平成29年12月17日 中医学勉強会
子宝相談の基本(中医学による周期療法) 中医学講師 劉伶先生
◆夏桂成先生が提唱
西洋医学では周期に合わせてホルモン剤を使うが、女性の月経周期を見ると低温期から高温期へ高温期から低温期へと陰陽転化の法則に則っているので、中医学も陰の時期は陰を補い・陽の時期は陽を補い転化する時期はその動きを助けるというように周期に合わせて使う事を提唱した。
◆月経の仕組みと正常な月経
・10歳から15歳くらいに初潮を迎える
・毎月28日から35日周期で5日から7日くらいある
・出血量は平均82gくらい
・月経期の終わり頃からエストロゲン(E2)の分泌が増え、卵胞は成熟していく。また内膜も増殖してくる。
・E2がピークになるとLHサージが起こり排卵する。
・排卵後に卵胞は黄体になりプロゲステロンを分泌し着床にむけて内膜は柔らかくなっていく。
・E2は多すぎても着床しない。
中医学的見方 エストロゲンは陰中の陰・内膜は血
◆子宝相談の中医学的アプローチに必要な情報
・気血津液・五臓の状態を知る
・月経・帯下に関するもの
・基礎体温(陰陽のバランスを見る)
・既往歴(中医学において病因病機は重要)
・治療状況
・配偶者との生活習慣
◆生理痛
・痛みの程度・・・酷い時・だんだん酷くなる時は内膜症の可能性も
・通じざれば即ち痛む・・・活血化瘀プラス(寒凝・気滞など)
◆帯下
・量・色・質・時期
・排卵・PCOS・感染症
・少ない・・・腎陰虚、多い・・・痰湿
◆周期の異常と卵巣機能
・長い・短い・高い・低い
長い・・・補腎・活血・補血・袪痰
短い・・・補腎陰・清熱・収斂
(いずれも弁証論治が必要)
◆月経量と着床
・月経量や質は内膜の状態と関係している。・・・滋陰補血・活血・袪痰湿・補気
◆体外受精の治療に対して中成薬でサポート
先生の経験から
・休憩が必要・・・休憩中に補気・袪痰
・痰濁・鬱熱があれば(生じていれば)清熱・化痰・袪湿などで除く
・補腎・補血・活血でサポート
◆ストレスと子宝
・ストレスによる不妊・妊娠中の不安ストレス・産後うつ・ノイローゼ
考えすぎ(思慮過度)・・・養血安神・健脾安胎
イライラ・怒りっぽくなる・・・疏肝養血
イライラ・興奮しやすくFSHが高い・・・重鎮安神
汗・ほてり・不安・不眠・・・平肝潜陽
◆劉先生の3症例
1、着床障害に対し杞菊地黄丸・水快宝を使用した症例
2、子宮筋腫が多く着床が難しい状態に対し水快宝・シベリア霊芝・亀鹿仙を使用した症例
3、高齢不妊に婦宝当帰膠・亀鹿仙・逍遥丸・杞菊地黄丸→海精宝を使用した症例
4、衛益顆粒を使用した症例
5、(女性)冠元顆粒・衛益顆粒・補中丸(男性)亀鹿仙を使用した症例
*体外受精を行う場合中医学によるケアをしていると出生率が上がるとの事でした。
コメント
中医学では天人相応という基本的な考え方があります。
女性・男性の機能と生理に対しても同じだと思います。
ストレスによる気滞症状があったのではスムーズな営みはできません。
また気が足りなければホルモンを分泌させるエネルギーも出てこないし卵胞も育ちません。
血不足が不足すればホルモン量も不足してしまいます。
卵管閉塞など器質的生涯は現代医学で越えるれるようになりました。
そうなってくると元気な卵子と元気な精子・そして柔らかく居心地の良い子宮環境が整えばという事に他ならないのではないでしょうか?
