女性と病気

2010-07-01

「血色も悪いし、舌の色も白いし、爪も白っぽい」

「血虚ですね。」

「血虚ってなんですか?」

「血が虚しいと書いて血虚です。つまり血の不足という事です。」

「貧血はありませんが・・・」

 漢方のいう血虚は貧血というわけではありません。でも まるで違っているわけでもありません。血色素(ヘモグロビン)は血の赤い色です。その赤みは舌などの粘膜の色や爪の色に反映されるはずです。女性は生理もありますから毎月血は失われます。つまり女性の血は不足しやすいという事です。1回の月経でどのくらいの血液が失われると思いますか?

「どのくらいかしら?」

「30~60mlですよ。1mlの出血で失われる鉄は約0.5mgですから15~30mgの鉄が失われる事になります。月経期には鉄分を多く摂る事をすすめます。私はヘム鉄ドリンクのアスリーブを月経期に飲む事をお奨めしています。1本でヘム鉄100mg摂ることができます。貧血はすぐには表れません。貯蔵鉄を使って補う事ができるからです。」

 *ヘム鉄についてヘム鉄は動物性食品に含まれる鉄でヘモグロビンやミオグロビンでアミノ酸などからできているので、ヘム鉄中の鉄は1% つまり100mgのヘム鉄の鉄は1mgです。しかし吸収率は良く40%くらいですから0.4mgの鉄を取り込む事ができます。因みにほうれん草など非ヘム鉄の吸収率は1~3%です。

 血色素(ヘモグロビン)の鉄が酸素を運びます。だから鉄不足は酸素不足になります。酸素不足になると頭も働きが悪くなります。肺の呼吸や心臓はなんとか 低酸素状態を改善しようと頑張り過ぎになるので、動悸や息切れになります。
「じゃあ動悸や息切れが貧血のせいの時もあるのね。

「ヘモグロビンが10g/dl以下になると 朝起きれなかったり首筋や肩がこる、夏になるとだるいなどを訴える人がでてくるそうです。実際 鉄の摂取量が不足したり、出血やハードな運動によって鉄が失われたりしてもすぐ数値には表れません。貯蔵鉄から補給するからです。数値にでてくる時は貯蔵鉄も減ってきています。」

「フーンそうなんだ。」

 だから鉄分の摂取は大事です。しかし貧血は鉄欠乏性貧血だけではあいません。赤血球の生成に関わっている鉄以外の栄養素の不足やホルモンなど機能面の弱さや赤血球の破壊の過剰などで病気によって貧血になっている時もあります。病気によるものかを 先ずは検査して調べましょう。中医学の弁証によると貧血は血虚・気血両虚・陰虚・気陰両虚・血熱・血燥などが考えられます。

 ■身体を滋養する血の力が足りない状況・・・血虚・陰虚
 ■その血の作るエネルギー不足・・・気虚
 ■熱の為血を消耗した状況・・・血熱・血燥 

「いろいろなんだね。」

「鉄や栄養素の補給は食養生として当然しなければなりません。」

「アスリーブはヘム鉄の清涼飲料水で食養生のうちだね。」

 そうです。何故貧血になったのかを 中医学的分類で考えれば、血を作る力が不足している、血を蔵する力が不足している、血が漏れやすい(統血不足または血熱)、熱によって血が消耗、熱の種類(実熱・虚熱・血熱・肝火など)状況に応じて対策があります。

 血虚と貧血の話にもどります。中医学による原因のうち「血を作る力の不足」からです。血は脾胃の働きによって飲食物より作られます。帰脾湯は気と血と両方補う事ができる漢方薬ですが、益気生血という方法で、血を補います。つまり 気を益し、血を生み出すという意味です。わかりやすくいえば脾胃が弱いと栄養分の吸収力が悪いと言う事です。特に年配になるに従って栄養素の吸収力は落ちるので、ゆっくりよく噛んで吸収を助ける習慣をつけておきましょう。

 また、健脾(脾を健やかにする)漢方薬を服用したり、山査子・麦芽・神麹でできた漢方食品の晶三仙を常用すると気血が充実した元気な身体作りができます。もちろん、血になる原料を仕入れる事はして下さいね。・・つまり鉄・蛋白質(アミノ酸)ビタミンB12・葉酸・Cuの入った食品をしっかり摂ることは基本です。

