平成27年10月18日 中医学の勉強会
古典『黄帝内経』 中医学講師 高橋楊子先生(証の診方・治し方)など著書多数)
■生気通天論
生気は正気・天は陰陽四季の変化・通は交流、順応『夫自古通天者、生之本、本於陰陽』古来、自然と相通じて、人の生命活動も陰陽に法っている。人体において(九竅、五臓、十二関節など)すべて天の気と通じている。
この自然の法則に順応していれば邪気が入る事はない。蒼天(真っ青な空)とは快晴のことで陽気に満ちている状況で、人においても陽気は邪気から守る事ができる。四季に順応して衛気を高めて身体を守る事ができる。それができないと正気が弱くなる。
『陽気者、若天与日』陽気は天に太陽があるのと同じ。太陽がなければ、万物は存在できなくなるように、人も陽気がなくなれば生命が終わる。陽気は上に向かい外を回って身体を保護する。
『因於寒・・・』寒の時は陽気をまもるようにする
『因於暑汗・・』夏の暑さは身体の中にこもらないようにする。
『因湿於・・・』湿邪にやられると頭がおもくはれぼったくなる。大きな筋肉は縮み、小さな筋肉はのびてしまうので、拘攣や痿弱になる。
『因於気・・・』四肢がかわるがわる浮腫む、これは陽気の衰え減っている現象です。
『陽気者、煩労則張精絶』過労により緊張し精を消耗する。
この状況が続くと夏に煎厥をおこす。つまり頭がぼんやりし、耳も塞がり酷くなると倒れてしまう。
『陽気者、大怒則気絶・・・』激しく怒ると、経絡が塞がれ、血が上部に鬱積し倒れてしまう。
『陽気者、精則養神、柔則養筋。』陽気は精を変化して神(こころ)を養い、柔軟なものとなって筋を養う
*実際こういった理論は中医学の臨床の場で応用する事ができます。
*例えば衛益顆粒は衛気を高めるものですが、衛気は衛陽ともいい、上に向かい外をまもる、つまり免疫力と関係しているという事です。
『中医舌診及び臨床応用』 中医学講師 高橋楊子先生
■舌質をみる
舌色・・・きれいな淡紅色の舌もありますが、白っぽかったり、とても紅かったり時に紫っぽかったりします。
舌形・・・老と嫩、硬い感じと柔らかい感じで虚実がみれます。大きさ・歯型・厚さ・亀裂があるかどうか・つるつるしてる・暗いところや黒い点があるかどうか・紅い点・舌の裏の血管、まっすぐ舌が出せるかなど
舌苔・・・色、状態、厚さ・ベタベタ・水っぽい・乾いている・剥がれている。
以上の事をみます。
実際の画像がないと解かり難いので簡単にかきましたが、皆様の状態を見せて頂く上でさらにお役に立つ知識を得る事ができました。
平成27年10月1日 薬剤師会の勉強会 イムス富士見総合病院 宮地真由美先生
『糖尿病治療と体重の重要性』
糖尿とはインスリンの作用不足によっておこる慢性の高血糖状態をきたす疾患。1型と2型がある。1型はインスリンが分泌しない(膵臓のβ細胞の殆どが自己免疫またはウイルスによって破壊された為)
■治療はインスリン注射(遺伝的要素+生活習慣)
2型はインスリン抵抗性、分泌量の低下。治療は食事、運動療法+薬物療法
その他の原因 ①膵炎 膵臓癌
②内分泌疾患
③薬剤性…ステロイド・ピル・サイアザイド・β遮断・タクロリムス
④妊娠…半数は2型糖尿病に移行
膵臓、外分泌(90%) 内分泌…β細胞がブドウ糖のコントロールをしてくれるホルモンのインスリンを分泌。再生能に乏しい
インスリンがないと血中の糖は増えるが全身はエネルギー不足となる。
■治療目標・・・QOLの維持と寿命の確保