話しの中で驚いたのは、あと卵が1000個という状態で妊娠した方がいたという事でした。
やはり子供は授かり者なのだとつくづく感じました。
平成29年10月15日 勉強会
中成薬の不妊症周期調節法 中医学講師 河野康文先生
不妊症に対する3本柱 中医学と中成薬・西洋医学の知識・カウンセリング
■中成薬の周期調節法
二分法
1、月経期(リセットの期間)・・・活血化瘀(中心)血府逐瘀湯など
2、内膜の増殖し、潤って着床に対する準備をする期間・・・補気・補血・補腎(中心)
補腎に関して
腎精不足・・・補腎益精
腎陽虚(排卵が遅いか無排卵・BBT低め)・・・補腎陽
腎陰虚(排卵が早い、BBT高め)・・・補腎陰
養血+補腎+活血
養血調経・・・婦人血を以て主と為す
補腎益精・・・腎は精を蔵し、生殖を主る
活血化瘀・・・不妊症の人の殆どに内性器の瘀血がある「骨盤滞血症」
生理不順
瘀血性疾患:子宮筋腫・卵巣嚢腫・内膜症・PCOSなど
西洋医学の検査と診断による弁病論治(症状が無い時にも役立つ)
*昔から女性の月経やホルモンバランスの崩れによる症状を『血の道』といったりします。
この言葉は聞いた事があると思います。血の不足はこの血の道に大きく影響します。
ですから養血(血を養う)事は不妊症の改善において重要です。
また、『腎は生殖を主る』ので腎の重要性も考えに入れないわけにはいきません。。
『腎は精を蔵す』という言葉にある精は狭義の意味においてはホルモンの事だと理解しています。
だから、ある程度の年齢になってから妊娠を望む場合精血を補えるとされる物は不可欠になってきます。
陰陽のどちらが不足しているかによって用いるものは違っていますが、動物性のものは有血有情の品といわれ
効果が高いとされています。
■性腺軸
視床下部性腺
↓ 刺激ホルモン放出ホルモン
下垂体
↓ 性腺刺激ホルモン(FSH・LH)
卵巣 卵胞ホルモン・黄体ホルモン
血中の卵胞ホルモンはある程度増える事により中枢にフィードバックして排卵を促したり、
卵胞刺激ホルモンや黄体刺激ホルモンを抑制したりするシステムになっています。
ホルモン
<ホルモンの働き>
1、3大物質代謝
2、身体の成長、発育、生育、老化のプロセスに必要
3、生殖機能
4、中枢神経・自律神経の発達や活動に影響している。
5、内部環境の調節
<ホルモンの働き方>
内分泌腺から血管内に入って運ばれる。
女性の生殖系
卵巣
卵の貯蔵、熟成、排卵、ホルモンの産生をしています。(エストロゲン・プロゲステロン・テストステロン)
*中医学で女性は7の倍数で変化すると考えられています。
『7×7歳(49歳)にして任脈虚し、太衝脈は衰少し、天癸竭き、地道通ぜず。故に形ついえて子無きなり。』黄帝内経
にはこう書かれています。
実際原始卵胞は出生時に約200万個あるといわれていますが、時間の経過とともに消失し、48歳の時は約1000
個といわれています。
子宮
胎児を育てる場所です。受精卵にとってフワフワで潤いのある環境が必要です。
この手のような形をした卵管采が排卵によって卵巣から出てきた卵子をキャッチしま
す。
卵管を通って子宮に到着します。受精卵は卵管中で分裂・分化し子宮腔に進み
準備の整った内膜に着床します。
月経の仕組み
低温期
月経期 胞状卵胞(5~10)コ
増殖期 卵胞期(卵胞が育つうち1つが主席卵胞となり、その他は自然になくなる)
排卵(主席卵胞から卵子が出る)
高温期
分泌期 残った卵胞は黄体化し黄体ホルモンを分泌する
*基礎体温について
黄体ホルモンは体温を上げるので、基礎体温によってある程度ホルモンの分泌の状況や排卵があるかなどを見る事が
