その他の病気

2009-05-01

パンダ⑥ 新型インフルエンザの感染が拡大してきています。現在のところ弱毒という事ですが、余談は許さない状況です。古来 人は感染症と戦ってきましたが、抗生物質ができた事で病原菌を撃退できるようになりました。結核も不治の病ではなくなりました。しかし、耐性菌の問題はでてきています。各種 抗体検査もできるようになり、例えばツベルクリン反応、BCGなど知らない人はいないと思います。つまり感染症に対して予防医学も発達してました。

 天然痘の撲滅はジェンナーと世界中のワクチン接種に力を注いだ医学者の努力の賜物といえます。病原菌よりも小さなウイルスは電子顕微鏡ができてからの発見で、ウイルスに効く薬は私が病院の薬局にいた頃(30年前)はIDUくらいしかありませんでした。現在は帯状疱疹やヘルペスに対するものなど抗ウイルス薬がふえました。

 テレビでよく取り上げられているのでタミフルやリレンザがインフルエンザウイルスに効く薬という事は知っている人も多いと思います。医学・薬学・化学の発達によって、安心な面が大きくなってきていると思います。

 ではこういった化学の発達がない時代は感染症に対してどう考え、どうしていたのでしょう?

 紀元前に書かれた黄帝内経は漢方の基本となる理論がつまった本ですが、外界の邪気にやられないようにする身体づくり(養生)について述べられています。衛気が身体を守る気であることや、正気が外邪と戦う力である事もすでに書かれています。ところで衛気や正気という言葉が風邪やアレルギー性鼻炎の話の時ちょくちょく登場しますが、気に種類があるなんて変だ!と思っている方もいらっしゃると思います。

 気は気持ちの気であると伴にエネルギー的なもの動的なものは気です。ですから、盛んに侵襲した異物を攻撃する白血球の働きは気です。そういった免疫細胞の働きや寒いと鳥肌が立つ、あるいはブルっと震えるなどの動きは正気や衛気の働きといえると思います。

外邪から防衛する力は衛気
外邪を攻撃する力は正気

 これはどちらも気ですから、気の充実が大切です。では血や津液は?どうでしょう?『血は気の母、気は血の帥』という言葉があります。気は血の充実から生み出されるわけです。血や津液は物質的な部分をさしますから粘膜の潤いや粘膜細胞が密でしっかりしていているという事は血・津液が充実している事です。また動的な部分は気ですから粘液の分泌やIgA抗体は気に属すると考えられます。漢方では粘膜は外邪の侵入を防ぐ砦ですから、衛気の多く集まる所と考えられています。

防衛力アップは衛気の充足
戦闘力アップは正気の充足

 この後ろ盾は気血の充実ですから五臓が元気でなければなりません。

 中医学では敵の性質を見ます。性質とは寒・湿・熱・燥などで身体の反応の状態から考えられているようです。例えば中医臨床2004年9月号にSARSと取り組んだ中医師の事がかかれていて 非常に高い発熱が続き、その他下利・極度の疲労感・舌質淡苔白膩・脈滑濡・・・この病態を湿熱とみています。その他 邪の入ってきた病気の位置(深さ)を見ます。

 新型インフルエンザで騒然としましたが、結局国内に入ってくる事を水際で止める事はできませんでした。今後は従来のインフルエンザと同じ対応になってくるようです。現在は下火になっている状態ですが、もともと インフルエンザの流行は空気が乾燥し寒くなってくる頃ですから、秋からが心配です。

 この時期しっかり身体づくりしておく事が大切だと思います。ウイルスは呼吸器から侵入するわけですから、肺を丈夫にしておきましょう。肺気・肺陰の充実を考えましょう。脾臓は肺と相生関係、つまり肺を生み関係ということですから、脾臓がしっかりすることは肺がしっかりする事といえます。そのためには夏暑いからといって冷たいものばかり飲んだり、食べたりしていると脾臓の働きが悪くなり、夏が終わる頃には胃腸の状態が悪く、夏ばて状態になります。そうすると肺の働きが弱くなるばかりでなく、気血を作る力が弱まって、正気も衛気も不足してしまいます。

