病気と漢方

2006-02-01

 花粉症も風邪(ふうじゃ)のです。症状もくしゃみ・鼻水・鼻づまり・咽の痛みなど、風邪みたいな症状がでるので「かぜ引いたのか、花粉症かわからないんんですけど…」と言ってみえる方も多いです。花粉症も外邪によるものなので、先ず防衛する事が一番です。鼻や咽はかぜの入り口で門のようなものです。衛兵をしっかり配備させなければ入りこまれてしまいます。もう一つの侵入口は皮毛です。そこもにもしっかりした衛兵にいてほしいですね。身体の衛兵は衛気です。花粉症の季節に備えて衛気を養っておきましょう。

 玉屏風散(衛益顆粒)という方剤があります。風邪(ふうじゃ)が入ってこないように門の開閉をしっかりする為の方剤です。黄耆・白朮・防風の組み合わせで、『風邪(ふうじゃ)を散ぜんと欲すれば、まさに据(よ)るところ屏のごとく、珍なること玉のごときなり』とかかれています。効能は益気固表止汗で気を益し、体の守りを固め、汗を止めるとなっています。しかし、汗が出にくい時でも使える事もあります。汗は体温の調節に大事なものです。主薬の黄耆はこうかかれています。『黄耆よく三焦を補いて衛を実す、元府御風の関鍵たり無汗はよく発し、有汗はよく止める』とあります。

 脾は衛気の製造所で腎はエネルギーの本家。どちらも元気に働いてくれないと困ります。食欲がなかったり、お腹をこわしやすかったりする時は六君子湯などの健脾薬を服用します。足腰が弱かったり、耳鳴り、排尿の異常など腎虚の症状があれば補腎薬を服用します。補腎や健脾はとても大切ですが時間がかかるようで、やはり玉屏風散を併用する方が効果がでるようです。

 症状に対しての方剤は風邪の時と同じで風寒・風熱・湿を伴う時などに分けます。

風寒の時
小青竜湯・麻黄附子細辛湯・葛根湯(鼻がつまる時は川きゅう・辛夷を加える)
*温めるお茶…シナモンティー・生姜湯など

風熱の時
天津感冒片・越婢加朮湯
*熱っぽさをさますお茶…桑の葉茶・ミントティー
*目のかゆみ…香菊花(甘菊のお茶です。)

身体が重だるい・普段から胃腸が弱い時・・・勝湿顆粒

鼻づまりの時・・・通鼻の蒼耳子や辛夷のはいった鼻淵丸

 小青竜湯や葛根湯加川きゅう辛夷が花粉症によく使われることが多いようですが、花粉症の季節にずっと服用する事に疑問があります。どちらも解表散寒の働きが強いので寒気がある時や汗をかきにくく丈夫な人(正気が虚してない人)なら使っていけると思います。でも本来花粉症になっている事自体が正虚の状態といえます。例えば、玉屏風散をつかいながら症状が強く出た時のみ服用するとか、扶正去邪の参蘇飲・苓甘姜味辛夏仁湯やかっ香正気散(勝湿顆粒)の方を使うなど、体質や症状に合わせて考える必要があると思います。

 外邪から身体を防御するのは衛気です。衛気は気血津液が充実した身体からつくられます。五臓の事も考えにいれなければなりません。病気の症状を抑えることは大切ですが“何故そうなったの?何処が弱いの?と考えていくことはもっと重要だと思います。衛気の弱りは偏食・過食・冷たいものの摂り過ぎ・生活リズムの乱れ・睡眠不足・ストレスなど悪い生活習慣からきているといえます。防衛力を弱いままにしておくと、鼻炎は抑えられても、また別の部分に外邪の侵襲をうけることになります。生活を見なおし改善できる点は改善し、弱った部分は漢方で修復するようにして防衛力をしっかり持つ事が大事です。