できます。
この低温期から高温期になり低温期になる繰り返しは昼から夜また昼へという陰陽転化の流れと同じです。
また血・精・津液は陰に属し形あるもので胞状卵胞が主席卵胞に育つ事は陰の時期という事が言えるので
滋陰・養血・益精が中心になります。
高温期は卵子が卵管を進んでいく動的な時期で気というエネルギー的な部分で陽にあたります。
ですから補陽・補気・疏肝理気などが中心になります。
9月勉強会の話(30周年特別講演)
『中医臨床40年から伝えるもの 中医学は人類の宝物』
中国中医科学院広安門病院客員教授 路京華先生
*中医学の核になる理論 無から有に
陰陽を見据え、天地、自然界の規則性を研究 陰陽は治療に対する根本原理
『陰陽者、天地之道也 万物之綱紀、変化之父母、生殺之本始、神明之府也、治病必求本」
陰陽は天地の道なり、自然の真理であり、病を治そうとするなら陰陽の原理にそって行うというような意味です。
古代哲学による自然界は木・火・土・金・水の五つの要素で構成され相生・相克の関係でバランスが保たれている。
*気は万物の生成する源
気は形はない存在するもの。存在は現れる現象によって知る事ができる。
例えば空気は形がありませんが、高山に登って酸素が薄いと苦しくなります。
だから空気中に私達にとって必要な物質が含まれている事がわかります。
このように目に見えない事でも現象として存在を知る事ができます。
陰陽 形はないが象(現象)でみる事ができる。
陽盛則熱・・・陽が盛んなら熱という現象になる。つまり熱・火という事があれば陽
陰盛則寒・・・陰が盛んなら寒という現象になる。つまり寒・冷という事があれば陰
*「気」があれば即ち「象」がある「象」は皆「気」なり
現象(象)と本質(気・臓)のなんらかの規則がある。
*自然界の万物を五行であらわしている。
人の身体における五臓に五行をあてはめて考察する。
臓象 臓は物質の基礎や本質、象は体表に現れた現象と反応。
*臓腑の命名
中医学では生体外部に現れる生理現象を通じて臓腑の存在や機能を推測し命名したものなので、時に解剖学的名称と
一致しない。人体の生理や病理は象から導き出された理論による。
*証と症
症は1つ1つの症状の事
証は病気の部位・性質・本質・正邪関係・病理関係などの情報から導き出した結果としてある物
例えば「鼻水がでる」というのは1つの症状なので症。
「急に冷え込んできて寒いと思ったら、夕方から鼻水がでだした。」というのは風寒証。
*西洋医学と中医学
中医学 西洋医学
無と有の研究(気と象) 有を研究(細胞・組織・臓器など)
同病異冶・異病同治 同病同治
証をみる(全身の情報を統括) 各臓腑・組織の疾患としてとらえる
自覚症状や徴候を重視 検査結果を重視
未病先防ぐ(予防) 検査値に異常なければ、疾病と認めない
但し 無症状の場合難しい 無症状でも検査値が示す事がある。
*養生と治療
中医学には『未病を治す』という予防医学の概念がある。病気を予防したり、病気がどういう風に
変化していくかを知って先回りして治す。あるいは変化しないようにする。
人間と自然関係を研究する医学です。
中医学の成り立ちは象から臓を知るという事にあるという事がわかりました。
その結果に達する為に人類は自然や人を観察しつづけてきました。
中国4千年といいますが、現代の中医学に至るまでには同じだけ長期に及ぶ道のりがあったのだと思います。
そういう歴史に裏づけされた理論は本当に人類の宝だと感じます。
この理論なしに科学的エビデンスのみで漢方薬を用いれば偉大な歴史からしっぺ返しを食うような気がしてなりません。
真摯に向き合い真摯に学んでいきたいと思います。