漢方療法と特徴

2006-10-01

パンダ⑤ 沢山の人が血液さらさらは大事と思ってるので、「瘀血」については理解しやすいですね。とても大事な事なのに解かりにくい事が沢山あります。例えば、傷陰(陰をきずつける)とか。肝腎不足とか。「陰て傷つくものなの?肝腎が不足するって何?第一肝・腎て肝臓や腎臓のことじゃないの?私、肝臓も腎臓も悪くないけど・・・」肝や腎のことは前にも書いてありますが身体のバランスをとる上で重要な臓です。難病といわれるものは肝腎不足からくる場合が多いようにみえます。だから肝腎を大切にしてほしいと思います。

 肝腎の不足すると自律神経やホルモンなど、身体の調節機構に異常を生じます。なぜなら肝は血を蔵し、疏泄をつかさどり、腎は精を蔵し、生長・発育・生殖を主るからです。肝は疏泄機能によって血液の流れや胃腸の蠕動などをコントロールしていて、自律神経の働きと近いものがあります。腎の生長・発育・生殖を主る働きもまた身体のコントロールに重要です。

 精は生命維持にかかせない重要な物質でこれをもとに身体の成長や発育過程の変化や生殖機能にかかわっているということにより、ホルモンなど身体の調節にかかせない物質と腎は関係が深いことがわかります。ですから肝腎は身体を平衡に重要な役割を果たしています。

 肝陽上亢と言う症状があります。肝の陽気が制御できない状態になって疏泄機能が失調してしまい落着かず怒りっぽくなります。また、肝陽は上逆して上の方を乱すので頭痛・めまい・耳鳴り・目の充血などの症状をおこします。この症状の前段階は肝腎陰虚です。その前として肝腎の不足があります。 肝腎陰虚(身体の物質的消耗)になると心神(心臓や大脳の働き)が滋養できず不眠・動悸・健忘の症状がでたり、筋骨が滋養できずに足腰がだるいなどの症状がでたりします。

 肝陽上亢は怒りっぽい性格やストレスから出ている症状ではありません。肝陰・腎陰が損傷しているため陰が陽を抑えられなくなっている為におきている症状です。こういった思考過程は中医学(漢方)独特のもので、しかも実際に人の身体は中医理論の通りに進みます。経験の賜物だと思います。

 更年期障害も基に肝腎不足があります。女性は血から衰え、男性は精から衰えるといいます。肝は血を蔵し、腎は精を蔵します。肝腎の蔵の中は不足してきているので円滑な営みができずにいろいろな症状がでてきます。また肝は疏泄の働きで気の巡りをコントロールしていますし、腎に蓄えられた精は他臓に分け与えられていますので、もともと弱い部分に影響がでてきます。だから症状を改善する漢方薬(標治)と不足した肝腎を補う補肝腎の漢方薬(本治)がひつようです。

 「ポリープがあります。」とか「漿液性の良性腫瘍があります。」といわれたらすごく心配して治療しようと思います。「内臓肥満です。」「中性脂肪値やコレステロール値が高い」といわれたら少し心配して改善のしようとすると思います。でも痰湿がありますとか痰湿ができやすいタイプといわれてどうにかしようと思う人は少ないと思います。

 心配する結果が出てきた原因は痰湿です。痰湿の出きる原因は1つではなく治法もいろいろですが気血津液の円滑な巡りに滞が生じた結果である事は明らかです。人体という一つの世界を中医学を通してみると、大事なことがみえてくると思います。

2006-10-01

パンダ⑧ 板藍根はウイルス性疾患にかかせない中薬です。板藍根のお茶の板藍茶はご愛飲頂いている方も多いと思います。風邪がはやりだすと学校でも煎じてのんだり、うがいさせたりして予防するそうです。パンダのにも飲ませているというのを聞いた事があります。

 数年前の中医臨床に、命門会さくら堂治療院の先生の記事がのっています。北京に滞在した時インフルエンザが大流行に出くわしたがひたすら板藍根をのんだり、うがいしたりしてまぬがれた。という事が書かれていました。

 板藍根はホソバタイセイの根です。味は苦く性は寒です。つまり熱を冷ますということです。中医学的な効能は『清熱解毒・涼血利咽』つまり熱を清し(冷まし)邪毒を解く(抗菌や抗ウイルスなどの病原は毒と考えます。)また血の熱を涼し(さまし)咽を治します。病気が身体のなかに入り込んで血に及びと出血し易い状態になります。充血や鮮やかに紅い皮疹など血熱を視野にいれます。

■中国の昔話です。(チャイナビューより)
 むかしある所に大きなお屋敷があり柴刈りをする若者がいました。柴刈りに行っていた若者は山にある馬藍寺の板藍和尚に白湯を頂きお礼に水汲みを手伝っていました。ある時お屋敷の娘と恋におちました。しかし娘は役人に嫁がされることになっていました。二人を助けたい和尚は「これは死んでも生き返る薬草だよ」といって渡しました。娘はこれを飲んだので、親は死んだと思い埋葬しました。若者は棺から担ぎだし山寺につれていくと娘は息をふきかえしました。村を逃れる二人に、和尚は「これは疫病に効く薬草だよ」といって手渡しました。二人はこの薬草を売って生計を建て幸せに暮らしました。数年後和尚に会いに行くともう亡くなっていましたので、和尚を忍んでこの薬草を板藍根と呼ぶ事にしました。

