脳梗塞も心筋梗塞も血の流れる道が塞がる事によっておきます。つまり 中医学では瘀血と考えます。血はなぜ流れているのでしょう。これは『心の 血脈を主る』働きによってなされています。つまり 絶え間ない心臓のポンプによって血は体内におくりだされます。これを行うエネルギーは心の気つまり心気す。心気の弱りは心臓から血を送り出す力の弱りになります。心臓の駆動力が弱まれば血の流れは停滞します。赤血球など血液は変形する能力を持っています。それも 気の力が不足すると弱まります。気は身体や身体の中の動きと関係しています。
私達が「疲れた。」と感じている時は気も消耗しています。心臓を動かすエネルギーや赤血球や白血球の変形するエネルギーが不足してはスムーズな流れは期待できません。川を想像を想像してみてください。流れが緩慢だと流れによって運ばれるものは流れに乗れずつまってきてしまいます。それに加え水不足の状態だとよけい引っかかってつまりやすくなります。それが、夏に梗塞が多いという事はそういう事なのです。
夏に脳梗塞が多い こんな調査結果が数年前に日本脳卒中学会で発表されました。夏に多いのは脳卒中のうち脳梗塞・冬に多いのは脳出血、くも膜下出血だそうです。理由は
①暑さによる発汗で血がネバネバする事
②暑さにより抹消血管が拡張して血の流れが遅くなる事
だそうです。中医学で考えれば
①は津液不足または陰虚による瘀血
②は気虚による瘀血です。
つまり 気津両傷・気陰両虚による瘀血です。気は血を流す推動力です。
夏は心の季節ですから、心火が気津を消耗する事は熱中症の所に書きました。心臓は『通じるをもって本となす』といわれます。心臓をとります冠状動脈が通じて(流れて)いればこそ心臓が滋養されるという事です。
本とは本治、つまり根本治療の事です。心包は心臓をとりまく部分の事ですが、活血化おの働きをもつ中薬のうち唯一丹参が心包に入るといわれています。西洋医学で考えれば心臓を取り巻く血管が心包と関連していると思いませんか?丹参は冠元顆粒・天王補心丹につかわれています。
2011年8月ブログわかりやすい漢方論より
今朝小さいクワガタが入り口ひっくり返っていたので、スイカにのせでベランダに置いたらずーっと食べてて飛んでいきそうにありません。その事はさておき、急な暑さに体がついていけない状態です。この辺りはカラ梅雨で六月から暑いので今年は沢山の人が熱中症になりそうです。以前 熱疲労も熱中症という話を書いた事があります。いやな汗、疲労感、頭痛、気持ち悪いなど熱中症の場合が多いようです。
何故 暑いと熱中症になるのでしょう?
何故 麦味参顆粒が熱中症の予防にいいのでしょう?
何故 西洋人参や蓮心がいいのでしょう?
何故 知柏地黄丸(瀉火補腎丸または知柏壮健丸の事)で身体が楽になるのでしょう?
何故 夏風邪に麻黄湯や葛根湯は向かないのでしょう?
何故 夏風邪は勝湿顆粒なのでしょう?
夏は五行の火・五臓の心の季節です。つまり心は火と相対しています。夏は暑いので心臓の動きは活発ですが、オーバーヒートもしやすくなります。運動によって心は益々活発に脈は大きくなります。行き過ぎる心にダメージがきます。だから 運動中倒れる人もいます。
汗は心の液といいます。汗のかきすぎもまた心に影響します。また心と腎は重要な関わりがあります。心は火 腎は水です。心の火は腎におりて腎陽を温め、そのエネルギーで腎の水は上に上がって心陰を補い心火が行き過ぎにならないようにしています。この事を交通心腎といいます。心腎の交通があってこそバランスがとれるわけです。ところが 心火が亢盛になってしまったらどうでしょう?また腎陰(腎水)が不足になったらどうでしょう?火の勢いがつよすぎれば やみくもに燃やし尽くすばかりです。また腎に水がなければ小さな火も抑制できません。
この事はお年よりや子供の弱さとも関係しています。猛暑に対して心火を抑え、腎水を守らなくてはなりません。蓮心はハスの果実の胚芽で 清心瀉火・安神の働きがあります。つまり心火を抑えてくれます。
蓮心茶は苦いですが、夏の暑い時はさっぱりすると思います。心火が肺に及んだ時は痰が粘ったり空咳になります。肺の熱をさまし潤すものに百合根や玉竹・沙参などがあります。百潤露はそれらが入った食品です。
水分はこまめに補給ですが、水分に少し塩をまぜたり、梅干をとかしたり、イオン飲料が吸収が良いといわれています。これは中医学で考えても意味のあることです。塩は腎の引経の働きがあるといわれ、補腎薬も少し塩をおとした湯で服用すると薬が腎に入りやすいといわれています。水分も同じです。ただ夏は冷たい水分をがぶ飲みして、お腹を冷やし下痢になってしまう事がありますが、逆効果です。水分が吸収されないばかりか、栄養分の吸収も弱くなって体力を失ってしまいます。
そう考えると水分の取り方は重要だといえます。 胃腸の調子がよくて吸収されてこそ身体の水になるのですから・・・
熱中症の症状は 熱痙攣・熱疲労・熱射病に分けられ、熱射病が一番重症で体温調節機能が働かなくなって40℃を越えて意識がなくなり、出血傾向になります。高温と脱水状態にともなって起きますが、なりやすさには病気や体質が関係していると言われています。熱疲労の状態を暑気あたりと言ったりしますが、中医学で暑邪が身体を侵襲すると考えます。では暑邪とはどんな邪気でしょう?
