平成28年10月16日 中医学の勉強会
頂調顆粒(川芎茶調散)と五官病 中医学講師 仝選甫先生
五官病…耳鼻科と眼科領域の症状を持つ状態のことです。
■耳鳴 蝸牛の循環が悪い状態→突発性難聴や耳鳴に発展
・原因 ストレス・自律神経の失調
風邪やインフルエンザなどウイルス感染
血栓・栓塞
血管痙攣
・中医学による原因
肝腎不足
肝血虚 活血化瘀
肝の疏泄失調 ⇒ 疏肝理気
瘀血 安神
心血虚(虚火) 補肝腎
■鼻炎(後鼻漏)
・原因 蓄膿症(慢性副鼻腔炎)
アレルギー性鼻炎
血管運動性鼻炎
中医学の治療方針 健脾益気・宣肺開竅・活血利湿
鼻淵丸の処方説明
①肺気不宣による鼻塞の改善
■蒼耳子…帰経 肺
散風除湿(風邪を散じて湿を除く)
通鼻竅(鼻の通りを良くして停滞した鼻汁は排出する)
止痛
■辛夷…帰経 肺・胃
発散風寒(風寒の邪を外に散じて除く)
通鼻竅
②肺経の熱を取り除く
■金銀花…帰経 肺・胃・心・脾
清熱解毒(熱を清して、身体にとって害になるものを除く)
疏散風熱(風熱の邪を散じて除く)
■菊花…帰経 肺・肝
清熱解毒
■茜草…帰経 肝
涼血(血分といって身体の深い所にある熱があるので涼しくする)
活血(血の巡りを改善)
止血
頂調顆粒(川芎茶調散)の処方説明
■川芎…少陽経・厥陰経の頭痛に有効
■白芷…陽明経の頭痛に有効 ⇒ 頭全体の経絡を網羅している
■羗活…太陽経
■防風・荊芥…上部の風熱を散じる
■薄荷…風熱の邪を散じる
■香附子…川芎と伴に気血の巡りを改善する
■茶葉…頭をすっきりさせる
■甘草
*もともと茶葉は後から加えて服用するようになっているので、頂調顆粒を服用する時は緑茶で飲むのが効果的
*頭部の経絡を網羅している事から中国では各種疾患に応用されています。パーキンソンの運動障害・三叉神経痛・副鼻腔炎による頭痛・顔面麻痺、その他多剤と組み合わせて使われているそうです。
*月経に伴う頭痛に効果的
症例研究4例について
平成28年10月 薬剤師会の勉強会
癌の痛み治療における薬剤師の役割 大日本住友製薬株式会社 ペインケア領域担当 主事 細川泰博様
■痛みの包括的評価…痛みの軽重によって
■癌患者にみられる痛み
1、癌による痛み
2、治療による痛み
3、直接関係のない痛み
■痛みの性質の分類…侵害受容性疼痛(生体防御反応による痛み)・体性痛、内臓痛
神経障害性疼痛
【痛みの発生メカニズム】
・痛みの評価の言葉による仕方 例 鋭い・ズキズキ・重い・ジンジン・その他
・言葉による改善度の見方
・問診:痛みの部位・性質・強さ・生活への影響
・WHO方式がん疼痛治療法
・薬剤について
・痛みを除く事による延命効果について
・麻薬成分が疼痛下において副作用が抑制されるメカニズム
・麻薬成分の便秘の副作用について下剤の用い方など
平成28年7月 薬剤師会の勉強会
『疼痛疾患の中医診断・治療・病例検討』 中医学講師 高橋楊子先生(舌診の基礎など著書多数)
「真の疼痛治療は対症療法のほかに個々の異常を分析しながら弁証論治による根本治療を施すべきである」という考えにたち疼痛の中医学的捉え方・いろいろある疼痛疾患中で頭痛・腰痛について講義して頂きました。
疼痛を引き起こす原因は外因と内因があり、外邪(風邪・寒邪・湿邪など六淫と言われる邪気に侵入)・精神的ストレス・瘀血など体内に出来てしまった邪気・気機の失調は実証にあたります。実邪により経絡の流れがわるくなって『不通則痛―通じざれば則ち痛む』で痛みがでる。
また、虚証は気血不足・臓腑の虚弱・陰陽失調などの場合経絡が滋養されず通じにくい為『不栄則痛―栄養されなければ則ち痛む』で痛みがでます。痛みは前者の痛みの方が強い痛みになります。
■疼痛に対して、色々な情報を手がかりにします。
・中医学においては痛みの部位は?