*厳格な血糖コントロール群と標準治療群における追跡実験で結果がでなかったのは血糖降下薬により体重が増えやすいという事があると宮地先生は考えているとの事
■ACCOD、ADVANCE、VADP
インクレチンは血糖のコントロールと関係した消化管ホルモン
GIP・・・小腸上部より分泌
GLP-1・・・小腸下部より分泌
■血糖値に応じて、β細胞からインスリン分泌促進。α細胞からグルカゴン分泌抑制。
*GLP-1製剤は食欲を抑えるので体重のコントロールが必要なタイプによい
■糖尿病治療における4つのポイント
糖尿病の正しい理解
食事療法
運動療法
薬物療法
■宮地先生の薬剤の使用例
空腹時から血糖値が高い痩せ型:SU剤少量+DPP4
中年メたボタイプ:BG DPP$ SGLT--2 チアゾリジン
軽症:αGI (1型の血糖値の変動が大きいとき)
注射剤 1型 インスリン BBTまれにMT
2型 非肥満 ①BOT ②MOT ③BBT MT
肥満 GLP-1
■まとめ・・・糖尿病の血管の動脈硬化は全身を管理する事が重要
皮膚疾患「皮膚を極めた者のみ報われる」中医学講師 楊達先生
中医学の皮膚疾患の専門家でおられる楊達先生も始めは中医内科に診療科にいらして黄帝内経の研究をし弁証論治の力を蓄えていらしたのですが、皮膚診療科に入ってみると弁証の仕方が大きく違っていたそうです。
先ず皮膚を見る事が大事(ある意味皮膚弁証とも言えるかもしれません。)という事がわかったそうです。
■皮膚弁証のポイント
1、発症の流れを知る
2、皮膚症状をよく見る
3、出来るだけ写真をとる
4、掻爬痕の比較
5、ステロイド剤の使用過程
6、皮膚温度
7、発症部位以外の肌の状態
■皮膚の炎症の進みは
初期の頃 赤くなる・熱を持つ・痒み・・・程度は変化
初期~中期 赤くなる・腫れる・熱を持つ・痛み・痒み・・・程度は変化
長期に及ぶ 乾燥・苔癬化・痒み
以上を中医学で弁証
原因(体質・食生活の歪・怒りっぽいなど精神的ストレス・風邪などの病気がきっかけになる場合
↓ けが、やけど、虫さされなどがきっかけになる場合)
経絡阻滞、気血不和
↓
血熱・湿熱
↓
毒
↓
虚+瘀
炎症性皮膚疾患の繰り返しになる状況
炎症の状態は、紅斑→丘疹→水疱→膿疱→糜爛→痂皮→落屑→苔癬化→乾燥→治癒 という順番に必ずなるわけではありません。紅斑から膿疱までは悪化の状態です。紅斑から水疱になる場合も紅斑から膿疱になる場合もります。
また、水疱から糜爛または痂皮または落説と経路は色々です。さらに治癒まで行かず繰り返す事も多くみられます。
上記の図は湿疹三角形といわれます。
店頭でよく見られる証型は血熱・湿熱・熱毒の3つで全部がふくまれています。その場合 清営顆粒、瀉火利湿顆粒・五涼華の3つが必要になってきます。また、酷い場合は五行草と五涼華を合わせてシップするとよいようです。
皮膚疾患の急性期においては効果と用量が相関関係にあります。ご自身がいらした中医の皮膚診療科では中医内科ではないくらいの生薬の量を使っていたそうです。しかし、効果も速かったそうです。
アトピー性皮膚炎は2重性格を持つ疾患です
環境や食物などのアレルギー的要素と乾燥、発汗、掻爬などの非アレルギー的要素の両方です。アレルギー的要素はアレルゲンによってひきおこされるアレルギー炎症で難治化しやすいです。
非アレルギー的要素には皮膚のバリアが弱い(ドライスキン)という事があります。その為、感染を受けやすい・皮膚過敏性などの問題があります。スキンケアによる皮膚のバリアの構築が大切です。
皮膚治療は三段階!