 2つ目の血を蔵する力の不足についてです。中医学では『肝は血を蔵す』といい肝の蔵血の働きが弱る事をいいます。西洋医学でも近年、肝臓が血を貯える働きを持つ事がわかってきましたが、中医学においては何千年の昔から肝蔵血の働きについていわれてきた事です。

「へー そうなんだ。すごいね。」

「この事から中医学は鋭い感性をもって人の仕組み追求して出来たものである事がわかります。」

「わたしは舌や爪が白っぽくかったりで血虚っていわれたんですけど・・・」

 血虚タイプの人は普段から婦宝当帰膠・四物湯・補血丸その他、養肝の働きの漢方を常用しましょう。さらにアスリーブで直接鉄分を補給しましょう。特に若い女性は生理によって血を失うので貧血になりやすく、整理中はアスリーブも飲むといいですよ。

 次は血が漏れる?でしたよね。血が漏れるとは出血傾向という意味です。正常な流れからはずれる(溢血)によって血虚・貧血になります。

 1つは脾気と関係しています。『脾は統血を主る』・・・通常 脾気が正常な流れから血が外れないように守っているのですが、脾気虚によりその働きが維持できなくなり漏れる状態です。この時は帰脾湯や補中丸を使います。

 2つ目は熱です。強い熱や火は血の勢いを増し、炎症や充血をおこし 血管を破って出血をおこします。この時は清営顆粒のような涼血薬を使います。

 3つ目に瘀血(オケツ)があります。これは漏れるというより、堰きとめられた川の流れが行き場所を失い洪水をおこすような状態です。出血してるなら田七で止血活血します。出血傾向があれば まずそこを治します。もし止める事をしないで補っても穴のあいた水瓶に水を注ぐようなものです。なるほど。

 猛暑がつづいています。「暑いですねー。」と言いながら皆さん汗をふいていらっしゃいます。汗でナトリウム分が出てしまうのは ほとんどの人が知っていますが、鉄も僅かながら出て行ってしまいます。

 夏に貧血症状が酷くなる人もいます。熱は陰の不足をまねきます。陰は血・精・津液など物質部分を意味します。この時 麦味参顆粒を使って急いで気と津液を補います。有形の血は即生できないので気から補う・・というのが中医学においては常識です。

 それにしても夏は暑い!暑いとは熱と湿が同時にある状態です。

発熱性疾患・・・これも熱(ただ漢方を使う時は風寒の場合もあります。
赤く腫れるなど炎症状態・・・熱(じゅくじゅくする時は湿熱)
ストレス・・・イライラ怒りっぽくなる・目が充血する(肝鬱化火)
物質としての身体の消耗(陰虚)・・・虚熱

 心火・肝火・胃熱・肺熱など熱が長引くと気血・気陰が消耗します。血は身体を構成する大事なものです、またヘモグロビンの鉄は身体中に酸素を運び内臓の働きを円滑にします。血虚と貧血はイコールではありませんが深~い関係があります。

 また『血は気の母』ですから血が充実しないと気が出来ないのでエネルギー少なく こころも養われなくいので、不眠や神経症になりやすくなります。不足を補う事は元気の一歩です。

2009-09-01

 黄帝内経の中に『女子は7年ごとに節目を迎える』という事が書いてあります。

七歳腎気盛、歯更髪長
7歳 腎気が増してきて歯が抜け替わりだし、髪も伸びてくる

 歯や髪は腎の充実とかかわりがあります。『腎は骨を主る』といい、歯は骨の余り・・・だからです。また『腎の華は髪にある』といいます。腎気が増してくると身体も抵抗力がついてきます。

二七而天癸至、任脈通、太衝脈盛、
月事以時下。
14歳(7年×2) 天癸至り、任脈が通じ、太衝脈が盛んになって月事時を以ってくだる。

 7年が2回りして14才になると思春期をむかえ、血の道が通じて月経がくるようになる。・・・という意味です。天癸は陰精の事だと書いてありますが、ホルモンとかの生殖に必要な物質的な要素のことです。任脈や衝脈は月経や妊娠と関係のある経脈です。14才になると腎気はさらに盛んになって天癸に至ります。『腎は生長・発育・生殖を主る』といって人の一生と深くかかわっています。逆にいえば、腎が虚していると思春期になっても天癸に至る事が出来ず月経が来潮しないという事になります。