・どんな痛みか?(しくしく痛む・酷く痛む・おもだるく痛む?などいろいろ)
・どんな時に痛むのか?あるいは痛みが強くなるのか?
・季節性はあるか? 朝痛むあるいは昼痛むなど痛む時間帯があるか?
・どんな時に痛みが酷くなり、どんな時に軽くなるか?(例えば温めると楽、逆に温めると痛むなど)
・痛みに伴って出る症状があるか?(例えば頭痛と肩の張りとか)
・舌の状態(舌診)
【頭痛】
医学的には機能性頭痛と器質性頭痛に分類します。
■機能性頭痛…偏頭痛・緊張性頭痛・群発頭痛
■器質性頭痛…目の異常(緑内障など)から・耳の異常にから・鼻の異常にから・歯の異常から
■危険度の高い頭痛…頭部外傷性・脳血管障害性・感染症による頭痛(髄膜炎など)
中医学では外感と内傷に分けて考えます。外感は外邪の侵入が原因で内傷はストレスや飲食の不摂生や過労により、五臓の機能低下や気血不足によって引き起こされる痛みの事で、最終的に不通則痛・不栄則痛に至ります。
■外感頭痛
①風寒頭痛…寒冷による誘発、増悪・痛みが強く項背部につながる
②風湿頭痛…熱や暑により誘発・増悪・頭の張痛・熱っぽさを伴う
③風湿頭痛…頭重・戴帽感・雨や湿気で誘発・身体が重だるい・食欲不振・軟便
■内傷頭痛
①肝陽頭痛…頭の両側が張って痛み、精神的な事で誘発、増悪。肝鬱気滞と肝火上炎。
②気血両虚頭痛…慢性的な頭痛(弱い頭痛)・過労により誘発・増悪
③腎虚頭痛…慢性的な弱い(頭が空のような感じがする)頭痛で疲労により誘発・増悪。腎陰虚と腎陽虚と陰陽両虚がある。
④痰濁頭痛…頭重痛・戴帽感・湿気や雨に誘発されめまいや吐き気を伴う事が多い
⑤瘀血頭痛…刺痛・固定痛。ストレスや寒冷により誘発、増悪する。
【慢性腰痛】
慢性腰痛の病因病機 外因と内因がある
■外因…風寒湿による腰痛
風寒湿などの邪気が経絡に侵入し気血の流れが阻滞し、不通則痛で痛みが現れる
時に下肢に痛みや痺れが放散する。
時に腰が重だるく痛む
関節のこわばり・スムーズに屈伸できない・下肢の浮腫みなど
■内因…肝腎脾の虚による腰痛
過労・加齢により肝腎が虚し、精血が不足し筋骨を養う事ができない為 不栄則痛で痛む
過労や飲食の不節制により脾腎が虚し、気血が不足した為 不栄則痛で痛む
腰が鈍く痛む・だるく痛む、・過労や寒冷により痛みが誘発・増悪する・屈伸不利・硬直・足の痺れ・麻痺・筋肉の萎縮・倦怠無力・冷え・めまい・耳鳴りなど伴う
*臨床では虚実挟雑が多くみられる
■症例2例
①気血両虚の頭痛の臨床例
使用した方剤…婦宝当帰膠・冠元顆粒
②腎陽虚の腰痛の臨床例
使用した方剤…独歩顆粒・冠元顆粒・活楽宝
平成28年5月19日 薬剤師会の勉強会
メンタルヘルスにおける漢方と栄養学 山口病院精神科部長 奥平智之先生
■精神疾患に影響する栄養学的因子
■検査値が基準値内であっても分子栄養学的には色々な情報が含まれている。
*鉄欠乏症
貧血で無い場合も多く見られる。
フェリチンの値にも注目(貯蔵鉄)!