 中医学で板藍根はウイルス性疾患にかかせない中薬です。1988年に中国でA型肝炎が大流行した時予防と治療に大活躍で、上海市や中国全土の薬局から板藍根が消えたという話が今も語りつがれていると植物生薬物語に陳先生が書いています。数年前のインフルエンザの大流行の時も、サースの流行の時も、板藍根は品不足になりました。ウイルス性疾患だからといって板藍根だけでいいわけではありませんが、症状に対応する漢方薬に加えていくとよりいい結果がえられると思います。

 前に書いた中国でインフルエンザが大流行した時、北京中医医院では病院内での感染を防ぐ為専門のスペースをもうけ、症状の型にあわせて予防及び初期患者に対する方剤をくみたててだしたそうです。その方剤は『防感合剤』といってその中に板藍根が30g入っています。清熱解毒・宣肺止咳(熱をさまし、毒(菌やウイルスや毒素)に対抗し、肺の宣発粛降の働きを改善して咳をとめる処方に板藍根を組みあわせた形になっています。我が家でも板藍茶はよく飲んでいますが、特にこれから先の季節はかかせません。

2006-08-01

パンダ③ 人は見かけによらぬものとか、見た目で判断しちゃいけないとかいいますが、中医学(漢方)はというといって見た目を判断の材料にします。これを望診といいます。望診の中でも重要なのは舌診といって舌の状態で判断する事です。舌は食道・胃・・・・というように内臓につながっている、つまり身体の中のような外のような部分です。私達が見れる身体の内側ともいえます。だから身体の中の事を現しています。健康のバロメーターですので毎朝鏡にむかってベーして見て下さい。見方を今週は書いて行きます。

 舌の図表が置いてあるので、舌を出してどこがわるいですか?と聞かれる方がいますが、舌で何の病気かわかるわけではありません。図表の上に書いてあるように寒熱・血・水の状態をみます。また正気の盛衰を判断したり、病気の深さを見ます。寒熱というのは病気の性質ですが、燥湿も見れます。また、病状がよくなってきているかなどを推測できます。毎朝舌の健康チェックしています。それがくせになっていてテレビでベーっと舌を出した人を見て「ずいぶん血虚だね」などと話したりします。

 舌の色・大きさ・形・硬さ・湿ってる状態などを見たり、舌苔の有無、付き方・厚さ・色・湿ってるか乾いてるかなどを見ます。舌の色が紅ければ熱です。実熱も虚熱もあります。

 次は実熱の例です。子供が高校生の時インフルエンザが流行していて、「すごく咽が痛い、熱っぽい」といって学校から帰ってきました。熱はまだ微熱程度ですが舌を見るとイチゴ舌(舌の先全体が赤くぶつぶつ状態)でした。外感風熱で熱毒が強いと思ったので天津感冒片と板藍茶を飲ませました。2時間後くらいには39度をこえました。時間をみながらその組み合わせで余分に飲ませました。

 戦う相手の勢力に対抗しなければ勝てません。夜遅く40度になったので解熱剤を一回のませました。翌日は同じようにして漢方薬を飲ませました。お昼頃咳がでだしたので天津感冒片・喘咳散(麻杏甘石湯加減)・板藍茶にしました。夕方まだ39度近くありましたが、舌をみると赤いぶつぶつがなくなってきていたので、もう大丈夫と思いました。それからどんどん熱が下がりました。舌の紅は熱を現す色です。赤いぶつぶつは熱が盛んな印です。

 四月頃 娘が

「胃が痛い」
「ベーは?」
「ベー」
「やっぱり冷えだ。びしょびしょした舌(滑苔)になってよ。それに胃が痛いっていってかがみこんでたでしょ。寒邪は収引といって縮めるからだよ。」
実は「アイスを2回食べた。」
「やっぱり。暑くもないのに!安中散を飲んでおけばいいと思うよ」
「ラジャー!」

 湿潤のつよい時は冷えです。冷えが酷いと苔は真っ白で舌が青っぽくなります。冷えて循環が悪くなっている印です。プールとかで寒くて唇が紫になるのと同じです。寒邪は凝滞の性質もあり、血行を停滞させます。

 舌が痛い、舌がしみる、口内炎ができやすい。これらは心火によることが多いようです。舌の先からは心や肺の情報をみることができます。風邪で熱っぽかったり、喘息だったりして舌先が赤い時は肺熱、眠りがうまくいってなかったり、いろいろくよくよして落着かなかったりの時は心火です。

 舌の両辺が赤い時は肝火です。心肝の火がつよけいとイライラ、おこりっぽい、おちつかない、不眠など神経の興奮の症状となって現れます。治療はこの火を抑えなくてはいけません。実火は瀉火します。水や氷をかけ冷やしてけすようなやりかたです。では虚火は?そもそも虚火ってなに?陰陽のバランスの崩れによる火の事、つまり身体の弱りによって出る炎症や熱や興奮などをいいます。

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