■初期・・・漢方薬や漢方食品、漢方茶など充分つかって炎症をおさえていきます。
■中期・・・残った炎症を抑えながら体質にもアプローチします。
■最終目標・・・スキンケアしながら体質を改善をして再発を防止する。必ず良くなったり悪化したりの波はある。湿疹三角形は繰り返しますがその大きさが少しづつ小さくなるのも目標にする。
楊達先生のアトピー治療の例
全過程で保湿剤を使う
急性期 瀉火利湿顆粒3包+清営顆粒3包+晶三仙3袋 五行草の湿布
↓8週間
中期 清営顆粒3包+瀉火利湿顆粒3包+シベリア人参茶3袋
↓8週間
緩快期 当帰飲子+荊芥連翹湯+シベリア人参茶+紅沙棘
↓約12週間
急性期(悪化) 清営顆粒+瀉火利湿顆粒+涼解楽 五行草茶で湿布
↓6週間
緩快期
楊達先生が日本にいらした頃は使いたい漢方薬がなかったそうですが、今は清営顆粒・五涼華・五行草茶その他 皮膚疾患に必要な中薬が使われているものがそろってきているそうです。
*薬眞堂から一言
アトピー性皮膚炎の方は環境の影響を受けやすく、暑さ、湿気、汗、食べ物、ストレスなど悪化要因は沢山あります。
体内に慢性的な炎症状態があるのかと思ったりします。それは中医学的には虚熱という事になります。
虚熱は身体の不足からくるものなので、不足を補う事はとても大切です。だから、生活習慣の改善や食養生は重要です。
一緒に頑張りましょう。
不妊症:成功率を高める「周期調節法」の極意 中医学講師 陳志清先生
女性の社会進出が進み 晩婚化など子作りを始める年齢があがっているせいもあると思いますが、不妊治療を受ける人も増えています。
日本婦人科学科会の発表によると2012年国内医療機関で約326,000回の体外受精が行われ出産数は37,953人だそうです。約11.6%になります。
日本中医薬研究会の2014年の統計で不妊での来店数3872人、妊娠1106人、出産783人(20%)、自然妊娠・人工授精・体外受精も含んでいるので一概に数値の比較はできませんが・・・
『周期調節法』は南京中医薬大学教授国医大師 夏桂成先生が構築した理論です。これは弁証論治を進化したものです。
1、四診合算(望診・問診・聞診・切診)を総合的に判断する
2、弁証 八綱弁証・気血水・臓腑・経絡など
3、治則と方剤の決定
・・・女性の身体は血は不足しがちで、気は余っている(少血多気)
だから 補血・理気は重要!
周期療法において基礎体温により気血、陰陽をみる
月経周期はホルモンの変化や卵巣の変化また子宮内膜の変化と関係しています。
中医学でみる基礎体温
■月経期・・・陽から陰へ転化
■低温期・・・陰の時期
■排卵期・・・陰から陽に転化
■高温期・・・陽の時期
月経周期は陰陽消長と相互転化によってなりたっている
(昼から夜、夜から昼へという繰り返しもまた陰陽消長と相互転化)
月経周期の中医学でみると
■月経期・・・月経血の排泄という動きのある時期で気血が動く時期で、その動きがスムーズで無いと瘀血が生じやすい時期です。
治則のポイントは温経活血
■卵胞期・・・月経により気血が不足する上に卵胞が大きくなり内膜も厚くなるので気血が必要です。
治則のポイントは気血陰液の補充。
■排卵期・・・LHサージ・排卵など大きな動きがある時期でエネルギーが必要です。
治則のポイントは滋陰補陽・理気活血。
■黄体期・・・内膜が柔らかくなり着床の準備の時期です。体温がしっかり上がるのに陽気が必要です。
治則のポイントは補陽と養血。
よく使われる漢方薬
■養血調経・・・婦宝当帰膠の70%近く入っている当帰は女性の聖薬ともよばれ補血調経の働きがあります。月経の全周期につかわれます。
■活血化瘀・・・冠元顆粒は4種類の活血化瘀薬と2種類の理気薬でできています。
・滋陰益精 杞菊地黄丸、補肝腎・滋陰養血できます。亀鹿仙 滋陰益精に力のある漢方食品です。
・活血促排卵の為に 冠元顆粒+逍遥丸
・温補腎陽 参茸補血丸 補腎益精温陽の働きが強い漢方薬です。
・双料参茸丸 やはりとても力のある漢方薬です。
周期調節法の応用
*35歳以上の高齢出産
素問に35歳で陽明の脈は衰え、顔も色艶も衰え 髪も堕ち始める・・と書かれているように気血と腎精が衰え始めるのが特徴。
充分に腎精をおぎなって、不足による虚熱(陰虚陽亢)になっていないか注意する。
対策として 亀鹿仙・二至丹・瀉火補腎丸・ミンハオ・心脾顆粒など
*ホルモン療法を受けている
陰虚火旺になっている場合…亀鹿仙・瀉火補腎丸・二至丹+逍遥丸など
瘀血になっている場合…婦宝当帰膠+冠元顆粒+杞菊地黄丸または海精宝など
痰湿瘀血 気陰両虚になっている場合…チャガ・冠元顆粒・麦味参顆粒
陽亢陰傷の場合…二至丹・心脾顆粒・加味逍遥散
*基礎疾患がある時
甲状腺機能低下…低温期から益気温陽
子宮内膜症…全周期 活血化瘀 冠元顆粒・水快宝など
成功率を高めるポイント
①原因から究明
②夫婦が共に対策をとる
③4つの要素
1、周期調節法など中医学による対策
2、メンタル面のケア
3、養生(生活習慣の改善)
4、中西医結合(中成薬とあわせて高度生殖医療)