病気と漢方

2006-07-01

 梅雨があけると暑い夏がきます。我が家では先週末からはと麦茶をつくっています。はと麦は身体の余分な水を出してくれる働きがあります。夏は暑い季節です。暑邪は六淫(病気を起こす外因)の一つです。暑さをしのぐ食品として、はと麦・緑豆・小豆・スイカ・冬瓜・胡瓜・トマト・にがうりなどを食べるといいです。

 スイカは「天性の白虎湯」といわれ、暑くるしさを楽にして、咽の渇きをおさえ、小水をだす働きがあります。スイカは夏の必需品です。緑豆(緑豆)は知らない人もいると思いますが、『緑豆はるさめ』といえば「あー、あれね」って思う人も多いと思います。緑豆は形や味から緑色のあずきといった感じです。

 中薬学の本の中には『清涼解暑・除煩止渇の効果がある。また、心胃の熱を清し解毒するので、一切の草木金石諸薬・酒食諸毒に対し、大量に服用すると有効であり、解毒の良薬である』とかかれています。いま、はやりの『デトックス』効果のある食べ物といえます。夏の暑さや渇きを楽にしてくれるだけでなく『十種の水気を治療する』ので浮腫やすい人にもよい食べ物です。お砂糖でにて、緑豆しるこや緑豆かんてん等、いろいろ工夫してみてください。

 また、緑豆はるさめも食にとりいれましょう。高脂血症や肥満の方には食毒を処理しながら、去暑できる一石二鳥の食べ物です。

 夏に関係の深い邪気の『暑邪』とはどんな邪気でしょう?

1.炎熱の特性がある。
2.昇散の性(のぼせたり、汗がよくでる)がある。その為、気・津(体力や体液)を消耗し易い。
3.湿邪をともないやすい(身体が重だるい・胃腸の調子が悪いなど)。

 こういった暑邪の性質をみていくと「だから、気津の不足を補う麦味参顆粒や西洋人参・湿濁を除く勝湿顆粒や胃苓湯やジョッキ(茵陳五苓加減)がいいんだ」と解かります。

 夏風邪は治りにくいといいますが・・・暑さにより身体が熱くなりやすく、身体の気や津液は不足しがちで、胃腸に水はたまりやすい状態になっています。こんな時、風邪をひいたからといって葛根湯は使えません。葛根湯は寒気がして汗が出てない時(無汗)に汗をだして寒邪を追い出す漢方薬です。自然に汗の出るこの季節にむきません。

 勝湿顆粒が「夏風邪に」と書いてあるのは軽く発散して寒邪を追い出し、胃腸の働きを助け、湿を除くことによって身体をサッパリさせるからです。また、熱っぽい風邪の時は、熱を冷ます働きの天津感冒片が有効ですが、この時期は脾胃や肝胆系に働く物を加えた方が治りが良いことが多いのでご相談下さい。

2006-07-01

パンダ⑦ 中医臨床という中医学の季刊誌をとっていて毎回特集記事がくまれています。今回は不妊症でした。中医学では「不孕」といいますまた妊娠はするが流産したりして育たない事を「不育」といいます。不妊の原因が女性にある場合と男性にある場合の率は近年ほとんど同じくらいになってきているそうです。もちろん双方に問題がある時もあります。結婚して正常な性生活をしているのに2年以上受胎できない場合を不妊というそうです。

 中医学がするのは身体づくりです。特に重要な臓は脾・肝・腎です。女性の生理は「血の道」といわれるように血と関係が深いのです。肝は「血を臓す」といい肝は血をたくわえる蔵ですし、「疏泄を主る」ということで血流量のコントロールをしているので「血の道」とのかかわりは深く「女子の先天」ともいわれます。脾は「生血」(血を生む所)といって食物から血を作ります。また、「統血を主る」といって血が脈管から漏れず正常に運行するようにするのは脾気の働きです。

 腎は血と直接的な関係はありませんが、「精を蔵す」といいます。精は生命エネルギーの基という意味があると同時に微量で身体に影響を及ぼすホルモン系などの事もいいます。肝と腎は密接な関係があって、「肝腎同源」、「精血同源」などといい“みなもとは同じ”と考えられています。また「腎は生殖を主る」といい不妊症の場合とても重要な臓です。

 女性の場合、生理のリズムは大切が肝の疏泄機能と関わっています。旅行に行ったり、仕事が忙しく夜更かしがつづいたり、環境の変化やストレスによって影響をうけます。旅行中こないはずだったのにとか、仕事のストレスできてないとか、ダイエットしてたら生理もこなくなったとか、経験がある人も多いと思います。生理が来るとか来ないとかは現れた現象です。生理から次の生理までに卵胞の育っていく過程があります。卵胞のなかでしっかり育った卵は卵胞から飛び出し(排卵)、卵管の先(卵管采)に吸い込まれ卵管を移動し、子宮に入り授精していなければ着床せずに生理になります。この仕組みにホルモンの働きがかかわっています。

 基礎体温は低温期と高温期の2層になっています。この体温の動きから各ホルモンの状態や卵の育ちや排卵のことなど読み取れます。この過程をこなすには身体の力が必要です。中医学的では気血精が充実し 脾・肝・腎や経脈の流れなどが整えば、身体がしっかりしてきたということになります。女性は自分の気血を使って出産まで赤ちゃんを育てなくてはならないので身体づくりをしっかりしておくことが大切です。ピンポイントで病気をとらえる西洋医学とちがって、中医学(漢方医学)は心も含めた身体全体をとらえ身体づくりしていきます。

