「ねえ ねえ あのことお母さんに聞いてみた?」
「まだだよ ママの顔色をうかがって、きげんがよさそうな時にきくね。」
この会話のように 顔色を見るとか顔色をうかがうとかいいますが、この場合は赤いとか 青いとかいうのでなく 顔にでる気分をいってるようです。中医学(漢方)は見るということが4つの診断方法の中の1つでとても大切です。そのうち顔は大きな情報源といえます。特に漢方を学んでなくても「顔色がわるいけど大丈夫?」とか「あー ぴーちゃんの話したらあかくなったー」とか知らず知らずのうちに顔色と心や身体をむすびつけています。
この夏は北京オリンピックでしたが、感動したり、がっかりしたりで 暑い夏 熱くなってテレビをみた人も多かったと思います。メダルをとったインタビュウーで、選手のイキイキした笑顔が見られました。イキイキは活き活きとか生き生きとかかきますが、心も身体もハツラツとして元気な様子の事だと思います。
とびきりの笑顔と なんといっても目がキラキラ輝いて見えます。この目の輝きは生命力を現しています。中医学(漢方)では生命活動や精神活動を“神”といって神が有るか無いを言葉や反応や身体の状態を見て判断しますが、そのうち目の輝きや動きを一番重要視します。『目は口ほどに物を言い』などといいますが、上記のように目は精神状態とも密接にかかわっています。
顔色が青くなる時はどんな時でしょう。
●ショックな事があって蒼ざめたとか
●唇も真っ青だからプールから上がって温まりなさいと言われたとか
●寒気がするって 青い顔して帰ったよとか
青は五臓で肝の色です。肝の経絡とも関係しています。『肝は疏泄を主る』ので気血の流れと関係しています。冷えや痛みにより気血が鬱滞するとき青色が見られます。
赤は五臓の心の色で、五行の火・五気では暑で熱や興奮や行き過ぎなどの状態と関係します。
「ねーねー、A君がすきなの?」
「(ポッ!ドキドキ)ちがうわよ!」
・・・・・・といっても真っ赤!顔にでていますよ。
ドキドキは「心」 赤らめた顔の赤も「心」と関係しています。赤色は興奮や熱を意味しますが、実熱の時もあれば虚熱の時もあります。風邪をひいて高熱を出し赤い顔をしている時は実熱で外邪による発熱です。食欲旺盛でバイタリティーがあり怒りっぽく赤ら顔の時も実熱です。肝や心に火が有る事が多いと思います。痩せていて両頬だけがポッと紅いのは虚熱と考えられます。虚熱は身体の物質面が不足した為に出てくる熱の事で、陰陽のバランスの崩れと関係しています。
私自身は紅い顔色を見た時 実熱か虚熱かだけでなくアレルギーがあるかかゆみはどうかなどをうかがいます。アレルギーの炎症による赤みの事もあるからです。また、赤と心は関係があるので、眠りの状態や動悸があるかなども考えにいれています。
黄は五臓の脾の色で五気では湿です。私達が顔色が黄色いといって連想するのは黄疸です。黄疸は肝臓の疾患や胆道の閉塞などにより ビリルビンが血中に溢れて黄色くなる状態ですが、中医学(漢方)では湿の病気と考えます。でも黄疸以外にも黄色くなる事があります。
「大丈夫?顔色がわるいよ。黄色っぽくて・・・」
「うん、胃腸の調子がずっと悪くて・・・(もともと黄色いんだけど・・・)」
中医学(漢方)では正常より黄色っぽくてつやのないことを萎黄といいます。脾胃気虚・脾虚湿阻・血虚が考えられます。
胃腸の働きが悪く・だるいく疲れ易い・息切れなどが脾胃気虚がそれに浮腫みや重だるさ 尿が少なく 下痢っぽいなどが加われば湿がからんできている事がわかります。また血虚なら動悸・立ちくらみ・不眠・しびれなど血の滋養が悪い為におきる症状があります。
「私長生きできそうもないわ。美人薄命っていうでしょ」
「エーッツ!」
昔は肺結核は不治の病で、色が白く、はかなげな女性を見て、美人薄命といわれるようになったというのを聞いた事があります。白は五臓の肺の色で五気では燥です。また白は寒を現しています。陽気が不足すると代謝がわるくなり体の水が停滞して顔が白くはれぼったくなります。また出血などで赤色の血が不足すると白っぽくなります。
艶がなく くすんで黒ずんだ顔色を見たら、ずいぶん具合が悪そう 大丈夫かしら?と感じると思います。黒は腎の色で五気では寒です。陽気が不足すると代謝のエネルギーも不足します。血を巡らす力も弱くなり、瘀血も生じます。又水液代謝も悪く浮腫みがでやすいです。痩せて物質としての身体が不足する、腎精も不足します。血や精は生命エネルギーの素です。顔色の黒ずみは瘀血の時もあります。また顔色が黒くてもにつやがあれば病的ではありません。
「ぴぴ君大丈夫?」
