最近「ひきこもり・家庭内暴力」などの問題がよくとりあげられています。中医学では子供の特徴は「稚陰稚陽」とされています。気血は未だ足りず、脾胃は弱く、腎気も未だ充実せず、そう理(身体を外邪の入り口の汗孔)もしっかりしていない、また神気(精神)も虚弱…つまり心も身体も発達途中だということです。
赤ちゃんのことを「其の肉脆く、血は少なく、気は弱い」といっています。子供は神気虚弱・気弱(心が未発達)ということを理解して考える事が大切だと思います。未発達な心を作っていくのが「触れる・見る・聞く・嗅ぐ・味わう」の五感です。赤ちゃんはお母さんの肌に触れ・香を感じ、声を聞き、微笑みを見ながら、お乳の味を知る。安心感とつながっています。この五感は五臓とつながりがあります。耳は腎・目は肝・舌は心・肌は脾・鼻は肺です。「三つ子の魂百まで」といいますが、五感と五臓はつながりから考えても幼児期の重要さがわかります。
子供は稚陰稚陽なので陰陽のバランスを大切に育てなくてはいけないと思います。大人の生活リズムに子供を合わせ、夜中まで起きているのもよくないのです。身体を養い温め守る「営衛の気」は昼は陽分を巡り、夜は陰分を巡ります。陰が深まる時は深い眠りについているのがいいのです。この陰陽の理論は昼に交感神経が・夜に副交感神経が優位の自律神経の働きとも重ねて考えることができます。
性格は人それぞれです。もともと繊細だったり、頑固だったり、おおらかだったり… そういうのは個性だと思います。漢方では七つの感情(喜・怒・思・憂・悲・恐・驚)は五臓と関連しています。五感と五臓の関係もあります。
目-肝-怒 舌-心-喜 肌-脾-思
鼻-肺-悲と憂 耳-腎-恐と驚
気血津液精などの充足と正常な運行により維持されている五臓の状態は感情に影響しています。感情はとても大事なものです。豊かな感情が五臓を育てます。しかし、いき過ぎた感情が長期に渡ると五臓を傷つけます。心の元気と胃腸の働きは関係していることが多いです。中医学で言えば脾胃気虚と関係しているということです。
赤ちゃんでもよく泣く子はお腹の調子が悪い事が多いし、風邪をひきやすいなど肺も弱い時もあります。五臓の関係で考えると脾は肺の母・脾は心の子です。脾は五気の内「思」で、脾虚だと思いすぎ(考えすぎる)傾向になります。思慮過度になると脾ばかりでなく、其の母の心も弱って「いろいろくよくよ考えて、眠りも浅い」心脾両虚と言う状態になります。心と脾が弱ってこうなってるのに放っておいていいでしょうか?或いは安定剤で抑えただけでいいのでしょうか?
本来、子供や若者は陽気が多く元気ではつらつとしているはずです。「今日は1日中部屋で静かにしてらっしゃい」といわれてもつまらなくて仕方がないものです。引きこもっている状態は気が鬱滞している状態です。「肝の疏泄を主る」働きが失調しています。気は身体を円滑に営む推動力ですから体調も思わしくなくなり、だるい、疲れ易い、胃腸の調子が悪い、頭がボーっとする等、気滞に気虚(気が足りない)の症状を伴うことが多いのです。急に怒ったり、暴力的になるのは鬱滞した気が暴発するからです。
肝は感情面とのつながりが強く、ストレスによるダメージを受け易いものです。漢方薬は肝の特性や肝の虚実・他の臓腑へ影響が及んだかなど考えて使います。ストレスによるダメージは個人差があります。臓腑のつよさも関係しますが、考え方によって大きく違ってきます。