 妊娠する為には精血が充足しているかは重要です。チャングムが身体の虚弱なお妃さまに使った紫河車も益精・養血の働きがあります。また、鹿茸は益精血の働きと、血の道の経脈を温め養う働きがあり不妊症によく使われます。参茸補血丸や双料参茸丸・海馬補腎丸にはいっています。この精や血は身体を維持する力の基ですし、この力で赤ちゃんを育て・お乳をだします。また、血は産後の精神的安定にも関りがあります。

 この世に生を受け、腎気が充実し、天癸が成熟すると、衝脈・任脈が通じて月経が来潮します。この経脈が充実し通じていることがとても大切です。血の道というようにこの道は充実し、通じていなくてはいけません。其の為、活血化オや理気行滞(血の巡るを良くする事や気の巡りを良くして停滞しないようにする事)が必要があることもしばしばです。

 *数年前、不妊治療の名医でいらっしゃる中医婦人科の夏桂成先生の講演をきいた事があります。

 女性の生理周期は昼が来て、夜がきてという自然の流れのように低温期という陰から高温期という陽にという陰陽転化のくりかえしからなっている。生命を育てる大役をになった女性の身体が自然の摂理に通じている事を知り感動しました。

2006-07-01

パンダ⑤ また、杜仲茶がテレビで取り上げられました。ドラッグストアーの杜仲茶は一日で売りきれだそうです。内臓肥満を減らすという事を現実的にみせられれば、視聴者が買いに走るのは無理無いと思います。以前ダイエットに杜仲茶がいいと言う番組が放送されたときも、売りきれ続出でした。その後一年もたたないうちに飲んでいる人は激減し、杜仲は本来の使われ方にもどっていきました。

なぜ使う人が減ったの?
もう全員痩せたから?

 中医学で杜仲は肝腎不足タイプにたいして降脂の目的にも使われます。漢方で杜仲は樹皮を用い、肝腎を補い、筋や骨を強め、固経安胎(経脈をしっかりさせて胎児を安定させる)働きがあります。温性なので冷えるタイプにむきます。杜仲茶は杜仲の葉です。ある程度杜仲の働きを持っているようです。

 1979年発行の漢薬の臨床応用という中国の中薬学を訳した本に杜仲がラットの腸管からコレステロールの吸収を減少させるようだという一文がのっています。

もうすでに杜仲の薬理学実験がおこなわれていたんだなー!

 しかし中医学では これを見て、証を見ず杜仲を使うことはありません。内臓肥満といって原因・体型などちがいがあります。原因を見てみると大食・偏食・ストレス・運動不足・生活リズムの乱れなど・・・体型は全体に肥っているときもあれば、一見痩せ型でお腹のまわりだけ出ている時もありましす。また、肥リ方も人によって違います。でも、直接的な原因は食と運動でしょう。

 風邪で熱をだしたりしておかゆしか食べなかったり、お腹をこわして食べれなかったりした時ウエストが少しゆるくなった経験があると思います。内臓肥満・肥満・高脂血症は脂が身体にたまってしまったものです。津液が停滞し飲となり、飲が凝集して痰になります。痰濁が内部に集結して油脂の塊になります。中医学で見ると痰は内臓脂肪の元ということになります。

 痰はどうやってつくられるのでしょう?『脾は生痰の源』〔脾は痰をつくる源(みなもと)〕といわれていています。この事は「脾は運化を主る」と関係していて、脾の正常な運行がなんらかの原因で阻害されると痰が出来てしまいます。

 内臓肥満で一番多いのは食べ過ぎだと思います。自分がエネルギーに変えれる分以上に食べているので身体に蓄積してしまった…ということです。つまり食積です。以前食積については書きましたが是に対しては消食導滞の働きのあるものをつかいます。

 山査子は代表選手といえます。油膩の消導に使うからです。ですから食事によって積もったものを取り除くには山査子・神麹・麦芽でできた晶三仙があっています。でも新しく積んでいかないようにしないといけません。一方から積み出しているのにもう一方からどんどん入れてたのでは埒があきません。

 人の身体を滋養する血や精は命の源ともいえます。エネルギーの原動力になるものです。機関車を動かすには石炭が必要です。肝は血の貯蔵庫は・腎は精の貯蔵庫です。だから肝腎不足は精血の不足で、原動力の不足により代謝が弱まります。その為に内臓肥満になっているときは肝腎を補う事が必要です。そこで補肝腎の働きがあり脂質の代謝に関りのある杜仲・何首烏・枸杞子などを使います。その他、痰湿・お血・脾虚・気滞など考えられます。

 内臓肥満というピンポイントに着目して何を飲んだら効くとか効かないとかいうのでなく、まず何故内臓肥満になったのかを考えましょう。内臓肥満だけに着目するなら極端な事をいえば吸引したりの手術でとれるなら取ってしまえば解決です。

でも自分の身体・自分の健康ですよね!
身体を治そうと思うなら自分が治そうとしなくてどうするんですか?

 食事の見なおし・生活リズムの改善・運動を基本とし原因に基づいた漢方選びをし、身体自体を改善していく事が内臓肥満解消の道だと思います。

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