診合算して弁証する
  ミクロ 臨床検査のデーターから弁証
      検査値を中医弁証でどうみるか?
      邪実・湿・熱・正気の虚・瘀血・痰など

2017-03-25

平成29年3月12日 中医学の勉強会

健康長寿と微小循環 中医学講師 劉 文昭先生

胸を痛めるパンダ
■中医学から診た自律神経失調症候群(Mind-body Science No.9)掲載 劉先生
上記の論文の内容について

 自律神経失調症による不調に対して医学的生理化学的検査では異常が認められない為、西洋薬による改善が難しい。
 一方自覚症状が重い人はかなりつらい状態にあっても理解されない事が多い。これに対し中医学が効果を発揮している。
 中医学的にはウツ証に属する。『気血は通順であれば、万病生ぜず』とある。

 思慮過度・激しい感情の変化・うつや怒り
  → 肝を損傷
 暴飲暴食・不規則な食生活
  → 脾を損傷
     ↓
    気の停滞
     ↓
    肺・脾・腎・三焦の気化作用の失調
     ↓
    痰湿・瘀血

 つまり自律神経失調症に対し、気滞・痰湿・瘀血で捉えて治療を行う。

■冠元顆粒について
 活血化瘀薬 + 理気薬の配合

■血瘀証について
 診断の基準
  1、舌質紫暗・瘀斑または瘀点・舌下静脈の拡張
  2、固定痛
  3、病理的腫塊
  4、血管異常
  5、うっ血
  6、月経不順・月経痛・経血に塊がある
  7、顔・唇・歯ぐき・目の周りが紫・黒・暗
  8、不整脈
 婦人病・皮膚病・痺証における診断
 その他 微小循環障害・血流変性の異常・血小板凝集性増大・病理的異常など現代における検査技術により知りえた血管の閉塞なども血瘀証と考えられる。

 *店頭における血瘀証の指標『色暗・腫塊・疼痛・・・痛む・しこる・黒ずむ』

 *店頭において多くみられる血瘀証・・・赤血球増多症(多血症)・血小板増多症・高カルシウム血症

 *認知症と血瘀症

 *症例検討2例
 ≪薬局の店頭で血瘀証は多く見られます。、気滞血瘀・寒凝血瘀・血虚・気虚・陰虚・陽虚・外傷など原因は様々です。
  血の巡りが悪いという程度から血栓まで瘀血の程度も様々です。血瘀の場所、程度により方剤を変えたり、
  原因も考慮しながらやっています。≫

平成29年3月 薬剤師会勉強会

幼児期の子供の特性~子育ての宝さがし~ 武蔵野短期大学付属幼稚園園長 酒井 幸子先生

 乳幼児期
  0~2歳 感覚的・運動的 施設:入園前、家庭
 幼児期
  3~5歳 直接的・身体的 施設:幼稚園・保育園・子供園・・・聴覚言語の発達
  6~8歳 論理的 施設:小学校・・・視覚言語へ展開

 幼児教育・保育・・・乳幼児期の特性や発達を考慮し、遊びや環境を重視し保護、育成すること
  特性:依存から自立に向かう
  発達:
   ①自然に成長していく力
   ②周囲の環境に能動的に働きかけようとする力

 施設と制度
  幼稚園 幼稚園教諭 小学校からの教育の基礎
  保育所 保育士 保護者の委託により保育
  幼保連携認定子供園 幼稚園教諭+保育士の両資格
            教育+保育+子育て支援(平成27年4月発足の新制度)

 薬剤師のできる事(求められれる事)
  環境の工夫
  情報の提供(子育て支援情報など)

 *薬局において困った事など 質疑応答
 ≪漢方薬局には子育ての悩みをもつ親御さんも多くいらっしゃいます。特性を知った上で個々の理解と寄り添い向かわす
  という事が大切だと感じました。≫

2016-12-12

平成28年11月20日 中医学の勉強会

よくある精神問題の中医学分析 中医学講師 何暁霞先生

うつ病状態の女性

■うつ病は脳とこころの両面でとらえる。

■うつ病とうつ状態の違い。
 ・うつ状態…抑うつ気分・落ち込み・意欲減退・思考力低下・集中力低下・食欲不振または過食・不眠・もの事の興味や関心がなくなる。
 ・うつ病…うつ状態が2週間以上続き、落ち込みも酷い。

  ☞ 一見すると脾気虚の状態に見えますが、抑うつ気分・落ち込み・過食、不眠など、脾気虚でない症状も入っています。脾・肝・心の三臓は深く関係しています。

■子供の不登校など精神問題の原因
 ・脳の栄養不足、妊娠中の喫煙・アルコールの摂取などが言われていますが、中医学においては腎虚を考えにいれます。

 ☞ 脳の栄養については研究されています。子供に限らず心療内科を訪れる人の中には貧血の改善や、タンパク質をしっかり摂る・ミネラルの摂取などだけで、状態が改善する人達もいるそうです。いつも店頭でお話している事ですが、脳や神経も栄養が必要です。

