血液サラサラにいい事していますか?
「くろずのんでます。」
「たまねぎ食べてます。」
「霊芝のんでます。」
「薬用人参のんでます。」
「冠元顆粒のんでます。」
「病院ででてます。」
みなさん、色々ですね。血液サラサラってを瘀血と比べて考えてみましょう。テレビで血液が流れている様子を見た事があると思います。血液は勢いよく流れていて、その流れにのって赤血球や白血球がどんどん送られていきます。細くなっているところは柔軟に変形し気持ちよく流れていきます。こんな流れが血液サラサラというのでしょう。
ある日のこと娘が
「ママ大変 血流計してきたらこんなになっちゃってた 」
「血液がすみずみまで流れているかどうかを示す数値がびっくりするほど高くなっているわね。」
「うん。それに、すごーくだるくてヘトヘトだよ。」
「麦味参顆粒と衛益顆粒飲んであとで血流計してみようね。」
30分後
「元気も少し出てきて、血流計の数値もよくなってた。」
この2つの漢方は瘀血に使う漢方薬ではありません。どうして改善したのでしょう?
麦味参顆粒と衛益顆粒をつかったのは「宗気」不足から血流が悪くなっていると思ったからです。気の働きはいろいろですが「元気・宗気・営気・衛気」の四つに分けられています。宗気は呼吸作用と心血の運行を推動する機能があります。これは、補気薬によって血液サラサラになった1例です。
瘀血の3大症状は「痛む・しこる・黒ずむ」です。こう言う症状がでてくるのにそれぞれの前段階(血滞)があります。そして前段階(血滞)になってしまったそれぞれの理由もあります。中医学ではその理由を気虚・血虚・陰虚・陽虚・痰湿・外感など分類していきます。瘀血には活血化瘀薬が必要ですが、この段階では活血化瘀薬は使わないで大丈夫な事も多いのですが、少量使う時もあります。
気虚で巡らすエネルギーが不足したり、気滞でエネルギーが滞ったり、水不足で流れが悪かったり・・・それぞれの理由から血滞がつづくと瘀血「痛む・しこる・黒ずむ」の状態になります。血液サラサラでない状態が1歩進行してしまったと言う事になります。この段階になると活血化瘀薬は必須でしょう。原因に対する方剤+活血化瘀の方剤で対処します。
活血化瘀の方剤はいろいろです。冠元顆粒・血府逐瘀丸・フッケツ錠・折衝瘀血散・その他 血の流れが悪くなっている原因があるからです。しかし 更に瘀血の状態が悪化するとどうなるでしょう?流れが滞る状態が続くことを想像してください。際にこびりついたり、塊になったり・・・中医学で乾血といわれます。他に古血とか死血とか凝血などというようです。
もう詰まって塞がってる状態また経絡が閉塞した状態です。そうなると活血化瘀薬だけでは不足です。破血薬といわれるものをつかいます。破血逐瘀(破血し瘀血を駆逐する)中薬に水蛭(すいてつ)・しゃ虫などがあります。水蛭はヒルです。テレビで吸血させてうっ血をとったりするのを見たことがありませんか?ヒルに吸われたところは血が止まり難いそうです。溶血成分は確かヒルディンとかいうのだと思います。水蛭は閉塞した血を破血逐瘀する為服用します。
このように血の流れが悪い状態には段階があります。テレビや健康雑誌などから
「1週間たまねぎ食べれた方Aさんは血液サラサラでした」とか
「くろ酢のんで、血液がサラサラになった」とかの知識を得て実行している方は多いです。
それもいいと思います。血液サラサラと食生活のかかわりは強いので食生活の改善は必須だからです。でも、自分の身体を知り、どの段階かを知ることから始めなければ瘀血の改善は難しいです。
血滞 瘀血 瘀血+乾血
皆それぞれ違う位置にいます。中医学で瘀血とかかわりが強い五臓の関係を考えてみます。「肝は血を蔵し、疏泄を主る」といい血の保持と循行の調節しています。「心は血脈を主る」といい血液は心臓からおくりだされています。「脾は統血を主る」といい脾気の固摂の働きが血液が脈管から漏れないようにしています。
また、心血の運行を推動する機能のある「宗気」は肺が吸収された清気と脾の運化によってえられた水穀の気が結びついてできたものです。また、血脈は肺に集まり「肺の宣発作用」によって全身に散布されます。こういった内臓の働きの弱りは血脈の循行に影響します。
暴飲暴食・偏食・ストレス・冷え(衣食住の不節制からも身体を冷やします)寝不足・過労など環境や生活リズムの乱れが五臓を傷害して瘀血につながることも少なくありません。大事なのは身体を大切にしようとする気持ちです。だから、養生が基本です。
しかし、状態の進み具合に応じた漢方薬を服用する事も大切です。その場合でも、養生はしなければ穴のあいた壷に水を注ぐようなものだと思います。注ぐのを止めればまた減ってくるし、穴が大きければ相当量注がないとへってくる。なんとかしのげればいいほうで減るのを遅らせる程度になってしまいます。
2006年6月暮らしの中の中医学より
「帰脾湯は精神病の薬なんですか?」こういう話はどこからでてくるのかビックリします。中医内科学のなかに何度も登場するこの漢方薬はどんな働きなのでしょう?
