その他の病気

2007-06-01

「身体がだるいし頭が重いよ。」

「気持ちわるいし食欲もないよ。頭に帽子をかぶったようないやな感じ。」

「頭がずっと重いし、めまいも時々、ながびいてるし心配。」

 頭が思い、しめつけられるなど湿が関係しています。風邪と一緒に湿邪が侵入するとこういう症状がでます。めまいを伴う時は内側に問題があります。湿の性質をもう一度考えてみると

①陰邪で気機を阻害しやすい
②重濁
③粘膩
④下降

 ①からは胃腸機能が阻害されやすいことがわかります。だから食欲不振・吐き気・むかつき・軟便・下痢などを伴い易くなります。
 ②は重く、だるく、停滞し、気血が流れず、濁って分泌物や排泄物に異常が生じ易いということです。
 ③は粘っこく、しつこいので治りにくく、再発しやすいことということがわかります。
 ④は水は低い方へ流れる自然現象です。これを理解しておくと判断する時に役にたちます。

 頭重の原因は外因と内因があります。外因は湿を伴った風邪によるもので、内因は脾の働きが弱いために体内に溜まった痰湿(痰濁)が上昇して頭に昇ってしまった事によるもので、めまいを伴うことが多いです。

痰濁の上昇!
そんなもの頭に昇ってきたら、いかにも重くなりそう!
ふらつきそう!

 めまいの原因はすべて内因です。中医理論は痰濁による頭重と同じで、ベタベタ粘ってしつこい痰濁が頭部にいってしまったためおきます。風邪が湿をともなって頭重感がでた時はそんなに時間がかからずに治ります。でも、痰濁が上がったときは治りにくく、治っても再発し易いのでじっくり腰をいれて痰濁を処理する必要があります。

「粘ってベタベタしたものが流れを塞いでいたらどうしますか?」

「油なら洗剤とか溶かすものをつかいます。」

「クエン酸もポットのお掃除とかにつかうよ。」

「ぼくは水をジャージャーながすよ。」

「いろいろ意見がでましたが人の身体の事を考えてみましょう。」

 ベタベタしたものは痰湿(痰濁)です。溶かすものは化痰薬です。痰ができないように代謝をよくするために脾を元気にし、水を通じさせてのぞいたり、停滞している水を処理したり・・・健脾利湿・健脾燥湿

身体の中も同じです。原因を絶つ・溶かす・薄める・流す

 原因が外から、つまり風湿の邪による時はまず勝湿顆粒(かっ香正気散)を使ってみます。発散して風湿の邪を除きながら、『生痰の源』である脾胃を整えます。湿邪は気機を阻害するので理気の働きがある薬味もしっかり入っています。胃腸型感冒や夏風邪の漢方薬としてよく知られていますが、発散・化湿・理気・健脾の働きが利用できます。胃腸の働きが悪い人や飲食と関係のあるタイプの鼻炎の鼻水・蕁麻疹・滲湿物がでる皮膚炎などに使えます。頭重で痛みもある時はさらに疏風止痛の川きゅう茶調散(頂調顆粒)を加えると効果的です。

原因が内側に原因があるときどんな漢方を使うのでしょう?

 脾胃の働きが弱いため、あるいは暴飲暴食によって溜まった湿・痰湿・痰濁が気血の通りを塞いだり、頭部に昇っておおってしまう為頭重やめまいがおきているのですから除去しなくてはなりません。

①健脾して生痰の源を絶つ
②化痰・理気・利水して痰濁を取り除く
③消食導滞して食積を除く

 こういった働きのあるものを選びます。また、暴飲暴食・脂っこいもの・味の濃いもの・なま物を避け、甘い物もなるべくとらないようにします。また痰湿は気機の流れを阻害するので活血化瘀薬を併用すると効果的です。汎用されるものには半夏白朮天麻湯・星火温胆湯・五苓散・苓桂朮甘湯などがあります

2006-09-01

 癌を中医学で考えると幾つかの条件が重なって癌になると考えられています。

1、正気が虚している
2、痰湿・瘀血・気滞など停滞がある
3、熱毒が加わる

 この正気の虚というのは血虚の時もあれば気血両虚の時もあるし、陰虚のこともあるし、その他人によっていろいろです。停滞の生じた理由もそれぞれでしょう。熱毒は身体の方に原因があることもあれば外邪の侵入が引きがねになる事もあります。

「わたしはこれを飲んで癌を克服しました」
「驚異の○○で癌が消えた」

 などと誇張した宣伝が横行しています。しかし、一筋縄でいかないのが現状です。宣伝にのって高額の健康食品を買ってよくなる人はほんの一握りの人です。でも一握りに入れれば・・・と望みをたくすのです。

 中医学の本場中国では治療は一般的に中西医結合で行われているそうです。抗癌は西洋医学が、扶正は中医学が行います。扶正は弁証論治なくして行えません。

 体内からとりだした免疫細胞に癌細胞を認識させて再び体内に送り込むという免疫療法の事をテレビで見たことがあります。これなら癌細胞が確実にたたけるようにみえました。しかし、著効率はすごく低い。アッタカーに標的を覚えさせ元気をつけて送り出しているのになぜ確実でないのでしょう?

