養生の話

2006-03-01

「年をとらない人はいないけど、なるべく老化しないようにしたい」
「やっぱり補腎でしょう。」

 生命力は腎と関係しています。腎には命門の火があります。腎は精を蔵し、成長・発育・生殖を主るといいます。腎の精(腎精)は人が成長していくためのエネルギーのつまった種のようなものです。腎精は脾の運化によって補充されます。だから腎は『先天の本』、脾は『後天の本』といわれます。

 成長すると伴に腎気が充実してきて、思春期頃になるとホルモンが分泌されます。腎気の衰えてくるとホルモンの分泌も減り身体の少しづつ衰えてきます。腎気・腎精が充実している人は若々しいということです。 

 『腎は骨を主る』といいます。骨が弱ってくるのは『腎の骨を主る』働きが衰えるからです。骨密度が減ってくる理由を考えるとカルシウム不足の他に生成と破骨のバランスが悪いなっている事があります。つまり骨の丈夫さを維持する仕組みが弱っているということです。関節痛に使う独歩丸(独活寄生湯)には補腎の中薬がはいっています。

*子供の発育が悪かったりする時も補腎します。腎は先天の本だから生まれつきの弱さがあるときは腎精が不足があることも多いからです。

 物忘れが多くなったり、頭がボーっとしていてはっきりしない感じがしたりは腎の衰え(腎虚)の症状の事が多いです。『腎は骨を主り、髄を生み、髄海に通じる』といい、骨髄・脊髄・延髄・脳髄(髄海)は腎と関連しています。痴呆症の予防には“補腎と活血化お”が重要視されます。

 補腎薬のうち益精、益髄、健脳の働きのあるものが脳の働きにいいようです。漢方茶のなかでは香ロゼアは紅景天という中薬と同類で固本健脳(身体の本を丈夫にして脳の働きをよくする)の作用があります。 中国の国際中医専門員の試験の時は毎日飲んでいました。飲むと若い頃より開けにくくなった記憶の引き出しがスムーズにあけられるような気がします。

 いまでも時々集中力アップに利用しています。『腎は納気を主る』といい、吸気は下りて腎に納まります。息を深く吸いこむ力は腎の働きです。呼吸が浅く肺活量が少なくなっているのは腎虚の場合も多く見られます。喘息、慢性気管支炎、肺気腫などの肺系の疾患で呼多吸少(呼気が多く、吸気が少ない)症状が見られるときは腎虚があると考えます。肺と腎にいい漢方薬に双料参茸丸や八仙丸、平喘顆粒(蘇子降気湯)などあります。

*呼吸で大気中の清気を吸い込み腎まで下ろすのは、身体の円滑な営みにとって重要です。毎日ゆっくり深呼吸をしましょう。

 腎は五行で水の臓器です。『腎は水を主る』といいますが、この事は西洋医学の腎臓の働きに近いものです。腎の気化作用により、体内の水液の貯留・分布・排泄はなされています。腎陽はこの水液を代謝させるエネルギーなので腎陽が不足すると小水がでなくなったり、浮腫んだりします。心不全の浮腫みや足腰が弱って下肢が冷えて浮腫むなども腎陽の不振によるものです。

 『腎の華は髪』『腎は上は耳に開竅し、下はニ陰に開竅する』といいます。腎が虚すると髪の艶が無くなり白髪になったり、抜け落ちたりします。また、耳鳴りや難聴、排尿の異常や便秘・下痢・便がもれるなど腎虚による事が多いです。このように見てくると(老化現象=腎虚)といっても過言ではありません。

*数年前、「補腎」の研究をしていると言う中国の先生の講演を聞いたことがあります。

「腎が髄を生み、髄は血を生む」などの中医学的な腎の働きを証明するような動物実験でした。補腎生血薬で老化したハムスターの毛並みがよくなったり、去勢したおん鳥のとさかがでてきたりのスライドをみてびっくりしました。

 後日、恩師のT先生に聞いたことがあります。

「私も老化防止に補腎薬を飲もうと思いますが、あの話の補腎薬が一番力がありますか?」
「アレは動物実験だからで人間はもっと複雑です。しっかり弁証論治して選ぶべきです」

 
 私も補腎生血薬のんでます。できればいつまでも若くいたいものです。

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