清熱解毒薬が体に対してどう作用しているのか薬理作用がわかっているわけではないのだと思います。でも そのわからない所も魅力といえるのではないでしょうか?炎症反応には細菌やウイルスなどがかかわっている事もあれば アレルギー反応がかかわってる事もあるし自己免疫がかかわってる事もあります。
それぞれの状態に応じて古来使ってきた清熱解毒薬があり一定の成果をあげているという事実があります。科学的な解明がなくても明らかな事っていろいろあります。梅雨の頃になると食べ物が腐りやすくなったりカビも生えやすくなったり・・・という事も科学的に証明されようとされまいと事実です。夏に日が長くなって冬に短くなるというのも証明がなくても事実です。この事実の積み重ねによって漢方の理論はできています。
細菌に抗生物質というのが現代医学です。抗生物質ができて乳幼児の死亡率も大幅に下がりました。公衆衛生がよくなった事もあるでしょうが・・・でも今多剤耐性菌のように抗生物質が効かない菌が出てきています。抗生物質の使いすぎともいわれています。また自己免疫の暴走に対しては免疫抑制剤やステロイドなどを使用しますが、他方では副作用の問題もあります。身体を害する毒に対する対抗力(これは造語ですが・・・)を増す事が出来るのが清熱解毒という方法だと思っています。
清熱解毒のうち解毒な何に対しての解毒なのかはそれぞれ違っています。最近 鳥インフルエンザの流行のため 中国で板藍根が品切れになっているという事がニュースや新聞に載っていたそうなので、板藍根ってなに?と思った方もいらっしゃると思います。板藍根は普済消毒飲という方剤に使われていある植物です。中薬学の中に板藍根はうん疫(インフルエンザ・日本脳炎)・大頭うん(顔面丹毒)・ささい(流行性耳下腺炎)の高熱や腫脹・疼痛に配合される事が書かれています。こういう事から中医学では板藍根をウイルス性の疾患に対しての解毒に用いる事が多く、また予防的にも広く使われています。
中薬学の中に清熱解毒薬についてこう書いてあります。清火熱・消腫毒の効能をもち、火熱よう盛による発赤・腫脹・疼痛・熱感などの癰瘍腫毒を呈する熱毒・火毒にしようする。意味がなんとなくわかるような わからないような感じではないでしょうか?清火熱は火や熱を冷ますという意味です。消炎ともとれるし 解熱ともとれます。どっちもありの感じです。消腫毒は文字通り腫や毒を消す または腫れさせている毒を消す・・・ととることができます。
すごいですよね。2つの事を1つがやってのけるという事をいってるわけです。毒を菌とかんがえるなら抗生物質と消炎剤をあわせて使うような事を1つの中薬がするという事です。考えるに自然界にはそういう働きを持つものは案外あると思います。何かから何かを守ろうと思うなら必要なのかもしれません。
清熱解毒は中医のなかでよく出てくる言葉です。例えば金銀花は天津感冒片の中にはいっていますが、中薬学では清熱解毒とかかれています。普段解毒という言葉を使う事は少ないですが、風邪の時も、皮膚炎の時も 何か身体に炎症をもついような時に必要なのが、解毒という方法です。
身体に悪い影響をもたらすものは 身体にとって毒です。特に 病原菌やウイルスなどは毒といえます。また自己免疫性疾患において攻撃相手を間違えている自己免疫は毒といえます。これらに対し 解毒が必要です。清熱解毒の清熱はどういう意味でしょう?熱を清すとは熱を冷ますという事で 日ごろ私たちも良く使う熱です。歯が腫れて熱を持ってるとか、爪の周りが紅くなって熱もってるとか・・・発熱以外にも炎症に対して熱という言葉を使います。
2013年6月ブログ暮らしの中の中医学
昔々、人と自然は仲良しでした。・・・というより自然の声を聴きながら生活するしかなかったのだと思います。 雨・風・寒さ・暑さ・乾燥など季候の変化に敏感だったり、危険を察知しなくてはならなかったり、その為五感は研ぎ澄まされていたのではないでしょうか?
漢方の歴史は原始時代からあります。この時代に人が身を持って薬効を体験していって今に至っているわけです。神農は百草を嘗め、一日にして七十毒に遇う・・・とかかれています。(神農はその時代のなかで薬物を見出した人々の総称です。)科学的証明があってもなくても明らかな事は世の中に多々あります。
例えば「太陽は東の方から昇り、西に沈みます」といった時、科学的に証明されなければ信じないという人はいないでしょう。人は生まれてから20歳くらいまで成長して35歳くらいから老化し出すわけですが、ずーっと成長しつづけてる人や老化しない人はいません。証明がなくても体験からして当たり前になっている事ってありますよね。
この体験、経験、を基に身に付けた理論が漢方の根底に流れてると考えています。黄帝内経に四季に合わせて生活することで病気にならないと書いてあります。今は冬です。どんな風に過ごすのがいいと思いますか?冬のポイントは寒いという事です。まー!当たり前な!と思うでしょうが、実際 それにあわせて過ごしていますか?寒さは陽気を弱めます。冬は陽気を守らなければなりません。ではどうやって守りましょうか?
漢方薬は身体に合わせて使います・・・という事は解っている人も多いと思います。でも合わせるってどういう意味でしょう。冷えていれば温めるものを!くらいの事は理解できるとおもいます。乾いていたら潤すものを!それは解るけど潤す物ってなに?
