以前NHKの認知症の番組で認知症かと思っていたら慢性硬膜下血腫で手術に認知症状が消えた・・・というのをやっていました。
ころんで頭を打ったり、比較的軽い外傷がもとで硬膜とくも膜の間に血腫ができるのを慢性硬膜下血腫といいます。
はじめは症状はありませんが、ジワジワ出血が続いて2ヵ月くらいすると血腫が大きくなって脳を圧迫する為症状がでてきます。
気力がなくなってきて動作が緩慢になり認知症のような症状が出たり、さらに血腫が増大し意識障害をおこしたり、呼吸中枢に及ぶと危険な状態になります。
頭蓋骨に穴をあけて血液を抜くそうですが、酷くなると症状に応じた手術になるそうです。軽いうちなら後遺症もなく改善しますが症状が進行していると軽い後遺症が残るという事です。
中高年に多く特にアルコールを飲む人に多いとなっています。
その番組では軽くお玉でポンと頭をたたいただけでもなってしまう人もいると言っていました。
びっくりですよね。
私もおっちょこちょいなので頭をぶつける事があります。例えば探し物をしていて頭の上の扉を開けているのを忘れて立ち上がって「痛っ!!」とか・・・
結構つよく打ったのに慢性硬膜下血腫になったわけではありません。
しかし 立ち上がった時頭をうって慢性硬膜下血腫になり手術をして血液を抜いたという話は何度か聞いています。
何故中高年になると増えるのでしょう。また何故アルコールを飲む人に多いのでしょう。
つまり出血し易くまた止まりにくくなっているという事でしょう。
これを防ぐにはどうしたらよいのでしょうか?
中医学の智恵で考えてみたいと思います。
まず外傷の止血という事で思い浮かぶのは田七です。
田七は別名三七とか田三七とか言ったりします。
中薬学には『田七は甘緩温通し苦降下泄し、散瘀止血・消腫定痛の効能をもち、一切の血証に効果を示し止血して瘀をとどめる弊害がないので、止血の要薬になっている』と書かれています。
『血証』とは出血傾向になる病態の事で、鼻血・歯ぐきの出血・痰に血が混じる・吐血・便血・尿血・皮下出血など色々です。
田七は出血の時の要薬ですのでまず田七は使いたいものです。
また『血証』の弁証から考えれば身体の状態をみていかなければなりません。
血熱・気の不足による統血不足・そして瘀血があります。
まず血熱ですが、これはアルコールの多飲とも関係があります。
例えば一般に酷い怪我の時・のどが赤く腫れて傷むとき・胃炎をおこしている時などアルコールを避けるのではないでしょうか?
それは炎症を起こし充血している状態を悪化させない為です。
血熱とは出血傾向、充血状態つまり毛細血管が拡張して出血しやすくなっている状態です。
沢山お酒をのんだり、辛いものの食べすぎなどから血熱を生じる事もありますし、更年期の陰血不足の時期にストレスによってなる事などもあります。
その場合は涼血止血と言う方法を用います。
たとえば 清営顆粒などです。
年齢とともに気血は不足してくるので気の固摂作用の失調により統血できずに出血傾向になるのは多く見られます。
胃腸機能が弱いと気血を作れず統血不足を起こす事もよくみられます。
その場合は心脾顆粒(帰脾湯)などです。
瘀血も年を重ねると多くなってきます。血行障害・うっ血など痛む・しこる・黒ずむの三大症状がある人も少なくないと思います。
田七はすべての血証に使えますが、散瘀(瘀血を散じる)働きがあるので、他の活血化瘀薬と一緒に使ったり単味で使うのも良いと思います。
田七は毎日少しずつ飲んでいくと良い物の1つだと思います。
中医臨床147号は老齢症候群の特集です。
あと数年で65歳以上の高齢者が30%をしめるようになります。30%というと3人か4人に1人は高齢者という事になります。
書いている私も入ります。
しかし、若々しくて元気な人も多く見られます。やる気とまでは行かなくてもやりたい気持ちは大事です。
あの温泉に行ってみたい。あの景色を見てみたい。じゃあ行こう!