帰脾湯は補益剤(身体を補い益する漢方薬)です。
効能は
①気を益し、血を補う(益気補血)
②脾を健やかにし、心を養う(健脾養心)です。
この2つの働きは色々な症状において重要になってきます。血症(出血傾向)・心悸・不眠・鬱証・眩暈(めまい)・内傷発熱(熱の出る原因が身体の方にある時の発熱の事)・虚労(慢性的な衰弱傾向…虚弱体質)などです。明日からこの事をわかりやすく書いていきたいと思います。
■生理不順で帰脾湯を飲むの巻
「更年期のせいか生理が遅れがちなんです。しかも、だらだらつづきます。」
「量や色はどうですか?」
「多いし、以前より色も薄く水っぽい感じです。」
「生理痛はどうですか?」
「すごく痛いというわけではないですが重く下に落ちるような痛みがあります。」
「お疲れのようですが・・・」
「いろいろあって考え込んでしまうことも多く、疲れやすくなってます。」
「そう言う状態ならちょっとしたことにドキっとしたりし易いでしょう?」
「そうそう。気が弱くなってるかも。だから今回もすごく心配になっちゃって・・・」
「では帰脾湯を飲んでみてください。」
■めまいに帰脾湯の巻
「この頃、めまいがしてこまります。疲れる酷くなります。」
「食欲は以前と比べてどうですか?」
「普通に食事をしていますが、お腹がすいた感じではしないです。」
「お疲れのご様子ですが、眠りの方はどうですか?」
「疲れているのですぐ寝てしまいますが、熟睡していないのか朝になっても疲れがとれていない感じです。」
「爪や唇が白っぽくつやがないですし、気血の不足がみられます。帰脾湯を服用しましょう。」
■くりかえす微熱に帰脾湯の巻
「ここ2~3ヶ月微熱かつづいています。病院で検査したのですが原因がわかりませんでした。」
「熱はどのくらいですか?」
「平熱は36.3℃くらいですが、疲れたりして、おかしいなと思うと36.9℃~37.3℃くらいになっています。」
「睡眠の方はどうですか?」
「時々、明け方目が覚めるると起きる時間が気になって眠れない事があります。」
「動悸やめまいはないですか?」
「動悸といえるかわかりませんが、いやな事あるとドキドキしているのに気が付く事があります。それから頭がボーっとしたり、目がチカチカするような感じがすることがあります。」
「この症状は血虚発熱にあたります。少し時間がかかると思いますが、帰脾湯を飲んでみてください。」
3人治したい症状はちがいますが、中医学の見方からすると同じです。3人とも顔にはりと艶がなく、舌の色は普通より白っぽく、ふちに歯型がついています。また、胃腸の働きは良い方ではなく、いろいろ考えてしまうタイプです。疲れ易く、疲れると症状が悪くなるのも共通しています。気血が不足していて・脾や心が弱い状態です。
一人目は脾の『統血を主る』という働きが特に失調
二人目は脾の『昇清』という働きが特に失調
三人目は心血の不足や脾の生血(血を作る働き)の不足により陰血が不足し陽をおさめる事ができなくなっておきたもの・・・少し難しいですが陰陽のバランスの崩れと言う事です。
だから気血を補い・脾を健やかにし心を養う働きの帰脾錠なんです。帰脾錠の血の補い方は『補血』でなく『益気生血』です。また、心と脾は母子関係、心がしっかりしてくればその子である脾もしっかりします。
「異病同治・同病異治」と言う言葉がありますが、漢方薬を選ぶ本質がこの言葉の中にあります。一般の薬は頭痛には鎮痛剤・咳に鎮咳剤・痰がからめば去痰剤というように薬理作用で使います。漢方薬は外因・内因を考え中医学的なバランスシートが作る事が大事です。まず、病名や治したい症状を知り、病気のもっている性質・どう発展するかを理解します。その上で、寒熱・虚実・表裏・陰陽を考え、気血津液を考え、五臓を考えて自己の身体がどうなっているかを知る。これができてはじめて方剤選びができるし、いい結果につなげられるのだと思います。
『敵を知り己を知らば百戦危うからず』この言葉は父のブログ“うえんてら”にでてきますが、中医学まさにこれ!
