平成30年4月15日 中医学勉強会
『問診のすすめ~婦人病~』 中医学講師 邱紅梅先生
著書:問診のすすめ・わかる中医学入門
*問診は弁証論治において重要・現代は弁病も視野に入れて行う。
色々伺うのは中医学の弁証という方法にとても大切だからです。
また西洋医学の病名や検査値なども考えにいれていきます。病気の持っている方向性があるからです。
*婦人の『女性力』は妊娠力も含めた、女性の身体の特性がもっているものの事をさしているそうです。
経・帯・胎・産を軸とし、7年毎の年齢軸、心的状態の軸を総合して考える。
経は月経、帯は帯下(おりもの)、胎は妊娠、産は出産です。
*心理的フォローも重要!
女性の心はデリケートです。旅行や突発的な出来事や精神的ストレスで生理が早く来たり、とまったり、生理血の量が増えたり減ったり、期間が短かったりながかったり心の影響をうけやすいです。
月経
・月経周期 周期は28日±3日が理想
・基礎体温を見る
月経痛 瘀血が関係している。(不通則痛)通じざれば即ち痛む
瘀血の軽重度をみる。
・痛みの程度 わずかに痛む~鎮痛剤が必要(鎮痛剤の強さ、服用頻度)
・血塊の有無 大きさ
・時期 月経何日目から痛むか?
・期間 痛みは何日続くか?
・排卵痛・排便痛・性交痛の有無
重度の瘀血(痛みが強い)の場合筋腫や内膜症を疑う。
*先生の経験からいって 痛みが強い場合は筋腫や内膜症があるそうです。
逆に筋腫や内膜症は瘀血なので活血化瘀薬は必要。
*筋腫―大きさ・場所・種類(筋層や内膜下にあるのは重度の瘀血)・数(多いと複雑、多発筋腫)
*内膜症―卵巣の中、腹膜の中、深部内膜症、チョコレート嚢胞
*月経痛があれば瘀血を疑い必ず活血化瘀薬を服用する。鎮痛剤で痛みは抑制できても瘀血の状態は改善されない為、不妊症に発展する場合も少なくない。程度により活血薬は使いわける。
*内膜が柔らかく子宮のらせん動脈に充分スピーディーな治の流れが必要。
*胞宮瘀阻に対し弁証と弁病を組み合わせて行う
*養生食・養生茶・生活の養生なども組み合わせて
瘀血の原因・瘀血の重度に合わせて方剤を選択
1、寒凝血瘀(内寒) 寒凝とは寒さにより血の巡りがわるくなり固まりやすくなってできる瘀血の事
2、気滞血瘀 血は気の推動作用によって流れるので、気が停滞すれば血も停滞する為の瘀血
3、血虚血瘀 血が少なければチョロチョロ流れ勢いがない為とされる瘀血
*冷えに対して乾姜や安中散を加えている
*冷えが酷い時は附子剤を使用
2時間の講義でしたが、とても有意義でした。
中医学として女性の身体を考える時、自然な体の変化としてとらえると初潮、妊娠、出産、授乳、閉経と進むわけです。
この流れが可能でないなら、どこに問題があるかを考えなくてはなりません。
邱先生は『月経痛あれば必ず瘀血あり』『瘀血あれば解消をめざさなければ将来重度の瘀血に発展する』
だから月経痛は放置しないで必ず活血化瘀薬を使い、原因である寒を除いたり、気滞を除いたり、血虚を補って重度の瘀血症状にならないよう初潮から更にその前から養生していく事をすすめています。
瘀血は万病の元といいますが、婦人病は瘀血が原因するものが多いと思います。
子宮筋腫・子宮内膜症・卵巣嚢腫・チョコレート嚢腫など
更に年齢により瘀血の度合いや活血化瘀薬の強さの選択がちがって来る事などとても参考になりました。
平成30年3月18日 中医学勉強会
『活血補腎で抗老防衰』~漢方で認知症を予防しましょう!~ 中医学講師 劉文昭