暑いは熱いです。陽邪で熱ですから炎上します。つまり火の性質をもちます。火といえば心でしたよね。また昇散という性質を持ち体から汗と伴に気も出て行ってしまいます。気と津液を失った状態を気津両傷といいます。また暑邪は湿邪を伴うので四肢の重だるさやみぞおちやお腹に脹満感がでたり、下痢したりの症状が表れます。胃腸症状の悪化により、特に嘔吐や下痢は更に津液や気を失う結果になります。
熱中症は火(熱)と熱による燥そして、湿(湿度が高い事や熱や燥の為に飲む大量の水分による)が原因です。
1 心火を抑える事
2 津液や腎水を補う事
3 健脾利水して、水の運化を助け 栄養や水分の吸収がスムーズに行われるようにする事
熱中症になりやすい体質は慢性的な脱水傾向・・・つまり陰虚タイプです。もちろん血は陰のうちですから血虚もその傾向にあります。脾胃気虚の人は運化作用が弱い為やはり心配です。衛気不足も汗が漏れやすいので、漢方の力を借りましょう。
陰虚火旺の人は特に心配です。陰液の不足により内熱ある状態です。この場合に知柏地黄丸(瀉火補腎丸または知柏壮健丸の事)を使います。しかし、腎陰の不足は徐々になってきたわけですから一朝一夕には改善しません。しかし 火旺している火を抑え 腎陰を補う事は有効です。とりあえずこの猛暑に対して蓮心茶で心火を抑えながら、生脈散製剤の麦味参顆粒で気津を補っておきましょう。
2011年7月ブログわかりやすい漢方論より
春先、陽気ふつふつと出てきて温かくなり、花も咲きいい季節ですが、花粉症の方にとってはいやな季節ですね。実際は四季の養生に則っとれば、自然の命の芽生えを楽しみ、自分の内側の陽気も大事に育てる・・・という事が大切になります。でも、鼻がぐずぐす、目もチカチカ、むずむずでは体調がすぐれず、「自然なんか感じていられない!」といっても仕方ないとおもいます。中医学で花粉症は風の邪気によるものです。
風の性質はどんなでしょう?風とは?・・・普段はあまり考えないような事ですが、中医では重要です。風は急に巻き起こって、上の方に向かいます。またあっちこっち飛び回り、葉っぱや小枝やいろいろなものを巻き込み、小枝を揺らします。また,風があると洗濯物がよく乾く事からわかるように、湿気をとばします。また陰陽で考えると動は陽、静は陰ですから動の風は陽邪です。ですから上部を犯しやすいといえます。
花粉症は鼻かぜのようなもので、風邪(ふうじゃ)によるものですから、中医学の対応は風邪の時ににています。ふうじゃを発散して外にだしながら、正気(ふうじゃと戦う戦力)が弱らないように滋養する力を高める・・・というやり方を調和営衛といいます。代表は桂枝湯です。この中の代表選手は桂枝と勺薬です。2番手は生姜となつめです。生姜が発散しなつめが戦力アップに働きます。テレビの影響で生姜ばやりですが、是非なつめも一緒に使いましょう。
昨日は女子薬剤師の集まりがあったので8時少し前に耳鼻科の薬局前を通ると、まだ沢山の人が待っていました。ここ2日くらい花粉症が悪化している人が多いようです。西洋医学では、抗アレルギー剤や炎症が酷い時はステロイド剤を使ったりするようです。また、最近では鼻水タイプに小青竜湯 鼻づまりに葛根湯加川キュウ辛夷というように漢方薬を出す所も増えています。しかし、実際アレルギー性鼻炎の漢方薬はこれだけではありません。
また、どちらも麻黄・桂枝で解表(発汗作用)の強いタイプの漢方薬ですから長期服用は問題があるように思えます。発汗は戦って風邪(風邪)を外の追い出す方法ですから、身体の正気鼓舞して戦わせるわけです。つまり身体を戦闘モードにするわけですから、そのような状態がつづけば兵士は疲労してしまうわけです。もともと、アレルギー性鼻炎の人は正気・衛気の不足があるのですから戦闘モードでずっと行く事はお奨めできません。