2006年4月ブログ暮らしの中の中医学より
漢方の処方は方剤、漢方薬に使われる動植物や鉱物は中薬といいます。方剤は古くは紀元前3世紀末に書かれたとおもわれる『五十二病方』(まだまだしっかりした理論体系していませんが)というのがあります。中薬の始まりは原始時代からで“神農は百草を嘗め、一日にして七十毒にあう”とかかれていますが、古代の人々が薬・毒を身をもって探し求めていったということです。約紀元前200年頃『神農本草経』が体系を為した書物となったといわれています。その後の歴史の中で実践をくりかえし沢山の書物がかかれ、賞賛や批判をうけて淘汰れ、現代につながってきているのです。
実践をもとに出来たこの学問は、私達が健康を守る為の先人達からのプレゼントです。身体は一つの世界です。そこに日々くりひろげられる巧妙な仕組みに驚かされます。人もまた自然の中に生きる1個体です。深い観察力と実践から生まれたこの学問は人体を一つの統一した世界とみています。気血津液の充足と正常な運行は健康の条件です。五臓六腑の働きにより生みだされ・貯蔵され・運行されています。
春夏秋冬の季節と五臓の関係などを考えに入れながら四季に応じた養生をしていくことも大切です。年に1回は健康診断を受ける人も多いと思います。病気の早期発見・早期治療が目的です。中医学をよく知る人はもう一つ健康チェックの方法があります。それが中医診断学を使った方法です。
病名を診断するものではありませんが気血津液の不足や停滞をみたり、五臓六腑の虚実をみたり、寒熱・燥湿・陰陽などの身体の平衡をみるものです。未病先防(病気にならないうちに防ごう)。『上工は未病を治す』…本当にいい医者は病気になってから治療するのでなく、病気になる前に手をうつ事ができる。また、病気を治す場合も他の臓器にひろがるのを予測して手をうつ事が出きるという意味です。これが中医学の一番大きな意義だと思います。
自分の調子がわかるのは自分でしよう!
毎日にの健康チェック!
変だと思ったら早めにご相談下さい。
養生の中で『食べる』『寝る』は最重要課題です。食事が食べれずに栄養不良なら気血津液をつくりだす事ができません。飽食は脾胃を損傷し、痰湿を生じ、気血津液の運行をさまたげます。
味は『酸・苦・甘・辛・鹹』の五味があり、五臓と関係しています。酸と肝・苦と心・甘と脾・辛と肺・鹹と腎でそれぞれ五臓の虚を補う事も出きれば、摂り過ぎると実してしまういます。また実した臓の相克関係にある臓は虚してしまいます。例えば酸味は肝に働くので摂り過ぎると神経の緊張が強くなったり、脾臓が虚してお腹がごろごろいったり、軟便になったり、食欲不振になったりします。
五味は役割があるので1つの味だけ好んで摂り過ぎるのはよくありません。また、弱っている臓腑にあわせて摂ることも大切です。簡単にいえば、偏食せず、嗜好にかたよらず、なんでも食べましょうということです。
養生にもう一つ難しいけど、とても大事なことがあります。それは心の安定です。『志閑而少欲、心安而不懼』心が閑で欲が少なく、心が安定しているので懼れがないこう言った事が紀元前に書かれた書物のなかに書かれています。さらに、その中に“食べ物をおいしく頂き、着る物をここちよく思って着、習わしを楽しみ、地位の高低をうらやむことなく、素朴で誠実。正しくない嗜好に耳目をゆりうごかさず、淫らな邪説に心情をまどわされることがない。これは養生の道理にかなっているので百歳を越えても元気でいられる”とかかれています。
ストレス社会の現代ですが、心のスイッチを少しいれかえて生活を見直してみると“元気で長生き”に何歩でも近づいていけるとおもいます。身体のバランスを崩したり、病気になった時、漢方薬を飲めばよいというだけでは片手落ちの療法なのです。
ホノミ漢方がこんな言葉を書いています。
「治そうと願うなら、治す努力をしてみませんか?」
病気は薬が治してくれるものでなく自分が治そうとしなければいけません。漢方薬はその一端を担うものです。
明日は中国からきた先生の糖尿病についての講演を聴きにいきます。発病を「鬱・熱・虚・損」の4段階に捉えたり、絡病に対する活血化瘀通絡の中薬の応用などで楽しみです。
2006年3月ブログ暮らしの中の中医学より