劉先生は循環器がご専門で、以前は心電図の見方なども入れて循環器の病気の講義をしていただいています。今回は脳血管と関係する認知症についてお話し頂きました。
認知症は日本の社会問題
今後認知症患者が増える傾向にある
内閣府のHPより
認知症患者数の推計
http://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2017/html/gaiyou/s1_2_3.html
2012年には7人に1人から2025年には5人に1人という可能性が示されている。
*認知症の分類
①血管障害性
②変性性認知症・・アルツハイマー型認知症
③脳血管障害を伴うアルツハイマー型認知症
*症状
中核症・・・記憶障害・認知機能障害
周辺症状・・・幻覚・妄想・抑うつ・不安な等 問題行動
*画像診断について(脳溝が広くなる・脳回が狭くなる・脳室拡大)
*脳血管系認知症(動脈硬化・血栓など)・・・瘀血
中医学による弁証論治
高齢に伴う腎精虚衰 (腎陰虚または腎陽虚)
(腎精は生長・発育・生殖などの生命活動に不可欠なもので、髄を生じ髄海(脳)に通じる為の根幹をなすもの)
気血両虚(気血が足りず養われない)
痰濁内阻・瘀血阻滞(気血の流れが悪く養われない)
●痰濁内阻害に対応するもの
温胆湯・・・清熱化痰の品ですが、この中の薬味である黄連・半夏は中医において(製半夏は眼圧と脳内圧に黄連は脳内溏代謝に関係するとされ)多用されているそうです。
●瘀血阻滞に対応するもの
冠元顆粒(近年薬理研究もされています。)もともと冠心病(狭心症)の漢方薬としてつくられた冠心Ⅱ号方をもとに日本で考案された処方ですから循環系の瘀血に対応できると考えられます。
●気血両虚に対応するもの
心脾顆粒・・・気血両虚で臓腑としては心脾両虚の時です。心は思考する脳の働きも心と考えられています。眠れない・くよくよ考える・物忘れなど心の弱りの現象です。
当帰芍薬散・・・補血・健脾利水の薬味で構成されています。
●腎精虚衰
腎精不足ですから精血を充分補う必要があるので力のあるものを使います。
鹿茸は益精血の働きが充分あるものの1つです。とても力のある中薬です。これが入ったものに参茸補血丸・参馬補腎丸などがあります。
特に参茸補血丸は15年くらい前にマウスの記憶障害の改善実験がおこなわれています。
当時活血化瘀の冠元顆粒と参茸補血丸の使用で良い結果が得られていたのを記憶しています。
そのほか陰精を補うものとしては亀鹿仙が亀鹿二仙膠という方剤をもとに作った漢方食品で、すっぽんも加わって更に良いものになっています。
その他の漢方食品
・艶麗丹…老化防止にもなるし、艶があって麗しくいられるという名前がついた艶麗丹(えんれいたん)はなんと蛙の卵管が使われています。1年の半分は氷に閉ざされた場所の林の中にいる蛙で長い冬眠から目覚め繁殖能力が高まった状態の時をつかめて食べるそうです。その卵管は美肌効果もあるそうです。
・くるみ…胡桃は脳とそっくりな形をしていますが、脳に良い食べ物です。
・香ロぜア…紅景天と同じ植物でシベリアでとれたものです。紅景天はチベットで使われている中薬で健脳益智・扶正固本・理気養血などの働きがあるとされています。
ロシアではうつ状態の改善に使われているそうです。
*お気に入り*
香ロゼアは私の好きなハーブティーです。
毎朝、コーヒーや紅茶に入れて飲んでいます。そのまま飲んでもローズの香りでおいしく頂けます。
健脳の働きとは脳の調整と思っています。