2006-02-01

パンダ⑥ インフルエンザがはやっています。インフルエンザは症状が急速です。身体にはウイルスと戦う力が備わっています。その備わっている力をいかに引き出すかが風邪の漢方を使う妙味です。実は一昨日の夕方家族が熱を出し帰ってきました。38.8℃。鼻水・悪寒・咳・節々の痛みに対し小青竜湯・地竜・板藍茶を服用しました。夕方一回寝る前一回です。翌朝39.3℃同じもの服用。発汗して38.5℃くらいになり夕方一度39.1℃にあがったがその後すこしづつ解熱して夜には38.0℃になったので寝る前の服用分には肺の熱をさましながら体力と体液を補える香西洋参をくわえた。

 今朝、寒気はなくなり、かえってあつく、鼻はつまって強い咳がでるようになったので麻杏甘石湯・地竜(半分)・板藍茶・香西洋参を服用。二時間後36.3℃となったので地竜ははずした。予後は重要なので今後は補剤を適宜加えていくつもり。ある意味攻めの方法といえるが、体力がある者には使えると思う

 昨日は一日平熱と微熱をいったりきたりしたが、節々の痛みが残っているので漢方の方剤はかえなかった。食欲は徐々にでてきた。今朝は節々の痛みもとれだいぶ楽になっていた。微熱と平熱をいききするので『往来寒熱』と考えた。温かくしていたので寒くは無いが時々あついといっていた為だ。そこで今日から昨日の方剤に小柴胡湯の半量を加えて服用することにした。

 風邪はふうじゃです。風がふくと木の葉が飛んで来たり、色々なものを運んできます。だから風邪(ふうじゃ)は他の邪気を連れてきます。六淫といって外からくる邪気(外邪)は6つあります。風・寒・湿・熱・暑・燥です。風寒だったり風熱だったり風湿だったりまた、時に風寒湿と複数だったりします。症状も邪気の種類によって違います。だから対処法も違います。考えてみると当たり前な事な気がします。寒を寒し熱を熱したら逆療法でよい事はありません。

 漢方は敵を知り己を知る事から始まります。

 風寒の邪気に対する方剤の代表選手は葛根湯です。ゾクゾク寒気がして肩から首筋にかけてこわばり汗はかいていない時につかいます。汗が出てる時は?桂枝湯をつかいます。汗の出し方はとても重要です。邪気を出し、気や陰液はなるべく消耗しない様ということです。桂枝湯は発汗が弱いので桂枝湯をのむのと一緒に熱いおもゆををすすって薬力を助けるとなっています。

 風寒につかう方剤に麻黄湯があります。これは無汗で正気が虚してないときにつかいます。また禁忌もあります。熱証(口渇・脈が速い・熱感がつよい)・気血津液不足・裏熱を伴うときなどですがその他注意点も多い方剤です。

 風熱に対しての代表選手は銀翹散です。おなじみの天津感冒片は銀翹散は芦根を去って羚羊角を加えてあります。羚羊角は熱性の痙攣や意識障害にもつかわれるもので、宇津救命丸にも使われています。熱っぽい・少しの寒気・咽が紅く腫れて痛む・口渇・脈が速い・高熱などは熱症です。風熱の邪は鼻や口から入って肺系を犯します。『温邪は上に受け、首先に肺を犯す』咽が腫れて痛むなら先ず天津感冒片をといっているのはその為です。

 風寒湿の侵入に対する代表選手は霍香正気散(勝湿顆粒)です。解表化湿・理気和中の効能があります。「邪気を追い出して湿を取り除き、停滞した気を動かして胃腸を整える」といことです。陰邪で重濁・粘膩の性質を持つ湿邪が身体にはいると身体は重だるくなります。胃腸のエネルギーは動けなくなり、食欲不振・吐き気・腹が脹る・軟便や下痢など胃腸症状がでます。

 湿邪は陰邪なので冷えを伴う事が多いのですが、個々の持つ体質から化熱したり、風熱に湿をともなうこともあります。その場合、天津感冒片を併用したり、板藍茶や五行草茶をいっしょに飲んだりするといいです。とにかく湿邪はしつこいので病気が長引く傾向にあります。病後も油断せず、生物・冷たいもの・脂っこいものを避け、過食しないようにし、睡眠も充分とるよう心がけましょう。