2009-04-01

 痛み・・・といっても1つでないのが漢方医学です。ですから

「どんなふうに痛むのですか?」

 と必ず聞かれます。例えば 

「足が痛むのですが?」

「強い痛みですか?」

「がまんできない痛みというわけではないのですが重くだるい痛みです。」

「重だるく痛むのは湿が関係しています。」

 他にどんな痛みがあるでしょう?西洋医学の痛み止めは鎮痛作用の多くは他に消炎や解熱の働きをもっています。強さの差はあるものの痛みの種類によっての使い分けはありません。漢方は症状や体質にあわせて初めて効果が現れるわけですから、痛み方は重要な指標です。

脹痛・・・脹る痛みです。
頭が脹って痛む
お腹が脹って痛む
胸が脹って痛む
脇が脹って痛む

 など脹る痛みはすべて、気滞が関係しています。心も気・エネルギーも気 実体のない空気みたいなもので停滞し溜まれば膨れる症状がでます。

刺痛・・・チクチク刺されるような痛みはオケツの事が多いと考えられます。

 しかも同じ場所が痛むならますます血行障害の可能性が高いといえます。中医学で瘀血の痛みは刺痛・固定痛だからです。

絞痛・・・絞る痛みですから相当の痛みです。邪気が気血の流れを阻害し停滞している時におきます。

 例えば 胸に絞痛がある時に寒邪が気血の動きを堅めて停滞させている状態で辛く温めるもので陽気を通じさせ、寒を散らして胸を楽にする働きの方剤をつかいます。瘀血と寒邪の凝滞はどちらも流れが停滞している状態ですが、瘀血は血液ドロドロやうっ血や血管が動脈硬化で細くなっているなどの事をいいますが、寒邪凝滞は寒邪で凍結したようなイメージです。瘀血の方が経過は長い感じです。ですから基にオケツの存在もあるかもしれませんが、凍っちゃったような酷い状態ですから温めて解凍しなければなりません。

 灼痛・冷痛という痛みがあります。灼痛は熱い痛みで、痛みは酷く、焼けるような痛みです。冷痛は冷えた痛みで、やはり強い痛む事が多く温めると楽になります。例えば関節痛の時に赤く腫れて熱をもっていれば灼痛で冷やして熱をとる方剤を使います。逆にお風呂に入った後など楽になるような痛みは温めて寒邪を散らすような方剤をつかいます。

 灼痛と冷痛では逆の療法です。西洋医学の痛み止めと違ってここを間違えると逆効果になります。ちなみに消炎鎮痛剤は灼痛に対しての方が効きがいいです。これも消炎鎮痛剤の効かない痛みだと思いますが『隠痛』というのがあります。

隠れた痛み・・・つまり強い痛みではなく、しくしくといつまでも痛む痛みの事です。

 これは虚証の痛みで気血が不足している為に痛んでいます。よく痛む所をさすっている方がいらっしゃいますが虚証の痛みです。不足により痛むなら補わなければ軽減してきません。また、これも隠痛に入るのかもしれませんが下垂感を伴う痛みがあります。「ぬけるような痛み」と表現される方もいらっしゃいますが生理痛や下腹部の痛み、排便時の痛みなどにあります。これは中気(脾気)の不足により気の昇清作用(下垂しないように定位置にとどめておく働き)の弱まりによるものです。

 他にも潤いがない為に痛む事があります。皮膚や粘膜の潤い不足・身体の潤い不足により刺激を直接うける事によっておきる痛みです。例えば胃の潤い不足(胃陰虚)は胃壁の保護力の不足です。胃酸の侵食をうけやすくなります。肺の潤い不足(肺陰虚)は外界の刺激を直接うけやすくなります。