三七腎気平均。故真牙生而長極。
21歳(7年×3)腎気は平均する。故に真牙生えて身長は極まる。

 7年が3回りして21歳になると腎気は充満してきます。腎気は生まれた時から増えつづけ、21才でその力が一杯になります。ですから親知らずがでてきたり、身長も伸び止まってきたりします。腎気が充満という事は体力・気力が充実していると言う事です。この充満している状態は35才まで続きます。

四七筋骨堅、髪長極、身体盛壮。
28歳(7年×4)筋骨堅く、髪の長極まり、身体盛壮なり。

 7年が4回りして28歳になると筋骨がしっかりして、体力的にも充実して壮健な時期です。21才で腎気は充満し、28才は充満した状態がつづいています。体格ばかりでなく、心にも余裕がもてるようになり、大人の女性として一番輝いている時期だと思います。まだまだ、肌や髪など容姿に衰えを感じる時期ではありません。「わたしはちょっと・・・」という場合は少し問題です。食生活の不摂生(特に無理なダイエット)・生活リズムの乱れによって腎気・腎精を消耗しているかもしれません。

五七陽明脈衰、面始焦、髪始堕。
35歳(7年×5)陽明の脈衰え、面が焦れ始め、髪が堕始める

 7年が5回りすると陽明の脈が衰えて顔がやつれ始め、髪も抜け始めます。女性は月経があるせいか血から衰えるといいます。血は身体を滋養する元になるものです。衰えが見え始めるのはその元が不足する為です。血は肝と関わりが深く『肝は血を蔵す』といいます。この言葉から肝が血を蓄えている事がわかります。肝が弱ってくると蔵血の働きも弱まり、また蔵の血が不足すると肝の働きも弱ります。

六七三陽脈衰於上、面皆焦、髪始白。
42歳(7年×6)三陽脈上に於いて衰え、面は皆焦れ、髪は白くなり始める。

 7年が6回りして42才になると3つの陽脈の上部を循行している部分は衰えてきて、容貌も皆やつれてきて、髪も白くなり始めると書かれています。まだ閉経には早い時期ですが、この頃から月経が乱れ始める人もいます。腎気の満ちている状態は35才から少しづつ減ってきています。腎は『精を蔵し、生長・発育・生殖を主る』といいます。精は狭い意味ではホルモンなど生殖に関わる物質ですが、広い意味では“生命の持つ底力”のようなものです。

 よく働いている人に「精がでますね」といったり、持ってる力を使い果たした時に「精も魂もつきはてる」とかいたりしますが、この言葉からなんとなく理解できると思います。この腎精も腎気も少しづ減ってきますが、その下降曲線はなだらかで少しづつ下降するのがいい状態です。35才から42才頃体調の不調を訴えたり病気が出だすこともよく見られますが、漢方的には肝腎が不足してくる時期で陰陽バランスも崩れやすくなってくるからです。

七七任脈虚、太衝脈衰少、天癸竭、地道不通。故形壊而無子也。
49歳(7年×7)任脈虚し、太衝脈衰少して、天癸竭し、地道通ぜず。故に形壊れ、而子無き也。

 7年が7回りして49歳になると任脈や衝脈が衰え、天癸は枯渇して血の道は通じなくなり閉経を迎えます。身体も衰えて、子供も出来なくなります。腎気が増えてきて14歳で天癸に至り腎気が減ってきて49歳で天癸が枯渇します。閉経の年をはさんで前後10年くらいを更年期といいます。

 西洋医学的には卵巣の機能の低下により女性ホルモンも分泌量の減少、それにともなって卵胞刺激ホルモンが過剰に分泌され自律神経やサイトカインを刺激し、不定愁訴がでてきます。中医学的には肝腎が不足により陰陽のバランスが崩れるということが根本にあると考えます。

 この理論がかかれている黄帝内経は紀元前86年頃から紀元前26年までの間に、いくつかの医学書をまとめる形で改訂・編纂されたものだそうです。49才子無というのは現代の医学的な考えからいってもあっていると思います。時間をかけた人間観察力の賜物・・・すごい!と思いませんか?