「笑われる事が大好きで芸人になった。」というのを聞いた事がありますが、笑われるのは大嫌いな人もいます。子供の小さい時に話してる事があまりに可愛らしいので笑ったらすねてしまった事があります。考え方のチェンジが人生を大きく変える事も多いと思います。「考え方1つで180度ちがうんです。幸せな時を過ごせるか、そうでないかが…」とお客様がいってらっしゃいましたが、簡単そうで難しい事です。
この事から考えてもカウンセリングの重要性がわかります。ストレスと肝鬱(気の滞り)は双方向です。肝は将軍といわれ、他の臓腑への影響がおおきいのです。きれると言う状態は鬱滞している肝気が上逆した状態です。
2006年5月ブログ暮らしの中の中医学より
「ママ、私ダイエットする事にしたから、夕飯サラダだけでいいよ」
「ダイエットするほど太ってないでしょ」
「やだ。もっとやせたい」
「気血が不足しているタイプだからダイエットをすると体調をくずすよ。どうしても痩せたいなら10%~20%OFFのダイエットがいいよ。アスリーブ・婦宝当帰膠・フラーリンQをしっかり飲んでね。」
■3日後
…(食事を抜いたり、夕食を納豆とご飯しか食べなかったり疲れた顔になってきていて大丈夫かしら?ほんとにきかないんだから…)
「1日0.3kgづつ減ってきたけど、なんだか調子悪い。だるい。」
「だから、いったでしょ。しっかり食べて、漢方とアスリーブ飲んで、香西洋参も飲んでおいたらいいよ。」
子は親のいう事をなかなか聞かないものですが、我が家も同じです。若さは健康を無視し易いですね。ダイエットは健康の為にするものです。でも、世の中の女性のニーズはちがっているみたいですが・・・
肥満を改善するのは健康の為に必要ですが、無理なダイエットはかえって健康を害すると思います。なにしろ健康が一番です。先ず、肥満になってしまった原因から考えましょう。過食・偏食・運動不足・生活リズムの乱れなど。肥満を改善したいと思うならこれまでの生活と同じでは駄目です。何故ならいままでの生活が肥満をつくったから。同じに食べ、同じに動き、生活してやせれるものはあるわけがない。せいぜい尿量を増やし浮腫みをとって”2~3kg減るくらいでしょう。その昔、肥満は「肥貴人」と呼ばれる富の有る裕福な生活をおくる人々象徴だったそうです。つまり、食べ過ぎ、または消費エネルギー以上にいつも食べてる。ってこと。改善はまず養生からです。
肥満は代謝しきれないものが身体に蓄積している状態です。中医学的に考えると痰湿・痰濁・瘀血です。何故そうなったかというと
*過食(胃火旺盛・肝鬱による過食)
*脾胃虚弱により運化できない(飲食物を効率よくエネルギーに変えれない)
*陽気の不足(新陳代謝が悪く、浮腫みやすい)
*痰湿・痰濁・瘀血が代謝を阻害し悪循環となる。
じゃあダイエットはどうするの?
脾胃虚弱や陽気不足の人は虚を補い、痰湿、瘀血、胃火・肝鬱・に対しては瀉(取り除く方法)でいきます。10~20%ダイエットとは毎日食べているものを少しづつ減らして摂ろうということです。定食なら全種類たべるのだけど1割か2割づつ残すということです。おやつも同じです。
Aさんのダイエット
Aさんは働き者で声も大きくよく食べ(過食ぎみ)、バイタリティーがあります。多少イライラしやすく、おこりんぼの所があります。Aさんは肝火や胃火がある状態です。こんな状態を想像してみてください。大きな鍋の下の火はすごく強いので水はすぐ蒸発するし、食べ物はすぐ煮える。つぎつぎに材料をいれていってもすぐ煮えて、料理はテーブルに運ばれるのだけど、とても食べきれないのでテーブルの上には残った古い料理がたまっている。まず、この火を瀉さなくてはいけないでしょう。