・・・鼻や喉など空気の入り口も肺のグループです・・・

 腸壁の潤いが不足すれば便の通りが悪くなり、左下腹部が痛む事もあります。肌に潤いがなくカサカサ状態ならちょっと醤油がついても痛がゆくなったりします。また乾燥がすすめば亀裂も生じて痛みがでます。潤いは保護力といえます。身体ばかりでなく心や神経にも潤いが大切です。

2008-09-29

疲れた-!
疲れるとでてくる色々な症状はどうしてでてくるのでしょう?
特にハードな運動や仕事をこなしたわけではないのにこの疲労感は何でしょう?

 疲れは気と関係があります。気はエネルギー的なものだからです。気の不足・気が流れないで停滞している状態など疲労感と関係しています。また、気の素になる血や精が不足しても気の生成ができません。この事は五臓の弱りとも関係しています。

 夏バテがでてくる時期です。夏は心の季で五行で

グーっとドリンク1本元気でますよ!
ホント!元気!元気!

 というようにいつでもいくわけではありません。

とれにくい疲れはどこからきているのでしょう?
また、疲れ易くなっているのはどうしてでしょう?

 疲れるとでてくる色々は火です。火は熱で人を乾かします。自然の中で乾燥させるものに火と風があります。夏は心火は強くなりやすく心陰はへりやすい!そればかりでなく全体の陰液や津液も不足がちになります。ですから夏バテは中医学でいうと気陰両虚や気津両虚が多いといえます。

「疲れがとれないし、動悸がする」
「疲れがとれないし、ほてり感がある」
「疲れがとれないし、咽がカサカサする」
「疲れがとれないし、髪や肌がパサパサ」

 気と陰津が不足していそうです。気と陰津を補えるものに、漢方では生脈散(麦味参顆粒)、漢方ハーブでは西洋人参(香西洋参)があります。

 夏にビールやジュースなど冷たい飲み物ばかりのんでいたり、食事も冷麺・そうめん・冷麦・冷シャブ・サラダなど冷たい物を多くとると寒湿がたまります。寒湿は冷たい湿気の事で、冷えて脾胃の働きが停滞してしまう状態になります。脾は気血生化の源(気血を作るみなもと)ですから、当然気は不足します。この時の『疲れ感』は脾がよわっている事からきています。『脾は運化を主る』ため栄養分の吸収や輸送状態が悪いのみならず水液代謝も悪くなります。つまり、身体に余分な湿がたまるという事です。

 脾は湿を嫌うので、清気を上昇する事がでなくて、「眠くてしかたない」と言う状態になったり、時にめまいがしたりします。余分な湿があるわけですから身体は重だるくなります。胃腸の働きも弱って“食欲がない・軟便や下痢っぽい・お腹がゴロゴロいう”などの症状がでます。この時、寒湿を除くだけで症状が快復する時と脾を元気にする為健脾が必要な時とあります。もし、それほど働いたわけでもなく、それほどの運動をしたわけでもないのに疲労感が強い時は、すごく神経を使った場合も多いと思います。

 血虚タイプの人は精神的な疲労になりやすいです。それは肝が弱い為です。

肝蔵血・・・肝は血を貯める所です。

 肝の機能が弱ければ蔵血も出来ない事になります。また、

肝主疏泄・・・肝は疏泄をつかさどる

 つまり、気というエネルギーが身体中をスムースに巡るようにコントロールする働きのようなものですが、肝の弱りにより この働きもうまくいかなくなります。気は不足しているのでなく

行き渡らない・・・その為の疲労感です。

 この時はイライラやゆううつ感・眠りが浅いなどの症状を伴ったり、お腹や脇など脹って痛む症状を伴ったりします。その時は肝の疏泄改善する(疏肝)とともに、停滞した気を巡らす(理気)しながら足りない気血を補います。

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