腎臓は簡単に言うと尿を作る工場
血液中の尿素・尿酸・クレアチニン・食塩・電解質・水などで尿を作って排泄します。
腎臓の悪い人はタンパク質を制限しますが、それはタンパク質が分解してアミノ酸になり、体内で利用された後アンモニアなどになり、さらに尿素になって腎臓で処理され尿になります。
つまり、腎臓が弱っている時にタンパク質を取りすぎると腎臓は無理に頑張らないといけない状態に追い込まれてしまうわけです。
腎臓の中にあるネフロンは腎小体(毛細血管が集まった糸球体・それを包むボウマン嚢)と尿細管をあわせたもので、尿を作る最小単位のものといえます。それが一つの腎臓に100万個あるといわれています。
私達の1個の腎臓の中に尿を作る工場が100万個
100万個の中の1つの糸球体の中をのぞいてみると、毛細血管が毛糸をくるくる指で巻いたような感じに中を巡っています。いかに細いか想像できると思います。
糖尿病や高尿酸血症・高脂血症などの場合、血液はどろどろです。また水分不足も血がどろどろします。そんなに細い所を通過するのだから通過障害が起きるでしょう。
その糸球体の中で血液のろ過が行われています。GRFは糸球体のろ過量ですが値が低い場合は100万個のうち使えなくなったものがある程度あるという事です。言い換えれば糸球体の中の毛細血管が細動脈硬化を起こし、機能しなくなったのがあるので、ろ過の量が減ったという事です。この状態を中医学では瘀血と考えます。
瘀血は重要ポイント!
『血管力』の本を出されている横澤隆子先生は慢性腎不全のモデル動物を作った事で学会の脚光を浴びましたが、その後慢性腎臓病に良い生薬や漢方薬の研究をしてこられました。その中で丹参に抜きん出た効果がある事を確認されました。
中薬学には丹参の3つの効能が載っています。
①活血去瘀
②涼血消腫
③清心除煩
です。
つまり丹参は瘀血に対応する生薬です。また中医学では完全に動きの止まった血を乾血とか死血とかいい、破血の働きのあるものを使います。水蛭・三稜・莪朮などがそれにあたります。
更に病因を追求
しかし瘀血のみ考えるかというとそうではありません。瘀血は結果ですから、瘀血にいたった原因も考えなくては本当の意味の治療にはなりません。とはいえ瘀血はそのままにしておく事はできませんから、活血化瘀や破血などの方法は必要です。
川の水の流れを考えてみてください。スムーズに流れる為には水量も必要ですし、勾配も必要です。水量は陰血の量ですから血虚や陰虚の人は不足しています。勾配は重力による力でから、気の推動力の不足です。これは宗気と関係が深く、宗気は脾の働きにより取り込まれる水穀の精微から作られる気と肺の力で大気から取り込まれる清気によって作られるので肺や脾の弱いと宗気が不足しやすいといえます。
また、宗気を作る事が円滑に行われる為も、宗気が血管内でしっかり働ける為にも肝の疏泄作用も重要です。原因をしっかり把握してオールラウンドに治す方法を考えていく事が必要です。
GRFが低いなら活血化瘀+原因にそった漢方で慢性腎炎に移行するのを予防しましょう
GRF値
■60以上…蛋白尿など他に問題がなければ大丈夫ですが、高血圧・高脂血症・肥満など人は注意しておきましょう。
■60以下45以上…腎機能が軽度~中等度低下 CKD(慢性腎臓病)の疑いがあります。心筋梗塞や脳卒中など循環器系疾患にかかりやすいので受診するなど注意が必要です。
■45以下30以上…腎機能が中等度~高度に低下 CKDが強く疑われます。
■30以下15以上…腎機能が高度に低下 CKDです。腎不全なる危険性が高いです。
■15以下…透析療法が必要になってきます。
不老長寿はいつの時代も人の願いだと思います。黄帝内経の上古天真論に百歳になるまで生き、しかも行動や精神が衰えずにいるにはどうしたらいいのか、その養生が書かれています。
中国の清の時代に皇帝への献上品の三宝といわれるものがありました。哈土蟆・紅景天・不老草です。時の皇帝も不老長寿をどんなにか望んでいた事が伺えます。その三つの宝の1つに紅景天があります。
『単味の補益剤の研究と応用』 広東省深圳中医院主任医師 邱静宇
『単味の補益剤の研究と応用』 広東省深圳中医院主任医師 邱静宇・・・これは2001年の3月の中医臨床の特集記事ですが、紅景天の事が載っています。紅景天はベンケイソウ科の多年草で高山の岩肌に生育し、扶正固本・理気養血・健脳益智・滋補強身の効があるそうです。
扶正固本とは正気(抵抗力のようもの)を扶助し身体の芯の守りを固めるというような意味合いで、本質の守りを固めるという事は腎精の充足とも関係しています。理気養血は気の巡りをよくし血を養うという事で肝血・肝気とも関係しています。しかも健脳益智、つまり脳を健やかにして智恵の力を益す効力もあるというのですから老化防止には随分優れた植物だと思います。
記事によると主要成分の紅景天サポニン・8種類の必須アミノ酸を含む18種類のアミノ酸・15種の必須元素・ビタミンA,C,D,E,B1,B2,B6など、その他抗老化活性を示すスーパーオキサイドディスムターゼ含んでいて栄養学的にも価値が高く、抗老化・抗酸欠・抗侵襲刺激・抗腫瘍・抗ウイルス・抗疲労・活血化瘀・免疫能の調節作用が証明されているとなっています。
紅景天はチベットの高山に生育するものでチベット医学で使われていたものですが、この植物は高山や北極地帯など過酷な自然環境で生育してる学名はRhdiola rosea L.,(ラジオラ・ロゼア)です。日本では「生き草」ロシアでは「黄金の根」と呼ばれています。この根の部分を切ると中心が赤っぽく、そのエキスは根なのにバラの花のお茶を飲んでるような味わいがあります。
気分が落ち込みやる気が出ない時に、また、勉強のお伴に・会議の前やここぞという時に、なんだかこの頃頭が働かないと思っている時もバラの香りのお茶をのんでスッキリするのも良いのではないでしょうか?はちみつやオリゴ糖を加えて甘くしても美味しく頂けます。おいしく飲みながら滋補強身できるんですからお得だと思いませんか?