「日焼けしちゃったよ!」
ふだんの生活の中では黒ずむというより、くすんだ感じをうける事はよくあります。寒くなってきて顔色がくすむ・疲れて顔色がくすむなど・・・これは血の巡りの悪さと関係しています。『痛む・しこる・黒ずむ』の瘀血の3大症状の1つです。痛みやしこりは重症です。くすみがでたところで血の巡りを良くする事を考えましょう。
未病先防・・・病気になる前に予防しましょう。
2008年10月ブログ暮らしの中の中医学より
漢方医学(中医学)は西洋医学と全く異なった理論体系をもっています。病気を診断するというより、人間を診断するという所から違います。その人間の状況や状態をどうみるかによって方剤が違ってきます。どうみるか?どう方剤を使いまわすのか?それによって効き目が全然違うのが漢方です。
三国志の中に出てくる曹操の頭痛は華佗にしか治せませんでした。それは魔法とは違います。漢方は沢山の書物と理解と応用の世界です。つまり華佗は多くの知識と応用力を身につけた名医だったと言う事です。チャングムみたい!と思う人もいると思いますが・・・
それにひきかえ西洋医学の鎮痛剤は飲めば効きます。西洋医学の薬は対象療法は得意です。漢方は頭痛が何故おきているのかを考える事からはじめます。
中医学では
外邪から発生する風寒・風熱・風湿と原因が内にある肝陽・腎虚・血虚・痰濁・瘀血
の7つに分類しています。
この事を把握していれば本筋から逸脱する事はないし、服用しているうちに症状は軽くなるのですが、実際は更に複雑です。
例えば胃炎や胃潰瘍を考えてみます。西洋医学的には胃の粘膜を保護する薬や胃酸の分泌を抑える薬で胃酸による胃粘膜の侵食を防ぐ薬が使われます。現在の状態に合わせて潰瘍が酷ければ、胃酸分泌の抑制作用の強いものを使うなどします。この分泌抑制の薬ができてから、ほとんどの潰瘍が手術をしないでなおせるようになったのですからすごい事だと思います。しかし治った後も再発しないように何年も飲みつづけている人も多いようです。
漢方の場合は視点が違います。中医学の名医の症例に十二指腸潰瘍を黄耆建中湯加減で治したものがあります。黄耆建中湯は中に膠飴という飴がつかわれているやさしい処方で、こんな方剤で潰瘍を治療できるのかと不思議な程です。この患者さんは何年も前から潰瘍をわずらっていて名医が見た時は痛みが酷く腰や背中まで痛みがありました。
生冷の食品で悪化・・・冷えがある証拠
温めたり、さすったりすると楽・・・冷えがあるし虚症
脱力感や息切れ・・・気虚
などの症状や望診や脈診からこの方剤にたどりついたわけです。
この方剤は中医学の教科書の胃痛を7種類に分類した中の脾胃虚寒に使う代表方剤になっています。例えば花粉症にグァバがいいとか、甜茶がいいとかいうのは、西洋医学的手法で一定の効果があるとされているということで、漢方療法というわけではありません。身体を見て、五臓や気血津液の状態、また花粉症の症状の出方から六淫の邪気を推測したりして、弁証した上に方剤を決めるのが漢方のやり方です。
エフェドリンは交感神経を刺激し、気管支を広げるので、以前には喘息によく使われてましたが、これは麻黄という植物の成分です。漢方も発作期はこの麻黄の入った方剤が多く使われています。しかし、麻黄だけを単味で使う事はありません。中医学の教科書では喘息にあたるものは哮証・喘証です。哮証は痰の音がするもので、喘証は呼吸困難を主とします。この場合でも寒熱・痰の状態・一身の『気を主る肺』の気の運行状態などによって方剤の選び方は違っています。エフェドリンの薬効のみに着目して使うわけでは決してありません。
漢方は身体全体を見るものですから病気と診断された人だけが飲むものではありません。未病先防ですから、漢方の理論は病気になるのを防ぐ為に多いに利用できます。例えばみなさんがよくご存知の『瘀血』です。全身または局所において血液の運行に支障があるという事を現しています。
瘀血の3大症状は『痛む・しこる・黒ずむ』です。特に舌はよく現しています。黒ずんでいたり、紫っぽかったり、血管が黒ずんで見えたりと言う事があれば活血化瘀薬を服用することが、身体を守る事になります。特に循環器系の瘀血は心配です。西洋医学では検査で血栓や動脈硬化を知る事ができますが、普段元気な人は瘀血があっても気がつかずに大変な状況になってしまう事もあります。
中医診断学(漢方の身体をみる方法)は私達の体のシグナルの読み取り方が詳しく示してくれています。先人が残してくれたこの宝を、健康生活に役立てなくては損すると思います。
