私達の勉強会

2019-02-03

1月の勉強会は何暁霞先生の動物生薬に関しての講義でした。

動物生薬には哺乳類・鳥類・魚類・両生類・爬虫類・虫類・甲殻類など色々あります
『血肉有情之品』 血も肉もあり、情もある・・・人に近いという事
『同気相求』   人に近いので、よく補える
このように言うことから力のあるものと考えられています。

時々引用する「老中医の診察室」の第7回『脊髄炎を補肝腎と清化湿熱で治す』では漢方薬と豚の脊髄30㎝を一緒に煮込んで摂らせています。
3年も寝たきりだったのに3週間後は捕まって立つことが出来るようになり、数か月後には出かけられるまでに快復しています。なるほど『同気相求』だと思います。

食用蟻で食養生

勉強会ではアリについて再度学びました。
製品では益宝がアリ製剤です。
アリは9000種あるそうですが食用蟻は10種類しか無いそうです。
オーストラリアにも食用蟻がいるそうで、そういえばアボリジニの食文化に蟻を食べる習慣があった事を思い出しました。
たしか、蜜をためている甘いアリをテレビで見た事があったと思います。

中医で使われる蟻は『螞蟻』で木の上に巣を作ります。
画像をみましたが、まるで真っ黒なハチの巣のようです。
養殖ができないので野生のものです。
3千年以上前から食され蟻ジャムは皇帝に献上され、貴族階級の嗜好品だったそうです。
アミノ酸や微量元素など豊富ですので栄養補助食品になります。

中医学では性は平、味は鹹で、補腎・通経絡・消腫毒の効があり、腎虚頭昏耳鳴・失眠多夢・陽虚遺精・中風偏癱・手足麻木・紅斑性狼瘡・強皮病・皮膚炎・癰腫疔瘡・毒蛇咬傷を主冶となっています。

中国では免疫機能に問題があるためになる色々な病気に応用されているそうです。
新聞などに治癒経験がのっていてリューマチ・強直性脊髄炎・大腿骨壊死症・乾癬・関節炎や便秘・不眠に至るまで色々だそうです。
関節炎にはよく使われ1~4ヶ月で大分緩解するそうですが、何先生が驚きをもって話されたのは20年あった乳腺のしこりが無くなったという話です。
中医学で乳腺は肝の経絡という事から考え逍遥散を使う事が多いそうですが、蟻が良いというのは初めてだそうで、使ってみようと思っていますと言っていました。
乾燥した蟻をお酒に浸け込んだ薬酒や蟻の粉末などの形で飲まれているそうです。

何先生曰く「難病と言われている病気には使ってみては・・・」

中医学で『腎は精を蔵し、骨を主り、髄を生じ髄海に通じる』といいます。
精とは人の生きる力の根本みたいなものです。疲弊し体力気力ともに失った状態を『精根尽き果てる』といいます。この言葉にも精の重要性が出ていると思います。

阿膠

ロバの皮からとった膠質です。
中医学的には補血・滋陰・潤燥・安胎の効ありと言われていて、楊貴妃が美しさを保つために飲んでいたとか、習慣性流産に悩んでいた西太后が飲んで同治帝を生んだとか言われているそうです。
何先生も「子供の頃母が阿膠を煮込み黒胡麻と混ぜて食べていました。そのせいか母の髪は60歳になっても艶のある黒髪でした」と話されました。

阿膠は婦宝当帰膠に使われていますが、近年値段がだいぶ高騰しているそうです。
そういわれると阿膠が入れられなくなるのが心配です。

薬用はクサガメの甲羅です。これを3日3晩くらい煎じるゼラチン質を取り出すそうです。
長寿・吉祥・幸運の象徴で、自然界の最も濃厚な陰を得て長生き任脈(月経と関係のある経脈)を通し、補陰力が最も強い。
*亀の長寿の秘密はのんびり!!
新陳代謝は緩慢・年間300gしか増えず、心拍数は26~30回、11月から4月まで冬眠

*陰は静かで抑制的なイメージがあると思いますが中医学でも陰が十分であれば気持ちも穏やかでのんびりでよく眠れます。

スッポン

スッポンの甲羅を鼈甲といい亀の甲羅と同じく滋陰潜陽の効があります。

鹿角

陰陽はバランスよく補います。鹿角(ろっかく)は骨化した鹿の角でやはり長く煎じて膠にしたものです。
これは陽気(エネルギー)を補います。

2018-12-30

平成30年12月16日 中医学勉強会

『不妊症と補腎薬の活用方法』                           遼寧中医薬大学客員教授 中医学講師 劉伶先生

現代は結婚の年齢が高くなっている為か子供を望む年齢も高くなっています。
長年、不妊症に取り組み、理論的な面は極めてこられた先生でも高価な漢方を長期に使って頂いても出産にこぎつけない事に対する悩みもあるようです。
しかしながら、先生がタイアップしているクリニックによると体外受精の成功率を20数%から40%弱まで上げる事ができているという実績を示されたとの話をされました。(年齢は30代後半から40代が多い)
この数字の示す意味は漢方で身体をバックアップさせて高度生殖医療を行っても10人中6人は難しいという事になります。
ただ、漢方をしっかり使う事で40歳以上でも自然妊娠したり・卵胞が育たず採卵できない人が採卵できるようになったり、筋腫が多くて着床しにくいい場合も妊娠出来たりなど奇跡とも思える事も経験されていて、その症例についてお話頂きました。