 抗癌効果を期待できると思われる食品が、癌細胞の自滅(アポトーシス)をひきおこすかをみる実験もさかんに行われていて、これも、こっちもと実験的にはいい結果がでていますよと言っています。じゃあ、それを飲んだり食べたりしたら、誰でも身体の中の癌細胞が自滅させることができるのでしょうか?そううまくはいかない事がほとんどです。中医学では、先ず、よく状況や状態を見つめ、何故癌になったのかから考える(病因病機を考察する)事から始めます。中医学で免疫力は正気の充実ということになります。つまり気が充実してしっかり働ける状態ということでしょう。

 しかし気が充実する為には血の充実も大切な要因になります。「血は気の母」「気は血の帥」ですし、「精血同源(精と血は源は同じ」といいます。この気血と五臓の関りからも考えなくてはいけません。この平衡をとること・バランスは重要です。病気と戦うには体力が必要です。体力は物質的基盤(精・血・津液)にささえられたエネルギー(気)です。この崩れの原因は過労・食や生活の不摂生・過度のストレス・老化・久病などいろいろ考えられます。特にこれまでの生活に問題がある時は改善していかなくては、免疫力もアップしてこないのではないでしょうか?

2006-07-01

パンダ⑤ また、杜仲茶がテレビで取り上げられました。ドラッグストアーの杜仲茶は一日で売りきれだそうです。内臓肥満を減らすという事を現実的にみせられれば、視聴者が買いに走るのは無理無いと思います。以前ダイエットに杜仲茶がいいと言う番組が放送されたときも、売りきれ続出でした。その後一年もたたないうちに飲んでいる人は激減し、杜仲は本来の使われ方にもどっていきました。

なぜ使う人が減ったの?
もう全員痩せたから?

 中医学で杜仲は肝腎不足タイプにたいして降脂の目的にも使われます。漢方で杜仲は樹皮を用い、肝腎を補い、筋や骨を強め、固経安胎(経脈をしっかりさせて胎児を安定させる)働きがあります。温性なので冷えるタイプにむきます。杜仲茶は杜仲の葉です。ある程度杜仲の働きを持っているようです。

 1979年発行の漢薬の臨床応用という中国の中薬学を訳した本に杜仲がラットの腸管からコレステロールの吸収を減少させるようだという一文がのっています。

もうすでに杜仲の薬理学実験がおこなわれていたんだなー!

 しかし中医学では これを見て、証を見ず杜仲を使うことはありません。内臓肥満といって原因・体型などちがいがあります。原因を見てみると大食・偏食・ストレス・運動不足・生活リズムの乱れなど・・・体型は全体に肥っているときもあれば、一見痩せ型でお腹のまわりだけ出ている時もありましす。また、肥リ方も人によって違います。でも、直接的な原因は食と運動でしょう。

 風邪で熱をだしたりしておかゆしか食べなかったり、お腹をこわして食べれなかったりした時ウエストが少しゆるくなった経験があると思います。内臓肥満・肥満・高脂血症は脂が身体にたまってしまったものです。津液が停滞し飲となり、飲が凝集して痰になります。痰濁が内部に集結して油脂の塊になります。中医学で見ると痰は内臓脂肪の元ということになります。

 痰はどうやってつくられるのでしょう?『脾は生痰の源』〔脾は痰をつくる源(みなもと)〕といわれていています。この事は「脾は運化を主る」と関係していて、脾の正常な運行がなんらかの原因で阻害されると痰が出来てしまいます。

 内臓肥満で一番多いのは食べ過ぎだと思います。自分がエネルギーに変えれる分以上に食べているので身体に蓄積してしまった…ということです。つまり食積です。以前食積については書きましたが是に対しては消食導滞の働きのあるものをつかいます。

 山査子は代表選手といえます。油膩の消導に使うからです。ですから食事によって積もったものを取り除くには山査子・神麹・麦芽でできた晶三仙があっています。でも新しく積んでいかないようにしないといけません。一方から積み出しているのにもう一方からどんどん入れてたのでは埒があきません。

 人の身体を滋養する血や精は命の源ともいえます。エネルギーの原動力になるものです。機関車を動かすには石炭が必要です。肝は血の貯蔵庫は・腎は精の貯蔵庫です。だから肝腎不足は精血の不足で、原動力の不足により代謝が弱まります。その為に内臓肥満になっているときは肝腎を補う事が必要です。そこで補肝腎の働きがあり脂質の代謝に関りのある杜仲・何首烏・枸杞子などを使います。その他、痰湿・お血・脾虚・気滞など考えられます。

 内臓肥満というピンポイントに着目して何を飲んだら効くとか効かないとかいうのでなく、まず何故内臓肥満になったのかを考えましょう。内臓肥満だけに着目するなら極端な事をいえば吸引したりの手術でとれるなら取ってしまえば解決です。

でも自分の身体・自分の健康ですよね!
身体を治そうと思うなら自分が治そうとしなくてどうするんですか?

 食事の見なおし・生活リズムの改善・運動を基本とし原因に基づいた漢方選びをし、身体自体を改善していく事が内臓肥満解消の道だと思います。

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