中医学で冷やしたり・汗や便から熱をだしたり、薪を抜いたりの方法でやります。防風通聖散や黄連解毒湯や瀉火利湿顆粒等々 また、この場合瘀血をともなうので、冠元顆粒・血府逐瘀丸・通導散など併用します。沢山の水を飲む方法・食前に食物繊維を飲む方法・断食などはこのタイプの人にはいいと思います。
Aさんには多少の荒療治は でも、過食で脾が傷ついてないかを慎重に見極めてからね。
Bさんのダイエット
Bさんは疲れ易く、運動もながつづきしません。そんなに食べ過ぎているつもりはないのだけど・・・疲れるのでつい甘いものを食べてしまいます。汗が出やすく、息切れもしやすいしアレルギー性鼻炎もあります。Bさんは気虚(エネルギー不足)です。
こんな感じを想像するといいと思います。身体の中は物流センターで入ってきた品物を荷づくりして配達しなければいけないのに働き手の数がたりない為、品物が残っていってしまいます。働き手の気を増やさなくてはいけません。主になる漢方薬は衛益顆粒・防已黄耆湯・補中益気湯等々 また、貯まってしまった痰湿(脂肪)に対してはは消導・化痰・利水の方法で。やはり気の推動力が弱い為、血の流れがスムーズでなくなっているので活血化瘀の冠元顆粒や補血活血の婦宝当帰膠などを併用するといいと思います。
Bさんの身体には活力が必要です。早く寝るようにして、食事はゆっくりよくかんでとり、軽くウエイトトレーニングして筋肉をつけるよう心がけましょう。
Cさんのダイエット
Cさんは寒がりです。おしっこの出もよくないので浮腫みやすいし、特に足や腰が重だるく冷えて調子が悪い事が多いです。低体温で皮膚に張りない感じです。Cさんは陽気が不足しています。貨物用機関車を想像してください。貨物機関車を走らせるのに熱エネルギーが必要です。うまく走れないのは石炭が足りないか火力が足りないかです。Cの熱エネルギーを高める為、寒を散らし、石炭にあたる精血を補いましょう。参茸補血丸・双量参茸丸・牛車腎気丸等を使います。また、代謝できない水がたまっていれば利水し、やはり血の巡りも停滞しているので冠元顆粒もかかせません。
Cさんは無理せず身体を温めるものを食べていくことが大事です。
それぞれにあったダイエットがあります。自分の身体にあったダイエットをしましょう。
2006年4月ブログ暮らしの中の中医学より
中医症状鑑別診断学は色々な身体の現象をどうみるかという事を学ぶ学問です。例えば味。『口の中が苦く感じる時は肝胆に問題がある。』となっています。1つは邪気が少陽胆経にある時。もう1つは肝胆に鬱熱がある時。となっています。『胆は決断を主る』といいますが、人がくよくよ考えていて決断できないと、弱った胆の気が上に溢れて口が苦くなると黄帝内経という書物にのっていると書いてあります。
じゃあ、
口が甘い時は?
鹹いときは?
酸っぱいときは?
味がしないときは?
こういった小さな身体のサインを知る事が出ます。漢方では味は五つに分けられます。酸・苦・甘・辛・鹹の五味です。五味と五臓の関係は酸ー肝・苦ー心・甘ー脾・辛ー肺・鹹ー腎です。ただ口中に苦味を感じるという事に関しては胆汁の苦味から考えても『胆』を考えるようです。『胆主決断』『心主神』から考えると『クヨクヨし考えて決断できない』のは心も胆も虚しているからで、心の味の苦味を感じるのもうなずけます。
身体のサインはいろいろ。尿・排便・汗・顔色・舌・気持ち・睡眠・・・・・考え過ぎず・無視もせず!
