病気と漢方

2011-07-01

 今朝小さいクワガタが入り口ひっくり返っていたので、スイカにのせでベランダに置いたらずーっと食べてて飛んでいきそうにありません。その事はさておき、急な暑さに体がついていけない状態です。この辺りはカラ梅雨で六月から暑いので今年は沢山の人が熱中症になりそうです。以前 熱疲労も熱中症という話を書いた事があります。いやな汗、疲労感、頭痛、気持ち悪いなど熱中症の場合が多いようです。

何故 暑いと熱中症になるのでしょう?
何故 麦味参顆粒が熱中症の予防にいいのでしょう?
何故 西洋人参や蓮心がいいのでしょう?
何故 知柏地黄丸(瀉火補腎丸または知柏壮健丸の事)で身体が楽になるのでしょう?
何故 夏風邪に麻黄湯や葛根湯は向かないのでしょう?
何故 夏風邪は勝湿顆粒なのでしょう?

 夏は五行の火・五臓の心の季節です。つまり心は火と相対しています。夏は暑いので心臓の動きは活発ですが、オーバーヒートもしやすくなります。運動によって心は益々活発に脈は大きくなります。行き過ぎる心にダメージがきます。だから 運動中倒れる人もいます。

 汗は心の液といいます。汗のかきすぎもまた心に影響します。また心と腎は重要な関わりがあります。心は火 腎は水です。心の火は腎におりて腎陽を温め、そのエネルギーで腎の水は上に上がって心陰を補い心火が行き過ぎにならないようにしています。この事を交通心腎といいます。心腎の交通があってこそバランスがとれるわけです。ところが 心火が亢盛になってしまったらどうでしょう?また腎陰(腎水)が不足になったらどうでしょう?火の勢いがつよすぎれば やみくもに燃やし尽くすばかりです。また腎に水がなければ小さな火も抑制できません。

 この事はお年よりや子供の弱さとも関係しています。猛暑に対して心火を抑え、腎水を守らなくてはなりません。蓮心はハスの果実の胚芽で 清心瀉火・安神の働きがあります。つまり心火を抑えてくれます。

 蓮心茶は苦いですが、夏の暑い時はさっぱりすると思います。心火が肺に及んだ時は痰が粘ったり空咳になります。肺の熱をさまし潤すものに百合根や玉竹・沙参などがあります。百潤露はそれらが入った食品です。

 水分はこまめに補給ですが、水分に少し塩をまぜたり、梅干をとかしたり、イオン飲料が吸収が良いといわれています。これは中医学で考えても意味のあることです。塩は腎の引経の働きがあるといわれ、補腎薬も少し塩をおとした湯で服用すると薬が腎に入りやすいといわれています。水分も同じです。ただ夏は冷たい水分をがぶ飲みして、お腹を冷やし下痢になってしまう事がありますが、逆効果です。水分が吸収されないばかりか、栄養分の吸収も弱くなって体力を失ってしまいます。

 そう考えると水分の取り方は重要だといえます。 胃腸の調子がよくて吸収されてこそ身体の水になるのですから・・・

 熱中症の症状は 熱痙攣・熱疲労・熱射病に分けられ、熱射病が一番重症で体温調節機能が働かなくなって40℃を越えて意識がなくなり、出血傾向になります。高温と脱水状態にともなって起きますが、なりやすさには病気や体質が関係していると言われています。熱疲労の状態を暑気あたりと言ったりしますが、中医学で暑邪が身体を侵襲すると考えます。では暑邪とはどんな邪気でしょう?

 暑いは熱いです。陽邪で熱ですから炎上します。つまり火の性質をもちます。火といえば心でしたよね。また昇散という性質を持ち体から汗と伴に気も出て行ってしまいます。気と津液を失った状態を気津両傷といいます。また暑邪は湿邪を伴うので四肢の重だるさやみぞおちやお腹に脹満感がでたり、下痢したりの症状が表れます。胃腸症状の悪化により、特に嘔吐や下痢は更に津液や気を失う結果になります。

 熱中症は火(熱)と熱による燥そして、湿(湿度が高い事や熱や燥の為に飲む大量の水分による)が原因です。

1 心火を抑える事
2 津液や腎水を補う事
3 健脾利水して、水の運化を助け 栄養や水分の吸収がスムーズに行われるようにする事

 熱中症になりやすい体質は慢性的な脱水傾向・・・つまり陰虚タイプです。もちろん血は陰のうちですから血虚もその傾向にあります。脾胃気虚の人は運化作用が弱い為やはり心配です。衛気不足も汗が漏れやすいので、漢方の力を借りましょう。

 陰虚火旺の人は特に心配です。陰液の不足により内熱ある状態です。この場合に知柏地黄丸(瀉火補腎丸または知柏壮健丸の事)を使います。しかし、腎陰の不足は徐々になってきたわけですから一朝一夕には改善しません。しかし 火旺している火を抑え 腎陰を補う事は有効です。とりあえずこの猛暑に対して蓮心茶で心火を抑えながら、生脈散製剤の麦味参顆粒で気津を補っておきましょう。