 また、妊娠中の問題はそればかりとはいえないと思いますが、胎児の環境をよくしておく方が良いに決まっています。胎教といいますが、妊産婦が精神的にリラックスしている事が一番の胎教だと思います。中医学では腎に先天の精があると考えています。ですから発達障害などは先天不足と考え、補腎をしていく事を重要視しています。

■睡眠とうつ病との関係
 就寝時間は20代~40代のうつ病の原因の1つになっている。夜12時以降就寝の学生は夜10時前に就寝する学生よりうつ病のリスクは24%高い。自殺のリスクは20%高い。

 【眠りのメカニズム】 
 メラトニンは体内時計を調節するといわれ睡眠と深い関係があるホルモンですが、22時頃から分泌が増え、翌日の4時頃ピークで下がってきます。脳の温度も睡眠と関係しますが4時頃一番低くなります。また副腎皮質ホルモンと眠りとの関係も言われています。このホルモンはストレスがかかると分泌され、眠りたいけど熟眠できず、すっきりしない状態になってしまうそうです。

 【眠りを中医学で考える】
 23時から2時間は子の刻です。夜中の12時に陰は極まって陽に転化します。入眠したら、陽気を養います。また子の刻は五臓六腑では胆の時間です。“胆は決断を主る”といい精神活動に重要な臓腑ですが、眠りによって胆が養われます。また午前1時から2時間は丑の刻です。まだ陽気は弱く、眠りによって保護されます。この時間は肝の時間です。"肝は謀略を主る“といいやはり精神と関係が深い臓腑です。つまり中医学でも古来22時から3時まで睡眠をとることが健康にとって大事な事とされてきたという事です。

■逍遥丸について
 出典『太平恵民和剤局方』
 当帰・芍薬…養血斂陰(血を養い、陰を斂る)
 柴胡・薄荷…昇陽散熱(陽気を昇らせ、熱を散じる)
 茯苓・白朮・甘草…和中補土袪湿(お腹を調和して脾土を補い痰を除く)
 生姜…暖胃袪痰、調中解欝(胃を温め痰を除き、お腹を調和して欝滞している気を流す)

 ☞ 肝は蔵血を主るといい肝の本体は陰血です。また疏泄を主るといいその機能は気を上げて、それを全身に巡らせる事です。脾は血を生む所で、肝とは相克の関係にあるので、脾は補い守らなくてはなりません。そういった事がオールマイティーにできるように構成された方剤です。

■うつによく使う弁証
 気血両虚(心脾両虚)…心脾顆粒
 心腎不交…天王補心丹
 心肝両虚化火…酸棗仁湯
 痰擾心脾…温胆湯

 【ミンハオ】

 ☞ うつにかかせない臓腑は心・肝(胆)・脾ですが、腎も重要です。腎は五行の水・心は五行の火です。五臓の中で最も陽なのが心、最も陰なのが腎です。心火は強くなりすぎると心のエネルギー過多の状態になり落ち着かなくなったり、不安が
増大したり、眠りも悪くなったりします。この火が増大しすぎないようにしているのが、腎の水(腎陰)です。心と腎が良い状態で交流しているのを交通心腎といいますが、それがうまくいかなくなった状態を心腎不交といいます。また心火が強いと心血・心陰も消耗します。

■50代以後のうつ病の原因に陰陽両虚がある。
 中医学では女性は7の倍数で、男性は8の倍数で転機を迎えると考えられています。『女性35歳陽明脈が衰え、42歳三陽脈が衰え49歳任脈・太衝脈が衰え天癸竭きる。男性40歳腎気衰え、48歳陽気衰え、56歳肝気・腎臓衰える』陰にあたる物質としての身体の衰えと伴に陽も衰える、つまり陰も陽も両方虚を考えるという意味です。

■清陽不昇
 陰陽の大元である真陰真陽は腎にあります。陽気が不足すると陽気は上の方まで昇れずうつになります。また腎は髄海(脳)に通じるといい髄海不足になるとうつのような症状になります。そこから認知症に発展する事もあります。

■対策はうつの弁証+陰陽双補
 うつ状態の症状のうち意欲減退・思考力低下・集中力低下・食欲不振・物事に興味や関心がもてないという状態があります。
これだけでは必ずしもうつとは言えないのではないかと思っています。中医学において鬱とは気の流れがスムーズでなくうっ滞している(気鬱)の状態をいいますが、上記の症状は過労などで気が虚しているとも考える事もできます。

 またうっ滞しているのが気滞そのものでなく、痰が気血の流れを塞いでいる時もあります。大きなストレスからうつ状態になる人も多いと思いますが、同じようなストレスがかかってもうつ状態にならない人もいるわけですから、中医学的には気血が充実していて五臓の営みがスムーズな人はうっ滞しにくいと考られると思います。

 また、うつになると思考回路が同じところを回っていてそこから脱する事ができなくなります。気血を充実させると伴に、ゆったりした服を身につけてリラックスを心がけましょう。

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