では、どうしたら?解表の働きが適度で、正気や衛気を補える漢方使いながら、寒気、頭痛などの表証を伴うときは強い解表剤を使うようにするようにします。小青竜湯で鼻水がとまるタイプの人で表証がなければ水気散をお奨めしています。
水気散は苓甘姜味辛夏仁湯ですが茯苓・甘草・乾姜・五味子・細辛・半夏・杏仁。
小青竜湯は甘草・乾姜・五味子・細辛・半夏
+麻黄・桂皮・・・解表
+白芍
また、水気散に利水剤の茯苓が入っている事から脾胃を整えて水の滞りをとる力が強いといえます。水気散の効能効果の1番目が『体力の衰え』となっている事からいっても花粉症のシーズンに小青竜湯が効くタイプの人は水気散を上手に使っていきまよう。
葛根湯加川きゅう辛夷は葛根湯+川きゅう・辛夷です。葛根湯はゾクゾク寒気がして、汗無く、後背がこわばりや節々の痛み・頭痛などの時の風邪薬です。川きゅうは去風止痛の働きがある為、風邪(ふうじゃ)による痛みに効果があり、鼻炎による鼻づまりで前額部が痛むのを治します。辛夷は風寒を散じて、鼻竅を通じ、胃経に入って清陽の気を頭におくって頭痛を治めるとあります。
葛根湯も小青竜湯も風寒の時の漢方薬です。ところがアレルギー性鼻炎は風寒とはかぎりません。鼻がつまるって鼻や顔が熱っぽい感じとか、鼻の中が乾いて痛いとか、咽がはれて痛いとか どちらかというと熱っぽさ(熱証)を訴える方も多くいらっしゃいます。その場合は風熱に使う漢方薬に通鼻竅の働きの鼻淵丸を加えて使います。
鼻淵丸とはどういう漢方薬でしょう?今日は鼻淵丸(ビエンガン)についてです。鼻淵って何?鼻炎じゃないの?・・・と思うかもしれません。鼻淵を中医学の辞書でみると
『外感の風寒、胆経の熱の影響が脳に及ぶ事によっておこる』
『脳漏ともいう』
『主たる症状は鼻詰まりで、臭い濁った鼻汁で、人によって鼻柱にむずがゆさをかんじる』
意味は外界から風寒の邪気を受け、胆経の熱が頭に昇って鼻の症状がでるのが鼻淵だと言う事をいっているわけです。今風にいえば、アレルギー性による肥厚性鼻炎という感じです。前額部の痛みをともなったり、膿性の鼻汁が出たりするので、脳漏などと言ったのかもしれません。
さて鼻淵丸ですがこんな処方構成になっています。
蒼耳子・辛夷・・・去風・通鼻竅(風邪を散らして、鼻の通りをよくする)
金銀花・・・清熱解毒(熱を清して、解毒する) この場合の毒は菌とかです
菊花・・・疏散風熱・明目(風熱の邪を散らして、目をよくする)
茜草・・・涼血活血(血の熱をさまして、血の巡りをよくする)
蒼耳子は耳新しい名前かも知れませんがオナモミの実です。秋に草むらでトゲトゲした実がくっついてきた経験のある人も多いとおもいます。これは鼻症状のほかに関節痛や痒い皮膚炎にも使います。
玉屏風散は『玉の屏風で風を防ぐ』という名の通り風邪を防御できる身体にするという漢方薬です。花粉症やアレルギー性鼻炎は風邪(ふうじゃ)によるという事は書きましたが、玉屏風散を日頃から服用しておくと、症状が酷くでなくなってきたり、でなかったりするようになります。もちろん風邪ひきやすい人にもいい漢方薬です。また、リウマチや関節痛などふうじゃによって悪化する病気の人の体質改善にもつかえます。
また、風水とは急激な浮腫、関節の痛み、悪風、発熱など急性腎炎のような症状をおこす事をいいますが、風邪(ふうじゃ)の侵入によって肺の水を動かす働き(肺の宣発・粛降、肺は水道を通調するなどといいまう)が失調しておこります。これもまた風邪(ふうじゃ)が関係しています。衛益顆粒は玉屏風散製剤です。効能には虚弱体質の改善と書いてありますが、特に風邪(ふうじゃ)の侵入にたいして防御力の弱い人に的しています。症状押さえはもぐらたたきのようになりがちです、やはり長い目でみると衛益顆粒で体質を改善するのは意義のある事だと思います。
2010年3月ブログ暮らしの中の中医学より