血は全身を巡って身体に栄養を供給して滋養し潤わせます。血によって
目が滋養されれば、よく見え
足が滋養されれば、しっかり歩け
手が滋養されれば、しっかり握れ
指が滋養されれば、しっかりつまめ
精神が滋養さえれば、心が丈夫で安定します
この事から、血虚(血の不足)というのは単に貧血をさすのでないことがわかります。
血の滋養が足りてないことを血虚といます。女性は気は余りやすく、血は不足し易いといわれます。また、女性は血から衰えるともいいます。血が不足すると肌の艶もなくカサカサしやすく、髪も細くパサパサしやすくなります。
血は飲食物からつくられます。これには『脾が運化昇清を主る』という事が関係しています。帰脾湯は『健脾養心、益気生血』の働きがありますが、この生血の働きとはまさに脾の血を作る働きのことです。帰脾湯は摂血【脾の統血作用(血が脈管内から漏れないようにする)】の働きもあるので、その面からも血の充実をはかれます。また『精血同源』といって精は血に 血は精に変化します。だから腎精が充実は血をつくる事ができます。
では血が不足するとどんな症状が出てくるのでしょう?
目は乾きやすく、視力も減退します。
関節の動きがわるくなり、四肢のしびれがでたりします。
皮膚が乾燥し易く、かゆくなったりもします。
眠りが浅くなったり、夢ばかりみていたり、不安・驚き易くドキドキするなど心が安定しない症状がでたりします。
血に関係する病態を考えると血虚 血瘀 血熱 血寒などが考えられます。このうち血熱は煩労・飲食の過度・発作的な怒りによる肝の損傷など火熱が血分を犯したものです。血熱になると出血傾向になります。火が脈絡を損傷するためです。火熱は炎上し心をかき乱し、気や津液を消耗し、風をおこし、動血して出血をおこし、局所に集まって血肉を腐食すると癰腫・瘡癰をおこします。
温病において邪熱が血分に入るいうことは、病気が奥に入って重病という事です。中医学漢方の血は西洋医学の血とは違う側面がいろいろある事がわかると思います。
2006年11月ブログ暮らしの中の中医学より
陰は物質面で血精津液が属し、陽は機能面で気が属します。ですから、陰虚とは物質面の不足と陰の静止や抑制的な性質が弱まっている事をいいます。陰虚の火照りが体質が陽性で暑がっているのかを区別しなくてはいけません。なぜって陰虚のほてりは物質の不足からきているからです。
黄連解毒湯は三焦の実熱を冷ます漢方薬ですが、この実熱と言う言葉は重要です。陽性体質で実熱のあるひともだけでなく、陰虚熱の人も飲むと効く感じがするかも知れません。でも陰虚の人は陰(血精津液)を補う滋陰剤をつかいながら熱をさまさなければ身体は消耗してしまします。陰陽互根、根は同じなので陰がすくなくなると陽も少なくなっています。だから上から水をかけて火力を弱めるような事はしてはいけないのです。
しっかり不足を補充しながら熱や過亢進の状態を抑えなくてはいけません。陰は物質的基盤ですから、陰は消耗しないようにしなければいけません。血の不足は陰の不足に発展します。血は陰血ともいわれ陰のうちです。
『当帰補血湯』という方剤があります。『大出血のあとに生じる顔面紅潮・体表部の熱感・つよい口渇で水分を欲するを治す』となっています。貧血 冷え性 などのイメージとちがって血の不足が酷くなると熱感が生じるのがわかります。この方剤は補気薬の黄耆と補血薬の当帰で、補気薬が大量に入れてあるのが特徴です。『有形の血は自生することあたわず、無形の気より生ず』という考えによるものです。
陰陽互根・・・陰陽の根は一緒です。身体の陰陽のバランスの大素締めは腎です。腎の陰陽は真陰・真陽とか元陰・元陽とかいわれます。腎が衰えると陰陽バランスがくずれてきます。西洋医学で代謝の亢進・低下にかかわっているものは?と考えると甲状腺です。また、平滑筋や血管や分泌物にかかわっているのが自律神経系です。また、ホルモン系のフィードバックシステムなど陰陽のバランスともいえる機能が身体を取り巻いています。
陰と陽はどういうことなのか少しはお分かりいただけましたか?