という感じだと思います。また単純分けられない事も多くみられます。
足は冷えてるけど顔は火照ってるなど冷えと熱が入り混じった状態を経験した事のある人も多いと思います。気血津液の状態といったって 聞きなれない人もいますし、「さらに五臓の脾に問題があります」とかいわれても「それって何の病気?」と感じる事もあると思います。だいたい 気血津液や五臓六腑が充実していれば健康といわれても「何のことやら?」でしょう。ですが、だから良いわけです。西洋医学と違ったものの見方、病気の捉え方でアプローチするから西洋医学でうまくいかない部分で漢方が力を発揮する時があるんです。
健康食品は考え方は西洋医学と同じです。成分の働きを分析して、動物実験をし、人に使ってデータ‐を集め○○に効果があったとする使い方です。いわばプチ西洋医学です。現代において漢方も 分析、臨床データ‐から○○の薬効があるから使うという西洋医学的手法で用いられる事が多くなっています。それでは、本当の漢方の力は引き出せないのではないでしょうか?漢方的見方で人の身体を観る事が大切です。
2011年1月ブログ暮らしの中の中医学より
iPS細胞の山中教授のドキュメンタリーを見て感動しました。一見 科学的、冷たい、怖いというイメージのiPS細胞ですが、この研究にたいする博士の思いは人間を思う気持ちが一杯な事を知りました。整形外科医だった教授は脊髄損傷の患者さんなどに対し無力感を覚え、その状態から将来救える為の基礎研究をする選択をしました。何年も熱心にマウスを使った研究にうちこんでいましたが、人に仕えなければ意味がないと思い始めた時にES細胞が学会で、発表されました。
しかしある時、婦人科の高度先進医療に触れる機会があり,受精卵は命がある事を感じて、皮膚の細胞などから未分化の細胞を作れないかと考えたそうです。いつ成功するともわからない果てしなく根気の要る実験を続けたそうです。
皮膚の細胞をiPS細胞にするという事は『時間が逆に進む』ように感じました。この細胞が医学に応用されるまで、まだまだ時間がかかると思いますが、器質的損傷によって不自由な生活を余儀なくされている人達が立てるようになる日が将来必ず来ると確信しました。しかし、遺伝子の入り方によっては発ガン性の問題なども出てくる可能性もあるそうです。漢方理論は自然の法則にそって考えるわけですが、私達の知っている範囲の法則には無い事ですが それだけに奇跡が期待できます
漢方は紀元前から使われつづけ、その過程で発展してきました。また、人と自然がもっと仲良しで密接につながりあっていた頃、自然や身体に対する感覚が今よりもっと研ぎ澄まされていた頃、自然の中に存在する人という形で理論が作り出されてきました。だから、漢方の理論は地球上で見る事の出来る自然のあり方に反する事はありません。器質的な傷害がある時は漢方で対処する事はできません。
中医学の名医の臨床に基ずいた小説『老中医の診察室』の中の第7話は『脊髄炎を補肝腎と清化湿熱で治す』ですが次のような話です。風邪による高熱ですっかり足が萎えて3年も歩いていない患者さんの症状を湿熱と肝腎不足と診断して漢方薬と鍼と食、そして湿が関与している為、病室を南向きに代えるなどの環境の改善などをはかります。すると3ヶ月後には歩けるようになったという話です。この患者さんは1回目の発熱時は抗生物質とステロイドなどで足は動くようになりましたが、歩く事は出来ませんでした。2回目の発熱も同じような治療をうけますが、全く足が萎えてしまいました。これを治すには、身体の機能や身体が持っている力を中医学で分析し、本来身体がもっている能力を引き出す事しかなかったのだと思います。これは機能的な問題である為中医学理論が奏効したわけです。
腫瘤などが大きくなり、気血の運行や五臓の働きの改善だけでは対処できない時に、その昔華佗は腫瘤を取り出すという事を考えました。外科的方法です。その為『麻ふつ散』という麻酔薬を使ったといわれています。また日本においては華岡青洲が『通疝散』という麻酔薬を作って、妻で試した話は有吉佐和子著『華岡青洲の妻』の中にもでてきます。医学は中医でも西洋医学でも人が健康に暮らすためにあります。
但、私個人の考えとしては、
先ず生活習慣と食を治す。
次に食に近い漢方を使ってなおす。
さらに、力のある漢方を使う。
さらに西洋医学の助けを借りる・・・と考えています。
以上の事は 足し算です。漢方薬を使ったからといって 生活習慣や食生活の改善をしないでいいわけではありません。病気の段階や中医学的どのくらい健康でない状態にあるのかによってもどの段階の治療が必要かはちがってきます。ウイルスなどの外邪の侵襲をうける場合は病気は急激といえますが、脳梗塞や心筋梗塞は突然みまわれたようにみえますが、身体の中で瘀血は進んでいるわけです。
最近、心筋梗塞や脳梗塞など循環器系の疾患にとって脂質代謝異常や糖尿病の人のリスクが高いといわれています。動脈硬化は1日にしてなるものではありません。中医学的にみると瘀血は、機能的変化から器質的変化に進んでいっていると考えられると思います。
2010年11月ブログ暮らしの中の中医学より