 本の中に更にこんな事もかかれています。

「年をとっても子供が生まれる時があるよ。」

「それは生まれながら丈夫で、腎気がありあまっているからだよ。でも男子は64才、女子は49才は超えないよ。(男子は八八つまり64才子無とかかれています。男子は8の倍数で変化します)」

「でも でも 養生の道理をわきまえている人は?」

「養生をわきまえている人は、腎気を保持できるから、その肉体は容易には老い衰えないのだよ。」

 ・・・・だそうですよ。

2007-11-01

 近頃は男性の更年期も取り上げられるようになってきていますが女性の更年期を漢方ではどう考えるのでしょう。

七七(49才)任脈虚し、太衝脈衰え少なし、天癸尽き、地道通ぜず。
故に形壊れて而して子無き也。

 更年期はこの時期です。9月のブログにもこの意味は書いてあります。更年期はこの時期です。 年をとらない人はいないわけですから、卵巣も同じで閉経をむかえます。腎は生長・発育・生殖を主るといい、腎気も衰えます。また腎に真陰・真陽があり陰陽のバランスの崩れは腎虚が原因している事が多いです。更年期を特になんにもなくすごす人もいますし、更年期障害に悩まされる人もいます。更年期の基に腎虚がある事は必ず考えに入れる必要があります。

 もう一つ大切なのは肝です。女性は血から衰えるといわれるのは月経によって血が失われると言う事があります。肝蔵血といい肝は血の蔵、血を貯蔵する所です。血の不足により肝血虚・肝陰虚と言う状態になります。肝の血と腎の精は転化する(精⇔血)ことができるので肝腎同源とか精血同源とかいいます。

 また肝は疏泄を主る・・・の働きも失調します。疏泄とは、気(身体動かすエネルギーや情志)の働きの調節機能のようなものです。例えば疏泄の失調によって気が滞ると血を巡らすエネルギーも滞るのでお血になります。(気滞血瘀)ですから更年期障害の予防にはまず血を補う事が大切です。つまり肝腎が不足してくる事が更年期ともいえると思います。この肝腎不足の原因に脾が関わっている事もあります。

 脾は気血生化の源ですから脾がよわければ血も不足しがちになります。また気血を生むことによって後天的に腎精を補っていますがこれも不足しやすくなります。これらを更年期を迎える前から整えておくことが大切です。

 更年期の症状はいろいろです。

急にあつくなって汗がでる・顔のほてり・肩こり・頭痛・動悸・息切れ・クヨクヨ・イライラ・不安・不眠・疲労・痛み・・・・・
更に骨粗しょう症・コレステロール値が高くなったり・血圧が上がって来たりする方もいます。

 中医学漢方では根本原因は肝腎(精血)の不足と考え、それに伴う五臓・気血水・陰陽・寒熱などのバランスをみていきます。更年期に対しては、病気の本質にアプローチする本治と症状に対応する標治を同時に行う事がいいと思います。

「出かけた時血圧計があったので測ってみたら高かったんです。」

「どのくらいですか?」

「140もあったんです。140って高血圧ですよね。それに脈もはやかったんです。」

「安静にしてから測りましたか?。」

「がやがやしているところだったので・・・」

「だから高めだったのかもしれませんね。」

「でもこの頃、めまいや耳鳴りがしたり、時に、イライラしたり、胃腸の調子もよくなくて気持ち悪くなったりで、でも食べちゃうんですよね。メタボも心配!更年期かしら?」

「眠りはどうですか?」

「寝つきが悪いです。 それと時々動悸があります。それに以前より恐がりになってる気がします。」

「生理はどうですか?」

「量は少なくなっているし、来ない月もあります。腰が痛くなりやすいし、粘ったおりものが少し多いかもしれません。」

 この症状から2つの事が考えられます。1つは痰熱があり胆胃不和、もう1つは血虚・腎虚です。方剤は理気化痰・清胆和胃の温胆湯と滋腎養肝・明目の杞菊地黄丸がいいです。

 私も更年期の最中です。多少ホットフラッシュがある事はありますが、特に更年期障害といわれる症状はありません。もちろん、漢方薬は使っています。バランスが悪くなりすぎないうちに処置する事が大事です。

 更年期が老化の過程です。老化しない人なんていません。若若しくいると言う事すべてが、女性ホルモンのおかげというわけではありません。バランスのいい食生活や睡眠や運動が健康と若さを応援してくれると思います。

 肝腎は老化と深い関わりがあります。腎の陰陽は真陽・真陰で、腎陽は命門の火・腎陰は命門の水といわれます。更年期障害のない人も肝腎を補うことは将来に向けても意義のある事だとおもいます。できれば、五七(35才)になると腎気が充足が減りはじめるので、その頃から更年期に備えるといいと思います。