眠気覚ましにはなりません。逆に飲んだあと眠くなる時もありますが、脳が休んだほうが良いとおもってるんだなって考えています。でも仮眠した後はすっきりです。
例えばカフェインの入ったお茶は中薬学によれば堤神醒睡とかかれています。つまり心の神(思惟活動)を上向きにして覚醒する、つまり眠気覚ましになるという事です。
扶正固本(免疫力を上げて身体の本質をしっかりさせる)できて、脳にも良くて美味しい!最高です。
平成30年1月 中医学勉強会
『専門性を高める中成薬・養生食品の応用』中医五官科 中医学講師 トンセンホ先生
*響聲白龍散
余甘子・・・アンマロクという植物で薄緑色の丸い実です。これは咽の炎症をしずめ、なめらかにして肺系を潤し、痰をきり、潤して渇きをとめるとされています。
この余甘子が主薬です。
それにやはり咽や咳に使われる甘草桔梗も入って余甘子の働きを補助しています。
珍珠は解毒生肌の働きで粘膜を補助し銀耳は潤すことで補助します。
更にお茶の葉と薄荷が働きをたすけます。
飲み方:ペットボトルの水かお茶に溶かしてチョコチョコ口に含んでのみます。
(^^)美味しくはないけど咽がスッキリします。
こんな時にも:口臭が気になるとき 響聲白龍散+晶三仙
風邪で咽が腫れて痛む時 響聲白龍散+天津感冒片(涼解楽)
空咳の時 潤肺糖槳+響聲白龍散
その他いろいろ組み合わせて使えます。
響聲白龍散はまずいと思っていたのですが、薄めて飲むと咽がさわやかでいい感じです。サンプルがありますので、お試しになりたい方は言っていただければ差し上げます。
鼻の話
・1日に2万リットルの空気を吸っている
・身体に入れる前に空気の温度を33度以上にして湿度も80%に即座にしている
慢性鼻炎の弁証
1、肝気犯肺 2、肺熱蘊盛 3、肺気虚弱 4、肺腎気虚 5、肺脾気虚 6、瘀血体質
花粉症の中医学的見方
衛気(病気から身体を守る気)の不足
1、エネルギーの供給と体温調節
2、気候など外部環境に対する適応能力の維持
3、病邪に対する防御機能
衛気不足の病因 肺気不足・脾失健運・腎気虚弱・衛外不固
花粉症の弁証
1、肺気虚 2、脾肺気虚 3、気虚血瘀 4、肺腎陽虚 5、湿熱蓄肺 6、外寒内熱
蓄膿症の弁証
急性 1、肺経風熱証 2、胆腑鬱熱証 3、肺胃湿熱証
慢性 1、肺脾気虚
後鼻漏の弁証の中心 健脾益気・宣肺開竅・活血利湿
*鼻の病気に対する活血には頂調顆粒が有効
*トン先生の症例(臭いがしない)
難病・好酸球性副鼻腔炎 7年前から手術3回 薬も7年服用 効果無し
弁証+弁病
生活習慣の改善+漢方薬
約8ヶ月で臭いがわかるようになる
使用した漢方薬 衛益顆粒・頂調顆粒・辛夷清肺湯・葛根湯加川芎辛夷など3種類づつ組み合わせ
耳の構造 聴覚と平衡感覚
耳鳴り 蝸牛循環障害だがその原因
1、血管痙攣 2、血栓・栓塞 3、ウイルス感染 ストレス・自律神経の失調
慢性の耳鳴り 活血・理気・補腎
眼底出血 二至丹・田七
標的療法・・・星火霊芝宝を高容量で
良性発作性頭位めまい 磁石が動く・・動くのは骨粗鬆症(腎虚)
耳鼻科で使われる活血化瘀薬 水快宝・頂調顆粒など
トン先生は五官病の専門医でいらっしゃいます。日本でいうと耳鼻科+眼科です。この領域では内科と少し使う漢方薬が違うようです。
臭覚を失う事に関しては西洋医学ではステロイドを使うようですが、慢性炎症とみての事だと思いますが、効果が上がる事はすくないようです。
やはり 養生+漢方薬の服用で身体の内側から改善を考えていくのがよい様に思われます。