子供はやはり授かりものなのだと思います。
ただ、中医学を学ぶ私たちは基礎理論をしっかり把握してそれにそって使って頂ける事が大事だと感じました。

一概に不妊といっても無月経の場合もあれば生理不順の場合、また生理痛の有無など違いがあります。
また、医療の結果として卵胞数が少ない・胚の分割が悪い・着床障害など状態に応じた中医学的な考え方の違いがあります。
また流産についても中医学のとらえ方があり、胎動不安「堕胎」「小産」、一定の時期に流産してしまうのを「滑胎」といいそれに対する弁証論治があります。

月経周期は陰陽転化の法則にそっていると考え周期に合わせて漢方薬を使っていく方法が効果的と言われています。
陰陽は互いがあって存在し、対立・制約し、陰から陽に陽から陰消長・転化を繰り返すという変化が生命誕生と関係のある月経という営みの中にある事は感慨深い気がします。

月経期・・・瀉陰
行気活血と(補気・疏肝・袪湿・止血)
卵胞期・・・陰長
滋養肝腎と(活血・疏肝・利湿・清熱)
排卵期・・・重陰転陽
活血補腎と補気
高温期・・・陽長
補血温陽と(補気・活血・疏肝・安神・補腎)

高度生殖医療を行う場合の漢方薬の使用する時期や漢方薬の組み合わせの割合など先生の経験からの方法について症例を紹介しながらの講義でした。

中医学では「補腎填精」という言葉があります。充填の填でいっぱいに詰め込むイメージです。
内経に女性は7の倍数で転機がくると書かれていて、以下のようになっています。
7×1 7歳 腎気が盛んになって歯が生え変わり髪ものびてくる。
(人の生長・発育・生殖には腎気がかかわっています)
7×2 14歳 天癸に至り(腎陰・陰精が充足した事)任脈が通じ・太衝の脈が盛んになり月経がはじまる(任脈・太衝脈は月経・妊娠と関係しています)
7×3 21歳 腎気が充満する
7×4 28歳 筋骨もしっかりして髪も美しく身体が一番壮健です。
(筋は肝血・骨は腎精・髪は血の余り(血余)といわれ血と関係が深いので、精血(肝腎)が充実しています)
7×5 35歳 顔がやつれ始めてくる・毛の切れ毛や抜け毛が見られだす(精血が不足してくる)
7×6 42歳 顔がやつれ・髪も白くなりだす(精血が更に不足)
7×7 任脈虚し・太衝の脈も衰え・天癸(腎精)竭き月経がなくなる
女性にとって血は重要です。肌や髪の美しさを保つためにも・・
だから補血薬は欠かせません。
でも40歳をすぎて不妊症の場合、天癸(腎精)についても考え補腎填精の品を使った方が効果が得やすくなると思います。
こういう漢方は動物薬といわれるものが力があるとされていて値段も高いです。
痰湿・瘀血・気滞・その他経絡の流れを悪くするものがあればそれも考慮しなければなりません。
劉伶先生の症例でも婦宝当帰膠をベースに周期にあわせて3~4種類の漢方薬や漢方食品が組み合わされています。
高くて飲み続けることができないなら何にもならなくなってしまいますから、最低限に必要なものを考え相談しながらやっていきましょう。

2018-11-04

平成30年10月21日 中医学勉強会

『問診のすすめ~婦人病~』                                                              中医学講師 邱紅梅先生

著書:問診のすすめ・わかる中医学入

5月に引き続き先生の著書『問診のすすめ』の現代医学を用いた問診の項より婦人病について講義していただきました。

不孕(不妊症の中医学用語で不育を含む)着床力 

①内膜の厚さと質をどうみるか?

 内膜は厚みと柔らかさがあるほうが着床しやすい。

 経血量は内膜の厚さとも関係している。

女性の生理機能を血の道といいます。
血の濡養作用は月経・妊娠・出産などにおいて重要です。
卵子も濡養作用によって成長します。
しかし血は気の推動力によって働く事ができるので気血という言い方をします。
“血とは脈管内の赤い液体であり、主に水穀の精微から化生されてできる”
となっています。
ですから月経が少ない事は血の不足(血虚)とみます。
『肝は血を蔵す』『心は血脈を主る』肝血虚・心血虚が関係します。
また肝腎同源・精血同源といい、『腎は生殖を主る』ので関係します。

 内膜が薄いのは 肝血虚・心血虚・腎精不足・腎陽虚・気血両虚などの可能性があります。

血虚・腎精不足は材料不足ととらえ、腎陽虚は転化するエネルギー不足と考えます。
また気血不足は脾の血をつくる力の不足により血の不足となります。

②内膜の硬さをどう考えるか?

中学的見方・・・瘀血が関係する
子宮筋腫・子宮内膜症・卵巣嚢腫・子宮腺筋症・卵管・子宮腔の癒着など
・月経痛が酷い・血塊
・排卵痛・性交痛・排便痛
・経血量は過多
瘀血は原因から色々なタイプがあるが気滞血瘀・寒凝血瘀が多いと感じています。
気滞血瘀はストレスと関係していますが、特にストレスは無いと言う人でも、几帳面だったりすると、そうでない状態が気になっていたり、また面倒見のいいひとやよく気が付く人なども気を使いすぎている場合の気滞血瘀もよくみられます。
寒凝血瘀も多く、薄着やよく冷たいものや生ものを摂るなどによる血瘀もよく見られます。せめて月経中は冷やさないようにして冷たい物は避けるようにしましょう。

③内膜の感受性

内膜の厚みは15mm以上あって、グレードの高い受精卵を胚移植しても着床しない場合は着床力の低い状態といわれるが、邱先生の経験則からいってほとんどが瘀血だそうです。
なるほどという感じです。どんなに気血が充実していても、腎精が充足していても運ぶルートが閉塞していては何にもなりません。
瘀血は万病のもとといいますが、全くだと感じます。

« 次の記事へ 前の記事へ »