 日頃身体が弱く風邪をひき易い気虚タイプや、口が乾いてから咳になりやすい陰虚タイプの場合は弱い部分を考えた方剤を使います。敵と戦うのに兵力が強ければ一挙に攻めればいいのですが、兵力が弱いときは戦う力を半分にして残りは体力を補強して守りを固めるようなものです。扶正去邪・身体を守る正気を助けながら邪気を追い出すということです。気虚に対しては参蘇飲・陰虚に対しては加減いずい湯(この処方は日本にはないので天津感冒片と潤肺糖漿を一緒にのんだりします。)陽虚には麻黄附子細辛湯が代表です。

 風邪はひきはじめの3~4日が勝負です。ふうじゃが表にあるうちに表の門を上手に開いて追い出さなくてはいけません。奥の方に侵入させないようにしなくてはなりません。もし長引いてしまったら複雑になりますし、治療の時間もかかります。また、衛気という衛兵の不足で長引いてる時も有ります。

 『去者自去、来者自来』門がひらきっぱなしで守りが手薄にしているので賊が出ていってもすぐまた入ってくる。つまりふうじゃが横行しているということです。これに対しては玉屏風散(衛益顆粒)以外ありません。

 それぞれ体質や症状の出方によって風邪の漢方を使いましょう。

2006-01-01

パンダ⑦ 虚火とは「真陰の損失により生じた熱性の症状」と辞典に書いてあることをそのままのせると余計何のことやらわからなくなりそうですね。つまり身体の消耗が進んでしまった為に生じた熱性の症状で午後に熱っぽくなったり手の平や足の裏のほてり、口が乾く、寝汗をかくなどします。舌は赤い・痩せている・苔は無い又は少なく、裂紋(ひび割れのような感じ)がみられます。

 虚火は消耗によって起こっている火なので瀉熱の方法は使いません。滋陰といって陰(血・精・津液)を滋養することによって虚火は治まります。貧血がひどい時にほてり感がでたり,微熱が出てたりする事がことがありますが、貧血を改善すれば自然に出ている症状もおさまるのと同じです。

 暑さあたりしてヘトヘトになった時、身体がエネルギーと水不足(気津両傷)になっているので麦味参顆粒を飲みます。津液の津は血液中の水分のようなサラサラしたものを、液は関節にあるようなどろっととしたものをさします。汗や下痢で水不足をおこした時舌の表面は苔が少なくなって乾いています。

 病気が長引いたりして身体の消耗が深くなると津だけでなく、津液・精・血という陰分の不足になります。そうする舌がやせたり、裂紋といわれるひび割れが出てきます。土を想像してください。雨が降ると湿り気が出、降り過ぎると溢れ、晴天が数日続くと表面が乾いてきて、日照のときは割れ目がでてくる。

 人の舌の様子も自然と同じです。もし、病人の舌が鏡面舌といって潤いが無く、鏡のようにてかった感じだとこの人の「胃気」は衰退し,「胃陰」もかなり不足してるということになります。中医学では『有胃気則生、無胃気則死』といって重要視しています。胃気は胃腸を主とする消化機能をさし、下降します。近代医学のような点滴や胃に直接食べ物を送る方法のない時代だったから余計だと思います。

 舌と臓腑の関係は舌の先が(心・肺)辺が(肝・胆)中央が(脾胃)奥が(腎)とされています。舌の先と辺が赤ければストレスでいらいらし易くなっているかもしれません。胃が痛む時中央の苔をみて黄色くなっていれば胃熱で黄連解毒湯のような清熱剤を、真っ白ければ冷えて痛んでいるので安中散のような温性のものを服用します。

 舌の動きについて知っておくといい事があります。強硬(舌がスムーズに動かず発言できない)・歪斜(舌を出したとき左右一方に歪む)などは中風の前兆の事があるからです。この時は開竅・清心・豁痰・活血・通絡などの方剤を速やかに使わなくてはなりません。中医学では舌診を重要視しています。是非、舌も健康チェックしてください。

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