西洋医学で心が身体に及ぼす影響を考えられるようになったのは最近のことです。長い歴史のある漢方医学では心と身体のつながりをとらえてきました。人間には喜ぶ・怒る・思う・悲しむ・憂う・恐れる・驚くの七種類の感情があり、これを七情といいます。七情は物事に対する情緒反応です。しかし、過度の精神的刺激やそれが長期に及ぶ場合は五臓に影響が及びます。
心は喜を主る
肝は怒を主る
脾は思を主る
肺は悲憂を主る
腎は驚恐を主る
その過剰はそれぞれの臓を損傷します。逆にその感情の変化によって、内臓の状態を知る事ができます。
例えば、「ママはこの頃すごく怒りっぽくなっているんだ」という時『肝』に問題があります。生理前はよけい怒りっぽく、乳房の張りを自覚する事も多いです。また、生理血の色が黒ずんだり、血塊が混じったりすることもあると思います。情緒的にいつもとちがってるのも身体のサインのうちです。
髪は血余といいます。髪が豊かで艶が良いのは気血が充実している為です。血虚タイプの女性は血脈が衰え始める35歳くらいから白髪がまじりはじめる事もあります。また、月経の周期が遅れがちになったり、量がすくなくなってきたりして、早く閉経を迎えることもあります。また精神的ストレスに弱く憂うつやイライラなどがでやすくなります。
髪が細くなったり、パサパサしてきたり、抜け毛が増えたりは肝が弱ってるサインです。肝を補う事が大事です。快食・快眠・快便は健康のバロメーターといわれます。そのうち便の事を考えてみましょう。便の出方や便の形や臭いに身体のなぞを解く鍵があるんです。
ドラマ『真犯人は誰だ』
登場人物 刑事と 犯人
「おまえがご馳走を全部食っちまったという訴えがあったが…」
「とんでもない。あっしは潔白ですよ。腹の具合が悪いのにそんなわけありませんぜ。」
「そうか。そうか。ところでさっきもトイレに行っていたな。」
「どうも腹が渋って、ガスがでる。便も臭いしガスも臭い!卵が腐ったようないやな臭いなんですよ」。
「やっぱり犯人はおまえだ!」
「・・・・・・・・・・」
そういう臭いがする便は食積によるものです。食べ過ぎ、または脾胃の働きが悪い為におきた消化不良の状態です。便はいろいろ、軟便・コロコロ便・泥のような便・形はあるけど水のなかで崩れる便・ベタベタ便器にくっつき易い便・未消化のものが混じっている便等・・・それぞれ身体のサインです。
尿は一般的に色が濃く・量が少ないのは熱・透明で量が多いのは寒です。尿の出の悪さ少なさを訴える方も多いですが、腎臓や膀胱だけの問題ではありません。
中医学で考えると肺・脾・腎が尿の出と関っています。
肺は水道を通調するといい、水を膀胱に降ろし、
脾は運化を主るといい、水を肺と腎に送り、
腎は水を主るといい、水の貯留・分布・排泄の調節をしています。
その何処に問題があるか、身体のサインを良く見なければ漢方選びができません。症状による中医診断がかかれた本は約700ページあって上・下2冊でていますがそれだけではありません。気になるサインが出た時は聞いてみてください。未病のうちに手をうちましょう!
こういう中医理論のなりたちは紀元前何千年のときをへて、つちかってきたものです。始めに使った人の経験をもとに、次の時代の漢方家が「これは、そうなるな。これは、必ずしもそうはならない」と考え書物にし、また次の時代、また次の時代というように歴史に淘汰され、実際の経験により証明されてきた理論です。わかりにくいけど荒唐無稽なものではありません。
近年、科学的データーを求める傾向にありますが、故人の知恵をないがしろにして、そのデーターだけを基に漢方薬を運用していったなら必ず多くの副作用が出てきます。科学データーを基につくられた薬を動物実験で確認して人で臨床試験をおこない何%の人に有効だった。という数の理論でいくのは西洋薬の世界です。多くの漢方家の経験により、こういう人に使いましょうとか、こういう人は使っては駄目だとかが書かれた膨大な学問を背景に漢方は運用するべきものだと思っています。私自身はまだまだ力不足ですので科学データーも参考にする事もありますが、それだけで決める事はしません。
『老中医の診察室』という事実を基につくった小説に出てくる鍾医師はまさに学問の宝庫。しかも必要な時に必要な部分が出てくることに驚きと尊敬の念をいだかずにいられません。この知識によって難病といわれる病気を治していくし、また、治せないもの、治せるものの区別もできる。すべては古書の記述に基づいて判断していきます。興味があったら読んでみてください。
2006年4月ブログ暮らしの中の中医学より