美味しそう。じゃあ作ってみよう。
など日常生活の中で小さな感動があり、小さな望みを持ち、行動できるのが若さだと思います。
身体を動かすのがおっくうになった。
それは脳と関係している事が多いです。
軽度認知障害のテストは筋力なども見ていきます。
身体を動かすのは脳から指令が行って動かせているからです。
脳梗塞のリハビリで身体を動かしていく事は脳を動かす事につながります。
認知症予防には身体を動かす事やおしゃべりしたり、歌ったり表情を動かす事も大切です。
認知障害は「脳血管型認知症」「アルツハイマー型認知症」「その他」とわかれています。
脳の血管の動脈硬化によって酸素や栄養がうまく運ばれない為の認知症は脳梗塞とも関係しています。
また、アルツハイマーは脳にβ―アミロイドというタンパク質の沈着がある事が解かられています。
中医学でとらえると認知症は病位は脳です。しかし中医学で脳は奇恒の腑といい五臓六腑を素に考えるものです。
肝・腎・心・脾は脳と関連が強く、肝の疏泄機能は気の流れのコントロールや情緒とも関係しています。
腎は髄を生じ、髄海(脳)に通じるといい、脳の物質面をささえています。
心は神を蔵すといいますが、神は脳の思惟活動をさし、機能面の中心になります。
脾は気血生化の源で他の臓腑をバックアップするとともに心とは相生・肝とは相克関係で繋がっています。
また、腎気腎精を後天的に補うので、後天の精といわれます。
このように脳そのものでなく五臓を通じての脳で考えてます。
病因病機(本虚標実)
中医学は病気の原因や機序を重要視します。本虚標実とは根本原因は虚にあって、それによって出来た実邪があるという意味です。
病因は虚(血精の不足・五臓の衰え)によるものです。
標実は痰湿・瘀血・火さらに風です。
その虚や実邪により脳髄の減少と神機の失調し認知障害が出てきます。
認知症に人に良く見られる証は陰虚・血虚・気虚・痰濁・血瘀・火だそうです。
また陰陽の失調は清陽を上昇できずに神を養う事が出来なくなりますし、
濁飲も清陽の上昇を阻害するばかりでなく、神を損傷します。
心血の不足や腎精不足は髄海を充たす事ができませんし、心気の不足や腎陽の不足すると神明の失調や脳に栄養が届かないなどになります。
*腎陽・腎精は髄を生ずる上で必要な要素です。髄が生じなければ髄海を充たす事はできません。
また虚の結果生じた痰や瘀血が化熱し痰火になると、痰は粘って益々竅を塞ぎ、こびりついて瘀血も酷くなります。
七情の失調が原因という考えもあります。肝鬱から脾が過剰に克されたり、飲食が不摂生だったり、思慮過度などから脾が虚すと痰がより生まれて九竅を覆って虚実挟雑し複雑になります。
中医学の最高峰にいる張教授は髄海に通じる腎の陰陽を重要視しています。
治療原則
肝腎不足や心脾両虚の場合、通常は滋補肝腎や健脾養心などを行うが、認知症の場合は瘀血や痰濁が絡んでいたり、虚火や肝火を伴ったりしているので単純にはいきません。
補腎する場合でも腎精髄から考えて填精の力のある方剤を選ぶべきだと思います。
また活血化瘀・化痰開竅も必要です。
張教授は認知症の治療は補腎健脳養心・填精益髄を目標とすると書いておられます。
以下の4点を念頭にいれて弁証論治する事が重要
①陰陽のバランス
②補血温陽・固斂精気
③袪痰化瘀
④昇達清陽・固護後天
耳鳴りで悩む人は多くいます。突発性難聴のように耳鼻科での治療が必要な耳鳴りもありますし、聴神経腫瘍のように時に脳神経外科で手術が必要な時もあります。でも殆どが老化による耳鳴りとストレスによる心因性の耳鳴りです。実際ない音を聞いているのは脳です。
以前テレビである実験をしました。音の全くしない録音室に耳鳴りのない人達に入ってもらいました。すると全員が耳鳴りを感じました。聞こえない音を脳のセンサーが聞こうとしてしまうのが耳鳴りとなって現れるのだそうです。
以前、公園で若者がたむろすのを防ぐのにモスキート音を流すという事をニュースでやっていました。若者には聴こえて一般には聴こえない音?へーって思いませんでしたか?音の聴こえは年齢によって違うそうです。特に高周波の音は聞こえなくなってきます。かこういった事から耳の老化が耳鳴りと関係しているのだと納得できます。老化による耳鳴りは耳の聞こえ方の衰えと関係しているわけですから、耳が遠くなってくる(難聴の始まりともいえます。
その耳鳴りは老化?
「その耳鳴りは老化です。と耳鼻科で言われた。だから仕方ないよ。」
本当に仕方ないで良いのですか?中医学には老化を少しでも遅くする理論があります。『腎は耳に開竅する。』・・・つまり腎の衰えは耳に表れるという意味です。腎とは西洋医学の腎臓の事ではありません。『自然界に五行があり 人に五臓がある』五行学説にある五臓の腎です。腎は精を蔵し 生長・発育・生殖を主るといい、人の生命エネルギーの基盤となる精を貯えていて、発育や生殖に関係し腎気の充実が老化の速度を抑える力になっています。
「腎の衰えは耳に表れるわけだから、耳鳴りは腎が衰えてきてるのを知らせてくれてるんな。腎が衰えると腎の府の腰も弱くなるし、骨も腎が主るっていうから骨も弱くなってきてるのかな?腎は髄を生じるというから骨髄・脊髄・脳髄の不足も考えなくちゃいけないし。これを期に補腎していこう」と考えてみるのはどうでしょうか?
ストレスによる耳鳴り
次にストレスによる耳鳴りです。脳が音を感じているならストレス脳の音をキャッチする部分が興奮しているとやはり耳鳴りとして聴こえるのも納得できると思います。
一般にいう老化の耳鳴りは腎虚の耳鳴りで静かになった時サーサーという感じに聴こえもので生活の支障にはなりません。昼間も気になる耳鳴りは中医学では肝と関係しています。『肝は疎泄を主る』といい身体の気機の調節と関係しています。目に開竅するといいますが、気機の調節をしているので感覚器は肝と強く関係しています。また肝腎同源といい、肝は腎と密接な関係があります。人の声が聞こえないような、テレビの声の邪魔になるような耳鳴りは肝火の事が殆どです。
他に、瘀血や痰湿があります。つまり耳を取り巻く血の巡りが悪い時におこる耳鳴りです。巡りが悪ければ浮腫をおこす事もあります。「血の流れる音が聞こえる」とか「脈打つ音がする」言われる方がいらっしゃいますが、肝気鬱結や肝火または肝陽上亢のことが多いようです。そう言う状態は気滞血瘀といい血の巡りにも問題がでやすくなります。また血圧上がると耳鳴りもおきる場合もあります。中医学でその状況は肝陽上亢や肝火上炎でそれに瘀血阻滞が伴う事も多く見られます。
まとめると
①耳鳴りは腎の衰えのセンサー!
②肝の異常により神経が高ぶると音が高くなったり、大きくなったり。
衰えは時間をかけて補!
興奮(火)は早めに瀉!
同時に瘀があれば通!