人体において陰を養うということは血や精や津液の不足を補い、不足による虚熱をとることで、陽を補うということは機能面の回復・エネルギーを増やす事と身体を温めることです。もし治療法がないといわれる病気になったとして、この陰陽の調節の努力をすることの意義をどう考えますか?私は何時だってあきらめないで努力したいって思っています。また、努力の方法を与えられている事に感謝してます。
2006年11月ブログ暮らしの中の中医学より
陰陽といえば陰陽師が不思議な力をもっていたのを思い出してなんだか現実離れした感じをうける方もいらっしゃると思います。漢方において陰陽のバランスは大切です。陰陽は相対的なもので昼は陽、夜は陰ですが、昼のうちでも日向は陽日陰は陰というように陽の内にも陰が、陰の内にも陽があります。自然の世界で昼と夜は順番に巡ってきます。もしこのバランスが崩れ毎日夜だったら、或いは毎日昼だったらどうなるでしょう。人もまた自然が生み出したものです。だから自然の法則は人にも当てはまります。これを天人相応といいます。人の身体においても陰陽のバランスは重要です。陰陽はどんな事をさすのでしょう?
陽 陰
活動的 落着き、静か
上昇 下降
外在的 内在的
温熱 寒冷
明るい 暗い
機能面 物質面
機能亢進 機能減退
身体で考えると 気は陽 血精津液は陰に属します。
身体の物質的基盤は陰
身体の機能面は陽
陰が無くては陽はなく陽がなくては陰作られません。また陰陽の性格から考えると交感神経と副交感神経のや甲状腺機能の亢進と低下などが陰陽のバランスと通じる面があります。私達の身体のバランスをとるということは、この陰陽のバランスということになります。
生まれつき陽性の体質、或いは陰性の体質という事がありますから調整していくことが大事だと思います。過労、ストレス、生活リズムの乱れ、偏食、歳、長い病気などによって物質的基盤(血・精・津液)などが不足してくると陰陽の平衡がくずれ 病気または病気予備軍または不定愁訴となって現れます。
昼と夜、春夏秋冬のように、陰と陽は転化していきます。真夜中は陰が極まった時 正午は陽が極まったときです。夜明けは陰から陽に転化し夕方には陽から陰に転化します。人の身体においてもこの自然のリズムにあわせて行く事が健康生活にとって重要です。夜明けから除々に陽気(活動性)が充実して昼ごろピークになり、夕方には衰退して内に潜伏します。夕方からは陰が深まり真夜中にピークになります。陰は抑制的、静止的ですから夜中はしっかり寝ることが陰を育てる事になります。
テレビも一晩中やってるし24時間営業のお店も開いていて昼夜の過ごし方に違いがないような社会になってきていますが、人の身体の陰陽のバランスを崩していることは確かです。神経や心の弱りなど、陰陽の失調と密接なつながりがあると思います。陰と陽のバランスは生きているかぎり重要です。というより陰陽がある程度のバランスがとれていることで生きているといえます。もし、陰陽の相対的なバランスがすっかり崩れてしまい、孤陰(陰だけ)、独陽(陽だけ)の状態になれば生命を維持する事は難しくなります。
実際的には先に書いたように気血精津液や臓腑との関係の中で運用されていきます。漢方は病気を治すというより身体を治すといっているのは、漢方薬を単に病名に対する臨床データ―で使わず、先人の知恵を使って身体のバランスがとれるように運用するべきだと思っているからです。
2006年11月ブログ暮らしの中の中医学より