不整脈があれば循環器科を受診して心電図など心蔵の検査をします。西洋医学では心蔵の病気ととらえているからです。
もし検査の結果、何も見つからないと精神的な問題だと言われ安定剤を処方されたり、心療内科の受診を勧められた方も多いと思います。
中医学では不整脈は心の『血脈を主る』働きの失調
中医学で考えると不整脈は心の『血脈を主る』働きの失調ですから、もちろん心も考えに入れますが、五行の相生関係にある肝や脾の失調が影響しているかもしれないですし、相克の関係にある肺や腎が影響しているかもしれないという事も考慮します。
また、気候や環境や食生活など個人をとります状況が大きく関係しているかもしれません。ここでは気候の変化を中心に考えてみます。
春は肝の季節
春は肝の季節です。肝は五行の木の臓で、木の性質を持ちます。春先木の芽がふいて木々は枝を伸ばし新緑の葉をつけていきます。肝気は上に向かいます。温かくなり鳥が巣立つように自由に羽ばたきたい気分です。しかしストレスがかかると、そうはいきません。それは社会環境など個人を取り巻く周囲からストレスをうけている場合もありますが、自己を拘束している場合もあります。こうあるべきなのにこうならない。こうしたいのにできない。思い通りにならない。人がどう思うか気になる。などは自分のこだわりからストレスを招いている事も多くみられます。そうすると肝木は伸びやかに枝を伸ばす事が出来ずに肝鬱気滞の状態になります。
また、肝が弱っている場合も同じです。年をとると肝腎が不足しがちになるので、特にストレスや緊張が強くなくても 疏泄機能が失調しやすくなります。肝血・肝陰の不足から疏泄機能の失調・肝陽上亢などにより脈の一定なリズムが保てなくなります。また血圧が不安定になったり、気分にむらがあったり、ホットフラッシュのように急にあつくなったり、汗がでたり、その為風邪をひきやすくなったり、あちこちに痛みやかゆみが出たりとか不定愁訴が伴う事も多くみられます。
夏は心の季節
夏は心の季節で五行は火ですので、心火と言ったりもします。夏は一般に脈も少し早くなります。心火亢盛になるとエネルギー過多の状態ですので、ドキドキがとまらない。心蔵の音が聞こえる。頻脈から心房細動を起こす事もあります。もちろん汗で津液も失われやすく、虚血性心疾患に伴う不整脈になることもあります。また心火に強い状態は心血・心陰・心気を消耗しやすく、逆に心気不足によって脈の結代が生じる事もあります。こういう事から心原生の脳梗塞をおこす場合もあります。また、『神を臓す』機能が失調し不眠にもなり易いです。とにかく夏の不整脈に対しては心火を抑え、心気を補い、津液を補う事が大事です。
四季の最後の約20日は脾気が旺盛になる時期で、土用と言い精がつくものを食べたりします。脾は土で気血精を作り出すところですから、ここが弱るとエネルギーがなくなって気力も体力もなくなってしまいます。食欲がない、軟便や下痢がつづく、疲れがとれない・・・など夏の終わり(長夏)の夏ばてのような状態ですが、脾の弱りによるものです。脾は心と母子関係にあって、心の弱りは脾に伝わり、心脾両虚になると動悸の他に眠りが浅い、不安感がある、色々考えすぎてしまう、物忘れが多いなどの症状がでます。脾は湿が多いと、うまく働けないので、除湿、利湿、化湿などの方法とともに夏の終わりには気津両虚や心脾両虚になっている事を考えにいれます。
秋は肺の季節
秋は肺の季節で燥と関係しています。『肺は一身の気を主る』と言って呼吸によって気を取り込みます。夏に津液を消耗した上に、長夏の頃に脾胃の働きが弱くて津液の生成ができないと秋の燥に対応できなくなります。津液の不足で血液がドロドロになると血の巡りが悪くなって、虚血性心疾患が悪化し、それによる不整脈もおこりやすくなります。やはり、気津を補い宗気の回復をはかると共に瘀血を考えた方が良いようです。
冬は腎に季節
冬は腎に季節で寒さが厳しい時期です。寒凝といって寒は凝滞させるという性質をもっています。やはり瘀血は絶対に考える必要があります。また心陽が不足したり心腎のバランスがとれなくなったりします。腎陰の不足により虚陽が上浮し不整脈になる場合もあります。もともと瘀血のある人や西洋医学的には狭心症などの虚血性心疾患や動脈瘤、静脈瘤などの循環器系疾患のある人は心配な季節です。身体を冷やさないようにすると共に、活血化瘀薬、補腎陽、補心陽、補腎陰など症状や体質にあわせて行っていくと良いようです。
このように中医学においては気候などの環境も重要な疾病の発症要素と考えます。