昨年から韓流の『イサン』を見ています。王様が認知症になってしまいます。王宮殿に出入りを禁じられた 謹慎中の王妃に会いにいき、その事を全く覚えてないなどおかしな行動に気づき自分でも「もしや 認知症では?」と考えます。意識に無い状況はせん妄という症状で認知症そのものとは区別されるそうですが、認知症の場合にもおこりやすい症状です。王様は記憶を留める努力をしたり 地域の名前を再確認したり 自分の行動を記録係に記録させたり結構しっかりした思考を持っていました。
そんな状況でせん妄がおきているのは悩の血流が関係している事が考えられると思います。医師の処方は『 石菖蒲・遠志・姜黄・カッコウ』でしたが症状に対しての処方です。石菖蒲は、除痰開竅・醒神健悩に働くので意識障害に使います。遠志は帰脾湯に入っていますが安神益智・散鬱化痰に働き精神疾患に使われます。さらに漢方的には心腎をつなぐ働きがあるといわれています。姜黄は皆さんよく知っているウコンです。
カッコウは勝湿顆粒の主薬で中焦を保護するのが目的だと思われます。代医学で考えるなら 脳血管性の認知症とアルツハイマー型認知症があるわけで、双方を兼ねる場合もありますが、脳血流の改善は重要だと思います。アルツハイマーの場合 アミロイド斑が見られるがこれが直接の原因かは解明されていないものの 漢方的に見方からすると褐色斑(黒ずみ)は瘀血ととらえる事ができるし、また腎虚ととらえる事もできます。
その事から考えると今なら活血化瘀薬もプラスして使うだろうと感じました。その後王様は脳梗塞をおこし意識不明の重態になります。結果的に王様は動脈硬化という話でしたが、今で言う脳血管性の認知症という事だと思います。認知症は原因があってそれに伴う症状があります。中核症状とはその結果としての中心になる症状の事で記憶力や判断力・思考力の低下や実行機能の障害などがあげられます。そういった症状を中心に精神面の不調などを周辺症状といいます。この周辺症状は本人も苦しい周囲の人を悩ませる症状でもあります。こういった症状に抑肝散効くとい事でさかんに使われています。こういった使い方は西洋薬的使い方で、漢方本来の使い方ではありません。
以前 肝炎に小柴胡湯が効くとして誰にでも処方した結果間質性肺炎でなくなる方が多くでましたがそのニの前にならないかを危惧しています。小柴胡湯は燥性の強い処方ですので、陰虚の人、傷津(津液の不足がある人にはつかえません。抑肝散は小柴胡湯のように強いものではありませんが、やはり弁証して用いるべきだと思います。その結果 陰虚や傷津があれば天王補心丹のような滋陰薬を使うべきだと思います。では弁証して用いるとはどういう事でしょう?
人が年をとる・・・という事は腎の衰えと関係しています。また 肝腎は源は同じ(肝腎同源)といって肝も衰えます。腎の陰陽の腎陰・腎陽は真陰・真陽といわれて身体の陰陽なバランスの基は腎にあるとされます。陰の不足の状態は相対的に虚の陽が大きくなった状態でほてり等の症状が、陽の不足の状態は相対的に虚の陰がでた状態で冷え込みます。冬でも足を布団から出さないと眠れないような人と 夏でも股引きをはいている人と身体は状況は同じではありません。
そこで 寒熱を弁証します。寒を寒し熱を熱する事があってはなりません。また もし熱に傾く事があれば燥を警戒しなくてはなりませんし、寒なら湿を多くする事はできません。抑肝散は小児にひきつけ・むずかり・夜鳴き・歯軋りなどに用いられた処方ですが、母親も一緒に飲むようにと書かれているそうです。効能は平肝熄風・疏肝健脾で肝をなだめて風を消し、肝の疏泄機能を改善して脾を健やかにするという意味です。ただし のぼせ・火照り・怒りっぽいなど心肝火旺の症状がある時はそのままでは瀉火の配合がない為に向きません。もし 虚火の症状がつよければ酸棗仁湯や黄連阿膠湯、あるいはミンハオ、蓮子心を加えたりします。もし 心陰虚の状態ならやはり天王補心丹をメインにします。
認知症に付随する症状の緩和ができても治ったわけではありません。つまり抑肝散は症状に対する漢方薬で予防薬とはいえません。認知症を中医漢方の本質で考えれば、腎虚と瘀血(痰湿を伴う事もある)です。西洋医学で考えれば脳の病気ですが、中医漢方で考えれば髄海が空虚になっている状態といえます。それは 腎精の不足により髄を生じることができず髄海を満たせない場合もありますし、痰瘀によって血脈や経絡が通じず気血が運ばれない事もあります。
つまり、予防を考えれば補腎し、精を益し、活血化瘀や通絡で通じさせる事が一番だと思います。この事を基本として、もし中核症状がでていれば抑肝散・鎮悸散・天王補心丹のような処方や、ミンハオのような気もちの落ち着く漢方食品加えます。中医漢方の理論を生かして未病のうちに防ぎましょう。