2011-03-01

パンダ⑤ もうすぐ 春。でも 暦の上では2月4日が立春でした。その頃はまだまだ寒かったけど、日差しはつよくなって来ていて 木々の芽が硬く膨らみはじめました。漢方で春は五行の木(もく)の季です。また五臓では肝です。五臓の色体表を持っている方は見てくださいね。

 冬に閉ざされた世界が春にはむくむくと起きだして華やかな季節を迎える準備を着々としています。陽気が外に少しづつ出て行こうとしています。陽気のエネルギーが木の芽を押し出し、枝をのばし、花の蕾を膨らせます。6日は啓蟄です。土の中に潜んでいた虫達も陽気を育てながらとうとう外界に顔を出し始めます。

 人の体の陽気も動きだしています。肝は木です。木々が自由に枝を伸ばすように、私達も陽気を発散させましょう。春の息吹を楽しみ、身体や心を楽に自由にしましょう。

 肝の疏泄機能を西洋医学に当てはめて考えてみましょう。どういった部分と身体の動きが関係しているでしょう?たとえば胃腸の蠕動運動は自律神経によって調節されています。それだけでなく目・唾液腺・気管支・心臓・血管その他多くの臓器が自律神経の調節をうけています。この自律神経の調節の働きは肝の疏泄機能と考える事ができます。また 生殖器系のホルモンの分泌なども疏泄の働きに考えられます。なにしろ身体の中のエネルギー的な部分は気の働きで、気の流れの調節は肝がやってるわけです。

 しかし 肝の疏泄=自律神経ではありません。肝の疏泄の方がもっと大きくとらえています。また気持ちの『気』とのつながりも重要視しています。陽気を上手に発散できないと鬱滞してしまします。気鬱になります。昔から精神的に問題がでるのが「木の芽時」といわれています。

 体内の伸びようとする陽気は押さえつけてはいけません。心と身体を自然と1つにして 春の生長を楽しみましょう。気は気持ちでもあるし エネルギーでもあります。この気の流れが鬱滞すると心にも身体にも影響がでます。

 ■肝は疏泄を主る・・・これは気の流れのコントロールつまり気持ちと身体を動かす力の調節機能という意味です。

 ■春はのんびりのびのび・・・うまくいかない時は逍遥丸、開気丸、抑肝眩悸散や気上散など疎肝や理気の漢方の助けをかりて調整しておきましょう。

2011-01-01

パンダ① 昔々、人と自然は仲良しでした。・・・というより自然の声を聴きながら生活するしかなかったのだと思います。 雨・風・寒さ・暑さ・乾燥など季候の変化に敏感だったり、危険を察知しなくてはならなかったり、その為五感は研ぎ澄まされていたのではないでしょうか?

 漢方の歴史は原始時代からあります。この時代に人が身を持って薬効を体験していって今に至っているわけです。神農は百草を嘗め、一日にして七十毒に遇う・・・とかかれています。(神農はその時代のなかで薬物を見出した人々の総称です。)科学的証明があってもなくても明らかな事は世の中に多々あります。

 例えば「太陽は東の方から昇り、西に沈みます」といった時、科学的に証明されなければ信じないという人はいないでしょう。人は生まれてから20歳くらいまで成長して35歳くらいから老化し出すわけですが、ずーっと成長しつづけてる人や老化しない人はいません。証明がなくても体験からして当たり前になっている事ってありますよね。

 この体験、経験、を基に身に付けた理論が漢方の根底に流れてると考えています。黄帝内経に四季に合わせて生活することで病気にならないと書いてあります。今は冬です。どんな風に過ごすのがいいと思いますか?冬のポイントは寒いという事です。まー!当たり前な!と思うでしょうが、実際 それにあわせて過ごしていますか?寒さは陽気を弱めます。冬は陽気を守らなければなりません。ではどうやって守りましょうか?

 漢方薬は身体に合わせて使います・・・という事は解っている人も多いと思います。でも合わせるってどういう意味でしょう。冷えていれば温めるものを!くらいの事は理解できるとおもいます。乾いていたら潤すものを!それは解るけど潤す物ってなに?
という感じだと思います。また単純分けられない事も多くみられます。

 足は冷えてるけど顔は火照ってるなど冷えと熱が入り混じった状態を経験した事のある人も多いと思います。気血津液の状態といったって 聞きなれない人もいますし、「さらに五臓の脾に問題があります」とかいわれても「それって何の病気?」と感じる事もあると思います。だいたい 気血津液や五臓六腑が充実していれば健康といわれても「何のことやら?」でしょう。ですが、だから良いわけです。西洋医学と違ったものの見方、病気の捉え方でアプローチするから西洋医学でうまくいかない部分で漢方が力を発揮する時があるんです。

 健康食品は考え方は西洋医学と同じです。成分の働きを分析して、動物実験をし、人に使ってデータ‐を集め○○に効果があったとする使い方です。いわばプチ西洋医学です。現代において漢方も 分析、臨床データ‐から○○の薬効があるから使うという西洋医学的手法で用いられる事が多くなっています。それでは、本当の漢方の力は引き出せないのではないでしょうか?漢方的見方で人の身体を観る事が大切です。

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