鉄は神経伝達物質の合成にかかわっている。
その為、うつや不眠が鉄分の摂取で改善する事もある。
摂取するにはヘム鉄が吸収が良い。
*ビタミンB群
たんぱく質から脳内物質を合成する過程で必要。
不足すると集中力や記憶力低下につながる事もある。
B群の摂取で不眠が改善する事もある。
*たんぱく質
神経伝達物質の材料
*コレステロールの不足は脳の栄養不足につながる。
時間の関係で栄養学の部分の一部になったが、先生の経験をまじえた話が伺えた。
【考察】
お話の中に栄養の吸収と慢性炎症による消耗という事がでてきたが、中医学で言えば気血生化の源は脾ですので、吸収が弱い時は健脾が必要だと思う。また慢性炎症の原因は虚熱や血熱や肝火など色々考えられる。栄養補給とともにそれを受け取る身体も整える事が必要だと感じた。
平成28年5月29日 日本中医薬研究会シンポジウム
第1部「舌診を極めよう!冠心病中心に」上海中医薬大学日本校教授 高橋楊子先生
・冠心病は狭心症や心筋梗塞などの循環器系疾患の事です。
・心臓をとりまく冠状動脈の血管の内腔が狭くなるこれらの疾患は中医学では瘀血(心血瘀阻)の状態です。
ですから、舌色は紫または暗い色、或いは舌の瘀斑(班に黒ずんでいる)瘀点(暗いポツポツ))があったり、舌の裏側の静脈が長く、または太く、または所々膨らんでいたりしているなら瘀血が存在します。
・瘀血の発症原因に分けて分類したそれぞれの舌の状態
①気虚瘀血、②血虚瘀血、③気滞瘀血、④寒凝瘀血、⑤痰濁瘀血
3つの症例
以上についてスライドを使って画像を指し示しながら講演されました。
第2部「活血化瘀の臨床応用」北京中医薬大学付属 東直門病院 郭維琴先生
・郭先生は冠心2号方を作った郭士魁先生のお嬢さんで研究を継承していらっしゃいます。
・郭士魁先生は著名な中医薬学者で心血管・循環器分野の名医で『狭心症患者の救世主』と称されました。
・中医学理論を重視するとともに現代科学技術の視点からも研究されました。
■血瘀証の治療実践
婦人病 月経不順 産後悪露不下 乳汁不足 癥痂など
久病 気虚・血虚・陰虚・陽虚から発展
老人多虚 脾腎陽虚・肝腎陰虚から発展
外傷 打撲 機械性損傷(ステントによる血管内皮の損傷)
外邪襲来(特に寒邪)
■活血化瘀薬の分類
補血活血薬・涼血活血薬・辛温活血薬・行気活血薬・破血活血薬
冠元顆粒は破血薬以外はすべて含まれた方剤
■血瘀証と治法
気虚血瘀…益気活血
寒凝血瘀…益気通陽活血
気滞血瘀…理気活血
■中医学弁証の症例分析
①心腎陽虚型の胸痺に対して 温陽通脈・活血止痛
②更年期女性の胸痺に対して 補肝腎柔肝・祛瘀通絡
③頚動脈プラークに対して 活血化瘀・軟堅散結
④血管性認知証に対して 化瘀祛湿・醒脾開痺
⑤老人に対する心機能保護 益気活血・健脾利水
⑥外傷性血瘀 三段階治療法
(ステント留置術後の三段階治療法)
■丹参と川芎の応用
■2症例について 基本情報 診断と理法方薬 症例分析