漢方(中医学)が西洋医学より優れていると言ってるわけではありません。現代はどちらの恩恵もこうむる事ができるわけですから上手に使っていくのが良いと思います。漢方は人全体をよく把握した学問ですから人の生死についてもつきつめて考えています。昔の書物にはいろいろケースにおいて、人はこうなれば生き、こうなれば死ぬという事が沢山書かれています。
チャングムこんな話がでてきます。お妃さまは子供を授かるのを望んでいましたが、身体が弱かった為、チャングムの処方で紫河車を服用していました。時をへて懐妊しますが、チャングムは出産すると命を落とすのでやめるよう進言します。でもお妃様は子供を生む事希望し、出産後亡くなってしまいました。漢方(中医学)の理解が深く広いチャングムだからこそ、命の火(命門)が衰弱している事がわかるのです。
また『老中医の研究室』の中に腫瘍の話が出てきます。一人は頸部の腫瘍で柔らかく、表面がなめらかでつやがあり咽の動きにつれて移動する。老中医は「中薬を30~40剤飲めば消えますよ。」といいました。もう一人は耳の下の腫瘍で、硬く固定して動かない。老中医は「中薬の効果は期待できないから、摘出手術を受けた方がいいですよ。」・・・手術をしてみると腫瘍の中心部は悪性化していた・・・と書かれています。この老中医だから見極める事ができるので誰でもそうはいきません。
テレビで『魔法の手」を持つ外科医を見て素晴らしいと思いましたが、漢方(中医学)においては過去の沢山の書物から適切に理論を引き出してこれる人が名医といえるので、『魔法の引きだし』だと思います
2008年2月ブログ暮らしの中の中医学
天人相応というのは中医学(漢方医学)の根底にある思想です。『自然界の中に人間は存在しているので、自然界の法則は人にもあてはまる。』・・・というものです。この考え方に共鳴しています。人間だけが特別ではありません。立ちっぱなしだと足が浮腫むのは水が停滞するからです。水は上から下に流れるのは自然の法則です。水を下から上に上げるにはエネルギーが必要です。ポンプを使うとか、毛細管現象とかが考えられます。人の身体においては心臓というポンプの働きは重用です。また、足の血管平滑筋の働きでひきしめて上に送るのも大切です。
これは気の推動力です。例えば血液の循環について考えてみます。脈管内には血が流れています。血は脾の運化作用と肺の気化作用によって生成され、全身を巡って組織器官を滋養します。血は気の推動作用によって全身を巡ります。血という物質が動くためには気というエネルギーが必要と言う事です。もしエネルギーが足りなければ巡りが悪くなります。またエネルギーが一定でないとフラストレーションをおこして停滞します。これが気滞です。気が停滞すれば血も停滞します。長引けば『瘀血』になります。
電気のおかげで夜が明るくなって、夜でも昼のようにすごせるようになりました。夜お買い物もできます。でも、人が自然にもっているリズムはどうでしょう?人の目は暗いところでもよく見えるようには出来ていません。人は昼活動し、夜休むようにできているのです。それが、自然のリズムです。
中医学(漢方)において、人体の陽気の運行は明け方から昼にかけ外へと向かいまた旺盛になり、昼過ぎから下降して夜には内に入るので人は眠りにつくと考えられています。これは丁度朝に日が出て昼に高く昇り、夕方日がおちて夜がくるのと同じです。この陽気の運行がバランスを崩すと身体に支障が出てきます。
風邪で熱を出した時、水分補給するのが大事なのは何故でしょう?熱は身体を乾燥させます。日照りの時は土も乾きます。身体も熱で水分不足をおこしやすいのです。水量が減れば川の流れが悪くなるように、人間の身体の血の巡りも悪くなります。病気になるとウイルスや菌をやっつけようと白血球が増えますがこれも瘀血をつくります。風邪の漢方につかわれている勺薬は白芍ですが、もともとは瘀血を去る働きをもつ赤芍だったそうです。故人の知恵の深さに驚くばかりです。
健康の為に、1日に2リットルの水を飲んで体調を崩している方がいます。夏、暑いときは汗で出てしまうので沢山の水が必要です。その時でさえ汗で出てしまうのは水だけではないので電解質の補給も必要です。脾胃の働きが弱くて水分の代謝が悪い人、よく食べ胃火が強い人とでは違います。例えば植物も水がたっぷり必要な物もあれば、サボテンのようにあまり水がいらない植物もあります。また、暑い時や風が吹いて乾き易い時は充分に水をあげますがジトジト湿っぽい季節にやりすぎると根腐れしてしまいます。人も自分の状態に合わせた水分の摂取が大切です。
2008年1月ブログ暮らしの中の中医学より